運命と使命
「うん、此は、なかなか良いわ、前のより、スッキリしているし、甘さとカリカリ感がすっごーく合ってる。」
やっーたぁ!
辛口批評家のメルティスト先生も、俺の揚げパンには、高評価だ!
「うーん、スグル、油を変えたのよね、・・・この、サッパリ感と香り、・・・緑玉種!」
俺は、ちょっと、驚いた、俺は、指で、油玉の大きさを表現しながら、
「確かに、此のぐらいの、緑の綺麗な玉のような物だけど、分かるの、エミちゃん、」
エミちゃんは、笑いながら、
「実は、当てずっぽう、緑玉種は、お菓子や特別な料理に使うから、でも、緑玉種でも、確か、こんなに、良い香りや食感、出すこと出来ないと思うんだけど?」
・・・
たぶん、其は、星の力のせいだ、
4月21日の火曜日に第三回放課後自主講座が開催された、今回は、『星具』を使って、『星の遺跡』を攻略する事にした。
訓練は、前回よりも、遥かに順調で、『星に愛されし民』の皆は、『星具』を使いこなす事30分、
疲れから、ミスが目立って来たので、俺は、此処で、訓練を中止する事にした、
全員が、クールダウンのストレッチをしながら、幾つかのアドバイスを、ダンとオルにして、30分、
その後は、水分の補給に、皆に、冷えた御茶を配り、俺とハルは、『星の力』を補給しなくちゃ、ならないから、
ジェミに、軽食として、揚げパンを出して貰う事にした。
ジェミの、『星の秘蔵庫』から、出された、揚げパンは、俺の予想通り、本当に、揚げたてで、全員が驚いていた、
そして、その揚げパンを口にした、メルティスト先生の御言葉が、最初の会話、と言う事である。
揚げパンは、20個、作った、一人、2個、俺とハルが3個、
ハルは、『星隠し』を使用していた事が、彼の負担を増大させたのか、俺が思っているより、疲労していた、
「大丈夫か、ハル、」
俺は、ハルに声を掛けた、
「えっ、大丈夫です、師匠、ちょっと、疲れて、あはは、だらしないですよね、皆みたいに、そんなには、動いて無いのに、」
ハルは、俺に済まなそうに答える、そんな、ハルに俺は、
「いや、ハルは皆より、働いている、『星隠し』が、体に、かなりの負担になる事は、俺自身が経験済みだ、」
ハルは、驚いて、俺に何かを言おうとしたけど、俺は、態とハルの話しを遮りながら、
「そうだ、だから、『星導術』の強化には、『星隠し』が、一番、合ってるし、今の段階で、『星隠し』が、使えるのは、『星に愛されし民』の中では、『星に愛されし子供』である、ハルだけだ、」
ハルは、ちょっと、考えて、
「確かに、そうですね、師匠、」
俺は、笑顔をハルに向けながら、
「だから、ハル、兎に角、『星隠し』をマスターするんだ、この遺跡で、何かあった時、ハルが皆の事を守る事が出来る、」
ハルは、俺を真っ直ぐ、見詰めながら、
「僕が、皆の事を、」
俺は、三つ目の揚げパンを食べながら、
「そうだ、ハル、皆をお前が守るんだ!」
と言って、話しを終わらせようとしたら、エミちゃんが、
「はい、はい、ハル、スグルさんの、旨い話しは、後にして、残りの揚げパン、早く食べないと、ジェミに取られちゃうわよ、」
ジェミは、慌てて、
「取らないよ、エミ、僕と、スグルさんは、此処に来る前に試食してるし、」
其を聞いた、リアが、
「其って、ずるいですよね、ジェミ、私に、その時、プレゼントと言って、試食の揚げパンを、呉れるべきですよね!」
ジェミは、狼狽して、
「えっ、ええええええ!」
その、狼狽に、エミちゃんも、ハルも、笑っている、
・・・
ジェミは、洞察力、判断力云々と、なんだかいろいろと、優れているように、見えるんだが、事、リアちゃんに対しては、本当に思春期のガキ、そのもの、
どうも、俺の見込み違いか、やっぱ只の、普通の好奇心が強い、ガキ、って事か?
その時、アンリちゃんが、
自分の、手にした、揚げパンを、半分にして、
「あのぅ、御嬢様、・・・いりますか?」
リアちゃんは、笑顔で、
「良いのよ、アンリ、私は、ただ、『ジェイ』から、貰いたかっただけだから、」
ゲホ、ゲホ、ゲホ、ゲホ!
