星の遺跡
俺とメルティスト先生は、『星の遺跡』の有る、コレステリラ村で、村長のコーネル・オリゴンと出会った。
彼は、兎に角、下品で、スグルの世界のやが付く人に、似ていた。
その彼が、遺跡の入園料で、1万RGも取るのに、ガイドは、レイちゃんを付けてくれるうえに、タダで良いと言った。
彼は、その理由を、笑いながら、話してくれた、
実は、此の遺跡の奥に、先住民が怖がって決して近付かない小さな広場が有るんだとか、
で、コーネルは、村長になって、此所を観光地にするに当たって、危険な場所を知っとく為に、其処に、嫌がる、レイを説得して、行った。
先生は、コーネルに、
「怖く、無かったんですか?」
コーネルは、笑いながら、
「怖く無いっすよ、俺りゃ、『超上級魔導士』すっよ、」
メルティスト先生は、苦笑いを浮かべた、
で、一人で、その広場に入ったけど、結局、何も起こらず、先住民は怖がるので、その場所だけ、進入禁止にして、観光地、『星の遺跡』を開業した、とコーネルは説明し、
学校の先生から、連絡が来たので、ちょうど良い機会だから、調べて貰おうと思い、俺達と会う事にした、
と、彼は、俺達に言った。
俺は、直ぐに、
「先生、今日は、下見です、8時には帰るんですから、危険な事は、ダメだ!」
と、先生に忠告した、だが、先生は暫く、考えた後、
「スグル、生徒が、夏期休暇には、此所に来るのよ、もし、本当に危険なら、此の計画は、中止にしなくちゃなんないの、」
中止!!!
「分かるでしょ、スグル、生徒の安全が掛かってるから、私達は此所に来た、だから、私達は、事の真義を確めなくちゃならないのよ、その話が、迷信か真実かを、」
・・・確かに先生は、・・・立派な人だ、
俺を、バカバカ、言わなければ、
「・・・分かりました、先生、但し、『遺跡』の中では、絶体、俺の指示に従って下さい、其が、条件です。」
先生は、ニコリとして、
「分かったわ、スグル!」
「で、なんで、私だけが、こんな魔導防護服を付けなくちゃ、なんないの?」
先生は、両腕、両足に筒状の防護服を付け、胸には胸当て、頭には、お鍋を被って、動きずらそうだった。
・・・成る程、あの魔導防護服が人気だったのは、良く分かった、此は、酷い、
でも、俺は心を鬼にして、
「脱いじゃダメです、先生、先生の安全の為です!!」
俺は、先生に条件として、魔導防護服を着て貰う事にして、レイちゃんに、二人の入園料と、先生と俺用の棒、二本、合計、8万RGを払った。
コーネルは、俺に近付いて、笑いながら、
「スグルさん、あんた、そんなに強いのに、随分、慎重なんすね、」
俺は、彼に聞いた、
「コーネルさん、俺と貴方は、今日が初めての、初対面の筈だ、何で、俺が強いと分かるんですか?」
彼は、ニヤニヤして、頭をこんこん指しながら、
「俺りゃ、『超上級魔導士』ですよ、強い奴は、此所に、ビンビン来て、分かるんすよ、其に、レイだって、分かってる、なぁ、レイ、スグルさんって強いよなぁ。」
彼は、話しを、レイに振り、
俺は、レイちゃんを見た、
レイちゃんは、真っ直ぐ、俺を見ている。
・・・
ふぅ、まぁ良いか、
こうして、
魔導防護服を着た先生と、自分の荷物と先生の荷物を担いでいる俺は、先生と俺の準備が出来るのを待っていたレイちゃんの案内で、『星の遺跡』の中に、入って行った。
『星の遺跡』は、塀に囲まれた、町の廃墟で、塀の高さはまちまちだが、平均して、俺の背ぐらいだから、1.8から2メータぐらいなのか、
何か模様が、内側に描いて有る、
俺は、塀の近くに寄り、その模様を良く見ると、
えっ!
此は、
俺は、その模様を触ってみた、
間違い無い、
『星隠し』の『星回路』!!
