表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
愛する星に、願いを込めて  作者: Hs氏
魔導高校編
43/136

魔導教練棟

「あっ、スグル、そこ、もう少し右に魔導線アウルラーを貼って、」


「えーと、此処ですか?アルバート先生。」


「うん、そっ、オッケ」



「すみませーん、アルバート先生、此方こっち此方これで良いんですかー?」


 アルバートは、凄く嬉しそうに、


「あっ、エルさん、ちょっと待って、直ぐに行きまーす♪」


 えっ?


 なんだ?


 アルバート、


 何、浮かれてんだ?


 


 4月7日 火曜日ヒィョルヤ


 俺を含めて、事務方は、明日、開催される魔導格闘技アウルトゥオゥロセの全国大会個人戦、選抜試験の準備で、大忙しだった。


挿絵(By みてみん)


 魔導教練棟の床に5メータ、真四角の魔導格闘技アウルトゥオゥロセの競技区画を、アルバート先生が持ってきた、魔導線アウルラーで作る。


 アルバート先生が言うには、此の、魔導線アウルラーには緩衝用の『リキ』が発生するようになっていて、生徒が競技中、飛ばされても受け止める役割をするんだそうだ。


 俺と、エルさん、マーキとローラで、4区画一組、其れに50センチの通路を空けて、アルバートの指示に従い、60個の区画を作る。


 

 彼がエルさんの方に行った時、マーキが俺の横に来て、魔導線アウルラーを貼り始めた。


 そして、不機嫌な声で、


「スグル!何故、エル姉を振ったんだよ!!」



 えっ、振ったって、


 何、言ってんのコイツ、



「エル姉を、アルバートみたいな、嫌な奴に取られて良いのかよ!!」



 あのなぁ、マーキ、


 お前、アルバート先生は、凄く好い人だと、今の処は、思うぞ。

 

 俺は、仕方なく、



「大人には、大人の事情が有るの、」



 マーキは、下を向きながら、


「・・・好きな奴がいんのかよ、」



 お前に答える義務はない!


 俺が黙っていると、


 マーキは、拳を握りながら、



「そうか、分かった!・・・俺は、スグルなら、身を引いても良い、そう思ってた、」



 えっ?


 身を引くって、お前、


 自分の立場、分かってんの、



 マーキは、立ち上がりながら、


「しかし、あいつには、遠慮しない!あんな奴に、エル姉を渡さない!!」



 おぃ!


 ちょっと待て、マーキ!


 と、俺は、俺の心の中だけで、マーキを止めた、


 マーキは、エルさんとアルバート先生の処へ、走って行った。


 さぁ、仕事、仕事、沢山、魔導線アウルラーを貼らなくちゃいけないしね、



 ゴッチーン!!!



 教練棟に、エルさんがマーキに拳骨を落とす、音が響き渡った。


 うん、実に、良い音だ。


 しかし、彼奴あいつも懲りないなぁ、確か、俺の時も、エルさんに拳骨貰ってた。


 御愁傷様。




「エル姉さん!魔導防護服アウルプロセルが届いたよ、此処に運んで良い?」


「ええ、運んでって、ローラ、貴方、何、防護服プロセルを着てんのよ!」



 えっ、俺は顔を上げて、ローラを見た、


 あれが、魔導防護服アウルプロセル


 ヤバイ、ありゃ、スグルの世界の漫画で、確か、ロボットに乗る時に着る服だ!


 体のラインがまるわかり、


 此方が照れる、


 青少年には、ちぃっと、刺激的過ぎんじゃないの、


 大丈夫かよ。




 服には、魔導回路アウル・カルラが書き込まれていて、胸に、ロートス社のロゴが入っている。


 

 アルバート先生が言うには、先生の国の北方共和国連合の高校生パールバウゼは、この魔導格闘技アウルトゥオゥロセは、必修科目なんだとか、


 この国では、選択科目で、魔導格闘技アウルトゥオゥロセは、防魔大学に進学を目指す生徒以外は、選択しない、


 その理由が、この魔導防護服アウルプロセルにある、


 高校生パールバウゼが使う、魔導防護服アウルプロセルでも、魔導回路が組み込まれているので、結構な値段がするんだとか、


 北方共和国連合の高校バ・ハウゼは、入学料、授業料等が有料だから、ある程度、収入の有る家庭の子供達が、高校バ・ハウゼに進学する、


 だから、高価な魔導防護服アウルプロセルも購入可能だけど、



 しかし、この国は、基本、教育は無料だ、その分、好きな高校バ・ハウゼ大学ガウゼには進めない、


 すべて、才能と審査で決まる。


 そんな学校制度だから、魔導格闘技アウルトゥオゥロセを必修科目にすると、政府は高価な魔導防護服アウルプロセルを、税金から支給しなくてはならなくなるので、選択課目としている。


 勿論、収入の有る、豊かな魔導高等学校アウル・バ・ハウゼは、学校が魔導防護服アウルプロセルを購入し、全校生徒に支給して、魔導格闘技アウルトゥオゥロセをさせている。


 でも、この学校は貧乏なうえ、魔導格闘技アウルトゥオゥロセを教える先生もいなかったので、殆どの生徒が魔導格闘技アウルトゥオゥロセをした事が無い、



 アルバート先生が、入学式で、魔導格闘技アウルトゥオゥロセの全国大会を目指すと宣言し、その場にいた、教魔省の役人が、


 世界企業ダルドネスのロートス社が、新しく販売する予定の魔導防護服アウルプロセルの最終試験に、実際に試着する高校生パールバウゼのモニターを探している事を知っていて、その事を、我が校の学長に伝え、


