化物
俺、ことコーリン・オーウェルは二千年後の自分がいた世界に戻って来た、しかし、此の時代にコーリン・オーウェルの名前はヤバイらしい、其処で俺は、最後にいた世界での俺の名前、『大江 優』を名乗る事にした、
俺にいろいろ情報を教えてくれた、高校生のハルチカ、エミリアと別れた俺は、事故で空より、二人の住む街、バルセリアに落下して来る空船を星の力により街に落下する事を回避させた。
街から離れた西の広大な牧場に不時着した空船から、降りて来た、かっての恋人に似ている女性から、
その船に化け物がいると聞いて、
俺はビックリ!
俺は、考えた、かっての化け物と言えば、一撃で標高一千メータの山々を破壊した、『破壊の魔玩、ドルガンギアス』
その灼熱の炎刀の一振りで大海の水を蒸発させた、『魔炎の玩帝、ズリアドラージ』、
彼等、『千の魔玩将』の上に君臨するのが、『魔神の三大玩具』
そんな奴等が現れたら、今の俺には無理だ!仮に、その下の中将級の『百の具魔』でも難しいと思う、
しかし、俺はコーリン・オーウェル、剣の皇帝と呼ばれた男、逃げる分けにはいかない!
俺は、更に一歩前へ踏み出す!
かっての恋人に似た女性が叫ぶ、
「民間人!聞こえないのか!此処は危険だ!逃げろ!」
聞こえてるさ、君は俺に逃げろと言う、だけど俺は君を一人、置いて逃げる事は出来ない!
ドガン!ガガガガガガ!ガキン!ガキン!
銃撃戦、剣撃戦の激音は激しさをまし、その中から声が、
「駄目だ!此処は狭すぎる!外だ!外に奴を追い出せ!」
一際、ハスキーな声が聞こえた瞬間、船腹の着艦ハッチから、身長は百八十前後、赤茶の長い髪を後ろで結んでポニーテールにした、瞳の色は緑、そしてグラマーでスタイル抜群の女性が、手に三メータはある巨大な戦斧を持って、飛び出して来た!
彼女の服装も、先の女性と同じ白、違うのは、胸当てとロングの腰当てが緑色である事!
俺は感嘆した!
彼女の鍛え抜かれた、服の上からでも分かるその抜群のスタイルに!
うん、凄い!
ルーナに似ている娘が、彼女に怒鳴る、
「リナ!殺れるか!」
リナと呼ばれた娘は、
「大丈夫だ!大将!此処でなら、此の『雷帝の雷土』、全開モードで奴を殺る!」
と叫ぶと、
彼女は腰を落とし、戦斧を低く構え、その刃の向きは着艦ハッチ!
リナが叫ぶ、
「魔導機関全開!変換!雷」
その瞬間、戦斧は紫に光輝き、斧全体に雷線が走る!
大将ちゃんがリナちゃんに向かって、
「来るぞ!」
と言った時、
着艦ハッチからのっそりと出て来たのは!
俺、えっ?
えっ?
えっ?
現れたのは、身長四メータ、巨大な猿人の巨体にコウモリの顔、頭には巨大な闘牛の角、背には大きなコウモリの翼、尻にな蜥蜴の尻尾のような巨大な尻尾。
見た目はスッゲーえ、悪魔ちゃんだが、
ハッキリと言って、コイツはザコだ!
もともと魔人達は、『魔神の玩具』と呼ばれ、見た目と強さは一致しない。
目の前にいる魔人は、『魔玩兵・ベルゴンゾーナ』、名前も強そうだが、昔の俺は剣の一振りで百体のベルゴンゾーナを一瞬で塵に消した。
だいたい、ベルゴンゾーナは知性も低い、奴は口から泡だしながら、ルーナやリナちゃんを指しながら、
『オ前ダチ!『魔神様の寝息』!!消ジダ!!!』
ルーナに似た大将と呼ばれるお嬢さんが、手を握り締めて、
「奴は!奴は一体何を言ってるんだ!」
と一人事を言ったんで、
俺は彼女の後ろから、
「奴は、大切な物をあんた達に消されたと騒いでるんだ。」
彼女はビックリして、俺の方に振り向くと、
「お前は!民間人!まだ、此処にいたのか!」
と俺を恐い顔で叱り飛ばす。
俺は頭を掻きながら、
「いゃぁ、君の事が心配だから。」
なんて軽口を叩いていると、
雷光が光、電輝線が噴き荒れる戦斧を必死で握っている、リナと呼ばれるスタイル抜群の娘が、
「充電完了!行っけえええええええええええええ!!!」
と言った瞬間、
巨大な戦斧から雷電を纏った直径二メータの豪紫光の大放射が、
ズバババババババババババ!!!
