勝つ喜び
「では、例の力を使ったのは、1人だけだと、」
「はい、ベルスティ様、2年C組のハルチカ・コーデル、只、一人だけです。」
ロートス社、総帥、ベルスティ・ロートスは、差し出された資料を食い入るように見ながら、
「此の、C組の異常な勝率があったとしても、貴方は、例の力を使用したのが、一人だけと言う分けね!ラディス!」
「はい、記録では、一人だけです。」
ベルスティは考える、
『約束された子』は、7人、
見付かったのは、1人、
此は、多いのか、少ないのか、
ベルスティは、考える。
バルセリア魔導高等学校の魔導科2年生は、A、B、Cの三クラス、其々、定員が30名の、合計90名。
その、バルセリア魔導高等学校で初めて開催された、魔導格闘技大会で一回戦を勝ち抜いた2年生の生徒は45名、
内訳は、Aの生徒が、10名、Bの生徒が5名、Cの生徒が30名。
特筆する事は、C組の勝率が100%、と言う事
此の時点で、団体戦の代表クラスはC組に決定した。
そして、休憩を挟んで、午後、二回戦が始まった。
不戦勝は、圧倒的な実力者、2年生、総代、
ガルホール・スターゲス。
そして、ハルチカ・コーデルの対戦相手は、B組、クラスリーダ、
トーネル・サンドール
「最初に言っておくが、俺は、経験者だ、君が俺に負けても、恥じる事は無い!」
二回戦の相手は、B組のトーネル、自らを経験者と言っている、
もし、彼の言ってる事が真実だったら、
・・・また、僕の相手は、強い奴だ。
他のクラスメートの、対戦相手は皆、弱かったと聞いてるんだけど、
僕だけ、強い相手なのは、偶然、
其れとも、悪意?
どっちにしても、僕は二回戦迄、『星の力』を使って闘うと決めていた、
僕は、一回戦と同様に、『星の力』を瞳に、両手に、両足に準備した、
審判が、右手を高く上げ、そして降り下ろした、
「始め!!」
その瞬間、僕は瞳に星の光を発動し、
えっ!!
彼は、鍛え抜かれた体に青紫の磁光を纏っていた!!
『磁』!!!
そう、僕が思った瞬間、彼は、
ダン!!!!
僕の目と鼻先に現れ、
僕が、彼を意識した時には、
スパーーーーンンン!!!
僕の胴に、1ポイントが入っていた。
威力は、Bの生徒なのか、A組のドナプよりは劣る、
彼の唇が、上に上がった、
素人、
そう言っている唇、
そうか、
彼は、経験者だから、ドナプと違って、素人の僕に手加減している!!
彼の、唇はそう語っている、
僕は、唖然として、トーネルを見た、
彼は、無表情に此方を見ている、
審判は、トーネルを指しながら、
「1ポイント!」、と、宣言した。
僕は、気になったので、工学科の学生審判に聞いてみた、
「済まない、審判、ちょっと良いか、あの動きは、『磁』を使ってるんだと思うんだが、『力』以外の使用は、反則にならないのか?」
審判は、首を振りながら、
「あぁ、反則じゃない、ルールは自分以外の相手に『力』以外の魔導術を使った場合だ、自分に使うのはオーケー、3年生は、結構、自分に、『磁』や『雷』を使ってる。」
僕は納得した。
「分かった。」
今まで、一人、『星の力』を使っていた事に、僕はズルをしているようで、罪悪感に悩まされていた。
だから、試しに、二回戦迄と決めていた。
でも、自分になら、力を使って良いなら、話が違う、
彼は、魔導術を使う、
僕は、『星の力』を使う、
只、其れだけだ。
審判が、僕に気を使って、
「納得したかい?」
と、聞いてきたので、僕は、
「あぁ、納得した。」
と答えた。
審判は、安堵して、再び右手を上げて、降り下ろした。
「始め!!」
僕は再び、より強い『星の力』を、瞳に使った。
トーネルが、ゆっくりと此方に来る、僕は、
右手の『星の力』を、発動し、
トーネルの頭を、僕の貧弱な力の棒で引っ叩く、
パッコォオオオオオオオンンン!
