師弟関係
「僕は、僕は、・・・此れから・・・どうしたら、・・どうしたら良いんですか!」
俺は、星が、ハル君に力を授けた理由を話し、
そして、ハル君は、俺の話しを信じる事に決め、此れから、何をしたら良いか、俺に聞いてきた。
で、俺としては、
・・・さてと、どうしたら良いんだ、
はっきり言って、俺もどうしたら良いか分からない。
だいたい、俺は人に物を教えた事が無い、幾多の、『力無き世界』で死んで、また何度も生まれ変わって、いろんな職に就いてきたけど、教師だけは、やった事は無かった。
其に、俺は何時も、何かと闘ってたし、結果、負けてばっかだったけど、頭、使って勝つなんてのも無かったし、あまり、頭、良くないから、人に教えるのは苦手なんだよなぁ。
まぁ、適当にやっかな。
「あのー、スグルさん?」
俺が、黙っているので、ハル君が心配し始めた。
「コホン、じゃ、明日ね、明日から、特訓、始めっか。」
「えっ!特訓?」
ん?
ここ、驚くとこ?
「えーと、普通、此の流れだと、ハル君は俺の特訓を受けて、成長するんじゃないのか?」
「えっ、そうなんですか?」
いや、スグルの世界の少年漫画の定番は、だいたいそうだし、
あっ、その前に、こう言う時は、だいたい、流派とか、流儀とか、格好いい名前があったよなぁ、
「なぁ、ハル君、毎回、『星の力』って言うのも、何か、変だし、俺とハル君とで、名前を決めよう。」
ハル君が、ちょっと興味を持ったようだ。
「うーん、力の名前ですね、『魔導術』は一般的ですから、其にちなんで、『星導術』、ってのはどうでしょう。」
えっ、『星導術』!
ちょっと、格好、良くねぇ!!
『星導術』かぁ、良いねぇ。
「じゃ、ハル君。明日から、『星導術』の特訓だ!」
「はい、スグルさん!」
・・・
「ハル君、其処は、『はい、師匠!』だろ。」
「・・・スグルさん、『師匠』って何ですか?」
うん、師匠って言っても知る分けねぇよなぁ。
まぁ、普通はそうだよ異世界だし、あっ、そう言えば、俺が普通にしている事を、其らしく、教えれば良いんじゃねぇの?
「なぁ、ハル君、『星波』を指先に出して、俺に見せてくれないか。」
また、ハル君が不思議そうに、
「星波?」
「あぁ、『星の光』の事、此も、毎回、『星の光』って言ってたら、長いから、『星波』って呼ぶ事に決めた、格好悪いか?」
ハル君は、嬉そうに、
「いえ、格好いいです、そうか、『星波』か、なんだか、凄く、其らしくなって来ましたね、スグルさん、」
俺も、ちょっと嬉しくなって、
「そっ、そうだろ、そうだろ、技に、名前付くと格好いいんだよ!」
スグルの世界の少年漫画も、だいたい、カメ○○波とか波○法とか、結構、波って使うし、後、ガンとか、羅○丸とか、いけねぇ、楽しくなってきた!
うん、何か、形になってきた、
あと、スグルさんって呼び方はダメだ、ムードが台無しだ。
「其とな、さっきの続き、お互いの呼び方な、俺は、ハル君の先生だから、君は、俺の事、『師匠』って呼ぶの、で俺は、君の事、ハルって呼ぶから、良い、分かった。」
ハルも、理解して、
「はい、分かりました、師匠!!」
・・・なんか、良くねぇ!
良いよ、良いよ、この感じ!!
俺、師匠って呼ばれてるよ!
まぁ、男の子にだけどね、
スグルの世界の漫画やアニメ、ゲームだと、ここは、だいたい、美少女を育成して、
「・・・師匠?」
いけねぇ、いけねぇ、煩悩退散、煩悩退散!
「コホン、じゃ、最初から、ハル、右手の人指し指に『星波』出して見て、」
「はい!師匠!!」
うん、元気があって宜しい。
ハル君は、右手を上げて、人指し指を、ほんの僅か、翠光に光らせた。
「うん、良いよ、良いよ、じゃ、もっと、光らせて、」
「えっ、もっとですか!」
「そうだよ、出来んだろ?」
「まぁ、出来ますけど、」
「やって、やって、ぱっと、派手に!」
「えっ、派手にですか、」
「そう、派手に!明るく!!」
「はい!」
「おっ、良いねぇ!良いねぇ、ってハル?」
ドサッ!!
「えっ、ハル、ハル!なんで倒れたたの?なんで??」
ハルは、口を動かす事は、出来るようで、
「師匠、・・・あまり、星波を使い過ぎると・・・僕、・・・動け無くなっちゃうんです。」
えっ!そうなの!!
