其々の思い
「ハル、今日は、楽しかったね、」
今日のエミは、嬉しそうだ、僕は、魔導二輪車を、エミの家の前で止めた、
「そうだね、エミ」
そうだ、今日は、忘れられない、一日だった、スグルさんは、今日、僕に『星より渡される道具』を教えてくれてた。
「また、明日、エミ、」
「明日ね、ハル、」
僕の日課は、エミをエミの自宅前迄、責任持って送る事、其が、僕の両親とエミの両親との約束。
エミは、僕が師匠のスグルさんに『星導術』の指導を受けるようになってから、帰りが遅くなった。
エミは、何時も、寂しそうに、終わるのを待っててくれる、
師匠は、エミには、『星導術』の才能が無いから、教える事は出来ないと言っていた、確かに、エミは、魔石を、体に吸収しなかった、他の皆もだ、
師匠は、才能が有る人は、必ず、魔石を吸収すると言っていた。
しかし、今日、エミは、『星より渡される道具』を作る事が出来た、エミも、『星導術』を使う事が出来た!
エミは、素敵な杖を手にして、微笑んでいた。
スグルさんは、杖の名前を、星時計盤ウルテサイマーと教えてくれた。
綺麗な杖を手にした、エミは綺麗だった。
僕は、家の車庫に魔導二輪車を仕舞い、家に入る前に、
満天の夜空を見上げた、
今日の星、何時もより輝き、美しかった。
魔導術が出来なかった頃のエミは、寂しそうだった、
その頃の僕は、エミの寂しそうな笑顔が辛かった、近頃のエミは、時時、あの頃の、寂しそうな笑顔をする、
僕は、辛かった。
今日のエミの笑顔は、本当に、綺麗な笑顔だった。
また、僕は、エミと一緒に歩いて行く事が出来る、
だから、僕は、満天の星に、祈り、願い、誓う、
僕は、エミを守る!!!
ズバッシュ!
僕は、『星のナイフ』を手に出し、満天の星に翳し、
僕は、誓った。
星は、頷くように、美しく、何時までも、瞬いていた。
『あぁ、その、ええと、『J』、その当社に出資してくれて、感謝する、そのぅ、事業は上手く行ってるんだ、もうすぐ試作機が完成する、そうしたらオリハルコンだって、直ぐに掘り出せる、だから、その、もう少し、出資してくれないか、頼む。』
ふぅ、
今日、寮に戻ったら、鉱山開発会社ローランドから、追加の出資依頼の連絡が、魔導通信で来ていた。
僕は、4月13日の闇曜日に、スグルさんから貰った、『アルスパイナの角』を『闇のオークション』に出品し、3000万RGを手にした、
その日、そのうち、1000万RGを直ぐに、鉱山開発会社ローランドに投資した、
鉱山開発会社ローランドは、ローランド・オースティンと言う技術者が立ち上げた会社だ、僕は、魔導本で彼の事を、彼の技術を知った、
僕の本能が、感が、彼の技術が、凄い技術だと騒いでいたので、彼の会社に注目していた。
魔鉱石のうち、魔軽金属は魔素から作る事が出来るから価値は低い、
しかし、魔導重金属は違う、魔導重金属は地中深く埋まっている魔鉱石から作られるから、価値は高い、
その鉱脈を発見した者は、巨万の富を得る事が出来る、と言われている、
だから、オリハルコンへの投資は、当たれば大きい博打だとも、言われている、
多くの魔導重金属の魔鉱石は、魔の神が眠る、遥か深き地層に有るから、人は手を出す事は出来ない、
だけど、ローランドが提案した、魔導機は、画期的だった、彼の発想は、今までの『力』で、土を掘る、岩を削る、と言う発想を変えて、
砕く、細かくする、らしい、難しい事は僕には分からない、ただ、熱量変換の魔導術、『炎』と『光』の合成魔導術を、極限迄、反転して使うと、物体の動きが止まり、崩壊するらしい、
物体が、止まると、崩壊するの?
熱の反転だから、氷るって事?
氷って、砕け散る事?
