星導術
「じゃ、ハル、皆に、『星導術』、入門、教えてあげて、」
ええええ!
僕が、ですか!!
「だってさぁ、ほら、俺ってさぁ、天才だったから、人に物、教えるの下手じゃん、だから、ハルの方が、教えるの向いてるって、」
師匠・・・
「スグル!そう言うの、丸投げ、って言うんじゃないの!」
エミが、僕の代わりに、スグルさんに文句言ってる、
スグルさんが、慌てて、
「だ、だってさぁ、俺は、『星導術』を、無意識に使えるんだよ、皆に教えるとしたって、こうして、ズバッ、ああして、ドバッ、ってしか言えないし、此の擬音で、皆が分かるのか?」
・・・確かに、
僕は、諦めて、皆に『星導術』を教える事にした。
4月18日の雷曜日、
第二回の放課後自主講座で、僕達は、『星の遺跡』に来た、其処で、師匠は、僕とリアを除く、皆が、『星に愛されし民』であり、だから、星は、皆に、『星より渡される道具』を渡したと教えてくれた。
師匠は、僕の事を『星に愛されし子供』だと言い、星から使命を託された人だとも言った、
そして、今度は、皆の事を『星に愛されし民』と言い、星より、運命を託された人と言っている、
一体、どう言う事なんだろう?
師匠も、やっぱり、知らないらしい、
だから、師匠が出来る事は、皆を鍛える事だと言った、
師匠!其って!!、僕と同じだ、って、声を出して、言ったら、師匠は、目で、それ以上、話すなって言って、
「そうだ、ハル、そう言う事だ、」
と、一言だけ、付け加えた、
師匠は、皆に、『星導術』を教えるんですね!
師匠!!
僕と、一緒に、エミやジェミにも、師匠は、『星導術』を教えるんですね!!
皆は、まだ、『星導術』の凄さを知らない、
オルは、まだ、魔導格闘技大会
の事を心配していた、
だから、僕は説明した、『星導術』は、魔導術の肉体強化より優れている事を、
肉体その物を、変えてしまうのが、『星導術』である事を、
僕の説明で、皆は納得したので、昼食の後、皆で、師匠から、『星導術』を学ぶ事になった。
そして、いざ、師匠が、皆に『星導術』を教えようとした時、師匠は、僕に、皆に、『星導術』を教えてくれと言ってきた、
で、僕が、師匠の代わりに、皆に、『星導術』を教える事になったのが、最初の話し、
僕は、僕なりの『星導術』の、訓練の方法を、皆に話し始めた。
「まず、一番、大切な事は、自分の体の中に有る、『星の力』を、感じる事。」
ダンが、不思議そうに、
「『星の力』を、・・・感じるのか?」
僕は、頷きながら、
「そう、目を閉じて、自分の中を覗く感じ、そして、体の中に有る、明るい、光り、其が、『星の力』」
ダンは、じーっと目を閉じて、動かない、
他の皆も、真似して、目を閉じた。
『星の遺跡』に、再び静寂が訪れ、聞こえて来るのは、風に靡く草の音、魔虫も大人しくなり、動かなくなった。
最初に、口を開いたのは、やっぱり、ダンで、
「ハル、確かに、何か、感じる、・・・」
僕は、ダンに、教える、
「じゃ、其を、イメージで、目に持って行くんだ、そしたら、見ている世界が変わる、」
ダンが、汗をかきながら、
「此を、目にか、ちょっと待て・・・確かに・・・動かせる、ような・・・気がする、」
僕は、ダンにアドバイスをする、
「ダン、最初は、ゆっくりとしか、動かせないけど、慣れてきたら、早く動かせるし、全身に広げる事も、出来るんだ、」
ダンは、苦しそうに、
「そっ、そうなのかって、うぉー!!」
ダンが、奇声を上げた。
「世界が、世界が止まって見えた!!」
僕は、ダンに笑いながら、
「あはは、良かったね、其が、『星の力』だよ、ダン。」
師匠も、笑いながら、
「ハル、正式には、『星の瞳』って言って、訓練すれば、色んな物が見えるようになるんだ。」
えっ!!
そうだったんですか!
師匠!!
「師匠!じゃ、僕に、その『星の瞳』を、教えてください!」
師匠は、慌てて、
「いや、ハル、ほら、ハルは、『星の力』が少ないから、直ぐに、大技は、危険過ぎる、また、ぶっ倒れたら、大変だし、な、焦らず、ゆっくりな、」
・・・そうか、師匠は、僕の体を心配して、
確かに、焦っても、しょうがないし、
その時、オルも、ジェミも、一瞬、時が止まって見えた、と言い、その後、アンリ、エミと、続いて、『星の瞳』が出来るようになった、
其処で、僕達は、一つの実験をする事になった。
僕は、リアに、
「ねぇ、リア、リアは本当は、肉体強化の魔導術を使えるんじゃないの、」
リアは、暫く口ごもった後、
「あまり得意では、ありませんけど、一応、出来ます。」
アンリが心配して、
「お嬢様、」、と声を掛けた。
リアは、魔導術の天才だ、だが、不思議な事に、彼女は、あまり、自分が魔導術が得意で有る事を、言いたがらない、何でも、普通の生活に憧れているんだとか、
本当に変わっている。
僕は、リアにお願いをした、
「いやーぁ、リアには、たぶん簡単な事だと思うんだけど、肉体教化の魔導術、『磁』を使った場合、『星の瞳』で、どう見えるかを、皆に、教えたいんだ。」
リアは、考えて、
「・・・分かりました、やってみます、ハルさん」
「有難う、リア」
こうして、僕達は、リアが肉体教化の魔導術を使ったら、『星の瞳』でリアを見る事になった。
「じゃ、皆、さっきの要領で、『星の瞳』を発動してみて、」
ダンが、嬉しそうに、
「確かに、ハルの言う通り、『星の力』は、さっきより、動かしやすい。」
オルが、
「そうだな、少し、滑りが良くなったようだ。」
エミは、
「そうかな、やっぱり、重いような、」
アンリは、無言、
ジェミは、簡単に、
「準備、オッケー、ハル」
僕は、頷きながら、
「皆、準備は、大丈夫?・・・じゃ、リア、肉体強化魔導術をやってみて、」
リアも、頷きながら、
「分かりました、ハルさん」
と言った時、
ジェミが、驚いて、
「えっ、ええええ!ストップ!ストップ!ストップ!リア!!魔導術、止めて!!!」
えっ、一体、何が起きたの?
