魔導格闘技大会
2035年4月8日 力曜日
バルセリア魔導高等学校では、初めての魔導格闘技の大会が開催され、
魔導教練棟の前には、此の国では珍しい、ロートス社の大型魔導四輪車が五台並んでいた。
今回の大会は、ロートス社の協力により、高価な魔導防護服を、ロートス社が提供する事で、実現可能となった。
その提供された魔導防護服は、ロートス社が新しく発売する予定の新製品で、この大会で、魔導防護服の様々なデータを取る為に、バルセリア魔導高等学校には、沢山のロートス社の技術者が訪れていた。
「ねぇ、ねぇ、ハル、見て、見て、此の魔導防護服、プロ仕様だよ!スッゴくない!」
魔導防護服に着替えた、エミリアが、僕の前で、くるりと回転する、
うっ、
エミって、結構、スタイル良いんだ、
僕は、ちょっと、ドキドキして、
エミから目を逸らしてしまった。
「ぶぅ、ハル、ちゃんと見てる?」
「見てるって、」
朝、学校に登校すると、中庭の案内板には、魔導科の生徒は魔導教練棟に行くようにと、書かれていて、その案内を見た僕とエミリアは教練棟に向かった。
教練棟の入り口のホールには、ロートス社の社員の方が受付をしていて、僕達のクラスと名前を確認した後、名前入りの魔導防護服の箱と魔導制限腕輪を渡され、
その社員の方は、僕達に丁寧に、箱の中に入っている、魔導防護服の着方を説明してくれた後、教練棟の端っこに設営された、男女別の更衣室で着替えるように促されて、
僕とエミリアは、その指示に従い、更衣室で着替える為、僕は男子用、エミは女子用の更衣室に入った。
更衣室は、箱の中を空けて、支給された、魔導防護服を見た生徒達の歓声と驚きで大騒ぎの状態だった。
確かに、驚いた!
説明を聞いても、ピント来なかったけど、実際、見ると、此は、明らかに、プロリーグが採用している、魔導防護服!!
こんな、高価な物を、無償で提供してくれるなんて、ロートス社は、凄い!
でも、此を、呉れるとは、言ってない、たぶん、ロートス社は此の大会にだけ、貸してくれるんだ、
でも、其でも良い、皆、プロになったみたいで、きっと、今日の大会は忘れられない、日になる。
魔導防護服には、幾つかの種類が有るみたいで、僕のは黒と赤のデザイン、黒い部分には魔導回路『力』が画かれているような、気がする、学校で習った、
でも、此の、赤い部分の魔導回路は、何だろう、複雑で良く分からない、
まぁ、ロートス社だから、僕の知らない技術を使うのは、当たり前か。
僕が着替えて、魔導制限腕輪を付けて、教練棟に行くと、エミもちょうど来て、さっきの会話が始まった。
「へぇ、ハルの魔導防護服は、赤なんだ、珍しい色だね。」
白と青の魔導防護服を着た、ジェミオが僕に声を掛ける。
「似合ってますよ、ハルさん」
白と黄色の魔導防護服を着た、リナがフォローしてくれる、その横には、白と紫の魔導防護服を着た、アンリがいる。
リナのフォローは嬉しいんだけど、しかし、回りの目線が痛い、
「ええぇ、リナ、リナ、私は、?」
リナは大人だ、エミに笑いながら、
「すっごーく、可愛いと思いますよ、エミ」
白とピンクの魔導防護服は、確かに可愛い。
「聞いた、聞いた、可愛いって、ハル!」
はいはい、聞いてます、僕も可愛いと思いますよ。
「ぶぅ、心が込もって無い!」
そんな無茶な!
「随分、賑やかだね、ハル」
「あぁ、おはよう、ダン、オル」
僕達の所に、クラスリーダのダンバード・グラスタが来た、
彼は、クラス1、格好いい男子、そしてスポーツも得意で、皆に好かれている、愛称はダン、噂では魔導格闘技をやっているとも聞いている、
女子にすごーくモテるんだが、本人は其れが苦手で、何時も秀才のオルダンス・ホールスと一緒だ。
「ハル君達は、此の大会で勝ち上がるつもりかい?」
彼が、オルダス・ホールス、魔導術の術技は不得意だが、それ以外は何でも出来る秀才、愛称はオル。
ダンは黒と白、オルは緑と白の魔導防護服を着ている。
僕は、彼に答える。
「まぁ、優勝は無理だけど、頑張れる処までは、頑張ろうと思っているよ、オル。」
ダンが嬉しそうに、僕の肩を叩く、
バン、バン、
「そうだ!その粋だ!!ハル、皆が頑張れば、C組だって、団体戦の代表に選ばれる可能性も有る、頑張ろう!!」
ダン、君なら個人戦の代表に選ばれるよ、僕は無理だ、
「ああ、分かった、ダン、頑張ろう。」
「よし!じゃ、大会が始まる、行こう、皆!!!」
ダンは、上機嫌で、僕達の先頭を歩いて、クラスの集合場所に向かい、オルはため息を付きながら、彼の後ろを付いていった。
「ダンは、相変わらずだな。」
ジェミオは、苦笑いしながら、僕を見る、
「まぁ、彼だし、僕達も行こう。」
僕は、皆に集合場所に行くように、勧め、
僕達は歩き出した。
三年生総代のフェルシェール・レェーベン先輩が、開会宣言をし、最初に、学長が、この魔導格闘技の大会に付いて述べた。
学長は、初めて、嵐の事を言わなかった、彼女は、兎に角、事故の無いように、細心の注意を払ってくれと、僕達に、先生達に訴えていた。
以外だった、学長は僕達の事に興味が無いと思っていた、けれど、そうじゃなかった。
学長は、力の有る人だ、だから、たぶん、人一倍、魔導術の怖さを、恐ろしさを知っているのかも知れない、
だから、彼女は僕達に、魔導術を教えないのかも知れない、
身を越えた、魔導術が、身を滅ぼす危険性が有るから、
彼女は、この大会を開催する事を、反対したと聞いている、結局、アルバート先生の熱意に折れたけど、ロートス社から、最新の魔導防護服を借りてきた、
僕達の事を、心配して。
僕達は、少し、学長の事を見直した、そう言う、気持ちになった。
そして、学長は、一人の老婦人を紹介した、彼女の名前は、
ベルスティ・ロートス
ロートス社、ロートスグループの総帥!!
