其々の重さ
4月22日の力曜日、俺が、この世界に来て、31日、
普通に、学校の掃除をして、放課後、さぁーて、今日は、ソースでも作るかなぁー、って、思っていた時、
ハルとエミちゃんが、俺の宿舎に来て、
ハルは、俺に、彼の『星より渡される道具』である、『星のナイフ』を見せながら、
「えっ、そのナイフに、名前!」
ハルは、自信満々に、
「はい、スグルさん、昨日、夜、星が僕に、はっきりと言ったんです、この、僕の『星のナイフ』の事を『アルカナスターソゥ』って、はっきり言ったんです!」
『アルカナスターソゥ』?
何だ?
聞いた事ねぇぞ、
ハルは、真剣に、
「其で、スグルさんなら、意味と、このナイフの使い方、知ってるんじゃないかと、」
・・・
知らねぇ、
「悪い、ハル、残念だけど、俺は、その名前も意味も知らない、」
俺の答えを聞いた、ハルは、ガッカリした顔で、
「そうですか、スグルさんも、知らないんですね、」
俺は、ハルに聞いた、
「ハル、守護星は、その他の事は、何か、言って無かったのか、」
ハルは、首を振りながら、
「名前以外は、・・・何も、」
名前以外は、何も言わないって、
何故だ、
守護星なら、もっと、ハルを導く助言をしても、良い筈なんだが、
何故、ハルの守護星は、多く語ろうとしないんだ?
言ったら、ハルの成長を妨げる何かが、有るからか、
其とも、
普通には、言えない、
過酷な、使命で、
言う事、全てがその使命と、結び付いているからか、
「其で、師匠、僕の守護星が、『星のナイフ』を、呉れたんです、だから、此を、使いこなす為にも、僕はこの学校に寄宿しようと思います!」
えっ、
考え事してた、寄宿って、ああ、
昨日、俺が言った、提案ね、
「じゃ、ハル、決めたのか、」
「はい、両親にも相談しました、」
エミちゃんも、
「昨日、夜遅くハルの両親が、家に来て、私の両親と相談したの、この頃、放課後自主講座と、ハルの『星導術』の練習で、私達、帰るのが遅くなって、其で両親は心配していて、勿論、ハルの事は、信じていてくれるんだけど、」
帰りが、遅くなった、
そうだよなぁ、エミちゃんは年頃の女の子だし、両親は心配する、そりゃあ、当たり前だ、
「私の両親は、その事で、担任のノーラス先生に、相談するつもりだったみたい、私を、安全な寄宿組に出来ないかを、」
・・・
そうだったのか、どうやら、俺は、配慮が足りなかったようだ、もう少し、メルティスト先生と相談するべきだった、
と、反省はしてみた物の、
今更、方針を変える事は出来ねえし、
「其でね、スグル、此処に来る前に、私達、エルさんに相談したの、そしたらやっぱり、今、放課後自主講座に参加している、一年からも、そんな話しが出てて、取り敢えず、女子寮を、優先に手続きをしてくれるんだって、」
流石、エルさん、対応が早い、
「だから、私は、26日の光曜日に引っ越すから、」
俺は、頷きながら、
「そうか、そりゃあ、良かった、帰り道、事故ったら、大変だしな、其で、ハルは何時からだ、」
ハルは、嬉しそうに、
「僕は、5月からです、師匠、」
5月か、次の週、って事か、そうなると、『星に愛されし民』の通学組は、リアちゃんとアンリちゃんだけど、彼女達は、学校の近くに家を借りてるって、ジェミが言ってたし、
こうなると、合宿ってやり方も、考え方としては、有りか、ただ、メルティスト先生は、反対するかも、
まぁ、その時は、その時だ、
「師匠、此で、僕も、本格的に、師匠から『星導術』の、指導を承けられます!」
えっ、本格的、って、
「あぁ、そうだな、だが、ハル、無理は駄目だ、その、ゆっくりな、先ずは、体を作る事な、良いな、」
エミちゃんは、疑わしそうに、
「スグルってさぁ、何か良い事を言ってるようで、実は、ハルに、教える事何も無いから、誤魔化してるとか、・・そんな気がするんだけど、」
ギクッ
エミちゃん、するでぇ!
