荒れ狂う巨星
4月19日の光曜日、スグルの世界での日曜日、俺がこの世界に来て28日
俺とケティは、休日なので、俺が初めて来た、このバルセリア街の西にある湖に、俺がこの世界に来た理由を見つける為に、出掛けた。
しかし、其処は、既に、魔導省の直轄領地になっていて、俺は魔導省の軍人である、リナとロンゲルに、不法侵入者として取り調べを受ける事になった。
彼等は、その時、俺の側にいる、ケティに気付き、ケティの正体を知っていた、
其は、魔導省が俺の事を監視している事を意味し、彼等は、その事を俺に告げた。
しかし、リナは俺からケティを取り上げる訳では無く、逆に俺に対して、ケティの魔導獣飼育許可書を発行してくれた。
彼等は、俺の事を魔導料理人と思っているらしく、俺が作ったベーコンのサンドイッチに興味を持ち、
俺は、彼等に、俺が作った、ベーコンのサンドイッチを食べて貰う事にした、
そして、『星に愛されし子供』であるリナが、俺の作った、『星に祝福されし食物』である、サンドイッチを食べた時、
俺の、『星の瞳』には、『星の力』で、光り輝く、リナが映っていた。
ロンゲルが、不思議そうに、
「どうしました、副将、気分でも悪いんですか?」
リナは、首を振りながら、
「・・・逆だ、今までに、無いくらい、気分が良い、・・・此は、どう言う事だ、スグル、」
リナが、俺に向かって、問い掛ける、
「そのベーコンも、パンの木実も、俺の国の、秘伝の製法で作れている、だから、滋養強壮に優れているんだ。」
ロンゲルが驚いて、
「そ、そうなんですか、流石、スグルさんだ、何か、俺も、力がみなぎって来るような気がして来た、」
其は、気のせいだ、ロンゲル、
リナは、笑いながら、
「さっすが、魔導料理人だな、感謝するぜ、じゃ、俺達は、・・・」
ん?
言葉が止まった?
えっ!
ズズズズズズズズズズ!!
リナの『星の力』が!!
天界に!
天界の、巨大な星に!!
あれは、!!!
『コーリン!オメェ、ヨゥ』
えっ!
星が、俺に語り掛けてきた!
『ドウシテ、オメェハヨゥ!』
この、暴言は?
聞き覚えが、
星よ、お前は、何を俺に語る!
『クズナンダヨ!テメェハ!!』
クズ?
俺がか?
『ワカッテンノカ!!』
『テメェガシタコトヲ!!』
星よ!
一体、お前は、何が言いたいんだ!!
訳が分からん!!
『分カランダト!!』
『星ノピアス!!!』
『ナゼ!星ノピアスヲ!!!』
『星ノピアスヲ!!!』
『アノ人ニ!!!』
『アノ人ニ、渡シタッテ!!!』
『言ッテンダロウガ!!!』
えっ!!!
『星のピアス』!!!
あの人、ルナの事か?
『チガウ!!!!!!!』
星は絶叫した、
星が、星が、
ウッ!!!
その時、俺は初めて、自分が星に飲まれている事を知った、
体を動かす事も、『星の力』を使う事も出来ず、
リナが、巨大なハルバートを持ち上げ、
『テメェハ、イツマデ、人ノ気持チヲモテ遊ベバ、気ガ済ムンダ!!!』
リナが、星が絶叫しながら、俺に向けて、ハルバートを降り下ろした!!!
ロンゲルが愕然とし、
体を動かす事の出来ない俺に、
ハルバートが、ぶちこまれる、
その瞬間、
ダァーンンンンンンン!!!
『力』で強化されたケティが、俺にぶち当たり、俺は吹き飛ばされ、その横をリナのハルバートが、数センチの距離で通過し、
ドガァァアアアアアアンンン!!!
大地は抉れ、粉塵が巻き起こり、
愕然とするリナが、
「副将!!!!!!」
リナの暴挙を止めようと、ロンゲルが、
グルルルルルルルル!!!
