前夜
「えっ、発掘品ですか?」
ダン君が驚いている、
「そう、発掘品、つまり遺物、但し、発掘と言っても、土の中に埋まっている品を探せって事じゃ無く、もし、何か変わってる物が落ちてたら、拾ってって事、」
オル君が、考えながら、
「其は、先生の研究の為ですか?」
メルティスト先生は、笑いながら、
「其もあるけど、貴方達の活動資金でもあるのよ。」
全員が、口を揃えて、
「活動資金!!!」
俺も、驚いた、活動資金って、・・・この講座って、資金がいるの?
俺は、とある事情から、ダンバード・グラスタをリーダとする、C組の7人に『星の遺跡』へ通じる『何処でも扉』を開ける約束をした。
約束は、守らなくちゃいけない、
其処で、俺は、魔導考古学の教師、メルティスト先生を巻き込んで、放課後自主講座を開設する事にした、
此で、彼等の活動は、学校が正式に許可した活動になる、
そして、その、講座の名前は、
『星に愛されし民』
その意味は、星に運命を託された人々、
此は、世界が俺に対して、皮肉を言っているのか、
俺は、その名前に唖然とした、
先生は、俺の気持ちに関係無く、話しを続けて、彼女は、生徒達に、発掘品を探す協力をしてくれと言った。
彼女は、その理由を、研究と、講座の活動資金だと、説明し、
更に、メルティスト先生は、
「考えてもみてよ、貴方達、魔導格闘技大会って、最後には公都に行くんでしょ、その旅費や、滞在費はどうするの、この学校からは出ないわよ、親に頼るの?」
・・・考えて無かった、
ダン君が、苦しそうに、
「其は、働いて、」
メルティスト先生は、首を振りながら、
「放課後練習して、他は、働く、貴方、じゃあ、勉強は何時するの?そんなの、許可出来るわけ、ないじゃない!」
メ、メルティスト先生がマトモな事、言ってる!!
「ねぇ、スグル、ちょっと、失礼な事、考えてない、」
先生は、俺が驚いた、顔をしたんで、俺の考えた事に気付いたようだ、
「いや、ちょっと、先生が先生ぽい事、言うから、」
何時も、俺の事、バカバカ、言うし、
「あのねぇー、私も一応、教師よ、だいたい、スグルは、なんで、この学校の先生達が、放課後自主講座を開かないか、知ってんの!」
メルティスト先生、少し、怒ってる、俺は誤魔化すように、
「めんどくさいから?」
先生、更に、怒って、
「スグル!貴方、本当にバカ!!」
俺は、慌てて、
「違うの?」
先生は、首を振りながら、
「違うわよ!! 良い、東の辺境の田舎者のスグル君!君は、この国の教育制度が特殊な事を、知ってますか!!!」
先生が、完全に怒った!!!
「・・・先生、済みません、何が、特殊か知りません。」
先生は、やっぱりって顔で、
「じゃ、逆に聞くけど、スグルの国は、誰でも、お金を払わなくても、教育を受ける事が出来るの?」
俺は、スグルの世界の事を思い出し、
「確か・・・義務教育って、9年間は、お金を払わなくても、教育を受けられた、んだが、」
そう言えば、確かに、この国は特殊だ、
「義務教育でも金を払わない学校は、公立って言って、其とは別に、金を払って行く、私立って言う学校もあった。」
正確には、更に、塾ってのもあった、
先生は、その仕組みを理解しているようで、
「ねぇ、スグル、そのお金を払って行く学校の生徒は、たぶん、親が、その資金を出す事が出来るわけだから、貧乏な家庭って事じゃないわよね、」
そうだ、義務教育の小、中学生の生徒が、借金して迄、私学には行かない、貧乏人には無理だ。
・・・そう言う事か、
「気が付いたようね、この国の子供達の進路は、その子達の才能によって決まるの、子供達にも親にも選択権は無いし、裏を返せば、全ての階層の子供達が等しく教育を受けてるのよ。」
つまり、この学校には、金持ちも、貧乏人もいる、
「世の中、何かをする事は、必ず、お金が掛かるの、放課後自主講座も同じ、教材、資料代、どっか行けば、交通費、きりがないのよ、」
確かに、そうだ、
先生は、話しを続ける、
「そうなると、其が出来る子供達だけが集まり、そうじゃ無い子供達は、諦めるか、ダン君のように、無理するでしょ、だから、先生達は、夏季自主講座を優先して、放課後自主講座は開催しないようにしてる、」
そうだったのか、
「教育の不平等は、この国の教育理念に反するでしょ、だから、先生達は、ちゃんと子供達の事を考えて、そう言う事にしたの、分かった、スグル!」
俺は、素直に、メルティスト先生に謝った。
皆が、メルティスト先生の説明に納得していた時、ジェミオ・バレットスが、魔石を見ながら、
「じゃ、メルティスト先生、この、魔石を売るってのは?」
先生は、首を振りながら、
「其って、ただの、魔鉱石よ、価値は無いわ、」
えっ!