俺は呆気にとられ、
奴はバカだから、
『フンガァ?』
バァッコオオオオオンンンン!!
と上半身が撃ち抜かれ!!!
ドッカアアアアアアアアンンンン!
豪光線はそのまま、牧場に不時着した空船の船腹の着艦ハッチをぶち壊しながら、右の腹から左の腹を抜ける事、三十秒!!!
バカン!
戦斧から四つの羽根が開き、
ブシュウウウウウウウウウ!
膨大な熱量と水蒸気が放出され、
リナはガックリと片膝を付きながら、
「やったか!」
俺は、
「あのショボい攻撃じゃ無理なんじゃない。」
とつい口を滑らし、
大将ちゃんは、ギロッと俺を睨みながら、
「貴様!今!何と言った!」
ヤバイ、怒らせちゃったよ。
その時、助け舟、
「ルーナ様、分かりました!」
えっ?声が?ルーナ様?
ブゥウウウウウンン!
と音が聞こえると、半透明な人影が出現して、その半透明がブレながら、ハッキリとした形になり、
えっ!立体三次元映像?
此処って、船は飛ぶし、三次元映像は有るし、前にいた世界よりも進んで無い?
映ってる人は、身長は百六十前後で、ピンクのショートカットの髪にピンクの瞳には丸い銀の眼鏡、
美人と言うより、幼顔の可愛い系の娘で、やはり白い制服に此の娘はピンクの胸当てに此方はピンクのミニの腰当て、
俺が、突如、映像された娘を見ている間に、
ズルッチョ!!
ベルゴンゾーナが復活し始める。
大将ちゃんが驚き、リナちゃんが愕然とする、俺はヤッパリって顔で、
『魔人』達は『魔神の吐息』で作られている『魔人の玩具』、魔神が遊ぶ為に作られた玩具、作っては破壊し、破壊しては作る、だから頑丈さだけは取り柄だ、
その遊びに、二千年前の俺達は巻き込まれ、世界は『魔神の遊び場』になった!
破壊と混沌が世界を支配し、魔神は無邪気に笑う、【キャハハハハハ】と、
神である『魔神』を殺す事は出来ない、だから俺は、『喪われし地平』に奴を寝かし付けた。
其が、二千年前の話し、
そして、二千年後の現在でも、魔人はヤッパリ頑丈だった。
半壊しても復元を始める、奴らを殺すには全ての細胞を破壊しなければ駄目だ。
ピンクの髪の眼鏡っ娘が、此の時代のルーナと呼ばれる、大将ちゃんに向かって、
「無理です!ルーナ様、あの化け物は魔素の塊です!一部を破壊しても、魔素で直ぐに修復する事が分かりました!」
その報告に、俺を含めて全員がビックリ!
ルーナちゃんが、
「な、何だと!」
リナちゃんが、
「そ、そんな馬鹿な話しがあるか!」
俺は始めて気付いた、『魔人』達は『魔神の吐息』で作られている、そして、此のピンクの髪の眼鏡っ娘は、『魔人』が『魔素』で出来ていると言った。
つまり、
此の時代の人類の文明と文化を支えている資源、『魔素』と、
『魔神』が吐く吐息は、
同じ物である事を!
そう言う事か!
二千年前、『魔神の吐息』の消費者である『魔人』は、俺と一緒に時空間の間に吸い込まれ消えた、
『魔神』は寝ていても量は少ないが、吐息は吐く、
寝ている魔神の吐息は『魔神の寝息』と呼ばれる。
吐息より少い『魔神の寝息』でもその吐息を消費する『魔人』が居なければ、やがて『魔神の吐息』は世界に満ちる、
そして、誰かが気が付いた、世界にはこんなにも、力に満ち溢れている事を、此の力を利用する手は無いと!
彼等は『魔神の吐息』を『魔素』と名付け、その利用方法を『魔導』と呼び、
誰もめんどくさい、星の力を頼らなくなった。
星に願いを、しなくなった。
そして、俺と共に、『魔神の吐息』の本来の消費者である『魔人』が戻って来た!
そして、奴か奴等なのかは此の事態に驚き、怒った、只でさえ少い、『魔神の寝息』、それをかってに使っている人類に腹を立てた、
そして、『魔神の寝息』を大量に消費している、空船の魔導機関を知って其を破壊した。
其が、空船が落下した、此の事態の真相だったのか!