ジェミは、真っ赤な、顔で、
「ヤバイ、ヤバイ、ハル、此は、ヤバイって」
僕は、びっくりして、
「ヤバイって、ジェミ、何が、ヤバイの?」
ジェミは、更に、真っ赤な顔で、
「そ、其は、・・・兎に角、ヤバイって!」
リアも、興味を、示して、
「そうですよ、何がヤバイんですか?ジェミ、」
ジェミは、余計、困って、
「えっ、リア、その」
その時、アンリが、
「お嬢様、その、私、お嬢様が、薄い、光る紫の下着を着ているように見えました。」
えっ!
ええええええええええ!!!
エミは、不思議そうに、
「えっ、そうなの、私、リアが、紫の光りの神様に見えたけど?」
えっ?
神様?
オルも、考えながら、
「私は、リアの回りに、紫の細い線が、幾重にも見えた、」
ダンが、
「私は、リアが、紫に塗り潰されたように見えた。」
皆、見え方が違う!
此れって、一体、・・・僕は、師匠に聞いてみた。
「ん?見え方が違う事、まぁたぶん、個人の個性が影響してんのかな、俺も専門家じゃないから、詳しい事は、知らないが、そう言えば、昔、天皇星の大賢者が言ってたなぁ、」
師匠は、少し考えながら、
「確か、『星の瞳』は、星の力で物事を見る『星導術』なんだが、時に、星はお節介だから、本人が見たいと思っている物も見せる事が有るってな、」
ジェミは、びっくりして、
「えっ!!!」
師匠は、笑っていた、
ジェミが見たいもの?
リアが、ジェミに詰め寄る、
「ジェミ、貴方、何を見たんですか!」
「いや、いや、リア、ち、違うって!」
・・・こんなに、狼狽する、ジェミを初めて見た、エミも驚いている、
師匠は、更に、笑ってる、隣のメルティスト先生は、そんな師匠に呆れている、
「何が、違うんですか!ジェミオ・バレットス」
ジェミは、焦って、
「態とじゃないんだ、君の裸が見えて!」
えっ!!!
リアの裸!!!
皆、びっくりして、沈黙!!
師匠も、沈黙!
リアはにっこりして、
「そう言う事ですか、じゃ、責任取って下さいね!ジェミ!!」
アンリは、慌てて、
「お嬢様!!」
其処で、ダンが、気を効かして、咳をしながら、
「コホン、えーと、ハル、『星の瞳』の訓練は此処までにして、他にないのか?」
僕も、慌てて、
「あっ、そうだね、ダン、例えば、『星の力』を、足に持って行くと、」
ダンは、すっかり『星の力』が気に入って、僕の話しの途中で、
「足か、分かった、ハル!」
「えっ、ちょっと待って、ダン」
バーン
ドッシャン!ガラガラガラゴロン!!
ダンは、5メータ先の地面にめり込んでいた、
「あぁ、やっちゃった、」
オルが、びっくりして、
「ハル!一体、何が起きたんだ?」
ダンが顔中、泥だらけにして立ち上がった、
僕は、首を振りながら、
「ダンは、足が縺れて転んだんだ。」
全員が、びっくりして、
オルは呆れながら、
「転んだって言うより、大地に飛び込んだって感じだぞ」
「だから、注意して、『星の瞳』を発動してから、実効するように言うつもりだったんだけど、」
ジェミが、不思議そうに、
「『星の瞳』と何の関係が有るの、ハル」
僕は、ジェミに向かって、
「『星の瞳』を使わないと力のコントロールが出来ないんだ、僕も、結構、あんな状態になった。」
エミリアは、びっくりして、
「えっ!あんな風に、地面にめり込んで、ハル、大丈夫だったの?」
僕は、考えながら、
「うん、不思議と怪我はしなかった。」
其処で、初めて、師匠が口を挟んできた、
「当たり前だ、ハル、『星導術』は『星導術』の使い手に危機が起きると『星の保護』が無意識に発動する、だから、ハルが、今まで怪我をしなかったのは、絶えず、『星導術』が、ハルを守っていたからだ。」
僕は、驚いた、
僕が、怪我しなかった理由を知って、
「まぁ、正確には、『星』だけどな、」
星が、僕を守っている、
「そうだったんですか、だから、全然痛く無かったんだ。」
ダンが、仮設水栓で、顔を洗った後、話しに加わってきた、
師匠は、ちょっと怖い顔して、
「ダンバード・グラスタ、だからと言って、『星の保護』は万能じゃ無い、『星導術』は、天界の巨大な『星の力』を使う術だ、もっと、注意して使うように!!」
師匠は、ダンに厳しく注意し、
ダンは、素直に、師匠に謝った、
ふぅ、
僕は、ため息を付きながら、
『星導術』の、講義を、進め、
その後は、リアを除いた、皆が、『星導術』を使って、ゆっくりと歩く練習をする事で、
その日の、放課後自主講座は終わった。