俺の真実
魔導歴2035年4月25日の雷曜日、俺がこの世界に来て34日め、
放課後自主講座、『星に愛されし民』は、『星の遺跡・草原』を攻略し、次の遺跡に、皆を導く為の遺物を、俺達は手に入れた。
そして、俺は最終試練を攻略すると、出現する遺物に、『鍵』と名付け、
皆には、俺の故郷の、扉を開く為の道具の名前だと説明した。
焦る、ダンは、
「スグルさん、其で、そのスグルさんが言う、次の『星の遺跡』に行けるんですね、で、何時、私達は、その『遺跡』に行くんですか?」
ジェミに、お茶と、ソースの付いた、ベーコンのサンドイッチを出すように指示していた俺は、
「ん、そうだな、取り敢えず、俺が、その遺跡が、どんな遺跡かを調べてからだ、たぶん、明後日の放課後自主講座からは、新しい、『星の遺跡』になると思うよ。」
ダンは、少し、不満気な表情で、
「その、調査に、私も同行させて貰えませんか?」
俺は、首を振りながら、
「駄目だ、俺が、安全を調査する迄は、生徒で有る、君達を、新しい『遺跡』に入れる事は、出来ない、此れは、俺とメルティスト先生との約束事だ。」
と、言って、俺は、メルティスト先生を見た、
メルティスト先生は、ジェミが出した、ソース付きのベーコンサンドイッチに気を取られていて、急に話しを振られた事に慌てて、
「えっ、そ、そうよ、ダン、スグルさんが、安全管理責任者だから、彼が許可しない場所は、行けない、そう言う、ルール。」
オルが、ダンの肩を、叩きながら、
「ダン、私達は、スグルさんを信じよう、大丈夫だ、ダン、君は、強くなっているし、今の君なら、ガルホールと互角にやれる筈だ、」
ダンは、オルを見て、
「・・・だが、まだ、私達は、肉体強化が出来てない、」
「其を含めて、私達は、スグルさんを信じよう、スグルさんを信じて、私達は、此処まで来れた、なぁ、ダン、信じよう!」
ダンは、ため息を付き、
「分かった、オル」
と、イケメン、二人は、俺の目の前で、腐女子が喜びそうな、会話をしているし、
何だかなぁ、俺の立場って、
まぁ、面倒くさいから、考えないけど、
「よし、納得したなら、休憩して、一旦、俺の宿舎に戻る、で、今回は、俺の魔の恵みの果木の果実で作った、ソースを掛けた、ベーコンのサンドイッチを作ってみた、是非、味見して、感想を聞かせてくれ。」
エミちゃんが、残念そうに、
「此のあいだの、フルーツサンドじゃないんだぁ、残念」
俺は、笑いながら、
「あれはね、ちょっと、旨すぎるから、当分は封印、」
エミちゃんが、ほっぺ膨らまして、
「えーーーぇ、酷くない、スグル!」
と、何時ものエミちゃん、
その後は、『星の遺跡・草原』の攻略を記念して、皆で、お茶で乾杯して、俺の作った、ベーコンのサンドイッチを試食して貰った。
感想は、辛口批評家のメルティスト先生も、此のソースを気に入ったようで、少し分けて貰えないか、と俺に言ったら、リアちゃんも、エミちゃんも大騒ぎして、結局、俺は全員にソースをプレゼントする事になった。
うーん、まぁ、『星の遺跡・草原』の攻略記念って事で、
俺は、笑いながら、答えた。
どっちにしろ、ハルには、此のソースをやるつもりだったし、
先生と女子は、大喜びして、あのお菓子に、付けよう、此のお茶に入れてみよう、と女子会の話しで盛り上がり、
相変わらず、ダンとオルは、真面目に、今回の、攻略の反省を話しあっていた、
ダンは、今回の試練で、殆ど、アンリが活躍していた事に、納得はしていなかった、
彼女との実力の差を見せ付けられた事が、彼自身が、まだまだ未熟で有る事を自覚させられたのだと思う、
たぶん、彼は、此の後、もっと多く、剣を振るうのかも知れない、
本当に、努力の天才、とは、
彼の事を言うのだろう。
そして、ハルとジェミは、エミちゃんの引っ越しと、ハルの引っ越しの事で、普通に雑談をしている、
こう見ると、二人は、本当に何処にでもいる、普通の高校生だ、
なのに、二人とも、ある瞬間、普通の高校生を超越した、存在、
そう思える時が有る、
不思議だ、
俺は、此の二人の事だけは、
良く、分からない、
何故なんだ。
その日は、其で終わり、『星に愛されし民』は、俺の宿舎の前に帰還した。
時刻は、夕方の5時半、俺は全員に、次回は何時もの時刻、4時に集合する事、そして新しい『星の遺跡』での訓練になる事を約束して、解散となった。
帰り際に、全員に黄色のソースを渡し、ハルには、特別に黄色と青を混ぜたソースを渡しながら、
「良いか、ハル、必ず、食事には、此のソースを加えるんだ、そうすれば、疲れも取れるし、其に、『星導術』の練習前には、此のソースを舐めろ、良いな、分かったな、ハル、」
俺は、念を押して、ハルにアドバイスをした、
「師匠!有難う御座います!!」
ハルは、感激して、深く俺に御辞儀をして、エミと二人、仲良く、家路に向かった。
そして、一人、残った、メルティスト先生が、怖い顔で、
「スグル!!!貴方、本当に、あの子達を、危険な未知の遺跡に、連れて行くき!!!」
彼女は、押さえていた、感情を、遂に、爆発させた。
教師として、立派な、メルティスト先生だ、俺が、やろうとしている事が、生徒達にとって、異常な事ぐらい、既に、気付いている筈だ、
彼女の本能が、危険だと言っているのかも知れない、
其なのに、彼女は、たぶん、ダンの様子や、皆の様子を見て我慢していたんだと、俺は、思っている、
・・・
本当の事を、話そう、
彼女の、協力が、必要だ、
其でも、彼女が協力しなかったら、
ルナ、ルナに頼むのか、
俺は、話しを始めた、
「先生、俺の話しを聞いてくれ、俺は、実は、遥か東の辺境の国の人間、スグルじゃーない、」
メルティスト先生が、はぁ?ってな顔をしたが、俺は続けた、
「先生、俺は、先生なら良く知っている、二千年前の、『星の六大国』の人間、名前を、」
俺は、言葉を区切った、
「コーリン・オーウェルと言う!」
言っちゃたよ!
