再会
4月19日の光曜日、俺がこの世界に来て28日、
そして、三度目の休日、
休日って言っても、俺は、学校に居るから、別に普段とは変わらない、生徒の数は、少なく、先生も休日なので、学校に来ない、
勿論、熱心な先生は休日にも学校に来て、研究や仕事をする先生もいる。
さて、今日は休日、何をするかだが、
まずは、この世界をもう少し見てみるかだ、
俺は、キティに声を掛けた。
「キティ、一緒に行くか?」
キティは、嬉しそうに、
『ハイ!』
よし、決まりだ、出掛けよう、
で、行く所だが、・・・そうだな、・・・俺が、最初にこの国に来た、あの湖に行ってみっか、
何か、俺が、この国に来た、意味、が見つかるかも、知んないし、
こうして、俺は、ベーコンと野菜のサンドイッチを五個作って、二個は、今、食べて、三個は弁当として、カバンに詰めて、
あと、ケティの昼飯用に肉の塊も一緒に詰めて、
俺は、あの湖に行く為の、『星の門』を開けた。
景色は、俺が、この世界に来た時と、何も変わって無かった、
だが、俺を取り巻く環境は、どんどん変わって行く、
ハルとエミちゃんと出会い、そして、ハルの師匠となった。
更に、エミちゃん、ジェミ、ダン、オル達も、俺は、導くようになった。
エルさんと出会い、学校作業員にもなった、
そして、ルナ、
かってのルナとは、違う、
分かっては、いる、
しかし、その姿は、
あまりにも、ルナ、君に似ている、
俺は、思い出す、君に、何もしてあげられなかった、事を、
この世界に、来て、満天の夜空に浮かぶ、明るく輝く月を見ると、思い出すのは、君の事だけだ、
・・・ルナ
俺が、湖面に写る景色を見て、感傷に浸っていると、ケティは、俺を慰めるように、俺の足に三つの頭を擦り付けてきた、
俺は、そんなケティが、可愛く感じて、彼女の頭を優しく撫でた、
俺達は、湖畔の周辺を歩きながら、俺が、この世界に来た、理由の証拠を探してみたが、何も見付からなかった、
俺の体は、土星の時魔士の星時保護で保護されていた、そして、二千年前、天皇星の大賢者が、俺をこの地に運んだ、
何故だ、
彼は、二千年後に俺が戻って来る事を知っていたのか?
彼は、俺が、この地で何をしなくちゃいけないのか、知っていたのか?
教えてたのは、未来を見る事の出来る、土星の時魔士か?
だが、未来は未確定で、可能性の有る、一つの未来を見る事しか出来ないと、土星の時魔士は言っていた、
天皇星の大賢者は、その可能性の一つに賭けたのか?
ならば、この地に、彼からの伝言が有るとしたら、
スグルの世界で言う、タイムカプセルってやつが有ったら。
俺より、遥かに、頭が良い、彼の事だ、絶体、何かしら、俺に伝える事を残してる、
俺は、そんな気がして、
この、湖畔を歩き回り、
結局、何も見つける事が出来ないまま、時刻は昼になって、俺とケティは、湖を見渡せる高台で飯にする事にした。
スグルの世界では、日頃、忙しく、味気ない日常を抜け出して、外に、特に大自然に出掛ける娯楽、キャンプやピクニックと呼ばれる物が有り、
その、キャンプやピクニックでは、行った先の、山や海、森、等の大自然の中で食べる食事も、
俗に言う、キャンプ飯やピクニックの弁当も、その自然の中で、皆と一緒に食べると、普段と変わらない料理が、普段と変わらない味なのに、
不思議と、旨く感じられる、
そう言う、現象も、キャンプやピクニックの楽しみの一つで、
そう言う、現象を、
今の俺は、楽しみたかったから、
俺は、この美しい湖畔に来た。
俺は、カバンから肉の塊を出し、ケティの前に置いた、
彼女は、嬉しそうに、肉に近寄り、
彼女の、三つの頭が下がって、肉の臭いを嗅いだ後、いざ食べようとしたその瞬間、
一つの頭が、上を向き、その耳をピクピクさせ、
!!!
俺の直感が、何かを知らせていた、
俺は、直ぐに、『星の瞳』を発動させ、
半径、10キロ四方を俯瞰で見た、
そして、見た光景は、
此方に、もうスピードで、向かって来る、二台の魔導二輪車!
