遺跡の真実
コーネルが、私に魔石を投げ、
私が、その魔石を受け取った瞬間、
私の見ている世界は反転した!!
『メルティスト!!!!!』
遠くで、スグルが私の名前を読んでいる、
反転が終わると、遺跡に囲まれた草原の中心に、私は立っていた!
此処は、何処!
ザワザワザワザワザワザワ
草を、何かが掻き分けて来る、
私は、恐怖で、動く事が出来なかった!
バシュ!バシュ!バシュ!バシュ!
草原から飛び出したのは、黄金の巨大なバッタ!!!
何十と言う、鋭い牙が、私に向かって開いて来る!!
私は、悲鳴を上げていた!!
その瞬間、
私の・・・心臓は、
止まった!!!
「殺さないと言う約束だった!!!」
コーネルは、地面に落ちて、消えて行く真四角な魔石を見ながら、
「殺しちゃいねぇよ、只、先生にあれ渡したら、あぁ、なっただけだ、なぁレイ、なんで、おめぇは、そんなに、俺を、嫌うんだ?」
レイは、嫌悪した顔で、
「コーネル、お前が人殺しだからだ!」
コーネルは、考えながら、
「人殺し?あぁ、あの山賊の奴等か、」
レイは、コーネルを睨み付けて、
「彼等は、お前に、助けてくれと言っていた!なのに、お前は!!」
「なぁ、レイ、おめぇは、ガキだから、分かんねぇけど、あぁ言うクズの命乞いは、信じちゃ駄目なんだよ!彼奴ら、助けたら、ぜぇーってえ、俺に逆怨みすんだ!」
コーネルは、更に首を振りながら、
「俺はさぁ、一応、ガキには暴力を振るわねぇ主義だ、だから、許すけど、レイ、おめぇは、正式な村長に対して、口の聞き方、なって無くねぇか?」
レイは、コーネルに怒鳴る、
「父がお前を村長にする分けは無い!!お前が、父に何かしたからだ!!」
コーネルは、笑いながら、
「ちげぇねぇけど、結果は、他の村人は、俺に感謝してんだぞ、綺麗なオべべが着れて、うめぇもんたらふく食えるよになったってな。」
レイは、鋭い眼光で、コーネルに言い放つ、
「何が目的だ!何故!お前は私達から『遺跡』を取り上げる!!」
コーネルはレイに詰め寄りながら、
「じゃ、逆に聞くが、なんで、おめぇ達は、こんなちんけな物を後生大事にしてんだ?」
レイは言い返す、
「神が、私達に託した!」
コーネルは笑いながら、
「神ねぇ、そりゃ、『魔の神』か、『星の神』か、レイ!!!」
レイは驚愕して、
「お前!!!」
コーネルは、やっぱりと言う表情をしながら、
「成る程、『頭の良い俺』の言う通りだ、やっぱ此処は、『魔神様の寝床』と繋がってんだな!!」
レイはコーネルから、一歩下がりながら、
「何故!何故!お前がその言葉を!!」
コーネルも、レイに一歩、詰め寄り、
「あぁ、知ってるさ!『頭の良い俺』が、何故、この場所は、『魔素が濃いのか、不思議に思っていたんだ、勿論、この遺跡が原因だと言う事は分かってたんだがな。」
コーネルは、更にレイに近寄る、
「奴等が消えて、『頭の良い俺』は確信した、奴等は行ったんだろ、『魔神様の寝床』に!!!」
コーネルはレイに顔を近付けながら、
「繋がってるんだろ、此処は、『魔神様の寝床』と、そして、『魔神様の寝床』に有る『魔素』を此処から世界に流してんだろ、レイ!」
レイはコーネルを睨み付けて、
「その事が、お前に何の関係が有る!!!」
ガシッ、
コーネルはレイの顔を掴みながら、
「おりゃ、ガキは殺さねぇ、しかしな、俺にゃ殺さなきゃなんねぇ奴等が要るんだよ!だから、俺は、神の力が要るんだ!俺は、『魔神様の寝床』に行って、『魔神の力』を手に入れる!!!」
コーネルは、レイの顔を掴んだ手に力を入れながら、
「案内しろ、レイ!!!お前達、『星の民の末裔』なら、行けんだろうがぁ、『魔神様の寝床』に!!」
コーネルは、更にレイに顔を近付け、
「拒むなよ、レイ、おめぇの言葉に、ジジイや他の奴等の命が懸かってんだ!!」
バッ、
コーネルはレイを離し、レイはコーネルと距離を取りながら怒った瞳で、
「お前は、お前は、一体、誰を殺すつもりだ!」
コーネルは、鋭い眼光を放ちながら、
「聞きたいか、レイ!」
その恐ろしい、瞳から逃げるように、レイは後さずりし、コーネルは、天を睨み付け、
「魔導省の奴等だ!!」
コーネルは叫んだ、
「俺を、コケにした、」
「ルーフェンス・ガイアードだ!!!」
その憎しみに満ちた絶叫は、遺跡の誰もいない、奥の小さな広場に、何時までも、響き渡っていた。
「メルティスト!!!!!」
俺は、叫びながら、『星の門』を潜った、
世界は反転し、俺は遺跡の有る、草原に立ち、目にするのは、自動人形である『魔虫』が山のように一ヶ所に集まって、群がっている光景!
