油と蕃茄
4月20日の闇曜日、スグルの世界での月曜日、そして、俺がこの世界に来て29日、
俺の日課は、まず、学校の掃除から始まる、勿論、庭の掃除も有る、後、花壇の手入れ、魔導機で花壇に水をあげたり、やることは、沢山有る。
今日は、昼もそこそこにして、15時頃、1時間の休憩にする事にした、
学校作業員は学校事務員と違って、時間で働いている分けでは無く、
決められた仕事を、一日に必ずやれば良い、だから、生徒の授業が終わった後、掃除を始める 学校作業員もいる。
勿論、俺もそうしている、ただ、この学校は、生徒が教室間を移動するので、空いてる教室も有るから、昼、廊下、トイレと一緒にある程度の教室は掃除出来る、
だから、他の学校の学校作業員と違って、真夜中迄、掃除をする事は無い、
其に、俺には、好奇心旺盛な、星達が助けてくれる、其で、たぶん、他の学校作業員より、仕事は早いと思う、
つまり、スグルの世界で言う、自由裁量制ってやつだ、だから、給料も安い、その給料だが、俺がこの学校で働き始めたのが、3月24日、
今日が、4月の20日、後、4日で、初給料の7万RGが貰える。
その前に、俺は、この国の偉い人のお嬢さんである、ルナさんから500万RG、貰ったから、お金には困って無い、
ただし、ルナさんが、返せと言ったら、俺は、悪い事以外のいろんな事をしてでも、その金を返さなくちゃならない、
・・・
まぁ、言われた時は、言われた時だ、今は、有り難く、使わさせて貰おう、
俺は、そう言う男だ。
明日の放課後自主講座は、4時から6時迄だ、だから、弁当は要らない、けど、俺とハルは、『星の力』を補給する為に、『星に祝福されし食物』を取らなくちゃならない、
だから、何か、軽食は作るつもりだ。
其処で、油の花の苗を購入して、『星に祝福されし穀物』の油を作ろうと考え、
その油と『星に祝福されし穀物』のパンの木実を使って、砂糖をたっぷりまぶした揚げパンを作ろうと思った。
今までの経験から、想像できるのは、星の高貴な味と香りが、油に加われば、スグルの世界の最高級エキストラバージンオリーブオイルに匹敵する物が出来るんじゃねぇか、
更に、蕃茄に当たる、植物を『星に祝福されし穀物』として育てれば、『星に祝福されし食物』のケチャップが作れる、
ケチャップが出来れば、後は、いろんなソースを作る事が出来るし、
前回、不評だった、カツレツサンドも、絶対、旨くなる事、間違い無しだと思った。
ソースは、揚げ物には必須だ、
折角、農牧高等学校に行くんだ、油と蕃茄が手に入れば、当分の食生活は、何とかなる、
なんか、最近の俺は、食う事ばっか考えている、やっぱり、この世界に来て、味わった、あの飢餓感が、俺に影響しているんだと思う、
現実、今も、俺は膨大な『星の力』を消費している、だから、
俺自身、この世界に来た、当初より、膨大な、『星の力』を使えるようになっていると思う。
今なら、片手で、あのルナちゃんが乗ってた軍艦、動かせんじゃねぇのかなぁ、
試す気はねぇけど、
ハルもそうだ、ハルも、俺の指示で、常時、『星隠し』を発動している、
だから、ハルも、『星の力』を使う事は、だいぶ、上手くはなった、
だが、
はっきり言って、彼の成長は、遅い、『星に愛されし子供』は、星に選ばれた民だ、
特別な才能が絶対、有る、
その才能が、かっての『星の六大国』を支えた、
だが、彼には、その才能が、
見えない、
下手すると、他の五人の方が、早く、『星の力』を使いこなすような気がする、
『星より渡される道具』も小さいナイフしか作れ無かった、
かって、『星に愛されし子供』が作る、『星より渡される道具』は、巨大な斧や、堅牢な盾、星の杖、にしても、かなり価値が有る物だった、
だが、ハルが作った物は、本当に、只のナイフだ、
特別な価値は無い、
俺には、分かる、
此は、ハルに才能が無い、と片付く問題なのか?