えっ?
魔導二輪車?
形は、確かに、スグルの世界で言う、自動2輪車だが、前輪、後輪が二本、合計、四本!
バイク型の四輪車!!
俺は、初めて見る、乗り物に興味を持ち、乗り手は、白い魔導防護服、其に、胸に飛竜のマーク、
魔導省?
あの、乗り手の体の抜群のスタイル、
あれは、確か、リナちゃん!
じゃ、もう1台は、
ロンゲルの旦那か?
なんかすっごーく、懐かしい、まだ、あの酒場の一件から、一ヶ月くらいしかたってないのに、
彼等が俺の方に向かって来る、たぶん、俺の事に気付いて、向かって来ているのか?
其とも、違うのか?
まぁ、俺には『星隠し』が有る、いざとなりゃ、逃げちまえば良い、
彼等の、バイクが俺に近付いて来る、徐々に、地面を疾走する、音が近付いて来る、
普通の視界でも、彼等を視認する事が出来るくらい、彼等は、俺に近付いた、
はっきり言って、この世界の民間のバイクや、三輪自動車より、遥かに早い、
正直、言って、スグルの世界の、スーパーカ並の早さじゃないのか?
時速、100キロ、いや、200キロは出てるな、
ってな事、考えてたら、
ギギギズズズズズズ!!!
リナちゃんが乗ってるスーパーバイクは、俺の前で、ドリフトしながら、止まった、
止まった、魔導二輪車は、二つの前輪に二つの魔導機関、二つの後輪に二つの魔導機関が付いてる、化け物のような魔導二輪車、いや、此は、魔導四輪車だ、
そして、乗り手がバイクから降りて、顔を上げた、
身長は百八十前後、赤茶の長い髪を後ろで結んでポニーテールにし、瞳の色は緑、そしてグラマーでスタイル抜群の彼女は、
ジュピーリーナ・グラシウス
愛称はリナ
彼女は、俺を緑の瞳で睨みながら、
「やっぱり、変態、スグルだったか!」
隣の二メータ近い巨漢で、温厚そうな顔立ちに反して、部隊一の力持ち、
ロンゲル・ドルサン
が、リナが俺の事を変態って呼んだ事に驚いて、
「副将!」
そんな事、御構い無しに、リナは、俺に、でっかいハルバートを向けながら、
「だいたい、スグル!此処等辺は、魔導省が買い取った、直轄領地だと知ってて、此処に来たのか?」
ちょっと、俺は、驚いた、魔導省って、こんな、所まで、土地を買い取ったのか?
まぁ、仕事紹介場に行った時、魔導省が、土地を買ってるって、親切なおじさんが俺に教えてくれたけど、其は、あくまでも、あの白い軍艦、周辺だと思った、
俺は、素直に、謝った、
「済まない、リナ、その事は知らなかった、迷惑なら、直ぐに出て行く。」
リナは、ため息を付きながら、俺に向けているハルバートを下げて、
「たぶん、そんな事だと思った、で、出て行くって、また、消えるのか?」
ロンゲルが、喧嘩腰のリナを心配して、もう一度、
「副将、まずいっすよ、彼の事は殿下から、」
殿下?
ルナちゃんの事?
「中将、分かってるって、俺は、仕事をするだけだ、スグル、一応、お前は、魔導省直轄領地の不法侵入者だ、まずは、そのバッグの中身を確認する、中将!」
ロンゲルが俺に近寄り、丁寧に、
「済みませんね、スグルさん」
「あぁ、構わない、ロンゲル中将」
そう言って、俺は、ロンゲルにバッグを渡した、
「副将、中には、武器は入っていませ、ん?」
ロンゲルが、俺が作ったサンドイッチの包みを取り出し、
リナが、
「どうした、中将?」
俺は、直ぐに、答えた、
「其は、俺が作った、ベーコンのサンドイッチだ、良かったら、一つどうだ、中将」
ロンゲルは、嬉しそうに、
「い、いんすか、スグルさん。」
リナが、慌てて、
「ちょ、ちょっと待て、ズルいぞ!中将!!」
俺は、笑いながら、
「良かったら、リナさんもどうぞ、ちょうど三つ有る。」
リナも、嬉しそうに、
「良いのか、スグル!!」
もう、変態のは、付いてない、結構、リナちゃんは、ちゃっかりしている、
回りの様子が穏やかになったから、ケティも甘えて、俺の足に頭を擦り付けて来て、
「あぁ、ケティ、君も、自分の肉、食べて良いよ、」
リナは、ケティを見ながら、
「其が、れいの、農牧高等学校で暴れた、摩獣か?」
俺は、驚いて、
「何故、君達は、その事を知ってんだ?」
リナとロンゲルは、顔を合わせて、リナは、ロンゲルに言っちゃえってな顔をして、ロンゲルは首を振りながら、
「スグルさん、うちら魔導省ですよ、重要人物には、護衛と監視が付くし、其に、情報はちゃんと集めてます、だから、」
護衛と監視って!
