村長
俺と、メルティスト先生は、
4月11日の雷曜日
スグルの世界で言う、土曜日に、『星の遺跡』を視察する為に、『星の遺跡』の村コレステリラ行きの、魔導船に乗った。
メルティスト先生は、夏季休暇に開催する、夏季自主講座の企画書を教魔省に来週中に提出する為、時間を惜しんで、この魔導船に乗っても仕事をしていた。
先生は、結局、真夜中過ぎ、明け方近くまで、仕事をしていた。
俺も、この船の不味いお茶を先生に出したりして、結局、真夜中まで付き合い、
そして、船は予定通り、
4月12日の光曜日、
朝の8時に、
遺跡の村
コレステリラ
に、着いた。
コレステリラは回りが山に囲まれた山間部に有る村で、其処から、歩いて一時間程の場所に、『星の遺跡』が有る。
コレステリラ村について先生が言うには、
元々は、小さな村で、僅かな田畑を耕して生活している、閉鎖的な本当に貧乏な村だったらしいんだが、
3月の終わり頃に、外から沢山の移住者が大勢来て、その移住者の中から村長が選出されてから、
村は、大きく変わったらしい。
まず、村長のした仕事は、村に、魔導船発着場を作り、魔導船を運航させた事、
此れは、先生にとっても良い事だった。
更に、新しい村長は、『星の遺跡』を、観光地として、宣伝し、その結果、多くの人が『星の遺跡』を見る為に、この村に来るようになったんだとか、
成る程、今日は光曜日、此の国の休日、だから、あの魔導船にあんなに人が乗っていたのか。
一応、先生はトンボ帰りする気だから、今日の夜、8時発の魔導船に乗るつもりでいる、
其で、バルセリアに翌日の16時に着き、17時から取材した資料を纏めるんだとか、
勿論、帰りの魔導船の中でも仕事はするそうで、
俺は、マジに、此の先生を、凄いと思うようになっていた。
俺の事を、バカバカ、言う事を除いては、
しかし、スグルの世界でも、殆どの遺跡は観光地になっているから、遺跡を観光地にする事、自体は俺にとっては珍しく無い、しかし此の国では遺跡を観光地にする事は、あまり無いのか?
何か、宗教的な理由が有るのか?
俺は、メルティスト先生に、その事を聞いてみた、
先生も、理由は分からないらしい、
此の世界の遺跡は、殆どが『星の時代』の物で、其々の遺跡には必ず、閉鎖的な村が有り、彼等が『遺跡』を管理している、
彼等は『守り人』と呼ばれ、けっして、よそ者を入れないのが普通だと、俺に教えてくれた。
だから、何故、此の『星の遺跡』の『守り人』は、移民を許し、更に、『星の遺跡』を観光地にする事を許したのか、
其を知りたくて、此の『星の遺跡』に来たんだそうだ、更に、その鍵を握っている、人物、村長に話しを聞くため、
彼と、遺跡の麓で会う事になっていて、俺と先生は、魔導船から降りると、直ぐに、『星の遺跡』に向かい、
俺と先生が、歩く事、一時間、『星の遺跡』に着いた時、
村長は約束通り、『遺跡』の手前で、俺達を待っていた。
彼の名前は、
コーネル・オリゴン
と言った。
彼は、歳は俺に近いと思う、此の国では、よく見る白髪を軍人さん刈りにしていて、そして、珍しいサングラスを掛けている、
彼は、目が悪いのか?
彼は、俺達に手を差し出しながら
「え~と、先生ですよね、俺は此の村の村長をやってる、コーネル・オリゴンって言いやす。」
先生も、手を差し出し、
握手しながら、
「バルセレイ魔導高等学校で、魔導考古学を教えている、メルティスト・ブーレンダです、宜しくお願いします。」
彼は、俺を見ながら、
「で、此方の方は、先生の彼氏、っすか?」
先生は、真っ赤な顔して、
「ちっ、違います!彼は、内の、学校作業員で、スグル・オオエさんです!!」
「スグル?」
ん?
