ロープの森
「スグルさん、此は!!」
ダンは、俺の宿舎の森の木々に張り巡らされた、魔軽金属のロープを見て、愕然とした、
俺は、驚いている、ダンとオルを見て、頑張って、このロープを張って、良かったなぁー、と、思いながら、
「喜べ、ダン、オル、此は、君達、『星に愛されし民』が、『星導術』を練習する為の場所だ!」
二人は、同時に、
「えっ!!!」
4月28日の火曜日、俺がこの世界に来て37日、前日、俺は、宿舎にハルを置いて、『お洒落亭』の店主、ミゲール・トレコロフから、ロープを張る魔導機を50万RGで買った、
宿舎に戻ると、エミとハルが楽しそうに、二人で、サンドイッチを食べていて、俺は、
「ハル、服は、乾いたのか?」
ハルは、もう大丈夫ってな顔で、
「はい、師匠、渇きました、で、師匠は、どちらにいらしたんですか?」
「ん、俺か、俺は、皆の為にロープを買いに行った、」
と、俺はT型の魔導機を、二人に見せた、
ハルは、キョトンとして、
「ロープですか?」
エミちゃんは、呆れながら、
「スグル、何言ってんのよ、其、牧柵機でしょ!そんな高い物、また買って!!そんなに、無駄使いしてたら、スグル、貴方、全財産無くして、身を滅ぼすわよ!!」
しっかり者のエミちゃんが、俺を叱る、
しかし、エミちゃんは、流石、地元の娘だ、此の、魔導機の事も、知ってるし、高い事も分かってるんだ、
「まぁ、大丈夫、俺には、すっーげぇ、スポンサがいるからさ、」
エミちゃんが、呆れて、
「だから、お金がスポンとサーって無くなるって言ってんのよ!!」
エミちゃん、スポンサの意味、分かんないから、擬音、出してる、笑い、
俺は、笑いながら、
「まぁ、兎に角、俺は、此れから、一仕事だから、君達は、帰った、帰った、」
ハルは、興味津々で、
「えっ!師匠、今から、一体、何、するんですか?」
俺は、ハルとエミちゃんを、玄関に追い出し、
「其は、明日のお楽しみ、じゃあな、ハル、エミちゃん、おやすみ、」
こうして、ハルは自宅に、エミちゃんは寮に帰った後、俺は、自分の宿舎の前の森に、訓練用のロープを張り始めた、
ロープは、最初は低く、段々、高く、複雑に、張り、全てが終わったのは、夜明け前だった。
そして、今日、今日は第6回目の放課後自主講座が開催される、今日は、『星の遺跡・密林』を『星に愛されし民』に見せるだけで、訓練は此方でするつもりだ、
だから、軽食は用意して無い、
4時になると、一番、最初に来たのは、ダンとオルだった、彼等は、新しい『星の遺跡』の事が気になって、早く来たようだが、
俺の宿舎の前の森に、張り巡らされたロープを見て、驚いた、って分けだ。
その後、ジェミ、リア、アンリが、俺の宿舎に来て、彼等も、驚いていた、
俺は、ジェミにコッソリ、リアちゃんと、どうなの?と聞いたら、奴、本当に、関係、無いですから、スグルさんと、言った。
まぁ、若いから、照れるのは、分かるけど、気持ちに、素直になんないと、後で後悔するぞ、と俺は、ジェミにアドバイス、
ジェミは、そんな、俺の顔を見て、やれやれって顔をしやがる、
ジェミ、あのなぁ、
と、俺は勝手に、ぷりぷりしていた。
遅れて、ハルとエミちゃんが来た、
何でも、寮長が、エミちゃんがちゃんと、部屋を綺麗にしたか、エミちゃんの部屋を確認する為、
エミちゃんは寮に、一旦、戻っていたから、遅くなったとの事、
勿論、二人も、俺が森に張ったロープに驚いたし、最後に来た、メルティスト先生も、驚いて、
「あんた、一体、何やってんのよ!」
と、俺の事、呆れていた。
「先ずは、俺が、色々と説明する依りも、皆に、新しい『星の遺跡』を見て貰った方が早い、」
そう、俺は、『星に愛されし民』の皆に言いながら、『星の門』を開いた、
「じゃ、ハル、何時ものように、先に向こうに行って、『星隠し』を張ってくれ、ダンとアンリは、ハルの護衛だ。」
「はい!!」
三人は、元気良く、返事をして、『星の門』の中に飛び込み、
「じゃ、次に、リア、ジェミ、オル、そして、メルティスト先生だ、」
三人と、先生が、『星の門』を潜って、最後に、俺、勿論、直ぐに戻るつもりだから『星の門』は、閉じない。
『星の遺跡・密林』を見た、『星に愛されし民』の面々は、呆然と、立ち尽くしていた、
「スグルさん!私達は、此処で、何をするんですか?」
ダンが、俺に聞いて来た、
「うん、勿論、此の遺跡の攻略だ、此の先に、攻略地点の建物が有る、」
オルが、困った顔で、
「でも、沼や、草や木が邪魔して、私達は、此の先に行けませんけど、」
俺は、大丈夫ってな雰囲気で、
「こんな、感じ、」
と言った後、
バッ、バッ、バッ、ストン!
