魔の恵みの果木
4月21日の火曜日 俺が此の世界に来て30日、つまり、1ヶ月が過ぎた。
俺は、昨日、農牧高等学校に行き、油の花の苗と魔の恵みの果木の苗木を5万RGで買って来た。
いろいろ、買っているので、ルナさんから貰った、500万RGも、450万を切ってしまった、
・・・
ちょっと、節約しないとな、
前日、買って来た苗と苗木を俺は、星々が耕した、大地の恵みと星の加護に溢れた俺の菜園に植えて、
俺は、『星の力』を使い、苗と苗木の時間を進めた、
前回は、一日に一年しか、進めることしか出来なかったが、今の俺は、だいぶ、あの時より多くの『星の力』を使いこなせる、だから一日に3年は行ける気がする、
そのせいか、夜中には、苗と苗木の時間は、一年となり、油の花の苗は、成長して、緑の直径、20センチ位の実を沢山実らせた。
此処で、油の花の成長を促進する事を止めて、魔の恵みの果木だけ、成長の時間を進めた、
真夜中に、魔の恵みの果木の苗木は、2年目の若木となり、始めての黄色と青い実を実のらせた、
黄色の10センチ位の実は、食感と味はトマトのような感じで、此処で、俺は、魔の恵みの果木の苗木の成長を一旦、止めた、
その夜の、俺の庭は、油の花の緑の実と魔の恵みの果木の黄色と青い実が、光輝き、俺は、その美しい光景に感動して、庭を何時までも見続けていた。
で、次の日の俺は寝不足、
欠伸しながら、校舎の掃除、図書館の掃除では、夜遊びが過ぎると、ジェラ先生に怒られた、
夜遊びねぇ、
確かに、あの、魔の恵みの果木が、美しく育って、2種類の美しい実を付けた時は、感動したし、育って行くのを見たくて、真夜中迄、『星の力』を使い続けた、
まぁ、夜遊びには間違いない。
楽しかったし、
俺は3時に、一旦、仕事を終え、コッペパンのようなパンの木実を摘み取り、昨日、実った緑色の宝石のように輝く、『星に祝福されし穀物』の油の実を使って、昔、懐かしい、揚げパンを作る事にした。
出来立てが食いたいから、準備だけして、ジェミが来たら、揚げて、砂糖をまぶして、直ぐに、星の秘蔵庫に仕舞って貰う、
そう、考えて準備だけしていたら、
庭から、ハルとエミちゃんの驚く声が、
「魔の恵みの果木!!」
おっ、二人共、知ってんだ。
俺は、嬉しくなって、直ぐに、庭に出て、二人に近寄って、
「やぁ、ハル、エミちゃん、どうだい、この魔の恵みの果木、綺麗だろ、」
ハルは嬉しそうに、
「はい、師匠!此も、星の力の元になるんですか?」
俺は、頷きながら、
「ああ、ハル、この魔の恵みの果木も、『星に祝福されし穀物』だ、ハル、こいつを食えば、力がもりもりと付くぞ!」
ハルは、期待を込めて、
「わぁ!!!」
エミちゃんは、ちょっと疑った、顔で、
「スグル、この魔の恵みの果木は、実が2種類だから、2年物よね、で、此れ、幾らで買って来たの、」
えっ?
幾らって、
エミちゃんが言うには、魔の恵みの果木は、2年事に2種類の実が付くそうで、12種類の実が生る、魔の恵みの果木は成木に生る迄、6年掛かるんだそうだ、
また、魔の恵みの果木は、育てるのが、温度管理、土地の手入れ、病気対策等、大変だから、この若木だけでも、30万RGはすると教えてくれた。
30万RG!!
「スグル、ちょっと、お金、使いすぎなんじゃないの、あの怪しいお金使ってんでしょ、」
ハルは、エミちゃんに、
「エミ、師匠は偉大な魔導機の発明家なんだよ、だから、お金は沢山、持ってるって、」
エミちゃんは、呆れながら、
「ハル、そんな、嘘臭い、設定、まだ、信じてるの、本当はスグルって、只の浮浪者、其で可哀想に思った、エルさんが、スグルをこの学校の学校作業員に雇った、ってのが真実よ、絶対」
浮浪者、
・・・まぁ、当たってるけど、
その時、リアちゃん、アンリちゃん、ジェミが、来て、
「まぁ、素敵な、魔の恵みの果木ですね、スグル様、」
と、リアちゃんが、リアちゃんは良い処の御嬢様だから、俺に様と敬語を使う、どっかの跳ねっ返り娘とは、全然、違うのだ!
トン!
エミちゃんが、俺を肘打ちして、
「スグル、なんか、その目、変態!」
・・・
いかん、一昨日から、俺は、変態扱いされている、何故だ!
「スグルさん、随分、立派な魔の恵みの果木ですね、何種類の果木、なんですか?」
と、リアと一緒に来た、ジェミが、気を使って、話題を魔の恵みの果木に戻した。
ナイス、ジェミ、
「12種類、凄いだろ、ジェミ。」
「12種類ですか、何処で買ったんです、」
ジェミは、この魔の恵みの果木が気になるようだ、
「うん、農牧高等学校かな、」
ジェミは、不思議そうに、
「農牧高等学校ですか、彼処、魔の恵みの果木の若木、売って呉れました?」
?