ケティが、リナに構え、全身に魔導の炎を巻き付け、
俺は、
「大丈夫だ、ケティ、」
ケティを安心させた、
ハルバートが撃ち込まれた、大地は、そのハルバートを中心に半径5メータは陥没していて、
その破壊の凄まじさを、物語っていた。
ようやく、リナは、正気を取り戻し、
「こっ、此を、・・・俺が、」
リナは、直ぐに、俺にハルバートを撃ち込もとした事に気付き、
「そうだ!スグル!!大丈夫か!!!」
俺の名前を叫んだ、俺は、舞い上がる粉塵を払いながら、リナに近付き、
「あぁ、リナ副将、俺は大丈夫だ、」
リナは、俺を見て、安堵のため息を付き、
「良かった、無事だったか、だが、スグル、俺に一体、何が起きたんだ?」
リナは、俺に原因を聞いてきた、俺は、リナの守護星、『荒れ狂う巨星』が、俺を殺しに掛かったとは、言えず、
「まぁ、俺の国で良く有る、食べ物アレルギーで、普通はくしゃみで済むんだが、リナ副将の場合は、過って、ハルバートを、振り回した、って事かな、なぁ、ロンゲル、」
急に振られた、ロンゲルはビックリして、
「えっ!あれが、くしゃみなんですか、そう言えば、副将、何かでっかい声で言ってたなぁ、」
リナもビックリして、
「くしゃみって、俺はくしゃみだけで、地面に穴を開けたのか?」
俺は、笑いながら、
「まぁ、普段は、そのハルバートは持たないほうが、良いかもね、危険過ぎる。」
リナは、ハルバートを魔導二輪車に仕舞い、
「普段は、使わない、たまたま、演習中だったんだ。」
演習?
ロンゲルが気を効かして、
「副将、其、以上は、民間人には、」
リナは、ニヤリと笑い、
「民間人ねぇ、まぁ、そう言う事だから、スグル、早く此処から立ち去れ、なんなら、街道迄、送って行くぞ、」
俺も、笑いながら、
「嫌、遠慮しとく、君達が、見えなくなったら、俺も家に帰るとするよ、」
リナは、魔導二輪車に乗り、
「そう言う事だ、行くぞロンゲル中将!!」
「えっ、はい!!」
ロンゲルも、慌てて、魔導二輪車に乗り、直ぐにリナの後を追い掛けた。
俺は、彼等が、俺の視界から消えるのを確認した後、
「さぁ、帰ろうか、ケティ」
ケティに、声を掛けながら、『星の門』を開け、
俺の宿舎に、戻った。
「副将、本当に大丈夫ですか?」
本部に戻った俺達は、報告書を作成する為に、デスクに向かった、その時、
ロンゲルが、俺の事を心配して声を掛けてきて、俺は、
「あぁ、大丈夫だ、ロンゲル」
ロンゲルは、疑わしそうに、
「あれ、本当にくしゃみだったんですか?」
俺は、首を振りながら、
「まぁ、スグルが言うんだから、そうなんだろ、」
ロンゲルは、諦めて、一言、
「・・・そう、なんすね。」
・・・
俺も違う事は、分かっている、だが、この事は、あまり、大事にしたくない、
俺は、ロンゲルと別れて、自分の執務室に戻った、
一人になりたかった、
部屋の窓から、天の青空を見る、
天には、昼だと言うのに、俺の瞳には、一際、巨大な巨星が見える、
俺の名前の巨星、
・・・
あれは、巨星からの声だった、
意味は、分からない、
だが、俺の中に、あの切ない、悲しい気持ちが、洪水のように流れ込んできた、
・・・
大将に対する、あの気持ち、
あれは、
俺は、思わず、胸を押さえた、
辛い、この気持ちは、辛い、
其に対して、あのスグルに対する、どうしようも無い、怒り、
あの、怒りは、
俺は知っている、
あれは、
あれは、
嫉妬だ、
あれは、
「クルルルルルルル、」
宿舎に戻ると、放心している俺を心配して、ケティが、俺の足に三つの頭を擦りつけながら、俺に大丈夫?と聞いてきた、
俺は、ケティを安心させる為、彼女の頭を撫でながら、
「あぁ、大丈夫だ、御免な、折角の休みだったのに、さぁ、向こうに行って、沢山、運動して来るんだ、ケティ」
俺は、常時開いている、暗黒大陸の門を指差しながら、ケティに行ってこいと、促した、
ケティは、首を傾げながら、俺を心配そうに見た後、
