ガルホール・スターゲス
「ハルさん、是非、私の為に勝って下さいね。」
「リア、其、違うから、ハルは、私の為に闘うんだから!」
「じゃ、ハルさんは、私とエミさんの為に勝って下さいね。」
女子は、気楽に僕に勝って、と言ってくる、
普通なら、僕も気楽に騒ぎたいけど、四回戦迄、12回の『星の力』を使った、僕は、
正直、へとへとだった。
計画では、休憩があったとしても、『星の力』を使うのは、二回戦、10回迄が限度だと思っていた。
なのに、僕は、三回戦を勝ち抜き、使った『星の力』は12回。
僕は、三回戦は『星の力』を使わないで、負けるつもりだった。
しかし、相手が、あのガルホール・スターゲスと決まり、
リアもエミも、ついでに、ジェミ迄、大騒ぎし、
なんか、僕は負けちゃいけない、雰囲気が出来上がっていた。
ちょっと、ヤバくない、これ、
更に、ダンバード・グラスタがクラス全員を引き連れて、
「ハル!応援しに来たぞ!!」
「ハル君、なんだか、随分、頑張ってるね。」
相変わらず、オルダス・ホールスも一緒だ。
えっ!
ますます、負けれ無いってこと、
反対側には、ガルホール・スターゲスとA組の人達が集まって来ていて、
あの、ドナプもいて、何か、ガルホールと話している。
ガルホール・スターゲス
短髪の灰色の髪に白のメッシュ、鋭い瞳に、厚い唇、
2年生で、一番の実力者、A組のクラスリーダにして、2年の総代、
欠点は見当たらない。
何故に、リアは彼を振ったんだ?
好みじゃないから?
性格が良くないから?
性格云々は、僕の推測だけど。
時間が来て、僕とガルは、格闘範囲の中に入った。
僕とガルが向き合い、
ガルは笑っていた。
審判が、僕達に話す、
「えーと、四回戦は6試合なので、アルバート先生から判定は、地区大会ルールに従うように言われてるんだけど。」
地区大会ルール?
「其れって、どう言う事?」
審判は、僕に分かるように説明してくれた、
「有効ポイントの判定が厳しいんだ、かすったり、弱いと有効になんない、確実な力の技が決まった場合のみ、有効と見なす。」
えっ!
其れって、僕の貧弱な力じゃ有効にならないって事!
ガルは、自信満々に、
「あぁ、俺は構わないよ。」
審判は僕の方を向いた。
僕は、ため息を付きながら、
「あぁ、分かった。」
審判は安堵して、
「そうか、じゃ、始めよう。」
僕は、瞳に、両手、両足に『星の力』を準備し、
審判は、中央で、右手を高く上げ、
「では、始め!!!」
右手を降り下ろした!!
瞬間、僕は瞳に『星の力』を使い、
えっ!!!
ガルホールは全身を力の魔導術で包み、右手は巨大な力のハンマを作っていた!!
その力の色は、黄金!!!
黄金の色?
バチッ!!!
彼の体が、一瞬、青紫に光る!!
磁!!
彼が、僕の目の前に、
バリバリバリ!!
えっ!雷!!
彼の右手に、青雷線が走り、
彼の強化された右手の力のハンマが、僕の下から迫る!!
ヤバイ!!
僕は、両手に『星の力』を使い、ガードする!!
ガッキイイイイイインンン!!!
僕の『星の力』と、ガルの力のハンマが激突し、
僕は、空中に打ち上げられた!
グワッ!!!
僕に衝撃が襲う!!
ダメだ、魔導防護服の反応が遅い!
ダーン!!!
「終わりだ!!!」
えっ?
ガルホールが両足に雷を使い、高くジャンプした!
空中に飛ばされた僕に、彼は、より高くジャンプしながら、両手の力のハンマを高く翳して、
ヤバイ、『星の力』を!!!
ダメだ!間に合わない!!!
ドッガアアアアアアアアンンン!!!
ガッ!!
衝撃が!!!