でも、岩も、土も凍らない、
何でも、彼の仮説は、物体は、実際は小さな物体の集まりで、その集まりが魔素により結ばれて、動いているから物体になっているんだとか、
此だけでも、僕には意味が分からない、
たから、『炎』と『光』が反転した合成魔導術を、極限まで使うと、魔素の動きが止まり、小さな物体が離れて、目に見えない元の小さな物体になるらしい、其をローランドは『魔導崩壊』と呼んでいる、
ローランドは、その理論を使った魔導機を試作して、開発資金を回収する為に鉱山開発会社を立ち上げた、
魔導機の開発は難航し、資金も底を尽きかけた時、僕の出資で、一息付いたらしい、
そして、もう少しの催促、
僕はため息、
やっぱり、彼は、詐欺師かな?
普段だったら、僕は、此の話しを直ぐに断った筈だ、でも、今日の僕は、すっごーく機嫌が良い、
僕の右手、人指し指には、星の秘蔵庫が有る、今日、僕は、スグルさんが言う、『星導術』を使う事が出来た、
気のせいか、今日は、星が逸そう輝いて見える、まるで、僕達の事を祝っているみたいだ、
僕は、魔導本から、彼の魔導本に残りの2000万RGを送った。
此で、最後だ、もう僕には、資金が無い、後は、自分で何とかしてくれ、
僕は、ローランドに、そう告げた、
ローランドは言った、ああ、此だけ有れば、何とかなる、後、もう少しなんだ、有難う、
技術屋らしい、受け答え、
たぶん彼は、詐欺師じゃない、夢想家だ。
だから、今日、僕は、3000万RGを失った、
のかも、しれない、
まぁ、良いっか。
「ダン、やっぱり、君には、才能があった、だから君は、卒業したら、中央に行くべきだ!」
「オル、ならば、君も一緒だ!」
「ダン、・・・其は、・・・無理だ。」
ダンバード・グラスタ、領主、グラスタ家の長男、そして、公国の黎明期に初代公主と共に、公国設立に活躍した一族、
私とは違う、
私の名前は、オルダンス・ホールス
私の家族は、母、一人に、二人の弟と三人の妹達がいる、貧乏な、本当に普通の家族だ。
母は、昔、良家の娘だったらしい、父と恋して、家を飛び出し結婚、そして6人の子供を授かった、
だから、礼儀作法、言葉使いも、母から習った、
そして、魔導造船所で働いていた父は、三年前、魔導機関の暴走で亡くなった、それ以降、母は働きに出て、私達を養っている、母を助ける為、私は、中学校を卒業したら、働くつもりだった、
しかし、中学校の三年生で魔導術が使えるようになり、此の国の法律で、私は、魔導高等学校に行く事になった。
母は、喜んでいた、私が祖父に似ているから、偉大な魔導師になる、そう思っているようだった、
しかし、私は、ダンと同様、魔導の才能は無かった、
母は少し、がっかりしていたが、私は、此で良い、そう思った、
高校生を卒業したら、直ぐに働けるし、母を助ける事が出来る、弟や妹に、良い教育、良い生活をさせてやれる、そう思った。
そして、ダンと出会い、領主の家系として、その後継者であった彼の苦しみを知り、私は、憧れていた、母の祖父の暮らしも、決して楽では無い事を知って、
彼が、私の憧れのような、存在で有る事に気が付いた。
生活費の支援の無い、私とダンは、休日は、殆ど、働き、そして、生活を切り詰めて貯めた資金で、世界を見て回る旅をした、
彼は、自分の将来を見付ける為に、私は、自分の将来を諦める為に、
そして、今日、ダンと私は、『星導術』と呼ばれる、新たな才能に目覚めた、
私とダンは、寮の庭で、自分達の未来を語り合った、
世界の、満天の星空は美しく、その瞬きは、まるで、私達の未来を祝福しているようだった、
だから、私は、彼に言った、中央に行けと、
今の、彼なら、魔導省も、防魔省にも、採用される筈だ、そして、彼なら、其処で成功する筈だ、
あの、美しい、
『月下の秘剣』
が、有る限り、