俺は、木の枝を飛び回って、彼等の回りを一周した後、戻って来た。
ハル以外の全員が、驚いて、
ダンが、俺に、
「スグルさん、其を、私達にやれと!」
「そうだ、ダン、だが、昨日、ハルに試しに、挑戦してもらったんだが、見事に、沼に突っ込んだ、だから、此処じゃ無く、俺の宿舎の前の森で練習してもらう、」
エミちゃんが、呆れて、
「其で、ハルは昨日、スグルの部屋で、制服、乾かしてたのね、」
ハルは、照れて、
「そうなんだ、エミ、失敗して、」
ダンは、木々を見ながら、
「一回も、挑戦はさせて貰えないんですか、スグルさん」
俺は、頷き、
「沼に落ちたら、俺が拾いに行かなくちゃなんないし、まずは、全員が、俺の前の森に張ったロープで練習してからだ、じゃ、皆、帰るぞ、」
全員が、一旦、俺の宿舎の前に戻り、俺は、ロープの一番、低い、2メータの高さに張ったロープを指して、
「先ずは、このロープに、『星導術』を使って、飛び乗ってくれ、リアは、『魔導術』を使って良い、じゃやってみて。」
ダンが、一人言で、
「確か、目だ、目に集中し、・・・良し、脚、脚に、」
ズダーン!
おっ、飛んだ!
ガシッ!
ロープに脚が、掛かった、
いけるか?
グルリン!
えっ、回転?
ズドーン!
落ちた、
・・・
ダンが、魔導防護服の土を払いながら、
「スグルさん、確かに、難しい、」
俺は、真面目に、
「分かったろ、ダン、このロープから、此処から、一番高い位置に張ったロープ迄、行けなくちゃ、『星の遺跡・密林』には行けない、じゃ、皆、各自、ストレッチを30分した後、、此のロープで練習する事、以上、」
こうして、『星に愛されし民』は、俺が作った、『ロープの森』で、『星の遺跡・密林』の攻略に向けて、練習する事になった。
そして、ストレッチが終わり、全員が、最初のロープに乗る事に挑戦し、乗った瞬間、バランスを崩し、
ドテ!
コロン!
スタッ!
ボテッ!
チャッ!
リアを除いて、皆、三秒も、ロープの上に立ってらんない、
リアは、『魔導術』の『力』で体を支えているらしいし、肉体強化を組み合わせれば、より高いロープにも行けると、俺に言った。
・・・
おかしい、『星の力』なら、もっと、自由に、肉体を変える事が出来る筈なんだが、俺は、ハルに聞く事にした、
「ハル、このロープに乗るのに、『星導術』を、どう言う、やり方してんだ?」
ハルは、考えながら、
「師匠、え~と、『星の瞳』を発動した後、脚に、『星の力』を使って、ロープに飛び乗ります。」
ウ~ン、
全身に『星の力』を、使わないのか、
「なぁ、ハル、全身への『星の力』は、使えないのか?」
ハル、悲しそうに、
「師匠、使えない事は、ないんですけど、全身に使うと、5分しか、持たないんです、」
・・・
5分、
5分って、
本当に、ハルには、才能が無い、
無さすぎる、
「で、でも、師匠、こうして、部分で使えば、30分は行けます、だから、」
ハルは、俺に見捨てないでくれ、と、必死だ、
ハル、俺は、君を見捨てる事は、出来ない、君は、『星に愛されし子供』だ、
俺には、君を導く使命が有る、
しかし、
部位か、
部位に、星の力を使う、
なら、バランスを、司る部位は何処だ?
・・・
三半規管!
耳に有る、三半規管だ!
「なぁ、ハル、三つの部位に、『星の力』を使う事は、出来るか、」
ハルは、直ぐに、頷きながら、
「出来ます!師匠!!其で、何処の部位ですか!!!」
俺は、耳を指しながら、
「耳だ、」
ハルは、驚きながら、
「耳ですか?耳は、音に敏感になるんで、苦手なんですが、大丈夫、出来ます!」
俺は、耳の上を叩きながら、
「正確に言うと、耳の奥だ、耳の奥に『星の力』を集めるんだ、其処に、人のバランスを司る部位が有る、」
ハルは、不思議そうに、
「耳の奥、ですか?・・・分かりました、やってみます、師匠!!」
俺と、ハルの会話を聞いていた、『星に愛されし民』の面々が、ハルを見ている、
「あぁ、ハル、やってみろ、きっと成功する、」
ハルは、嬉しそうに、
「はい、師匠!!」
師匠は、僕に失望している、
あの、表情は、
5分しか、出来ないのか、
そう、言っていた、
師匠は、本当に師匠は凄い、
僕より、遥かに大きな『星隠し』を常時発動していて、更に、全身に、『星の力』を発動する事が出来る、
其なのに、僕は、僕は、『星隠し』だけで、精一杯だ、
『星の力』も、部位にしか使えない、
僕は、
僕は、
才能が、無いのかも、知れない。
師匠には、出来るって、思わず、言ってしまった、でも、三ヶ所に『星の力』を使うって、僕は、やった事は無い、
『星隠し』を止めれば、
・・・
駄目だ、『星隠し』を、使いながら、『星の力』を使う事に、意味が有る、
此のままで、挑戦するんだ!
「ハル、その、」
ダン?
「私達は、君が、出来ると、信じてる、君が、『星導術』を使いこなして、私達を、此処まで、導いてくれた、だから、私達は、希望を抱く事が出来たし、努力する事が出来た、ハル、君は、私達の、『王』なんだ!」
『王』
希望、
僕は、皆を見た、
ジェミが、エミが、オルが、アンリが、そして、才能の有る、リアも、
僕を、信じている瞳で、見ている。
あぁ、そうか、そう言う事か、
なら、僕には、出来る、
僕は、ゆっくりと、『星の瞳』を発動し、
その『星の力』を拡張し、耳の奥迄、広げた、
グワッ、
僕は、呻きを押し殺した、
『星の力』が、かなり、持っていかれた、きつい、
良し、少し慣れた、
脚だ、脚に、『星の力』を、
僕は、ジャンプした、