遅れて、トーネルの力の剣が、
スパーーーーンンン!!!
審判と、副審が同時にビックリして、
「えっ!」
「わっ! 相打ち?」
審判は首を振りながら、
「違うよ、ハイル、」
審判は、僕の方を指差しながら、
「君の方が早かった、君の勝ち、1ポイント」
そう、宣言した。
トーネルは、殴られた、頭を擦りながら、
「どう言う事だ?」
と、僕に聞いてきたので、僕は、笑いながら、
「僕は、勘の良い方でね、君が同じ動きをするなら、素人の僕でも、君の相手ぐらい出来ると思うよ。」
トーネルは、僕を睨みながら、
「俺の動きが、単調だと言うのか?」
「其処までは、言わないけどね、偶々狙ったら、当たった。」
「そうか、分かった。」
彼は、怒ってる、たぶん、此で、彼は同じ手を使ってこない、
僕は、彼の全力を相手にする事が出来る。
勝つ事が、
こんなに、嬉しいとは、
僕は、
勝つ事に酔っていた。
僕は、凄く疲れていた、しかし、
此の、勝利への酔いが、僕の感覚を麻痺させていた、
次も勝つ、この、『星の力』を使って、
此の力を使って、
そして、トーネルとは最後の三回目の闘いが始まった。
審判が右手を降り下ろし、叫ぶ、
「始め!」
その瞬間、トーネルは消えた、
・・・ように、普通の人には見える筈だ、
しかし、更に、強力な『星の力』を瞳に発動した僕には、
彼の動きが、まるで、亀の動きのように見える。
彼は、やはり、同じ動きをしなかった。
彼は、大きく、僕の方から見て右手に廻って、僕の右横から大きく、その力で作られた剣を、降り下ろそうとしていた、
うん、分かりやすい。
彼は、僕に頭を叩かれた事に、結構、怒ってる。
まぁ、あの叩かれ方じゃ、なんか、アホみたいだしね、
さて、どうする、
僕が、彼の胴を叩いても、僕は彼に、頭を叩かれる。
今度は、僕がアホみたいだ。
僕は、考えるのが、面倒になったので、両足に『星の力』を使い、
更に、僕の足裏に力の魔導術を発動しながら、
僕はジャンプして、両足で、思い切り、トーネルを蹴り飛ばした!!
ダァガアアアアアアアンンン!!!
魔導修練棟に打撃音が響き、
「えっ!」
「わっ!」
審判と副審が、ビックリして、大声を上げた。
トーネルは、右側の魔導線迄、吹き飛ばされ、
僕も、反動で、反対側の魔導線迄、吹き飛ばされた。
我に返った副審が、
「なぁ、ディル、一体、何が、起きたんだ?」
審判に、聞いていた、
審判は、信じられないってな顔で、
「ハイル、彼が、」
審判は、僕を指しながら、
「彼が、飛び蹴りをしたんだ!」
副審は驚いて、
「えっ!嘘だろ!・・そんな大技がマジで決まったの?」
まぁ、決まるよね、
狙った分けだし。
トーネルは、立ち上がりながら、
「どう言う事だ!!お前!!!」
騒いでいた。
僕は、凄く疲れていたので、ゆっくりと立ち上がりながら、
「言ったろ、僕は勘が良いって」
トーネルは、唖然として、
「勘だと!じゃ、お前は、俺が横から来る事を知ってたのか?」
こいつ、僕の事を、まだ、お前って呼んでるよ、勝ったのは僕なのに、
「当然だろ、あれだけ煽ったんだから、君は真っ直ぐを選ばない、後は、右か、左だと睨んだ、両足蹴りだと、外れても、トーネル、君の攻撃は避けられるしね。」
僕は、大人だから、名前を呼んで上げた。
僕と、トーネルは格闘範囲の中央に戻り、お互い向き合った、
そして、審判が僕を指しながら、
「1ポイント、合計2ポイント、勝者、ハルチカ・コーデル!!」
今度は、審判も、僕の名前を呼び上げた。
トーネルは、右手を差し出しながら、
「ハルチカ君、君は、駆け引きだけは、僕を上回る、経験者だな。」