門に飛び込んだ、
俺は、ケティを見送った後、宿舎に入り、昼飯を食って無い事を思い出して、
倉庫から、ベーコンを持って来て、
ベーコンと野菜のサンドイッチを作って食べた、
食べながら、思ったんだが、もっと、料理の巾を広げるなら、やっぱり、食用油は、スッゴク重要だし、後、ソース、此を何とかしたい、
確かに、この世界でも油は、油の花の油の実から直接取れる、
この世界は、『魔神の世界』だ、『魔神』は幼き神だ、あまり、複雑な事は得意じゃない、直接、畑や木になっている物が多い、
だから、大地の恵みで有る、穀物、野菜、果実等も、スグルの世界のように、加工する事により、神の恩恵を見つける必要が無い、
スグルの世界から見て、この世界は、正しく、彼等が言う、漫画の世界だ、
二千年前、世界に『魔神』が出現し、世界が、その幼き神により、変わり始めた時、
この現象を、天皇星の大賢者が解説してくれた頃は、俺は、バカだったから、へぇー、面倒が減って、良いんじゃね、って彼に言った、
だが、俺は、スグルの世界を、
神のいない、多くの世界を知って、
世界に隠された、神の神秘を、神の奇跡を発見する事が、見付ける事が、どれ程、人を、種族を、文化を文明を発展させて行くかを、
それらが、凄く重要で有る事を、知った、
神は、あまり、神の子供達を助けてはいけない、
どんなに、願っても、簡単に助けてはいけない、
簡単に助けて貰えると知ると、
子供達は、努力しなくなる、
努力が無くなれば、進化も、発展も、文化の拡大も無くなり、
世界は滅ぶ、
俺は、そう言う人を、種族を、国を沢山、見てきた、
・・・
最近は、良く、天皇星の大賢者の言葉を思い出す、彼の偉大さは、あの当時の俺には、良く分からなかった、
だが、彼は、バカな俺に、優しかった、消して知識を鼻に掛けて、俺をバカにした態度を取らなかった、
七人の星の使途のリーダ的な存在、
七人の星の使途、
俺に、
土星の時魔士
天皇星の大賢者
金星の錬金士
水星の狩人
・・・
そして、
冥界の星巫女
俺達は、『星の六大国』から、 七人の星の使途と呼ばれた、
・・・
ちょっと待て!
一人、足りなくねぇか?
後、誰が、いたんだ?
・・・
思い出せねぇ、
何せ、二千年前の話しだし、
・・・
まぁ、そのうち、思い出すか、
其より、油とソースだ、
やっぱり、俺は、星の使徒だ、油もソースも『星に祝福されし穀物』じゃ無くちゃダメだ、
一から育てるか、
ソースは、まずは、トマトのような果実を探して、ケチャップを作るとか、
今日は、休日だから、明日、門で、農牧高等学校に行ってみっか、
そう、思いながら、俺は、
ベーコンと野菜のサンドイッチを口に入れた。
そして、その夜、
天界には、一際大きな星が輝いていた、
その星は、その美しい雲海の模様が、荒れ狂う嵐のように、動き、輝く事から、
『荒れ狂う巨星』
と呼ばれていた、
スグルの世界では、『木星』と呼ばれた、星だ、
俺は、
『荒れ狂う巨星』に問いた、
何故、お前は、あんな事を俺に語ったんだと、
しかし、何時まで待とうと、巨星からは、答えがなく、
俺は、巨星と会話する事を諦めた時、
・・・
あの言葉使い、あの口調、
何処かで、何処でだ?
俺は、もう一度、巨星を見上げた、
そして、俺は、忘れていた、
七人の星の使途の最後の一人、
『木星の暴嵐帝』!!!
アイツの事を思い出した!
・・・
そうだ、アイツと俺とは、殆ど接点が無かった、
だから、思い出せ無かった、
最後の、『魔神』を寝かせる旅も、アイツと水星の狩人は、破壊の魔玩、ドルガンギアス、魔炎の玩帝、ズリアドラージの奴等、千の魔玩将を相手にしてた、
奴とは、俺達が『魔神』の事で、『星の六大国』に召集された時、
その時、初めて会った、
その時、奴が言った言葉は、
『人の気持ちを、もて遊ぶんじゃねぇ!!!!!』
だった、
その意味は、
当時の俺にも、
今の俺にも、
分からなかった。