俺は、何か、間違っているのだろうか、
・・・
ふぅ、
俺が、焦ったら、ハルが動揺する、そうしたら、上手く行く事も、悪くなる、
ダメだ、兎に角、今は、俺が出来る事、皆を星の力の訓練所の先に連れて行く事と、
ハルに、『星に祝福されし穀物』で作られた『星に祝福されし食物』をたっぷり食わせる、
そして、少しでも、ハルの体の中の『星の力』を増やす、
そう、俺は考えながら、農牧高等学校への、『星の門』を開いた。
バルセリア農牧高等学校は巨大だ、魔導高等学校の比じゃない、
正面に巨大な、コの字の、地中海風の建築物以外に、同じ規模の建物が5つは有るんだそうだ、
そして、百を越える共同宿舎に、広大な農地、広大な牧場、
まさに、バルセリアの学園都市だ。
此は、エルさんから聞いたんだが、此の国の若者の中で、魔導術が使えるようになって、俺が働いている魔導高等学校に来るのは、約1割、
此の子達は、魔導術が使えるだけで、特に優秀かどうかは関係無いらしい、
そして、もう1つの、魔導工学の学生達は、若者の1割しか受からないテストと実技の試験を合格して来た若者だから、彼等は、超エリート、
で、此の国の残りの8割の若者は、目の前の、農牧高等学校のような学校に行く、
8割の若者が行く学校だから、農牧と言っても、農業と牧畜だけを教える訳けじゃなく、ありとあらゆる事を教える学科が沢山有るから、此の学校は巨大なんだとか、
例えば、音楽や芸術、料理、数字、等を教える学科も有り、公都の大学に行く才能の有る生徒も、中にはいると言ってた。
こんな巨大な学校だから、学校作業員も10人以上はいるらしい、
10人以上だから、人件費もバカにならない、更に、エルさんが言うには、此の学校の先生達も、学校事務員も凄い高給で、
その為、エルさんの上司や同僚は皆、此の学校に転職したんだとか、
そんな高給取りが沢山いても、経営的に安定している理由が、生徒達が、売れる農産物を作ったり、此の学校で飼育している野牛や上級野牛を市場に出荷しているからだ、
勿論、此の学校で直接販売もしている、
前回は、俺と、記者のローシィとで、パンの木の苗木を買いに此の学校に来た、
今日は、俺、一人だ。
俺は、学校を見ながら、此の学校の農園の入り口から、中に入った、
農園に入ると、中央に巨大な木造の建物が有り、中で、受付して、苗木や、野菜、果実等が買える仕組みになっている、
前回は、4月2日の磁曜日だった、あの時は、実習で、沢山の高校生が売り子をしていた。
今日は、闇曜日だ、スグルの世界での月曜日、お客が少ないせいか、高校生も少なく、緑の制服を着た学校事務員らしい人達が売り子をしている、
その一人の年輩の女性が、俺に声を掛けてきた、
「失礼ですが、貴方、魔導高等学校の学校作業員の方ですよね、」
えっ、やっぱ、服装で分かるのか?
なんせ、私服に着替えないで、制服のまんま、此処に来ちまったし、
俺は、彼女に、
「やっぱ、分かります?」
彼女は、微笑みながら、
「私、前は、魔導高等学校で、学校事務員をしていましたから、上下に分かれている、学校作業員の制服は、魔導高等学校の特徴です、此処は、上下が有りませんし、」
つまり、此処はスグルの世界で言う、ツナギで、俺のは、ジャケットとズボンて訳だ。
「じゃ、もしかして、貴女は、エルさんが言った、此処に転職した先輩さんですか?」
彼女は、笑いながら、
「先輩さんって、まぁ、エルデシィアは、私より、遥かに優秀だし、同僚って関係かしら、」
確かに、エルさんは、優秀だ、だから、学長も彼女を職長にしたし、
彼女は、俺に手を差し出しながら、
「私は、マルガーレ・スターデェト、マルガとお呼び下さい、」
俺は、彼女の手を握りながら、
「俺は、スグル・オオエです、皆は俺の事、スグルって呼びます、」
彼女は、手を離して、
「スグルさんは、今日は、何しに、此の、農牧高等学校に、」
俺は、頭を掻きながら、
「うーん、その、今、俺、魔導高等学校で、畑とかやってて、其で、油とトマトの苗が、此処にないかなぁと、思って、」
彼女は、少し考えて、
「えーと、油とトマト?ですか、ちょっと専門的のようですね、待って下さい、先生、呼んで来ます、」
えっ、先生?
彼女は、走って、裏方に行ってしまった、
彼女が連れて来た先生は、白髪の年輩の先生で、名前は、ガンラード・オーレンラーゲと言った。
此の、農園の責任者らしい、
先生の案内で、油の苗を見せて貰った、油の花の種類も、此の学校では、40種類も有り、その用途で大きさも、味、も違うんだそうだ、
俺が、市場で買ったのは、もっとも普通の食用油で、沢山取れるから安く市場に出ているんだとか、
勿論、貴重な高給油が取れる、油の花も有るんだそうだが、栽培が難しく、勧めてはくれなかった、
うーん、まぁ、俺としては、拘った料理に使うから、出来るなら、菜種油じゃなく、オリーブオイルのような油が欲しいって説明したら、
なんか、半分、分かってくれたのか、緑色の、夏ミカンぐらいの実が付く、油の花を勧めてくれた、
俺は、此の苗を購入し、
そして、蕃茄だが、
先生が見せてくれたのは、
一本の木に12種類の実が成っている木!
・・・
まじに、漫画だ、
実の色も赤、緑、白、青、形も丸、楕円、細長い形からいろいろ、
此の木の名前は、
『魔の恵みの果木』
此の木の凄いのは、更に、木の幹から12種類の樹液が取れる、
12種類の実に12種類の樹液!!
先生が言うには、此の学校では、実は18種類の『魔の恵みの果木』を育てていて、
此の苗は、販売してないそうだ、
先生が言うには、勿論、一本の木に1種類の果実が沢山なる種類の木も此の世界には有る、市場に出ている果実は、殆どがそう言う種類の木になっている果実で、
家庭菜園等の個人が食する為の木は、此の一木多種果実の木が好まれていると、俺に教えてくれた。
味や色は別として、確かに、水分が多い、蕃茄のような、果実も有ったし、リンゴ、ミカン、マンゴーの食感の果実も有った。
結局、俺は、此の木が気に入ったので、此の苗を買う事にした。
油の花の苗と魔の恵みの果木の苗木は、結構、高く、
俺は、二つで5万RG払った。
そして、俺は、二つの苗を手に持ち、農牧高等学校の外で、星隠しを強くし、回りの人の俺に対する意識を消した後、
俺は、宿舎に通じる、星の門を開いた。
その夜、俺の宿舎の庭には、星に祝福されし穀物に育った、油の花と魔の恵みの果木が、その美しい実を付けて、
星の光を反射して、
美しく、光、輝いていた。