「あっ、メルティスト先生、夏季自主講座の書類、取り敢えず、教魔省に受理されました。」
廊下ですれ違った、学校事務長のエルデシィアが、私に思い出したように、報告をしてくれた、
「エル、有難う。」
私は、一応、エルデシィアに御礼を言って、自分の研究室に向かった、
私は、今日、起きた事を、早く、自分なりに整理したかった。
最初の放課後自主講座が終わって、私は、スグルとC組の生徒と別れた後、
急いで、更衣室で、魔導防護服を着替えて、廊下で、エルに会い、軽く会話して、直ぐに、自分の研究室に戻って、私は自分の机の椅子に座わり、深くため息を付いた後、目の前の窓から、外の夜空を見上げた、
外は、暗くなり始め、天界は、数多の星が輝き始めていた。
スグルは、遥か東の国の出身だと言い、その国には、『魔導術』の代わりに『星導術』が有ると言う、
彼は、更に、その『星導術』から物が作れると言った。
私は、『星導術』とは、魔導術の『錬』のような物を、想像していた、
『錬』は、大気に有る『魔素』を加工して、新たな物を作り出す、魔導術
だから、ハルチカ・コーデルが、作ったような、ナイフも、上級魔導師なら、マーカライトを精製し、『力』で形を整えれば、作る事は出来る、
確かに、彼の作ったナイフを、鑑定してみたけど、製作日は、2035年4月16日の磁曜日、つまり、今日と記載されていて、機能はナイフ、素材は不明と出ていた、
此処までは、より、優れた、『錬』の魔導術、と思っていた、
問題は、ジェミオ・バレットスからだ、
彼が作った、指輪は、明らかに、芸術作品のように美しく、星の光りのように輝いていた、
私は、直ぐに、鑑定をした、その結果、製作日は、魔導歴マイナス305年!!!
此れは、遺物だ!!
スグルは、此の遺物の名前を知っていた、その機能も、
『星の秘蔵庫』
此れは、古語、かって、『星の六大国』で使われた、言葉、
星から贈られた、魔導の倉庫、と言う意味!
スグルは、古語を知っているのか?
其とも、偶然?
そして、
ダンバード・グラスタは、
『月下の秘剣』
製作日は、魔導歴マイナス3265年!!!
なんだ、此の数字は!
意味は、月より贈られし、神の剣、
滅んだ、月の星の大国の国宝じゃないのか!!
あの、柄の美しい、月の模様は、当に芸術品だ!!!
そして、これも、スグルは、知っていた、名前も、その神器の力も!
スグル!!
更に、
オルダンス・ホールス、
『水星の片眼鏡』
私の鑑定は、製作日が、魔導歴マイナス297年、
スグルは、その遺物の使い方を、オルダンスに教え、彼は教えられた通りに、遺物を使いこなした、
私は、堪らず、彼に言った、
「スグル!私が、鑑定をしても、あれが、『星の六大国』の遺物ってこと迄は、分かる、でも、どう言う機能があって、どう言う使われ方をするか迄は、分からない!なのに、何故、貴方は、知ってる!!あの未知の遺物の品を!スグル!!」
私は、彼に向かって、怒鳴っていた、
貴方は、一体、何者で、何故、遺物を、彼等が手にしているの!!
そう、私は、スグルに聞こうとしたけど、
彼の瞳も、また、困惑して、何が起きているのか、分からない、そう私に訴えていた、
彼は、自分も分からない、あれは、『星導術』で作られた物じゃ無い、と、私に言った。
えっ、私は、驚いた、じゃ、あれは、
「先生、あれは、かって、俺の国を救った、伝説の七人の英雄が持っていた、『星より渡される道具』です。」
『星より渡される道具』
意味は、星の神が、貴方に、神器を託す、
そして、国を救った、伝説の七人の英雄、
私達の国、自由都市同盟にも、此の国、ウェルド公国にも、たぶん、ポワジューレ共和国、北方共和国連合にもそんな、伝説は無い、
有るのは、
世界を、滅ぼした、7人の伝説、
遇者、
コーリン・オーウェル、
その伝説、