この、魔石って、魔鉱石なの、
魔鉱石って、『魔神のアカ石』だよね、
じゃ、『魔神のアカ石』に、『星の力』が入ってるって事、
そんな事が、可能なのか?
出来るとしたら、
天皇星の大賢者が考えて、金星の錬金士にやらせたって事、
ジェミは、納得した顔で、
「へぇ、此れ、石ころなんだ、先生が、鑑定したなら、間違いないね、」
「鑑定!!!」
ジェミオと俺以外の全員が驚いた。
俺は、何、其って感じ、
『鑑定の魔導術』
此れは、後で、知ったんだが、 『鑑定の魔導術』は、物の本質を知る魔導術で、『磁』、『雷』、『光』、の3つの魔導術を合成して出来る魔導術であり、かなりの高度な技術らしい、出来る人も少なく、
ようは、スグルの世界のスキャナーと計測器を合わせたような魔導術なんだとか、
メルティスト先生は、目を細目て、
「ふーん、確か、君、ジェミオ・バレットス君よね、君は、私が、『鑑定』の魔導術を使える事を、知ってんだ。」
ジェミは、ちょっと、含羞みながら、
「知ってますよ、だって、先生、先生の世界じゃ、先生は、有名人じゃないですか。」
おぃ、ジェミ!
また、お前!
一体、なんなんだ!!
その、先生の世界って!!!
魔導考古学界の事か?
だいたい、俺が、こんな約束して、大変な事になったのも、ジェミ、お前の所為だ!
まぁ、八つ当たりだけどね、
しかし、俺は驚いた、見かけは、ぱっとしない、なんか、ハルの引き立て役、または、一般大衆なのに、
なんか、此処って時に、
ジェミオは、ズバッと、情報、出して来る!
俺は、彼の事を、低く見すぎていたのか?
もしかして、コイツ、とんでもない奴だったとか、
リアちゃんも、ちょっと熱い視線を送ってる気が、
・・・いゃ、気のせいだな、
先生も、誤魔化すように、
「兎に角、発掘品は、私が鑑定するし、売っても良い物なら、貴方達の活動資金に還元します、忘れないでね。」
と、場を締めくくった。
後、リアちゃんが、俺にも、魔導防護服を勧めてきたが、俺は、キッパリと、断った。
そして、ダン君と話し合い、放課後自主講座の開始日を、明後日、16日の磁曜日に決め、
その日は、其で、解散となった。
早速、次の日、ロートス社から、メルティスト先生宛に、魔導防護服が、届いたのだが、
先生は、夏季自主講座について、学長と最終の打ち合わせで忙しく、
どんな、魔導防護服なのか確認してないらしい、
更に、先生は放課後自主講座の活動が楽しみらしく、
明日は仕事にならない可能性があるから、今日中に加筆、修正して、教魔省に提出すると言っていた。
たぶん、今日も、先生は、徹夜だ。
先生を、放課後自主講座に誘って、良かったんだろうか、
俺は、ちょっぴり、心配になった。
明日は、もう一度、『星の門』を開く、前回は、俺の『星の力』が切れたので、自然に閉じた、
今回は、行き、帰り、2回開く必要が有る、
今の俺には、ちょっと大変、
ケティちゃんの『星の門』を閉じれば、更に、常時発動している『星隠し』を止めれば、軽く、余裕なんだが、
勿論、そう言う訳にはいかない、
幾ら収穫しても、次の日には、沢山の実を付けている、パンの木から、『星に祝福されし穀物』を、今日は多目に採集して、
明日の、御弁当の準備をする事にした、まぁ、俺一人、食べるわけいかないから、9人分、必要なわけで、
考えてみると、けっこうな量だ、
・・・うーん、やっぱ、料理用魔導機、買うか、
俺は、放課後、あのガチムチの魔導機屋に行った。