御茶を飲んでいた、ジェミが、盛大に蒸せた、ジェミは、今日で二度目だ、
どうも、ジェミは、リアちゃんに弱い、やっぱ、好きなんじゃねえの、
・・・
まぁ、どうでも良いか、
そう言えば、ダンとオルは、二人で一生懸命、今日の反省をしている、ダンは、剣の型を、オルに見せて、悪い所を、指摘して貰ってるし、本当に、彼は、熱心だ、
そして、食べ終えて、此方を見ている、メルティスト先生、
「ねぇ、そろそろ、戻らない、スグルさん、」
先生は、俺に、さんを付けて呼んだ、ちょっとは、機嫌が良いのか、生徒達の練習も、前回よりは、随分、良くなったし、
まぁ、機嫌が悪いと、また、あの、ばーか、ばーか、ばーかスグルって言って来るだろうけど、
俺は、
「そうですね、そろそろ、戻りましょう、」
そう、言って、立ち上がり、
他の、皆も、立ち上がった、
そして、俺は、『星の門』を開き、
『星に愛されし民』と、メルティスト先生、そして俺は、
俺の、宿舎の前の庭に、帰還した。
「スグルさん、やっぱり、私達も、光曜日も、練習をするべきだと、思います!」
光曜日か、スグルの世界の日曜日、
宿舎に戻って来て、次回の練習日は、明後日の23日の磁曜日だと言った時、ダンから、そう言う提案が、出て、
彼が言うには、他の大会出場メンバは、一昨日の光曜日も練習していたらしい、たぶん、自分達で決めて、自主的に練習をしたんだと、俺は思った、
俺は、メルティスト先生を見た、先生は首を振っていた、
・・・
まぁ、教師としては、許可しねえよなぁ、
休み返上じゃ、ブラックだし、
俺は、ハルを見た、誰よりも、疲れた顔をしている、
無理だな、今は、
「なぁ、ダン、焦る気持ちは、分かる、だが、休息も、必要だし、今は、この、間隔で、体を慣らしながら、この放課後自主講座を進めていかないか、」
ダンは、俺を見詰め、メルティスト先生を見て、皆を見た後、
「そうですね、済みません、メルティスト先生、スグルさん」
と、謝って、この話しを終わりにした。
第三回放課後自主講座が終わり、各自が俺の宿舎から解散して、宿舎組は、夕飯を食べに、ボーゲンが運営する学食に向かった。
俺は、帰ろうとしたハルとエミに、
「ハル、ちょっと待て、」
と声を掛けた後、宿舎から、『星に祝福されし食物』のベーコンサンドイッチを二つ持って来て、其を、渡しながら、
「ハル、エミちゃん、此を、食べてから、帰れ、其とな、もし、疲れが酷いようなら、星隠しは止めるんだ、いいな、ハル、」
ハルは、嬉しそうに、
「はい、師匠!」
師匠、か、
ハルは、星が囁く、使命の導きにより、自覚の無いまま、努力をしている、
其が、星に愛されし子供だ、
星から、使命を託された子供、
だが、彼の才能に限界が来たら、
其でも、星は、彼に、
彼に、
使命を託すのか、
そんな彼に、俺は、何をしてやれるんだ、
ふぅ、
「なぁ、ハル、俺は、この学校を毎日、掃除しているから、一部屋くらいなら、寄宿舎が空いている事は、分かってる、」
「えっ、」
「なぁ、ハル、この学校に寄宿しないか、飯の面倒は、俺が見る、ハル、今のお前に、必要なのは、体を作る事だ、その為には、星に祝福されし穀物をもっと摂取しなくちゃ駄目だ、」
ハルは、驚いて、俺の顔を見た、
「師匠・・・」
その日も、天には、星が美しく輝いている、
何時もの星と、変わらない明るさで、美しく、輝いている。
その日、帰る、道で、エミが、僕に言った、
「ねぇ、ハル、やっぱり、スグルさんの処へ、行ったほうが、良いよ、」
「エミ、」
「私も、母さんに、相談してみる、今から、寄宿舎に入る事、だから、私の事、気にしなくても、良いから、」
・・・
エミは、僕の事を心配してくれている、
その夜、僕は、一人、父さんの工房の屋上で、夜空を見上げていた、
今日の皆は、凄かった、皆は、自分の『星より渡される道具』を使いこなしていた、
其に、引き換え、僕は、僕とオルを包むように、『星隠し』を張っていただけだ、
其だけで、皆よりも疲れてしまった、
スグルさんは、『星隠し』を使えるのは、僕だけだと励ましてくれた、でも、皆も、やろうと思えば、出来るんじゃないか、
僕は、そんな気がする、
僕達は、元々、魔導格闘技大会の団体戦の訓練から始まった、
そして、偶然にも、皆にも、『星より渡される道具』が、星から渡され、スグルさんは、皆が、『星に愛されし民』だからだと言った、
『星に愛されし民』と、僕の、『星に愛されし子供』、
一体、この違いは、何なんだろう、
スグルさんは、『星に愛されし子供』は、星より、使命を託された子供だと、言っていた、
そして、『星に愛されし民』は、星より、運命を託された人々だと教えてくれた、
僕は、ずうーっと、考えていた、星は、僕に、何かしろと、『星の力』を与えた、その何かを、星は教えてくれない、聞いても答えてくれない、
今は、言えない、事情が有るのか?
其なのに、
皆には、星から運命を託された『星に愛されし民』だから、星は、その運命が決まる道筋を教えてくれているし、其に、『星より渡される道具』も、その、運命の為に、星は、皆に渡した、
目的も、道具も、方法も、僕よりはっきりしている、
スグルさんは、皆の運命が、『遺跡』の先に有ると、星がはっきり言っていると、僕に教えてくれた。
其に引き換え、僕は、使命が有ると言われただけだ、
スグルさんも、その使命が何か知らないと言っている。
使命とは、何なんだ、
僕は、何をすれば、良いんだ!
もしかして、皆と一緒に、『遺跡』の先に行けば、僕の使命が分かるのか?
その、使命が、残酷な、使命だったら、
僕は、
僕は、
どうすれば、良いんだ!
ズバッ、
僕は、僕の『星より渡される道具』、『星のナイフ』を手に持ち、
その、使命は、この、ナイフで、何かをする事か?
この、名前も、無い小さなナイフで!
その時、僕は、はっきりと星の声を聞いた、
『アルカナスターソゥ』
えっ、
星が、星が、僕に答えてくれた、
この、星のナイフの名前が、
『アルカナスターソゥ』
で有る事を、
意味は、分からない、
でも、はっきりと、
教えてくれた、
この、『星のナイフ』の名前を!!