彼は、始めて、僕の名前を呼んだ、
僕は、彼の手を握りながら、
「有難う、トーネル君、勿論、君も知ってるよね、駆け引きも勝負の大事な要素だって事を、」
トーネルは、悔しそうに、僕の手を握り絞めた後、一言、
「ああ、」
そう言って、彼は、僕の手を離した。
こうして、僕は、二回戦も勝利し、三回戦に進んだ。
僕が、格闘範囲から出ると、ジェミオとエミリアが待っていて、直ぐにジェミオが僕に話し掛けてきた、
「スッゴイ、音がしたんだけど、一体、どうしたんだ?」
エミリアが心配そうに、
「ハル、怪我しなかった?」
僕は、片手を上げながら、
「あぁ、大丈夫、此の魔導防護服は、思ってたより凄いから、」
エミは、僕に近寄りながら、
「でも、あの音だよ、」
僕は、笑いながら、
「あぁ、あの音ね、あの音は、トーネルが、自分に『磁』を使って、僕に高速に近付いて来たから、
」
疲れている僕は、また、魔導修練棟の隅っこに座りながら、
「その彼を僕が、足に貼った力で、思いっきり蹴り飛ばした、だから『磁』と『力』が交差してお互いの魔導術が破裂した、その時の音。」
僕の右を、エミ、左にジェミが座って、ジェミは驚きながら、
「トーネルって、あのB組のクラスリーダのトーネル・サンドール?奴を蹴ったのか?」
僕は頷きながら、
「あぁ、そうだよ。」
ジェミは、呆れながら、
「ハル、彼は、『電光のトーネル』って呼ばれていて、噂じゃ魔導格闘技のプロから指導受けてるって奴だよ!」
また、変な二つ名、
恥ずかしく無いのか?
・・・でも、回りが言ってるだけで、実際は、本人は知らないとか、
「ジェミ、そう言う、呼び名って、回りがするの?」
ジェミは、笑いながら、
「まぁね、とくに、女子はそう言うの好きだから、」
へぇ、
「じゃ、僕も、二つ名とか、有るの?」
ジェミは、笑いながら、
「あぁ、有るよ、『二股のハル』」
「えっ!!!!!」
ジェミは、大笑いしながら、
「ハル、冗談、冗談、君の二つ名なんて無いって、」
・・・良かった。
でも、ジェミ、こんな時に、冗談なんて言うなよ!
本当に、
エミリアが、僕を睨みながら、
「ハル!二股って、一体どう言う事!!」
えっ!
エミ、ちょっと待って!!
ジェミは、言ってるよね!
冗談だって!!
「ジェミ何とかしてくれ!!!」
「えっ!」
「ジェミは、ハルを庇ってる!!」
冗談が通じないエミが僕に怒り、僕はジェミに叫ぶ、
だから、こんなときに、冗談を言うな!!
って言ってんだ!!!
結局、僕とジェミは、僕の噂がジェミの冗談で有る事を、何とかエミを説得して、怒っていたエミも、静かになった。
その頃には、2年生の二回戦、22試合が全て終わり、三回戦に進むのは、
A組が、6名、B組が3名、C組が13名になった。
ジェミも、二回戦で敗退した、
「だってさぁ、ハル、僕の相手は、うちのクラスのリーダだよ、ダンに勝つ分け、いかないじゃん。」
と、負け惜しみを言っていた。
三回戦は、直ぐに始まり、僕の相手は、Bの、
スタイラス・コールゲン
殆ど、無名で、流石に二つ名は無かった、ジェミも知らない人。
彼は、強くも無く、弱くも無く、
『星の力』も、瞳に二回、使うだけで、普通に2ポイントを取ることが出来たので、
僕は四回戦に進んだ。
三回戦は11試合、行われ、此処で残ったのがA組が、4名、B組が1名、C組が16名となった。
そして、四回戦には、二回戦で不戦勝で勝ちが決まった、
A組のクラスリーダにして、学年総代
ガルホール・スターゲス
が登場する。
勿論、彼は、四回戦の僕の、
相手だった。