話す決意
4月18日の雷曜日、俺が此の世界に来て27日、スグルの世界での土曜日、
俺は、何時も以上に、掃除を早くすまし、フルーツサンドを10個作って、
その後、お昼は、学校が支給してくれる、量の少ない昼飯を食べた後、生徒が、俺の宿舎に来るのを待っていた。
雷曜日、生徒は午後2時迄、授業が有る、その後、学食で昼飯を食べて、通学組、また、寄宿者組で、自宅が近い生徒は、帰宅して、光曜日の休日を家族と過ごすらしい。
勿論、先生や生徒で帰宅しない人達もいる、そんな生徒や先生達に対して、食堂の料理スタッフは交代で、簡単な食事を用意する、
だから俺は、結構、食堂を運営している、ボーゲン・ハーグナは大変だと思っているし、彼の事は、一目置いている。
2時半頃、ハル、エミちゃん達と、ジェミ、が来て、後から、ダン、オル、そして、最後に、リアちゃん、アンリちゃんが俺の宿舎に来た。
今日は、メルティスト先生、参加は無しかなぁ、と思ったけど、ギリギリ、最後に来た。
全員が、魔導防護服を着て、直ぐにも、『星の遺跡』に行けるような感じだったんで、
俺は、ジェミに、
「ジェミ、星の秘蔵庫を出してくれ、」
と、言った。
「えっ?はい、」
そう言うと、ジェミの右手の人指し指が光り、白く輝く指輪が現れ、
「じゃ、ジェミ、悪いが、此の荷物を、その、星の秘蔵庫に仕舞ってくれないか。」
俺は、庭に出ている、仮設水栓、御茶、果物のジュースの樽、サンドイッチの入っている樽、其に、コップに、柄杓等を指差した。
「えーと、此を、収納するんですか?」
俺は、頷きながら、
「あぁ、そうだ、たぶん、右手で触ってみれば分かる、」
ジェミは、試しに、御茶の樽を触った瞬間、
「えっ!」
ヒューン!
と、聞こえる気がするように、樽は、ジェミの右手に吸い込まれた。
ジェミは、最初は、驚いたようだが、次は、コツが分かったのか、次々と、収納し、庭に置いといた荷物は全て無くなった。
「スグルさん、此、取り出す時は、こうすんのかな?」
ジェミは、何も無い空間に、一生懸命、手を入れていた、
うーん、確かに、天皇星の大賢者は、そんな仕草をした時もあったけど、もっと簡単に出し入れしてたなぁ、
「なぁ、ジェミ、君には何を仕舞ったか、分かるんじゃないのか、」
ジェミは、ちょっと考えて、
「えーと、分かる?あっ、こういう事か、目の前に、確かに、内容が浮かんでます、スグルさん!!」
やはり、天皇星の大賢者の言ってた通りだ、
「じゃ、試しに、柄杓を取り出してみて、」
ジェミは、更に、考えながら、
「柄杓ですか?あっ、こうかな、」
瞬間、ジェミの手に柄杓が握られ、
全員が、
「わぁ!!!!」
と、感嘆の声を上げた。
やっぱり、星の秘蔵庫は、便利だ、此からは、『星の遺跡』、で何かあった時の為に、非常食なんかも、用意する事も出来んじゃねぇ、ってな事を考えながら、
「じゃ、皆、此れより、遺跡探索、放課後自主講座の、第二回目を開催します。」
今日は、俺は、『星に愛されし民』と言う言葉を、態と使わなかった。
俺は、右手を水平に出し、
『星の門よ!開け!!』と、唱え、
俺の右手の指先から、翠光が広がり、
その、翠光は俺達が通れる大きさ、横90センチ、縦2メータで止まった。
此は、一昨日と同じだ、
「じゃ、今回は、俺が先に入って、『星隠し』を張る、次に、女性陣、で男性陣、殿をハルの順で行こう。」
そう言いながら、俺は門を潜った。
『星の遺跡』は、一昨日と換わらなかった、草原の中に遺跡が有り、その草原のあっちこっちで、バッタ型の魔虫が跳び跳ねていた、
うーん、やっぱり、此の、魔虫を攻略しないと、先に進めないって訳けだ、確かに、第一階層の天道虫型より、難易度は高い、
さて、どうやって、彼等を、遺跡のその先に導けば良いんだ、
・・・
・・・まぁ、考えても、しょうがねぇ、彼等に直接、言ってみっか、兎に角、進めって、
な事、考えているうちに、女性陣と、メルティスト先生が、そして、男性陣、最後に、ハルが遺跡に来たので、
俺は、『星の力』を無駄にしたくないので、此処で、『門』を閉じた。
俺は、ジェミに、荷物を出すように指示し、ジェミは、仮設水栓、樽を次々と出していった。
俺は、樽から、カツサンドとフルーツサンドを出し、エミちゃんとリアちゃん、アンリちゃんが飲み物を配り、彼女達は、ジュースが有る事に歓声を上げた。
全員が、俺を中心に草原に座った。
俺は、覚悟を決めた、先生がいるんだが、ある程度の話しを皆にしなくちゃなんない、
「皆、食べながら、俺の話しを聞いてくれ、皆は、元々、魔導格闘技大会の練習の為に、此の『星の遺跡』に来た、」
此処で、話しを区切り、皆を見た、ガル、オル、ジェミが俺を見てる、ハルとエミちゃんも、仲良くサンドイッチを食べながら聞いている、リアちゃんとアンリちゃんは、フルーツサンドに御機嫌だ、メルティスト先生は、分かんない。
「俺は、君達に、上手い事は言えない、只、俺が、知ってる事は、君達は、俺の国で言う、本当の、『星に愛されし民』で有り、だから、星は、君達に、『星より渡される道具』を託した、」
全員が、俺を見ている、
「でだ、『星に愛されし民』とは、俺の国では、星より、運命を託された人と言う意味が有る。」
全員が驚愕し、暫く、沈黙が続いた後、ダンが代表して、
「運命とは、どんな運命なんですか、スグルさん!」
俺は、首を振った、
「正直言って、俺は、星でも魔の神でも、予言者でも無いから、分からない、只、分かる事は、星は、ただで、あんな、優れた、『星より渡される道具』を託す訳がない、」
シューバッ!