世界で、最も忙しくて、有名な女性、
僕達は、愕然とし、あっちこっちで驚きの声が上がった。
特に、三年生の一部は、ロートス社に就職したい人達もいるので、騒ぎが大きかった。
そんな様子にリナは、ちょっと不機嫌な表情をしている、ロートス社は僕達の国では、憧れの世界企業だけど、
ポワジューレ共和国では違うんだろうか?
彼女は、学長の事を気安くジェルと呼び、ジェルは心配性だと、笑って言った。
更に、我が社の最新の魔導防護服なら、事故等は起こらないし、
また、多くの技術者が待機しているから、万が一、不測の事態が起きても、絶対、貴方達を守る、約束しようと断言した、
そして、最後に、サプライズ!
この大会で、魔導防護服に、何の問題が無ければ、君達に、今、着ている、我が社の魔導防護服を、そのまま、プレゼントする、
そう、宣言して、彼女は話しを終えた。
その時、魔導教練棟は、割れるような拍手と喝采に包まれ、僕達は、大興奮して、跳び跳ねたり、手を叩きあったりして、暫くは大騒ぎが止まなかった。
暫くして、皆が落ち着いた時、最後に、アルバート先生が、ルールの説明と注意を、僕達に話した、
審判と運営は、魔導工学科の有志が行う、3ボイント制で、先に2ボイントを取った人が勝ち、勝った人が、次の試合に進む、
負けた人は、着替えて、勝った人の応援をする。
『力』以外の、魔導術を使った場合は反則負け、
ボイントの判定は、魔導防護服に有る程度の打撃が発生した事を、審判が判断して、宣言する。
その他、安全に対する注意事項、あまり騒いで、選手の気を逸らすと危ないとか、終ったからと言って、勝手に帰るなとか、細かい事を、アルバート先生が、僕達に注意し、先生の話しは終った。
そして、いよいよ、バルセリア魔導高等学校の、初めての魔導格闘技の大会が開催された。
魔導教練棟に、昨日、エルさん達が魔導線で作った、通路を含めた、5メータ真四角の格闘範囲は、本当に初心者用た。
プロは、此の三倍から五倍の格闘範囲で戦う、
時間も、10分間、判定と選手交代が5分間、一試合に十五分掛かる。
一つの格闘範囲に、魔導工学科の生徒が主審、副審2名として、合計3名が付く。
格闘範囲は60区画有るから、180名の生徒が審判をし、残りの90名が運営に、走り回っている。
ロートス社の技術者と打ち合わせしている生徒もいる、
魔導科の、生徒も、各学年90名、全学年合わせて、270名だから、
初戦は一回に、60試合、を5回繰り返すと、勝った生徒は、各学年45名の135名になる、要する時間は、1時間十五分、
2回戦は、各学年、22試合して22名が残り、一人が不戦勝、
3回戦は、各学年、11試合して、11名が残る。
4回戦は不戦勝の一人を含めて、6試合、6名が残る。
5回戦は3試合、三名が残り、
此で、代表が決まり、後は、順位決定戦となる。
選手の組み合わせも、魔導工学科の生徒達が、担当しているので、自分が誰と戦うのか、分からない。
僕の最初の試合は、2年生の格闘範囲の23、三番目、相手はA組の、ドナプ・レスタード、
相手が、どんな人か知らない、
此の学校に入学しても、クラス以外の人は、余程の有名人じゃ無い限り、交流も無いし、だから僕には知らない人が多い。
相手は、友達と、此方を見てこそこそ話している、
・・・
もしかして、ジェミオが言うように、リアの事で、僕は本当に、此の学校では有名人になっちゃったのか?
ジェミオに聞きたかったけど、彼は、別の場所で試合をしている、
見たところ、体格も普通だし、只、A組だから、魔導術は僕達より上手い筈だ、
調度良い、
『星の力』を試すのに、
僕は、今、体の中心に、『星の力』を感じている。
その力を5当分に分け、
ゆっくりと動かす。
一つの力は、瞳に、
二つの力を、右手と、左手に、
残りの二つの力を、右足と左足に、
ゆっくりと動かす。
ふぅ、
準備は出来た。
さぁ、始めよう。
僕の戦いを、