遺跡からの帰還
結局、俺が『星の門』を開く為に必要な、魔虫は十万匹で、それを狩るのに、十時間以上は掛かり、
先生も、目を覚まして、上を下への大騒ぎを始め、絶対、此の遺跡を調べると言っている先生を、落ち着かせ、
まずは、腹ごしらえ、となった。
俺達は、俺が予備に取っといた、一個の弁当を二人で分けて食べる事にした。
サンドイッチは、半分こ、バルセリアフライドチキン、俺が付けた名前な、は一本ずつ、
飲み物は、俺が残しといた、一本を、二人で飲んだ、
先生は、何故か、真っ赤な顔して、飲んでいた。
メルティスト先生は、此処から、帰れるかどうかは、全然、心配はしていなかった、俺を信頼しているのか、廻りに遺跡が在って興奮しているのか、
たぶん、両方だな、
飯、食って、俺が荷物を担いで、
「さぁ、帰りましょ、先生」
と、言った時、始めて、先生は俺の方を見て、
「どうやって帰るの、スグル」
と、言ったんで、俺は、
「こうやって、」
と、右手を水平に出し、
『星の門よ!開け!!』と、唱えた瞬間、
俺の右手の指先から、翠光が広がり、
その、翠光は俺達が通れる大きさ、横90センチ、縦2メータで止まった。
よし、此で、俺の寄宿舎と繋がった筈だ。
先生は、目を真ん丸にして、口を開け放った状態で、呆けていて、
俺は、呆けているメルティスト先生の手を握り、『星の門』を潜ろうとした時、
「ちょ、ちょっと、待て!!スグル!!!」
先生は、大騒ぎしていたが、俺は、全て無視して、先生と一緒に、『星の門』を潜った。
潜った先は、俺の宿舎の前の森、
俺の目の前には、宿舎が有る、
時刻は夕方っぽい、
俺とメルティスト先生は、俺の宿舎の前に立っていて、
先生は、唖然として、俺の宿舎を見ている、
「師匠!」
「スグルさん!」
「クゥーン、」
振り向くと、後ろに、ハル、エミ、ケティがいた、
「師匠、『何処でも扉』で、帰って来たんですね!」
俺は、彼等を見て、嬉しくなったのか、自然と笑顔になり、
「あぁ、処で、ハル、今は、何日の何時なんだ?」
ハル、ちょっと驚いて、
「えっ?はい、今は、4月13日の闇曜日で、17時です、もう、僕達、家に帰ろうと思って、」
4月13日の闇曜日、向こうで一日は過ごしたから日付はそんなに違わない、じゃ、向こうが、昼で此方が夕方なのは、時差か?
エミも、俺を見て、安心したのか、嬉しそうに、
「その前に、スグルさんが、帰ってるかもしれないから、寄ろうってハルに、私が、勧めたんだから、」
そうか、有難な、エミちゃん、
『寂シカッタデス』
急な話しで、御免な、ケティ、
ってな、感じで、再会を喜んでたら、
「せっ、せっ、説明しろ!!!!!スグル!!!!!!」
と、正気に戻った、メルティスト先生が、癇癪を起こした。
あっ、俺、先生の事、忘れてた、
結局、俺は、前に先生にした、定番の、遥か辺境の東の国の話から、その国の魔導術、ハルと決めた、『星導術』の話しをし、その術の一つ、『何処でも扉』の説明迄、先生にする事になった、
其を聞いた先生は、俺にバカ、バカ言いながら、そんなに簡単に帰れるなら、もっと遺跡を調べたかったと言い、
俺は、
「其は、無理です、メルティスト先生、」
先生は、えっ、ってな顔で、
「どうして?」
俺は、先生に、今の俺の状態を説明する事にした、
「先生、俺の『星導術』は、凄く体力を使うんです、実は、あの遺跡でも、魔虫に襲われないように、『星導術』を使ってました。」
先生は、ビックリしていた、
ハルが、
「師匠、それって、『星隠し』ですか?」
俺は、ハルの方を向いて、
「ああ、そうだ。」
ハルは、納得して、
「じゃ、師匠、もしかして、腹ペコなんですか?」
俺は、頷きながら、
「まぁ、腹ペコより酷い、飢餓状態、」
此処で、メルティスト先生も、ようやく、俺の状態に気付き、俺が何故、早く帰りたかったか、理解して、一言、
「・・・御免なさい。」
と、俺に謝った。
「と言う訳で、飯にするんだが・・・ハル、お前も食ってくか?」
ハルがちょっと、僕も食べさせて、ってな顔してた、
「えっ、良いんですか、・・・でも」
ハルはちらっとエミちゃんを見る、エミちゃんは仕方ないなぁ、って顔で、
「私は、構わないけど、ちゃんと、ハルが家に送ってくれるなら、」
ハルは嬉しそうに、
「じゃ、師匠、御馳走になります!」
「よし、じゃ、ステーキで、」
と、言い掛けた時、
エミちゃんがいきなり、
「ちょっと待って!料理は、私がする、!」
えっ、エミちゃんが?