言っちゃた!
よし、一気に言え、俺!!
星達が、俺に言え、言え、と天界で光、輝いている、
よし、言うぞ、
「俺は、『星』に使命を託されて、この、学校にいる、そして、その使命は、この学校の生徒、『星に愛されし民』を、『星の遺跡』の果てに、連れて行く事、だから、俺は、彼等を、『星の遺跡』に連れて行く、止める事は絶対出来ない、此は、世界の運命が賭けられているんだ!」
と、一気に説明し、メルティスト先生を見ると、先生は、真っ赤な顔で、
「はぁあああ!あんた、バカ!バカなの!!コーリン・オーウェルですって!!!あんた、世界に何人のコーリンがいるか知ってんの!!!」
えっ?
メルティスト先生は、俺を指差しながら、
「子供はね、悪い事すると、皆、自分はコーリン・オーウェルだから、悪い事も仕方無いって言うのよ!!!」
ええええええええええ!!!
「もう、やんなるわよ!!バカスグル!!、何、言うかと思えば、ガキの言い分けするし、私は、子供達の安全が大丈夫かを知りたいの!!良い!安全じゃ無ければ、放課後自主講座は中止します!!!」
俺は、慌てて、
「だからね、先生、俺には使命が、」
「バカスグル!安全が確認されなければ、中止!!!条件は、貴方が、新しい『星の遺跡』に行く時、私も行きます!!」
俺は、更に慌てた、先生、あんた死にかけたんだよ!
「いや、先生、まず、俺が、」
「行きます!じゃなければ中止!!」
・・・
俺は、諦めて、明日の、午後4時に、彼女と、次の、未知の『星の遺跡』に行く事にした、
結局、彼女にとって、俺は、小太りのスグルで有り、
コーリン・オーウェルとしては、認めて貰えなかった、
まぁ、当然か、と、俺は、自分自身を納得させた。
4月26日の光曜日、俺が此の世界に来て35日が経った、
今日は、スグルの世界での日曜日、基本、俺は休みなんだが、実際、寮も有るから学校の運営は休みなくしているし、
俺も、学校に住んでいるから、何か有れば、直ぐにその場所に行かなくちゃなんないから、基本は、遠出は出来ない、
但し、俺には、『星の門』が有るから、『門』が開く場所なら、何処にでも行ける、だから休日は、ちょっとした時間、出掛けるつもりだった、
だが、今日は、メルティスト先生と、新しい遺跡に行くから、あまり、『星の力』を使う事は出来ない、
仕方無いから、学校の寮の前の花壇の手入れ等をしながら、時間を潰していると、女子寮に向かって、エミちゃんと、エミちゃんを大人にして、少し太らせた女性と、痩せた芸術家風の紳士とエルさんが、歩いて行くのが見えた、
あの人達が、エミちゃんの御両親、成る程、エミちゃんは、お母さん似って訳だ、あの性格も、お母さん譲り、
お父さんは、あんなに痩せているから、たぶん、苦労してんだな、ハル、君も、結婚したら、きっと苦労して、痩せるぞ、なんて、失礼な事を勝手に考えて楽しんでいると、
「師匠、」
と、元気な声が、
「おっ、ハル、今日は、随分、元気だな。」
ハルは嬉そうに、
「はい!師匠のソースのお陰です、師匠、あのソースを付けて食事すると、僕、なんだか、力が漲って、」
俺は、笑いながら、
「そうだよなぁ、俺も、ソース付きのサンドイッチを食ったばかりだし、気分爽快って感じだ、ところで、ハル、ハルはエミちゃんの部屋、見に行かないのか?」
ハルは、慌てて、
「いっ、行きませんよ!女子寮ですよ、男子禁制です!」
俺は、ニヤリとしながら、
「そりゃ、知ってるけど、ほら、若いんだし、興味あんだろ、好きな娘の部屋、」
ハルは、首を振りながら、
「師匠、エミは、僕の家の隣で、小さい頃から、エミの部屋は知ってます、其に、エミは片付けが苦手だから、僕が、彼女の部屋、片付けしてたんですよ、」
・・・
はっきり言って、
ハル、お前って、小さい頃から、エミに尻に敷かれてたんだなぁ、
俺は、ハルに同情した。
その後、ハルとエミちゃんに、エミちゃんの両親を紹介され、俺は、エミちゃんの両親と大人の会話をして、彼等は、エミちゃんを寮に残し、帰宅した。
そして、午後4時、
元気一杯のメルティスト先生が、
「さぁ!行くわよ!スグル!!」
と、俺をけしかけ、
俺は、ため息を付きながら、
右手に、メルティスト先生の手を握り、左手に『鍵』を握り、
「行きますよ、先生、」
と、言った瞬間、
俺は、『鍵』を包んでいる、『星隠し』を切った。