彼は、一瞬、俺の名前に、眉を潜めた、
彼は、不思議な顔して、
「学校作業員って?・・・すんません、先生、俺、訳あって、中学校も、満足に行ってねぇから、学校の仕組み、良く分かんなくて。」
先生は、ちょっとビックリして、
「彼は、此の地区の治安が悪いので、私の護衛に、一緒に来てくれた人です。」
コーネルは、納得した顔で、
「あぁ、用心棒ですね、でも、先生、そいつの仕事はもう無いですよ、此処等辺をシマにしていた、山賊野郎達は、俺達が絞めましたから。」
?
彼は、俺の事を、そいつと呼んだ、
先生は、おそるおそる、
「あの、コーネルさん、しめる、ってどう言う意味なんですか?」
コーネルは、ニヤリと笑いながら、
「ああ、カタギの人には、分かりませんね、絞め殺すって意味ですよ。」
先生は、驚いて、
「殺したんですか!!」
コーネルは、当然って顔で、
「当たり前でしょ、先生、奴等、山賊すっよ、散々、人殺したり、物、奪ってる奴等ですよ、確か、村長には、じ、え~と、何とか権ってのが有るんでしょ。」
先生は、引きながら、
「自衛防衛権ですね。」
彼は、嬉しそうに、
「そう、それそれ、流石、先生だなぁ、難しい事を、良く知ってる。」
何なんだ、彼は、
気のせいか、彼の口調は少し乱暴で下品な気がする、何か、スグルの世界のヤがつく人みたいな、喋り方だ。
こんな、下品な奴が何故、村長になったんだ?
俺達と、コーネルは、『星の遺跡』に向かい、
先生も彼のような人物が村長になった事が気になり、歩きながら、彼にその事を、聞いた。
「俺が、村長になった理由ですか、まぁ、俺が偉大な魔導士だからっすね、」
えっ、こいつ、魔導士なの?
先生も、ちょっと驚いていた、
「其に、金儲けも得意だしね、」
彼は、笑っていた。
先生は、言葉を選びながら、
「あの、コーネルさん、コーネルさんは魔導士なんですね、やはり、中級魔導士なんですか?」
コーネルは、少し、恐い顔で、
「嫌だなぁ、先生、俺りゃ、『超上級』の、魔導士っすよ、見くびらないで下さいね、先生」
超上級?
そんなの、あんのか?
先生は、慌てて、
「すみません、コーネルさん、そう言えば、コーネルさんは、先住者に見えませんが、やはり、移住者なんですか?」
コーネルは、機嫌を直して、
「そうすっよ、俺りゃ、都会的でしょ、こんな田舎者じゃねぇ。」
先生は、ちょっと安心して、
「じゃ、移住した理由も、『星の遺跡』と関係が有るんですか?」
コーネルは、首を振りながら、
「無いっすよ、先生、あんな、汚いもん、」
先生は、奴の、汚いって言葉にビックリしていた、
「じゃ、何故、」
彼は、当然そうに、
「決まってるじゃ、ないっすか、『魔素』っすよ、此所は、『魔素』がすっーげえ、濃いんすよ、先生」
えっ、『魔素』の濃さって分かるの?