「どうしたの、スグル?」
俺が立ち止まって、塀を見ているので、先生が心配して声を掛けてきた、
「大丈夫です、ちょっと、珍しかったから、」
間違い無い、
此の遺跡は、見た目と、真実が違う、見た目は、今にも崩れそうな廃墟だが、本当の姿は、金属で作られた頑強な都市だ!
何の為に?
何故、こんなもんを作ったんだ?
こんな、膨大な『星回路』を描けるのは、
金星の錬金士!!
彼か、彼なのか?
「キャ!!」
えっ、先生の悲鳴、
「大丈夫、其が『魔虫』」
レイが、先生を落ち着かせようと、声を掛ける、
見ると、先生の足元に、デッカイてんとう虫、
?
その、てんとう虫の背中にも、 『星隠し』の『星回路』
バコン、ガコン、ベコン、
コーネルは邪魔ってな感じで『魔虫』を蹴りまくっていた。
ペコペコペコペコ、
先生は、一生懸命、棒で『魔虫』を叩いている、
レイは慣れているのか、足元にいても気にして無いようだ、
俺は、試しに、『魔虫』を、持ってる棒で、小さく叩いてみる事にした、
バコン!!!
えっ?
消えたの?
『魔虫』は、一瞬で消えて、残ったのはキラキラ光っている、魔石、
コーネルが、その魔石を拾いながら、
「流石っすね、スグルさん、瞬殺、見事なもんだ、此は、あんたのもんだ、記念に、タダで良い、」
そう言いながら、彼は、俺に魔石を手渡した、
瞬間、
えっ?
魔石は消え、
ほんの、僅かな、星の力が、
俺の体に、
入ってきた。
・・・
そう言う事か、
そう言う事だったのか、
此所は、
此所は、
『星の力の訓練所』だ!!!
「成る程、星の力か」
えっ、
目の前の、コーネルは、理知的な表情で呟いた、
お前、
「どぅしやした、スグルさん 魔石を無くしたんすか?」
目の前の、コーネルは下品な、コーネル、
見間違いか?
「仕方無いなぁ、じゃ」
パチン、
コーネルが、指を鳴らした瞬間、
バコバコバコバコバコバコ!!!
「えっ!」
「きゃ!」
先生が悲鳴を上げ、レイちゃんは慣れているのか無表情、
一瞬で、回りの『魔虫』は消え、残ったのは魔石、
こいつ、
本当に、上級魔導士なのか!
コーネルは、魔石の一つを拾い、先生に近付いて、
「はい、先生、此は、あんたのだ、無くさないで下さいよ、」
彼は、笑っていた。
俺は、星の力の無い世界に流され、そして多くの世界で何度も生まれ変わって、その世界で多くの時間を生きてきた。
それらの、俺が生まれ変わった数多の世界に共通する事は、
必ず、戦や戦争が有り、
その為に、戦う兵士が、存在する事だった。
何処の世界の兵士も、戦に備えて、体を鍛え、訓練に励み、そして、心の準備を欠かさない日常を過ごしていた。
そんな兵士を、一流にするには、実戦経験が一番で有る事は、どの世界にも共通だったのだが、
どの世界も、そう簡単に、戦争や戦は起きない、
一生涯、戦争や戦いの無い、世界もあった。
そんな戦争が無い世界では、兵士達は実戦経験を積めないから、優秀な兵士には育たない、
だが、何処の世界の国でもいざと言う時の為に、優秀な兵士を育てて行かなければ、ならない、
では問う、どうやって、優秀な兵士を育てるのか?
そして、答える、
その為に、重要な手法が、
模擬戦、で有る事を!
模擬戦は、古来、東西、何処の世界にもあり、その種類、手法は千差万別だった。
只、敵と味方に別れて戦う、
戦場を作って、其処で、戦う、
仮想の世界で、仮想の敵と戦う、
『星の力の訓練所』、
此も、模擬戦の為の道具だった。
隔離された訓練所に、自動で動く人形を放ち、俺達は人形を倒すのに『星の力』を使う、
注意する事は、『星の力』は無限には無い、限られた『星の力』で効率良く、人形を倒さないと『力』は直ぐに枯渇する、
だから、最初の段階では、難度を低くして、倒した人形から、『星の力』が手に入るように設定されている。
初心者向けの訓練所には、初心者向けの簡単な敵である、自動人形が配置され、
初心者は直ぐに『星の力』が枯渇するから、自動人形を倒すと、『星の力』が補給出来るようになっている。
簡単な敵、補給される、『星の力』
正しく、此所は、初心者向けの『星の力の訓練所』
ならば、際奥に有るのは!