ズダァアアアアアアアンンン!!!
僕は、格闘範囲の床に、叩き付けられた!!
激痛が、僕を襲い、僕は息ができない、
キャアアアアアアア!!
僕のクラスから、女子の悲鳴が、
ピュー!ワァワァ!ピュー!
反対の方から、やんやんやの喝采、
僕、A組に、かなり憎まれてる、
審判が、床に叩き付けられた僕を心配して、僕の側に来て、
「大丈夫?続行する?」
と、聞いてきた、
僕は、もう、『星の力』を使い切って、へとへとだし、体に痛みも有るし、棄権しようと思っていた時、
ガルホールが、
「図に乗んなよ!格下のくせに、てめぇは、不細工な赤毛の猿女が似合いなんだよ!!」
猿女!!!
其れって、エミの事!!
ふざけんな!!
エミの事を、
エミの事を!!
お前に、言われる筋合いは無い!!
『闘エ!!!』
そうだ、何で、僕は、こんな奴に負けようと思ったんだ!
『命ヲ削ッテ闘エ!』
そうだ、まだ、僕には命の力が有る!!
その瞬間、
僕の、
世界は変わった!
僕は、ゆっくりと立ち上がる、
続行を判断した審判は、中央に戻り、ガルホールを指して、
「ガルホール・スターゲス、1ポイント!!!」、と宣言した。
ガルホールは、笑っていた、その唇は、もう終わりだと語っていた、
ガル、終わるのは、君だ!!
僕は、全身に、『星の力』を使った!
命を削って、
体全体が翠の光に包まれる、
赤い部分の模様に、翠の輝線が走る!
あぁ、まるで、世界が変わったようだ、
あれ程、輝いていた、スターゲスの力の魔導術も、何て、つまらない色なんだ、
錆びた鉄色じゃないか、
スターゲスが、何か叫んでる、
煩い!!!
煩いんだよ!!!
お前は!!!
その瞬間、僕はガルホールの前に立ち、
右手を、翠光に輝かせながら、
奴の顎を打ち砕いた!!!
バゴォオオオオオオオオンン!!!
彼は、吹き飛ばされて、
魔導線に突っ込んで行った、
彼は、顎が血だらけでひっくり返っている、
良い姿だ、
だいたい、そんな、錆びた力で、何が出来るんだ、僕の力の前で、何が出来る?
血だらけのガルホールが、恐怖の目で此方を見てる、
何て、気持ちが良いんだ。
キャアアアアアアアアア!!!
A組から、C組から悲鳴が上がる、
「止せ、ハル!!!」
「止めるんだ!ハル!!」
ジェミ? ダン?
誰でも良いけど、僕を止めないでくれよ、
勝つのは僕だ、
血だらけのガルホールは、まだやる気だ、
ほら、あんなに、両手に巨大な炎を集めてる、
無駄なのに、
彼、死なないと、自分が弱いって事、分からないの?
仕方ないなぁ、
「もう、止すんだ、ハル君」
えっ!
僕の目の前に、一人の男の人が立っていた、
蒼みがかった短い黒髪は清潔感のある緩いパーマに固めていないサラサラとした艶の有る髪、無精髭、瞳は濃い群青色、そして、鍛え抜かれた、肉体の持ち主、
「スッ、スグルさん!!!」
何故、スグルさんが、僕の前に!!!
スグルさん!その姿は!!
トン!
スグルさんの右手の人指し指が、僕の胸に触る、
えっ?
力が、
力が、
消えて行く!!!!!
「わぁああああああああああ!!!」
僕は絶叫し、
「ガァアアアアアアアア!!!」
盛大に血の、嘔吐を床に撒き散らした、
キャアアアアアアアアア!!!
また、悲鳴が聞こえた、誰のだ、
「止めなさい!!アンリ!!!」
リアの叫びが聞こえる、
「じぃぬぇ、化げ物ぐうぁああ!!!」
ガルが、僕に巨大な炎をぶつけようとしている、
ゴメン、ガル、僕はもう無理だ、
君の相手は、出来ない、
もう、僕は意識が、
保て無いんだ、
ゴメンよ、
ガル、
ダガァアアアアンンンン!!!