「先生!!!!」
俺は叫びながら、星剣を振った!
ズバババババババババババ!!!
数十匹の『魔虫』が塵になり、
天道虫型より固いが、俺には関係無かった、
塵になった『魔虫』の下から現れたのは、
血だらけの、メルティスト!
シュン!!
俺は、瞬時に彼女の側に寄った!
彼女は、見た目より、外傷は軽く、彼女に着せた、魔導防護服がボロボロに成りながらも、彼女を守っていた事に安堵し、
大丈夫、此なら、俺の『星の力』で治せる、そう、思いながら、彼女の心臓を確認した時、
俺は、一瞬に絶望に直面した、
彼女の心臓は、
止まっていた。
心因性ショック!!!
くそがぁあああ!!!
ダン!ダン!
俺は、手に、『星の力』を集めながら、彼女に心臓マッサージを始めた、
まだ間に合う!
まだ間に合う!!
と、叫びながら、
星に願いながら、
ダン!ダン!
俺は、カバンに入っている、『星に祝福されし穀物』を食い千切りながら、
俺の持つ、全ての『星の力』を使って、
頼む、間に合ってくれと、
叫びながら、
彼女に、俺の、全ての『星の力』を流し込んだ!!!
世界は暗闇だった。
私は、ゆっくりと深い闇の底に沈んで行く自分を感じた、
此のまま、私は、何処まで沈んで行くんだろうか、
私は、自分の短き人生を、思い出す、
薄れ行く意識の中で、思い出す、
懐かしい、祖母の顔を、私を、愛してくれた、両親の顔を、私が愛した、兄弟姉妹の顔を、
私は、思い出す、祖母が語り、話してくれた、数多の伝説を、
自分が、何れ程、その伝説に恋い焦がれた事を、
私は、深き底に沈んで行く、
私には、何故、好きな人が出来なかったのだろう、
そう、自分に問う、
私が、私に答える、
思い出して、欲しいと、
貴女には、幼き頃より、好きな人がいた事を、
あの伝説を、
月の星姫が恋した、
あの、英雄を、
世界を救い、姫を救い、全ての人々を救った英雄を、
あぁ、私は、思い出す、幼き心に憧れた、あの方を、
・・・
光が見える、
その光の中で、
私の方に、手を差し伸べる、あの方を、
私は、見る、
恋し焦がれた、あの方を、
背は百八十を越えて高く、無駄の無い、引き締まった美しい肉体、
蒼みがかった短い黒髪は清潔感のある、サラサラとした艶の有る髪、
無精髭は、彼の表情に気品を加え、濃い群青色の瞳は世界の希望の光を宿し、
彼は、私の名前を呼ぶ、
メルティスト、
メルティストと、
私は、泣きながら、彼にしがみつく、
ああ、愛しき方よ、
ああ、愛しき人よ、
そう言いながら、
私は、彼に手を廻す、
彼は、私を、優しく抱き締める、
その手は暖かく、
私を、ゆっくりと持ち上げ、
抱き抱えて、
世界は、星空に満ちていた、
ああ、私は、思う、
此の、時、此の一瞬こそが、
私の、全て、
私は、ゆっくりと、瞳を開ける、
世界は、星空に満ちていた、
此の世とは、思えない程の、美しい世界、
横に居るのは、
ちょっと、太った、
スグル・オオエ
・・・
それが、現実、
私は、可笑しくて、笑いだした。
彼は、安堵のため息を付き、一言、
「良かった。」
と、言った。
その時、私は、彼の笑顔が、