俺は更に考える。
取り合えず、ザコのベルゴンゾーナ、一匹だけだけど、しかし、奴らは俺の前にいた世界のゴキブリと同じ、一匹見たら、百匹入ると思え、
此の事態に『魔人』達は黙っている筈がない!
彼等は、かってに『魔神の寝息』を泥棒している、今の時代の人類に対して、許す筈がない!
人類と『魔人』の『魔神の寝息』を賭けた、大戦争が起こる事は必死、
更に、『魔人』が少い『魔神の寝息』で我慢出来る分けが無い!
彼等は絶体に『魔神』を起こそうとする、『魔神』が目覚めれば、幼き神、『魔神』は再び此の世界を、破壊と混乱の『魔神の遊び場』にする、
もし、世界が『魔神の遊び場』に成れば人類は滅ぶ!
ってな事を考えて付近を見ていると、
ドガン!ガガガガガガ!ガキン!ガキン!
ルーナちゃんとリナちゃんが必死になって、ベルゴンゾーナの復活を阻止しようと、
ルーナちゃんが鉄砲らしき物を、撃つは、撃つは、
リナちゃんは手に持つ、巨大な戦斧を振り回して、斬るは、斬るは、
その他の兵隊さんも加わって、
ドガン!ガガガガガガ!ガキン!ガキン!
ドガン!ガガガガガガ!ガキン!ガキン!
しかし、彼等が必死に成れば成る程、変換出来ない『魔素』、『魔神の寝息』が武器から漏れて、ベルゴンゾーナに力を与えている。
結果、
ズルリンチョ!!!
と変な音を発てて、
ベルゴンゾーナは完全に復活してしまった!
本当に馬鹿だなぁ。
ルーナちゃんが困惑した表情で、
「どうしたら、奴を!奴を倒せるんだ!!」
と叫び、その辛い思いを必死に耐えている姿に、俺はドキッ!
その横顔は、かっての恋人に似ているから、俺は思わず抱き締めたくなった。
一方、リナちゃんは、その巨大な戦斧を必死に構えながら、
「まだ!まだ!負けたわけじゃねぇ!」
と叫ぶ!
うん、ハスキーな声の男言葉に俺は思わずドキッ!
そして、相変わらずの抜群のプロポーション!
俺は思わず、抱き付きたくなった。
此の状況でそんな事をしたら、本当に変態だ、俺はぐっと我慢して、此の事態を納める為に、一歩前に出る。
更に、俺はベルゴンゾーナの前に出て、
ルーナちゃんが焦って、
「死ぬ気か!民間人!!」
民間人って、ルーナちゃん、俺の名前聞かないし、興味無いのか、ちょっと寂しい、
リナちゃんがビックリして、
「何だ!お前は!!」
まぁ、リナちゃんとは此れが始めてだし、お前って言っても許そう。
さて、
「いい加減にしろよ!」
俺はベルゴンゾーナに向かって怒る。
「此のザコの曲に!」
『オ前ジャマ』
ボッカアアアアアアアンンン!!!
えっ!!
ビュウウウウウウウンンンン!!!
あれ?牧場があんなに小さい?
って!
俺は、奴のアッパーカットの一撃で三十メータ程吹き飛ばされ!
ヒュウウウウウウウウウ!!!
俺、落下してるよね!
何処へ!
俺の視界に納屋の屋根が迫る!
ドォオオオオオオオンンンン!
納屋の屋根をぶち抜き!
ズボォオオオオオオンンンン!
藁山に突っ込む!
・・・
・・・まぁ、生きてるけどさぁ、此れ星の力の無い、前の俺、『大江 優』だったら死んでたよ!
パタパタ、
俺が藁屑を叩きながら立ち上がると、
うん?
屋根の開いた穴から星の光に包まれた、ハルチカとエミリアがゆっくりと落ちてきた、
おぃおぃ、どうしたの?此の二人?
クルッキラクルッキラ
二人の回りを跳び跳ねている小さな星の欠片が嬉そうに俺に語る。
えっ!二人が空に吹き飛ばされたから、助けたの!良くやったね、偉い、偉い。
キラキラキラ
星は嬉そうに喜び、
俺は、じゃ序にもう少し力を貸してくれる。
クルックルッ
星は良いよと返事の代わりに回転しながら跳ね回る。
有難うねぇ、
俺は、天空の遥か彼方、星が瞬く星界を見上げながら、
さてと、ゴキブリに、
星に替わってお仕置きだ!!!
と、前にいた世界の有名な女の子のキャッチフレーズを真似て、呟いて、
俺は、ニヤッと笑って、
右手を、天の星界に翳した。