確かに、苗木は売ってたけど、他は売ってなかった、
俺は、誤魔化す事にした、
「ほら、なんか、前に此処で働いていた、マルガさんて方と知り合って、彼処の先生を紹介して貰って、この若木を分けて貰ったんだ。」
ジェミは、納得したようで、
「そうなんですか、そうですよね、普通は魔の恵みの果木は、観賞用としても人気が高いから、トラブルが起きやすいんで、専門店以外の販売は、してないんですよ、」
そうなんだ、
「そんなに、人気が有るのか、この木は、」
ジェミは、頷きながら、
「だって綺麗でしょ、でも実際、市場で価値が有るのは、16種類以上ですけどね、」
市場ねぇ、確かに、18種類のは、苗木でも売らないって言ってた、そう言う事か、
此処で、俺は、リアちゃんに鎌を掛けてみた、
「ねぇ、リアちゃんの家にも、有るんでしょ、この魔の恵みの果木、数は幾つ、」
リアは、困ったように、
「うちは、・・・」
アンリが、余計な助け舟を出して、
「御嬢様の御実家には、30種類の魔の恵みの果木が有ります、」
と、勢い良く、言ったら、ジェミ以外の、ハルとエミは同時に、
「えっ!30種類!!」
俺は、意味が分からないので、キョトン、仕方無いので、エミちゃんにコッソリ、
「その価値は?」
エミちゃんも、小さな声で、
「一千万以上!」
・・・
やっぱり、
リアちゃんは、金持のご令嬢!!
気の毒に、ジェミ、
身分違いの恋、ってか、
「・・・どうしたんです、スグルさん、その目付き?」
ジェミが、俺が、哀れんだ目をしたので、聞いてきた、
いかん、ジェミに同情してしまった。
「なぁ、ジェミ、揚げパンってやつを作るから、星の秘蔵庫に、仕舞ってくれないか、」
ジェミは、揚げパン?ってな顔して、
「いいですよ、スグルさん、」
「じゃ、ちょっと、宿舎に来てくれ、直ぐに揚げるから、手伝ってくれると助かる、」
エミちゃんが、興味を持って、
「あたしも、手伝おぅか、スグル」
俺は、手を振りながら、
「いいって、此処で、皆を待っててくれ、」
そう言いながら、俺とジェミは宿舎に入った。
「うーん、良い香りだ、」
キッチンは、『星に祝福されし穀物』の高貴な油から出る、優しく、其でいて、甘く甘美な香りが充満していた、
油で、一分位、さっと揚げた、『星に祝福されし穀物』のパンの木実を油を切った後、砂糖をまぶして、まだ、揚げたての状態で、ジェミの星の秘蔵庫の中に有る、皿に仕舞っていった。
こうやれば、食べる時、皿ごと取り出せば、揚げたてが食べれると思い、ジェミに試してくれと、頼んだ、
ジェミは、ちょっと試行錯誤した後、出来るようになったので、俺は、どんどん、揚げパンを作っていった、
まぁ、20個、ありゃ、良いかな、
簡単だし、
最後の一個は、俺とジェミで、試食って事で、半分ずつ分けて食べた、
食べながら、俺は、ジェミに、
「好きなんだろ、リアちゃんの事、」
ブフゥウ!!ゲホゲホ!!!
ジェミが、盛大に噎せた。
「なんですか!スグルさん!!いきなり!!!」
俺は、ジェミに、同情しながら、
「ほら、好きな娘の事、って気になるだろ、この間の事とか、」
ジェミは、真っ赤な顔して、
「そんなんじゃ、ないって、スグルさん、だいたい、僕は、年上派ですよ、」
「年上って、ジェラさん、」
ジェミ、ちょっと怒って、
「スグルさん、絶対、ふざけてますよね!」
「ちょっと、じゃ、エルさん、」
ジェミは、まぁ、しょうがないなぁ、ってな感じで、
「もう、少し、年下の、」
俺は、驚いた、
「えっ!じゃ、ローラなの!」
ジェミは、やれやれ、ってな表情で、
「スグルさんは、知らないと思いますけど、ローラさんは、結構、この学校では人気が、有るんです、」
えええええ!!そうなの!
「それに、今、ローラさんは、3年のガルホース先輩と付き合ってますから、要らぬお節介しないで下さいね、スグルさん」
ええええええええええ!!そうなの!!!
俺は、盛大に驚いた。
「なぁ、ジェミ、其って、単なる、憧れじゃねぇの、やっぱ、本命は、リアちゃんなんだろ、」
ジェミは、ため息を付きながら、
「スグルさん、彼女は留学生で、ポワジューレの大金持ちですよ!僕達と、立場が違うんです!!」
やっぱ、ジェミは、リアちゃんが何者なのか、知ってるって訳だ、
まぁ、此れ以上は、本当にお節介だ、俺は、話題を変える事にした、
「処で、この揚げパンの感想は、」
ちょっと、考えていたジェミが、
「えっ、ええ、良いと思いますよ、油も、しつこく無いし、凄く爽やかな味と香りだと思います、」
ジェミも、話題が変わって、助かったと思ったのか、饒舌になった。
俺はジェミに、お茶の樽とコップを収納して貰った後、庭に戻ると、ダン、オル、メルティスト先生も来ていて、
俺の魔の恵みの果木に話しを咲かせていた。
まぁ、農牧高等学校と違い、この学校には、こんな高価な木々は無いから、皆、自分の思いでを語りながら、和む事が出来て、
俺は、この魔の恵みの果木を勧めてくれた、農牧高等学校のガンラード・オーレンラーゲ先生に感謝した。
先生は、隣の高校の先生だ、たぶん、マルガさん当たりから、うちの高校の事情を知っていたのかも知れない、
今の、うちには、こう言う、皆の気持ちを和ませる、草木が必要だ、
だから、彼は、この魔の恵みの果木を、俺に勧た、
俺は、そう思う、
そう考えると、
あの、5万RGは安い、
本当に、良い買い物だった、
そう思いながら、俺は、彼等の話しの中に加わった。