「そっ、そんな事ねぇって、俺は、ハルの事、心配してんだよ!」
ハルは、エミちゃんを見ながら、
「そうだよ、エミ、師匠に限って、そんな、三流の魔導士じゃあるまいし、ちゃんと、僕の事を考えてくれてんだよ、」
ナイス、ハル、
「そう、そう、」
まぁ、俺は、魔導士じゃねぇけど、先生としては、三流だな、まだ、メルティスト先生の方が、はっきり言って、プロだ。
じーぃ、
ってな視線で、エミちゃんは、俺を見てる、やれやれ、
その日は、その報告で、ハルもエミちゃんも、家に帰り、
翌日の、23日の磁曜日、今日は、3年生が、ちょっと騒いだので、俺が呼ばれ、ちょちょっと、落ち着かせた、
原因は、魔導格闘技大会の選手に選ばれ無かった生徒のやっかみらしい、
若い奴の、沸点の低さは、良く分からん、
エルさんが、言うには、去年は、あっちこっちで、揉め事が有って、先生達も、面倒だから、余程の事態で無いと、ほっといたらしい、
今年は、俺がいる事で、生徒達が警戒しているのと、アルバート先生が、授業で魔導格闘技を取り入れたので、
生徒達は、その授業でストレスを発散しているのか、揉め事は激減していると、エルさんは俺に教えてくれた、
其でも、揉め事が起きるのは、3年生は、自分の進路を考える重要な時期だから、らしい、だから彼等のストレスも、日毎に、重くなっていく、
そしてこの国は、軍事国家だから、防魔省、魔導省に採用される事が、エリートの証しだと、エルさんは俺に言い、
特に、防魔省に採用される人材は、魔導格闘技大会の出場者を優先する、
今までは、魔導格闘技の指導者がいなかったので、殆どの生徒は魔導格闘技大会に出場する事を、諦めていた処、
今年は、アルバート先生がいるので、魔導格闘技大会の学校枠での出場権が有るらしい、
だから、3年生達は、魔導格闘技大会に熱くなった、
そして、その熱気が、まだ、冷めなくて、
まぁ、補欠枠も有るし、兎に角、5月の地区予選、6月の地区大会、7月の、公都、バルドリスでの本大会が終わる迄は、荒れるんじゃないかと、エルさんは、俺に言った。
因に、2年生は、また、別の状況で、困っている、
魔導格闘技の得意、不得意は、魔導術の才能が、如実に反映される、
だから、3年も、1年生も、団体戦、個人戦ともに、A組が選ばれた、しかし、
2年生は、魔導術が不得意のC組が団体戦の代表に選ばれてしまった、
此の事に、納得していないのが、ガルホール・スターゲス率いる、A組で、彼等は、一般枠の、5月に行われる、地区予選の団体戦に出場する事にした、とダンから、俺は聞いた、
此の大会で勝ち上がった、上位4組と、学校推薦枠の4組が、6月の地区大会で争い、上位2組が、7月の本大会に出場する。
更に、ダンが言うには、そんな事や、リアちゃんがA組に入らなかった事等、更にハルが魔導格闘技大会でA組のトップを負かした事等が重なって、C組とA組の関係は、今や最悪なんだとか、
実際、ゴタゴタが起きても、可笑しくない状況らしく、其を押さえているのが、ガルホールとダンの、其々の組のリーダだ、其も限界に近く、
その解決案として、ガルホールからの提案は、C組も、一般枠の、地区予選に出場し、上位に進んだ方が団体戦の代表として出場する、
と言う内容だった、
ダンは、少し考えさせてくれとガルホールに答え、
その事を、俺に相談する為に、昨日の夜に、ダンとオルは俺の宿舎に来た。
俺的には、ダンに、そんなバカバカしい事に付き合う必用は無いんじゃねぇの、と言ったんだが、
ダンは、断れば、魔導術の才能が有る、A組は、C組の他の生徒達に絶対、嫌がらせをしてくるし、ガルホールは、此の国の権力者の家系だから、圧力を掛けて来る筈だ、と俺に言い、
じゃ、その提案を受けるのか、とダンに聞いたら、ダンは、受けるつもりです、と俺に答え、その後、彼が言った言葉は、
「スグルさんに聞きたかったのは、私達は、A組に勝つ事が出来るか、どうか、なんです!」
と、ズバリ聞いてきた、
うーん、正直言って、俺は、魔導格闘技大会も、C組も、どうでもいい、重要なのは、彼等が『星に愛されし民』だと言う事だ、
星は、彼等の運命が、星の力の訓練所の先に有り、だから、彼等に『星より渡される道具』である、『星具』を渡した、
彼等の運命に於いて、『星具』を使いこなす事は重要な事だ、だが、魔導格闘技大会では、『星具』を使う事は出来ない。
俺は、ダンに言った、
「まぁ、魔導格闘技大会じゃ、『星具』は使えねぇから、『星導術』の身体強化を使う必用があるな、」
ダンは、真剣な顔で、
「・・・そうですか、じゃ、スグルさん、私達は、少しでも、早く、その身体強化の方法を覚えるべきですよね、」
・・・
ふぅ、此だよ、
ハル以外の、皆は、特に、ダン、オルは、星に、運命を託された意味が分かってねぇ!
自分の運命なんだよ!!
運命ってのは、魔導格闘技大会より、遥かに、重いんだよ!!!
とは、俺は、彼等には、
言えなかった。
「分かった、ダン、身体強化の事は、考えよう、だが、『星具』を使いこなす事も、大事だ、一応、今までの、訓練を続けて、その中で、身体強化も訓練に入れていこう、」
ダンは、俺に向かって、
「そんな、悠長な事で、僕達はA組に勝てるんですか!!!」
オルが、ダンに、
「ダン、落ち着け、」
・・・
仕方ねぇ、なぁ、
「大丈夫だよ、ダン、勝てるって、安心しろって、」
と、俺は、ダンに嘘を着いた、
なんせ、俺、魔導格闘技の事、知らねぇし、素人だし、勝ち負けの事は、分からん、
だから、言った事は、適当だし、だから、嘘だ。
そして、今日の4時に、皆は、其々の重さを背負って、
俺の宿舎の前に、集まった。