一体、誰だ?
エルさん?
違うな、メルティスト先生か?
まさかな?
・・・
まぁ、良いっか、普段は『星隠し』で隠れてるから、プライバシは守られているし、
その時、リナが俺に近寄り、
「仕方ねぇなぁ、スグル、魔導本出せ、」
えっ?魔導本?
「持ってんだろ、魔導本」
俺が、魔導本を持ってる事迄、知ってんのか!
あっ、
ルナちゃんから貰ったんだから、知って当然か、
俺は、しぶしぶ、魔導本をリナに渡した、
リナは、俺の魔導本を見ながら、
「・・・本当に、大将は物好きだ!・・・チビウサ、此に、摩獣を登録してくれ、・・・そうだ、俺の承認で良い、・・・あぁ、大将には、大将が帰って来たら、俺から報告する、」
えーと、チビウサ?
ルナちゃん、どっか行ってんのか?
リナちゃん、そのチビウサって人に何、頼んだんだ?
リナちゃんは、俺に魔導本を返しながら、
「スグル、その摩獣の飼育許可書を発行しておいた、誰かに、その摩獣の事を言われたら、この、魔導本を見せろ。」
えっ!
なんと!
許可書をくれたの!!
此で、俺とケティは一緒に暮らせるの!
「有難う!リナ!!」
リナは、ちょっと照れながら、
「礼は、大将に言え、」
「じゃ、お礼って事で、遠慮なく、このサンドイッチ、貰いますね、スグルさん」
と、笑いながら、ロンゲルは包みを開けて、俺が作ったベーコンのサンドイッチを一つ、口に入れた。
「ん!やっぱ、流石、魔導料理人のスグルさんだ、ウメェ!!」
えっ!
俺、魔導料理人って事になってんの!!
・・・
あの、シャーベットのせいか?
リナが慌てて、
「ず、ズルいぞ!ロンゲル!俺にも食わせろ!!!」
てな、やり取りがあって、俺も笑いながら、三人で、俺が作ったベーコンサンドイッチを食べる事になった。
リナは、俺のサンドイッチを一口、口に入れた瞬間、
「こっ、此は、スッゲエー!!」
彼女は、一気に、俺の『星に祝福されし穀物』で、作られた、サンドイッチを頬張った。
この結果は、俺は、ある程度予想はしていた。
リナ、彼女は『星に愛されし子供』だ、
あの、飲食酒場で開かれた、上半身格闘技で、彼女は、俺にしか気付かない程度の『星の力』を使った。
その時から、彼女が『星に愛されし子供』である事を知り、また、この世界にも『星に愛されし子供』が存在する事を知った。
だから、俺は、ハルが、『星に愛されし子供』であっても驚かなかった。
リナは、驚いて、
「すっげぇなぁー、スグル!このサンドイッチ、食ったら、何か、力が漲って来る感じがするぜぇ!」
と、言いながら、俺のサンドイッチを欲しそうに見ているので、俺は、
「・・・いる?」
リナに、俺の分のサンドイッチを差し出した。
「済まねぇなぁ、スグル、じゃ、遠慮なく。」
横のロンゲルが、リナの反応にビックリしていたが、彼は何も言わなかった。
こうして、俺とリナは、再び、バルセリナの西の湖畔で再会し、そして、『星に愛されし子供』の彼女は、生まれて初めて、
『星に祝福されし穀物』で作られた、『星に祝福されし食物』を食べ、
その結果、
彼女自身に、何が起こるかは、
誰も、知らなかった。