ハル君の対戦相手が、ハル君にぶつけようとした、炎の術球が魔導教練棟の天井に炸裂した、
彼は、術球を射つ瞬間に、格闘範囲に飛び込んで来た、白と紫の魔導防護服を着た女の子に、両手を蹴られた為、
天井、方向に術球を打ち上げてしまったようだ、
そして、盛大な音が響く、格闘範囲の中で、ハル君は倒れた、
うん、気を失ったって事だな、
まぁ、当然と言っちゃ、当然か、
あれだけ、命を星に喰われたんだ、
意識も失うよなぁ、
さて、どうするか、
俺は、ハル君の対戦相手を見た、
あぁ、顎が砕けてるし、白と紫の魔導防護服を着た、女の子に押さえ込まれている、
あの娘、確か、ハル君と同じクラスの留学生で、名前は、アンリー・スウィート嬢、
彼女、相当、鍛えてる、良いスタイル、まじまじと見ちゃうよ、ってイカン、
そう言う状況じゃ無いし、
他の先生達が来る前に終わらせないと、
俺は、ハル君の対戦相手、確か名前はガルホール・スターゲス、の前に行き、
「おめでとう、君の勝ちだ、」
俺は、そう言いながら、右手に星の力を集めながら、彼の顎を触った。
「ぶざげにゅな、奴は俺の顎を、顎を?」
「顎がどうかしたのかい?良い顎の形だけど、さて、お嬢さん、彼を離してやりなさい。」
アンリー・スウィートは、ビックリして、
「はっ、はい!」
彼女は、直ぐに、ガルホール・スターゲスを離した。
俺は、呆けている審判の処へ行き、
「審判、判定だ!」
審判もビックリして、
「えっ?判定?判定って、一体、何が、何が起きたんですか?」
まぁ、ハル君が『星の力』を全力で使ったから、何が起きたかは、普通の人には、分かんないよね。
俺は、審判に説明した。
ハル君を指しながら、
「あの、ハルチカ君が、気絶したから、彼は此の試合を棄権する。」
審判は、ビックリして、
「えっ!棄権って、大丈夫なんですか?」
俺は、頷きながら、
「まぁ、大丈夫だろ、」
そして、ガルホールを指しながら、
「其で、彼の勝ち、良いかな、」
ガルホールも、ビックリして、
「俺の勝ち?でも、確か、」
俺は、ハル君の側に行き、彼を担ぎ上げながら腕に嵌めている魔導制限腕輪を外して審判に渡し、
「兎に角、彼はもう闘え無い、此の試合は、君の勝ちだ。」
そう言いながら、俺は、格闘範囲の外に出た。
「スグルさん!!!」
「やぁ、エミちゃん」
ハル君の事を心配して、エミちゃんが駆け寄ってきた、その後ろにクラスメート達が、
「スグルさん、ハルは、ハルは大丈夫なんですか?」
「ああ、大丈夫だ、少し僕の処で休ませれば、直ぐに元気になる。」
金髪の巻き毛の女の子が、一歩前に出てきて、
「貴方は、一体、何者なんですか!」
えーと、確か、此の娘は、噂の留学生の美人ちゃん、コーネリア・ロンディーヌ嬢。
「あっ、俺、此の学校の学校作業員してる、スグル・オオエ、宜しくね。」
コーネリアちゃんが驚いた顔で、
「えっ!貴方が、学校作業員!!貴方は、」
「はい、はい、其処まで、ハル君を、休ませなくちゃいけないから、話しは、今度ね、じゃ!」
俺は、彼女の話しを遮った、本能的に、彼女にそれ以上、話さしちゃダメだ、そんな気がした、
其に、先生達も集まり出したので、
俺は、急いで魔導修練棟を出て、
俺の宿舎に、ハル君を連れて行った。