最初に、行ったのが、3月24日、今日は4月16日、まだ一月はたって無い、
なのに、何か、すっーごーく、懐かしい、あの時は、店の名前も知らなかった、今は、エルさんから聞いて知っている、
確か、此方の言葉で、
ブータレゲール、
スグルの世界の言葉で訳すと、『お洒落亭』って意味らしい、
まじ、笑いそうになった。
あの、店主で、『お洒落亭』って、
俺は、ウソ!!!って思ったし、
エルさんが、最初に、ブータレゲールって言ったから、店主見た時、店主の名前だと思って、つい、
俺の事、ブーたないでね! 蹴らないでね!って思った、
まぁ、つまらない、洒落だ。
あの店主の名前は、
ミゲール・トレコロフ
って言うらしい、
相変わらず店の格好は古い道具屋か、古物商のようで、店先や、店の中にはガラクタのような物で、溢れ返っていた。
俺が、店に入ると、俺以外、誰もいないし、
この店、儲かってんのか、と心配になる、
カウンタの上に置かれている、円柱の筒が光って、奥から、
「いれえっしぇ、何の御用で、」
と、野太い声のミゲールが、何時もの軍人さん刈りに、筋骨隆々の体で出てきた、
「いやぁ、ミゲールさん、お久しぶりです。」
一応、年上だから、敬語で丁寧にが、俺のモット。
ミゲールは、体付きとは、反対に愛想よく、
「こりゃ、スグルの旦那じゃねぇか、今日は、何のご用で?」
「うん、ちょっとね、料理用の魔導機を買おうと思って、」
「料理ですか?」
って、ミゲールは、あんた、食べるだけの人でしょ、その体付き、ってな事言ってるような、とっても
失礼な顔をした、
ミゲール、俺は喰う専じゃあ、無いのだよ、ちゃんと、自分で作るんだからね、
って、心の中で、反論した。
しかし、俺が思っているより、ミゲールは、俺に丁寧に、料理用の魔導機の事を説明してくれた。
プロとして、料理を作る人は、魔導術を使える人が多いので、そんなに複雑な料理の魔導機を必要としないんだとか、
確かに、エミちゃんは、器用に魔導術を使って料理を作ってた。
需要は、やっぱり、家庭用で、魔導術を使わない人達、そう言う人達は、安い魔導機を、大きな魔導機販売店で買うそうだ、
つまり、此方の世界でも、スグルの世界と同じように、○○電機のような店は有る、
実際、家庭用なら、パルトン本店でも売ってるらしい、
そして、この店に、置いてあったのは、ちょっと大型の『魔導オーブンコンロ』だった。
勿論、業務用で、安宿
等、料理店じゃ無い店で、魔導術が使えない料理人が、簡単な料理を客に出す為の料理機具、
上に、3つのコンロ、下に2つのオーブンがあり、特に、スグルの世界と違うのは、炎の魔導術の熱変換に対応している為、焼く、蒸す、煮る、冷す、凍らせる、の全てに対応している処だ、
俺は、其を、すっーごーく気に入って、買う事にした、値段は、30万RGした、勿論、魔導本で払った、
遺跡で10万RG使ったので、俺の魔導本貯金は、460万RGになった、
あと、飲食酒場で見た、樽があった、此れも、魔導機で、樽に入れた物を暖めたり、冷す事が出来る、優れものだ、
此の樽、欲しいって言ったら、ミゲールが、サービスだと言って、樽を俺に呉れた。
うーん、実に良い店だ、店主のミゲールも顔に、似合わず、サービス精神旺盛だし、
更に、ミゲールは、俺と『魔導オーブンコンロ』と樽を魔導三輪車に載せて、俺の宿舎迄、運び、
そして、魔導機、『魔導オーブンコンロ』を設置してくれた。