素敵だな、って思い、
直ぐに、其を否定しながら、今度は本当に眠りについた、
また、あの素敵な夢を見られる事を願って、
助かった、
先生は、助かった、
俺は、安堵のため息を付き、
先生は、泣きながら、笑っていた、
俺も、つい、ほっとして、笑顔になった。
先生は、安心したのか、眠りについた、なんせ、先生、此処に来る迄にも、仕事していて、あんまり寝てない、
そんな状況だから、ショックを起こしたのか、
もっと、注意をしとけば良かった、
俺は、すっーごぅく後悔した。
俺はコーネル、奴の事を甘く見ていた、奴は、言い訳する筈だ、こんな事になるなんて、知らなかったと、
確かに、奴は、遺跡の事を知らなかった、だが、俺があの広場に入れば何かが起こるって事は知ってたような気がする、
そして、その何かを知りたがっていた、何故だ?
奴は、あの遺跡が星の力の訓練所だとは、知らなかった、
そして、俺達が『星の門』で飛ばされた、此の遺跡も、星の力の訓練所だ、逸れも魔虫は、前の星の力の訓練所の魔虫より、強くなっている、
何故だ?
此じゃ、スグルの世界のゲームのような世界だ、
だいたい、何で、星の力の訓練所だけが、此の世界に残ってんだ?
勿論、此の施設は、俺の為じゃ無い、俺には、こんな弱い施設は必要無い、
じゃ、誰の為に、
有るんだ?
・・・
まさか、
ハルか?
ハルチカの為に、こんな大規模な施設を、残したのか!!!
・・・
そんな事は、まぁ、無いな、
けど、確かに、ハルのレベルなら、ハルを鍛えるなら、此の施設はピッタリだ、
ハルを此処に、連れて来て、『星の力』の使い方と戦いを練習させる、
たぶん、此処で、訓練する事で、ハルは、より、『星の力』をコントロールする事が出来るようになる筈だ、
だが、ハル達は、魔導格闘技大会の団体戦の練習として、『星の遺跡』に来たがっていた、
ハルだけって訳にはいかねぇだろうなぁ、
彼等も、此処に来たがるだろうし、
まぁ、付いて来るな、
その時、ハルは、『星の力』を使わせる、
で、他の6人はどうする、
・・・
まぁ、コーネルも、魔導術、使ってたし、魔導術の練習をさせてりゃ良いか、
深く考えてもしょうが無いし、
其に、此の遺跡も、最奥にいる自動人形を倒すと、次の星の力の訓練所に行けるとするなら、
次の星の力の訓練所、その次の星の力の訓練所、そして最後の星の力の訓練所の場所には、何が有るんだ?
俺は、立ち上がりながら、
さぁてと、俺は、結局、先生を助ける為、俺の『星の力』を全て使っちまった、
其に、『星に祝福されし穀物』も食べちゃたし、『星の門』で、寄宿舎に帰るにしても、
今の、俺には『星の力』が、殆ど無い。
幸、此処には、『星の力』を持つ、『魔虫』が沢山いる、
まぁ、一時間、千匹、狩りゃ、帰れる程度の『星の力』、貯まるんじゃないかな。
『魔虫』は、俺の『星隠し』の中には入って来ない、
メルティスト先生は、『星隠し』の中で寝てて貰えば良い、
俺は、『星隠し』の外に出た、
ザワザワザワザワザワザワ、
『魔虫』が、俺の廻りに集まっている、
さぁ、始めっかな。