俺は、メルティスト先生に聞いてみた、
「普通の人には、分からない筈よ、スグル」
奴は、笑いながら、
「そりゃ、そうっすよ、俺りゃ、超上級の魔導士っすよ、普通とは、訳が違う。」
・・・そんな、会話をしていると、俺達は、『星の遺跡』に着いた。
『星の遺跡』は、石造りの家屋の廃墟群で構成されている都市の遺跡で、二千年前の『星の国』の都市の面影は全然、無かった。
コーネルは、俺達に向かって、
「さて、此れから、中に入るのには、一人、1万RGっす、どうします?先生」
先生は、ビックリして、
「お金取るんですか!」
コーネルは、当然って顔で、
「当たり前っすよ、こっちは先生と違って商売だから、頂きまっすよ。」
まぁ、観光地なら当然だし、スグルの世界では普通だったから、俺は驚かなかった。
俺は、メルティスト先生に、
「先生、俺が立て替えましょうか?」
先生は、黙って、首を縦に振った、
・・・先生、やっぱ、金、無いんですね。
回りを見ると、お揃いのベージュのワンピースを着た、女の子達が、他の観光客の人達に黒い箱を持って、何か説明しながら、お金のやり取りをしていた。
コーネルが、怒鳴った、
「おいっ!!レイ!!客だ!!此方に来い!!」
レイと呼ばれた、少女は、ビクッとして、直ぐに、此方を見た後、自分の接客している人を、他の女の子に引き継いで、此方に来た、
・・・こう言うところが、こいつ、ヤが付く人っぽい。
彼女は、紫が入った、長い髪をツインテールにしていて、その瞳は、赤い透明、
気のせいか、彼女は、震えている、
彼が、恐いのか?
コーネルが、俺達に彼女を紹介した、
「こいつ、レイティシア・バリデュワ、前の村長の娘で、一番、遺跡の事、知ってるす。」
彼女は、おそるおそる、
「御客様?」
コーネルは笑いながら、
「あぁ、そうだ、其も、俺とは無縁の、学校の先生様だ。」
彼女は、明るい顔で、
「先生!」
メルティスト先生も笑顔で、答える、
「バルセリア魔導高等学校で、魔導考古学を教えている、メルティスト・ブーレンダ、宜しくね、レイティシアさん。」
レイティシア嬢が、俺を見て、
「そちらは?」
「あぁ、俺は、同じく、バルセリア魔導高等学校で、学校作業員をしている、スグル・オオエです。」
彼女は、ビックリして、
「学校作業員!」
何故、驚く?
「え~と、レイちゃん、って呼んでいい?」
彼女は、少し嬉しそうに、
「はい!」
コーネルは、にやついて、
「女の子には、随分、気安いんですねぇ、スグルさん」
・・・どうやら、奴は、俺が、警戒している事に気付いているようだった。
コーネルは、レイちゃんに指示をだした、
「じゃ、客人に、説明してやんな、レイ」
レイちゃんは、俺達に説明を始めた、
「中の『遺跡』に入るのに、一人、1万RG、中には、『魔虫』がいる。」
俺と先生は、驚いて、
「魔虫!!」
レイちゃんは、慣れているのか、
「大きさは、犬、程度、害は無いけど、ウザイ、追い払う為の武器は、5000RG、」
彼女は、棒を、俺達に見せた、
はっきり言って、只の、木の棒だよね、
「此の武器で、上手く、『魔虫』を退治出来れば、『魔石』が、手に入る、一個、500RG」
俺と先生は、再び、
「『魔石』!!」
彼女は、手を開いて、キラキラ光る透明な赤い石を見せてくれた、
「色は、いろいろ、有る、皆、お土産で買う。」
先生は唖然として、
「お土産・・・って」
まんま、観光地、価格も、観光地単価、其に、何か、スグルの世界に良く有る安物のアトラクションぽい、
レイちゃんが、話しを続ける、
「あと、魔導防護服の貸し出しもしてる、5万RG、ガイドは、一時間、3万RG、用心棒は、10万RG」
その時、コーネルが動いた、
「レイ、客人は、わざわざ、バルセリアからお出で下さった、先生だ、レイ、お前が、案内しろ、ただで良い、」
レイちゃん、驚いて、
「えっ!」
コーネルは、俺の近くに来て、気安く、肩に手を置きながら、
「レイ、此の方は、ものすっげえ、強ぇえ、用心棒の方だ、アソコに案内してやれ、勿論、俺も行く、」
レイちゃんは、驚いて、
「まさか!」
「そうだよ、アソコだ、お前達が恐れている、彼処だ!」
と、コーネルは笑いながら、言った。
・・・
で、彼処って、
何処?