「スグルさんは、パンの木実を取って来て、」
俺は、仕切る、エミちゃんに圧倒され、
「はい、」
そして、横にいた、先生のお腹も、
グウゥウウウ、
俺は、先生の方を向いて、
「一緒にどうですか、先生」
先生は真っ赤な顔で、頷いていた。
エミちゃんは、コゥール・ドンを作ると俺達に言い、ハルと先生は、どんなのか知ってるから、喜んでいた、
俺は、
「黒い炭酸飲料がどん?」
エミちゃんは、俺のボケに慣れたのか、
「見て、驚け、スグル!」
と、笑いながら、一言。
そして、俺はエミちゃんが作った料理に驚いた、此は、フランス料理の、
ロティ・ロティール!!!
つまり、オーブンで焼いた料理、
オーブンで焼いた、『アルスパイナ』の肉の上には『星に祝福されし穀物』の野菜が細かく刻んだ状態で添えて有り、全体に白いソースが上から掛かっている。
勿論、俺の宿舎にはオーブンは無い、
と言う事は、エミちゃんは、魔導術でオーブン料理を作った事になる、
すっげえ!
エミちゃんが、言うには、魔導術を使える人が、料理すると此くらいは出来ると言い、
俺はハルに、本当なの、と聞くと、
ハルは、自分は出来ないと首を振り、先生も、無理と言っていた、
ハルが言うには、エミちゃんは昔から料理は上手だったらしい、
確かに、出会った時の、エミちゃんが作った、サンドイッチも、旨かった。
此のオーブン料理は、魔導術の『力』で、見えない壁を作り、その中に熱を入れて、蒸し焼きにしたんだとか、
だから、中まで、火が通って、熱々のジュウ、ジュウで、実に旨い!!!
俺は、また一つ、生活をより楽しくする料理を知った、ハルは、魔導術を使えない人の為に、オーブンの魔導機が売ってる事も、俺に、教えてくれた。
メルティスト先生も、小型のオーブン魔導機を持ってるんだとか。
よし、俺も買おう、そう決意しながら、エミちゃんの料理を食べた。
その日は、帰りが遅くなるので、食事が終わると、ハルもエミちゃんも、直ぐに帰った。
メルティスト先生も、夏季自主講座の資料をまとめる為に、宿舎に帰って行った。
先生は、自分が死にそうになったとは、思っていない、だから、まだ『星の遺跡』の研究の為の夏季自主講座は開催するつもりだ、
勿論、先生は、その夏季自主講座に俺も参加する事で企画を変更すると言っていた、
俺は、へいへい、と軽く答え、
先生は、バァーか、と笑いながら言って帰って行った。
その夜、『星の遺跡』に通じる『星の門』を見ながら、俺は、考えていた。
明日には、ダンが来て、この『星の門』を潜らせろ、と騒ぐ筈だ。
たぶん、あの最新型の魔導防護服を着用していたら、あの程度の『遺跡』に居る魔虫に対して、安全な筈、
問題無い、・・・と、思いたい。
俺は、メルティスト先生の事で、弱きになっていた、生徒の安全性は最重要事項だ。
彼等に、何かあったら、彼等に、もしもの事があったら、彼等には、親や兄弟、愛する家族がいる、
俺とは、違う、
しかし、ハルチカは、『星に愛されし子供』だ、星は、彼に過酷な運命を強要する、
その運命に耐えられるように、俺は彼を鍛えなくちゃならない、
その運命に、他の六名を巻き込んで良いのか?
駄目だ、関係ない人々を、『星託し定め』に巻き込んではいけない、
此は、俺とハルの問題だ、
・・・
しかし、もし、
彼等が、『星に愛されし子供』だったら、
話しは、変わってくる、
一体、この世界に、何人の、『星に愛されし子供』がいるんだ?
確かめる必要がある、
どうやって?
俺は、ズボンのポケットから、10個の魔石を取り出した、
この、魔石は、今、俺の体に星力として、吸収されないように『星隠し』で包んでいる。
此を、明日、彼等に渡した時、俺は、保護している『星隠し』を外す、
その時、体に吸収されたなら、その生徒は、『星に愛されし子供』だ。
『星に愛されし子供』は、ハルと一緒に、『星の遺跡』の最奥迄、連れて行く、
じゃ無かったら、この階層の『星の遺跡』までだ、どっちみち、彼等は、魔導格闘技大会が終われば、『星の遺跡』は関係無くなる。
と言う事は、ハルと本格的に、この『星の遺跡』を攻略するのは、夏以降、早くて、夏季休暇の後半になる、
まぁ、焦っても、しょうがない、
俺は、そう、自分に納得させて、
『星の門』を離れた。
全てを知っている星々は、俺には、何も語ってはくれない、
只、星界で、美しく、瞬く、だけだった、
美しく、