俺は、慌てて、ハルに『星に祝福されし穀物』で作った、お茶を飲ませた。
暫くすると、動けるようになったハルは、俺に事情を詳しく説明した、
ハルが、あのショボイ星の力を使えるのは、だいたい5分、其も、一日、三回が限度なんだとか、
・・・
一体、どう言う事だ?
かっての『星に愛されし子供』だったら、『星の慶事』を承けた段階で、『星の力』を半日ぐらいは余裕で使えた筈なんだが?
其も、だいたいが、小学校だった。
高校生のハルだったら余裕だと思っていたんだけど、
何が、原因なんだ?
・・・
考えられる事は、
「なぁ、ハル、此は、俺の友達で、すっげぇ頭が良かった、天皇星の大賢者って奴が、言ってた事なんだが、」
俺は、彼が言ってた事を思い出しながら、
「『星に愛されし子供』には、『星の力』を体に取り込む為の『扉』、まぁ、穴みたいなもんだな、が有るんだそうだ」
ハル君は、真剣に俺の話しを聞き出した。
「『扉』ですか?」
「そっ、『星の扉』、で、『星に愛されし子供』になった時、普通で、三扉が開くと言ってた。」
ハルは、不思議そうに、
「三扉ですか?」
「ああ、お腹当たりにある、『地星の星扉』、右の胸当たりの『右星の扉』、左の胸当たりに有るのが、『左星の扉』、此を三扉と呼ぶらしい。」
ハルは、自分の体を触って、
「そんなの、有る気がしませんけど、師匠?」
俺は、首を振りながら、
「自分じゃ、わからねぇよ、此は、あくまでも、天皇星の大賢者の仮説だ、」
俺は、話しを続けた、
「でな、彼が言うには、俺くらいになると、更に、胸の中央の、『空星の星扉』、そして、額に有る、『天星の星扉』まで、開いているから、俺はとてつもない、力を使う事が出来る、其が彼の仮説」
ハルは不思議そうに、
「其で、僕は、どうなんでしょう、師匠」
俺は、考えながら、
「俺が思うに、ハルは、たぶん、最低限の『地星の星扉』しか開いてねぇんじゃないの?」
ハルが、直ぐに、
「仮に、僕がその、『地星の星扉』しか開いてなかったとしても、師匠なら、残りの僕の『扉』を、開ける事は可能なんでしょ。」
いや、ダメなんだよ、ハル、
「そのな、ハル、ほら、まさか、こんな事になるって、思って無いじゃん、だから、当時の俺は、何、アホな事、言ってんだと天皇星の大賢者の事、思っていたから、此の話しを真剣に聞いて無かった。」
ハルは、まさかってな顔で、
「と、言うことは、」
「つまりな、」
「つまり?」
「俺なぁ、彼から、『扉』の開け方聞いてねぇし、だから、俺は、ハルの、その、『星の扉』の開け方、知らねぇんだよ。」
「えっ!」
「まぁ、そう言う事だ、ハル」
ハルは、ちょっと怒って、
「駄目じゃないっすか!師匠!!」
ハルは、俺を呆れたような目で見た、
やばい、俺の師匠としての威厳が危機、
まぁしゃねぇ、此も、本当の事、ハルに言ってみっか、
俺は、『星の扉』について、もう少し、説明する事にした、
「なぁ、ハル、俺が知らなかったのは、良い事だったんだと思うよ。」
「はぁ?」
ハルが、何、言ってんのって表情してる、
「俺が何故、此の事を覚えていたのかは、当時、俺に憧れて無理した奴らが、『星の力』を喪った事件が起きてな、」
ハルは、驚いて、
「えっ、『星の力』って失われるんですか?」
「ああ、其の事件を調べていたのが天皇星の大賢者なんだ、其で、俺も彼に協力して、彼は『星の扉』を発見した。」
「で、『星の力』を喪った奴等の共通点が、『星の扉』の『扉』を、禁断の『星の力』、まぁ、星導術だな、其を使って、無理に抉じ開けようとしたからなんだ、其が原因で、『扉』が破壊されて、『星の力』を喪ったらしい。」
ハルは、愕然とした、顔で、
「ほ、本当なんですか!師匠!!」
俺は頷きながら、
「こんな話しに、嘘、言ってもしょうが無いだろ、当時、簡単に強くなる禁断の『星導術』が流行ったんだ、」
「俺は毎日、何万回、『星剣』を振るだけで、強くなったからその『星導術』に興味無かったけど、たぶん、興味があっても、」
俺は、ハルにはっきりと言った。
「天皇星の大賢者は、俺には必要無かったから俺には教えなかった筈だし、彼が、その方法を他の奴に教えたとも聞いて無い、」
「其にな、ハル、例え、『扉』を開ける方法を知っていたとしても、ハルには教えない!」
「えっ!」
ハルは、ビックリしてる。