俺達は、レイの案内で、『魔虫』を退治しながら、此の廃墟を進んで行った。
階段を登り、屋根を登り、家屋の中に入り、
先生は遺跡を調査しながら、俺は、先生の回りに来る、『魔虫』を退治しながら、
廃墟の奥へ、奥へと進んだ。
そして、廃墟を歩く事、一時間、
俺達は、廃墟の中心の小さな広場にたどり着いた、
廃墟の中心に有るのは、踞る2メータを越える人型の白い像、やはり、その像にも『星回路』が全身に刻まれていた。
自動人形!
特筆すべきは、その頭、バッタのような被り物をしている、勿論、スグルの世界のバッタ型ヒーロのような格好いい顔じゃ無い、本当のバッタ顔だ、
獰猛そうな、巨大な口を持つ、凶悪なバッタの頭だ。
「先生、注意してください!」
「分かってるわ、スグル」
そう、言って、先生は一歩、広場の中に入った。
「スグルさん、用心棒のくせに、先生を先に行かせちゃいかんでしょ!」
と、言いながら、コーネルは俺を押し出した!
ドン!
コーネル!お前え!!
その瞬間、
ギギギギギギギギギギ!!
俺が広場に入った時、
像は、ゆっくりと顔を上げ、俺を見た、
レイが叫ぶ、
「逃げて!」
コーネルが、感心して、
「へぇ、そう言う仕組みなんだ。」
ちっ、やっぱりそうか!此の自動人形は、俺の星力に反応した!
ググググググググググ!!
像はゆっくりと立ち上がる、
大丈夫だ、所詮、初心者向け、
「先生、俺の後ろに、」
先生は、直ぐに、俺の後ろに隠れる、
バッ!!!
瞬間、自動人形は俺の前に、手には『星回路』が刻まれた、巨大な大剣を大きく翳しながら、
「キャアアアアアアア!!!」
レイと先生が悲鳴を上げた!
此の、自動人形、普通だったら、確かに早く、厄介な存在だ、しかし、
俺からすると、はっきり言って、本当に初心者用で、遅い!!!
バッ!!!!!
俺は、『星剣』を振った、
たぶん、此のスピードなら、レイも、先生も分からない筈だ、
コーネルは、気付いたな、
奴は、此のスピードの世界でも、口元を若気させている、
見ましたよ、スグルさん、
そう言っている唇だった。
バシュウウウウウウウウ!!!
こんな、雑魚、俺が戦う相手でも無い、
自動人形の首が飛び、
ズズズズズズズズズズ、
自動人形が、ゆっくりと砂になり、どんどん、地面に吸収されていく、
最後に残ったのは、『星回路』が刻まれた、5センチ真四角の正方形の箱、
「へぇ、此が、こいつ退治した時に出る、魔石なんだ、」
えっ?
何時のまにか、コーネルが、その箱の前に立っていた!
彼は、指を動かしながら、
「じゃ、先生、此れ、調べてくんない。」
バッ!
その瞬間、箱は、持ち上がり、メルティスト先生の方に飛んで行った、
レイが叫んだ!
「ダメェェェエエ!!!」
その時、俺は、はっきりと見た、
箱に刻まれている、『星回路』を!!!
あれは、『星の門』!!!
バッ!
俺は、箱を奪う為に、先生の前え、
スカッ、
えっ!!
箱が、・・・消えた!
「スグル、此れ、」
俺は、直ぐに振り向き、先生を見た、
先生の手に、箱が、
コーネルが笑っている、
「先生!その箱を離せ!!!」
俺が、怒鳴った瞬間、
バシュウ!!!
先生は、箱に吸い込まれ、
「メルティスト!!!!!!」
俺は先生の名前を叫びながら、先生の後を追って、
魔石の箱が作る、『星の門』に、
飛び込んだ。