先生と、リアを除いた、全員が、『星より渡される道具』を手にし、
ダンは、『月下の秘剣』を握り絞めて、
「じゃ!私達は、一体、どうすれば良いんですか!!」
俺に、怒鳴った、
俺は、ダンを見ながら、
「君達に授かった、『星より渡される道具』は、はっきり言って、まだ、本当の実力を発揮する事が出来ない状態だ、其は、」
俺は、言葉を噛み締めながら、
「『星より渡される道具』は、その持ち手の実力により、進化する、だから、俺が、君達に出来る事は、君達の、『星導術』の力を、上げる方法を教える事だ。」
ハルが、驚いて、
「師匠!其って!!」
僕と、同じですよねと言おうとした、
ハルに、俺は目で、それ以上言うな、と伝えながら、
「そうだ、ハル、そう言う事だ、」
とだけ、言った。
全員が、沈黙し、
遺跡の草原に、風が吹く、
聞こえるのは、雑草が風に靡いて、葉がざわめく音、
遠くで、魔虫が、跳び跳ねる音、
そして、最初に、口を開いたのは、オルだ、
「しかし、魔導格闘技大会は、どうなるんです、スグルさん」
オルは、何時も、言葉遣いが丁寧だ、
その時、ハルが、手を上げて、
「その事なら、僕が説明出来る、・・・皆も、知ってるように、僕は、学校が開催した、魔導格闘技大会で、ドナプ・レスタード、トーネル・サンドールを破った、其は、」
ハルは、はっきりと、
「僕が、『星導術』を使ったからだ!」
全員が、少し驚いて、
ダンが、ちょっと驚きながら、
「そんな、気はしていたが、一体、どう言う事なんだ、ハル!」
ハルは、下を見ながら、
「僕は、『星導術』で、ドナプも、トーネルも、『磁』、や『雷』の、肉体強化魔導術を使っているのを知った、」
ダンは、目を見開いて、
「肉体強化魔導術って、3年で習う、魔導術だぞ、其を、彼等は使っていたのか!!」
ハルは頷きながら、
「そうだ、其で、僕は審判に聞いたら、相手を攻撃するのは、『力』以外は、駄目だけど、自分になら、どんな力を使っても良いと言ったんで、僕は、『星導術』を使う事にした。」
ダンは、更に、驚き、
「『星導術』でも、肉体強化が可能なのか!」
ハルは、ダンを見て、
「正確には、肉体強化と言うより、肉体そのものが、変わる感覚、だから、魔導術で強化するよりも、遥かに凄いんだ、言葉では、旨く言えないけど、」
そうだ、言葉では上手く伝わらない、だが、ハルは、結果を出した。
そして、再び、沈黙の後、オルが、
「じゃ、決まりだな、ダン、私達は、『星導術』を習う、其で、魔導強化術を使う相手に対抗する、」
ダンは、刃の無い、『月下の秘剣』を翳しながら、
「そうだ、オル、『星導術』を、学ぼう!でっ、どうすれば、良いんですか、スグルさん」
俺は、ため息を付きながら、
「ふぅ、ダン、気持ちは、分かるが、まずは、飯を食わないか、俺が作った、カツサンドとフルーツサンドだ、フルーツジュースも有る、食べて、是非、感想を聞かせてくれ。」
ダンは、真っ赤な顔で、
「す、すみません、スグルさん」
と、謝って、サンドイッチを食べ始めた、
「もぐ、もぐ、このカツサンドって言うのは、まあまあね。」
・・・メルティスト先生は、話しに興味が無く、一人、サンドイッチを食べている、ちょっと油っぽい、カツサンドは苦手なようだ。
皆の表情は、明るくなり、俺が作ったサンドイッチに話しの華が咲いた。
フルーツサンドは、女子には、好評だったが、カツサンドは、ちょっと油がきついのと、揚げたての、柔らかい状態じゃ無く、ちょっと固くなったのと、
ソースだよなぁ、やっぱり、ソースが無いと、揚げ物は、締まらない、
うーん、ソースの代用品を捜す必要があるんじゃね、其に、醤油が有ると更に、ベスト、
そう、思いながら、サンドイッチを、俺は頬張っていた。