俺は、ハルに、俺の考えを話す、その考えが、古くて、時代遅れでも、
「なぁ、ハル、力ってもんは、簡単に手に入る力は、色んな意味で危険なんだと思うよ、しかし、自分が努力して、手に入れた力は、絶対、本物だ。」
「俺が思うに、ハルの『星の扉』が『地星の星扉』しか開いてないのは、何か意味が有る事だと思うし、其を無視して、無理矢理抉じ開ける事って良い事とは、思えねぇなぁ、」
ハルは、再び、俺を尊敬する瞳で、俺を見ている、
「だから、たぶん、ハルも、俺に及ばなくても、ハルが、ハルなりに努力すれば、その時、自然に、『扉』が、開くんじゃねぇの、ハル」
と、励ましてるのか、自分の自慢してるのか、分からない内容で、此の話しを、俺は、打ち切った。
「じゃ、最初からな、右手の人指し指に、『星波』を出して、今度は、針の先位で良いから。」
ハルは元気良く、
「はい!」
本当に、針の先程の光が灯り、
「どう、調子は?」
ハルは、
「はい、大丈夫です!」
と、元気良く返事、
「そうか、まぁ、無理すんなよ。」
「はい!」
・・・此なら、大丈夫か、
「じゃ、星波を出しながら、その光を隠してみるんだ。」
ハルは、驚いて、
「えっ、光を隠すんですか?」
俺は、はっきりと、ハルに言った、
「そうだ、光を隠すんだ!」
ハルは、暫く試行錯誤して、少しづつコツをつかんだのか、指先の光は徐々に暗くなり、やがて完全に消えた。
「どうだ、ハル、感じは?」
ハルは、額に汗を浮かべながら、
「星波を使う量は、僅かですけど、何か凄く、重く感じるんですけど、」
良し、俺の狙い通りだ、
俺は、ニヤケながら、
「そうだ、ハル、其で、良いんだ、其が、星波を隠す技、『星隠し』だ!」
ハルは、嬉そうに、
「『星隠し』!」
うん、子供が、一つ、知識を得て喜んでる感じだ。
「其で、ハル、其の状態を、今日は一時間、明日は二時間、と一日、一時間ずつ増やして、最終的に二十四時間、出来るようにするんだ。」
「分かりました!」
後、忠告だ、
「但し、無理だけはするな!出来ないと思ったら、直ぐに中止するんだ!大切な事は、自分自身、分かったな!」
「はい!」
ってな感じで、
俺と、ハルチカは、
美しい師弟関係で、
結ばれた!
言っとくけど、
師弟関係な!
てな、お惚けを二人でしていると、外が騒がしくなってきて、俺は『星の瞳』で、騒がしい外を、見た。
「此処等辺よ!絶対、此処等辺に入るはず!!」
ん?ありゃ、エミちゃんの声?
「エミ、此処は、僕達もさんざん、探したけど、見付からなかった場所だよ?」
「ジェミ!其の時はスグルさんが貴方達に会いたくないから、魔導術で姿、隠してたのよ!」
エミちゃんが、ちょっと怒りぎみ、
「入るんでしょ!スグルさん!!返事しなさいよ!!!」
マジ、エミちゃん怒ってる、
「あの、もっと、尊敬して呼ばれた方が宜しいかと、そのスグルさんと言う方、もしかして、偉大な方じゃないかしら、」
おっ、確か、あれは、コーネリア嬢、良い事言うねぇ。
「偉大なんて、絶対ないわ、只の、変態大人よ!!」
うん、どうも、エミちゃんとの、初対面の印象が悪すぎた。
「しかし、エミリアさんも、確かに心配するのは、分かる、ハルチカ君が一向に戻らないし。」
うん、彼は、確か、C組のクラスリーダ、ダンバード・グラスタ、
「確率的に、彼は、既に帰宅した可能性は無いのかい?エミリアさん。」
あいつは、秀才だが、実技が下手で、有名な、オルダンス・ホールス。
エミちゃんが、思いっきり、首を振りながら、
「絶対に無い!ハルが、私を置いて、一人で帰る事は無い!!約束したんだから!!!」
コーネリア嬢が心配そうに、
「どう、アンリー、」
「確かに、エミリアさんが言ってるように、気配は二つ確認出来ます。」
えっ!気配って、彼女、確かアンリー・スウィート嬢、俺とハルの事が分かるって、彼女は、スグルの世界で言う忍者か何か?
「そうでしょ!出てこい!!スグル!!」
俺が、黙っているので、ハルが心配して、
「どうしたんです、スグルさん。」
「うん、どうやら、君の友達が、君を迎えに来た。」
そう言いながら、俺は、『星隠し』を広げ、
彼等を、『星隠し』の中に入れた、
その瞬間、
「えっ!」
「わっ!」
「まぁ!」
「・・・」
「おぃ!」
「あっ!」
全員が、突如、現れた、俺の宿舎に感動してくれた。
まぁ、驚いたって事かな。