 それを聞いた魔導皇の学長が、ロートス社と掛け合って、この学校の生徒の人数分の魔導防護服アウルプロセルを支給して貰った、と言うことらしい。


 勿論、今、魔導教練棟の床に貼っている、この魔導線アウルラーも、ロートス社の支給品だ。


 そして、明日の大会には、ロートス社の技術者も沢山来るんだそうだ。



 ローラは、エルさんに怒られて、更衣室に魔導防護服アウルプロセルを脱ぎに行き、


 アルバートは、そのローラが着ていた魔導防護服アウルプロセルを見て、感心していた、


「凄いなぁ、此れはプロ仕様の魔導防護服アウルプロセルだ! 流石、ロートス社、こんな凄い製品を、一般に販売するって、一体、幾らで売るつもりなんだ?」


 と、呟いたので、俺は、彼に近付き、


「アルバート先生、あの服、何がそんなに、凄いんですか? 」、と聞いてみた。


「ん、スグル君、君は、魔導防護服アウルプロセルの事、知らないのか?」


 まぁ、俺、魔導格闘技アウルトゥオゥロセの事も、魔導防護服アウルプロセルも、はっきり言って、知りません。


「先生、俺って、遥か東の辺境の地の出身で、俺の国じゃ魔導格闘技アウルトゥオゥロセじゃなく、スモウって言う、スポーツが盛んだから、ほら、」


 アルバート先生は、びっくりして、


「そっ、そうなのか?驚いた、魔導格闘技アウルトゥオゥロセの無い国が有るんだ、そりゃ、貴重だ!」


 

 貴重?


 えっ、


 この話し、アルバート、信じてる!


 東の辺境って設定、


 案外、行けんじゃねぇの?


 となると、


 やっぱ、ローシィが特別って事?


 俺は、そう、思いながら、アルバート先生の話しを、聞いていた。




 高校生パールバウゼや、一般の人が使う魔導防護服アウルプロセルは、頭、胴、腕、足に別れている、甲冑のようなタイプで、


 魔導回路アウル・カルラも複雑な回路カルラじゃないから、万が一、魔導術が発動しなくても、ある程度の物理攻撃を防ぐように、なっている。


 頭はお鍋のような形で胴、腕、足は筒型、其々に簡単な魔導回路アウル・カルラが書き込まれていて、合計、五つの魔導防護服アウルプロセルが一組になっている。


 このタイプの利点は、プロ仕様と違って、安価である事、パーツに別れているので、壊れた場合、パーツ事に交換が出来る事、


 欠点は、動きにくい、だから、一瞬の動作で勝敗が決まるプロは、此を使わず、さっきローラが着ていたような、一体型を使う、


 で、一体型の欠点が、兎に角、高額な事、トッププロだと、軽く、一着、数千万RG(リージェン)するんだとか、


 もう、桁が大きくてよく、わからんけど、家が一軒、買えるんだそうだ。


 えっ、


 て、事は、ローラちゃんは、家、一軒を着ちゃった分け、


「いや、だからね、スグル、そこが世界企業ダルドネスのロートス社なんだよ、」


「ロートス社?」


「まさか、家、一軒の値段で売る分けないから、たぶん、プロ仕様よりは性能は低いんだろうけど、我々が普通に買える一体型の魔導防護服アウルプロセルを、ロートス社は開発したって事なんだ、凄いだろ、彼等は、」


 よく分からんけど、


 成る程、ロートス社が凄いって事は、


 分かった。


 


 そんな、凄い魔導防護服アウルプロセルが入った箱を、配達屋ローダ・アルパ達が、どんどん魔導教練棟に運んで来る。


 エルさんは、箱に着いてる名札を見ながら、どんどん、クラス事に箱を仕分けていった。


 俺も、近付いて、魔導防護服アウルプロセルの箱を見ると、確かに名前が入っている。


「なんか、サイズとか、あんですか、一人一人指定しているみたいですけど?」


 アルバートが、不思議そうに、


「サイズ? あぁ、大きさの事? どうだろ、ローラ君が試着したから、彼女なら、分かると思うけど、一体型は、動きやすさが重要だから、たぶん、魔導防護服アウルプロセルの大きさは『れん』の回路カルラで調整する筈なんだが。」


 俺は納得した。


「あっ、だから、あんなに、ピッタリなんですね、でも、あれ、ちょっとピッタリ過ぎて、恥ずかしくないすか?」

 

 アルバート先生は驚いて、


「えっ、恥ずかしい、 そうなのか?」


 いやぁー、普通に恥ずかしいでしょ、


 だって、着るのは、思春期の高校生達だよ、


 ヤバイって、アルバート先生、


「でも、ローラ君は、普通に着てたよ。」


 嫌、彼女は、別格だから、彼女に羞恥心って言葉は無い!



「スグルさん!ちょっと、なんか失礼な事、考えてません!!」



 おっと、驚いた!


 ローラが、更衣室から、制服に着替えて戻ってきたよ。


「あっ、ローラ君、ちょうど良かった、どうだい、ロートス社の新型魔導防護服(アウルプロセル)は、恥ずかしいってスグルが言うんだけど、」



 ローラは、小悪魔的な笑顔で、


「へぇええ、スグルさん、そう言う目で、あたしを見たんだぁあ、」



 俺は、慌てた、


「ちっ、ちげぇよ! おっ、俺の国じゃ、普通の高校生は、あんな格好したがらないから、だから、心配したんだよ!!」


 普通は、


 体の線、見せるの嫌がるんだよ!


 太ったり、痩せたりしてんの、凄く気にすんだよ!!


 子供達は!!



 ローラは、俺をいじるのを止めて、真面目な顔で、


「うーん、大丈夫だと思いますよ、アルバート先生、農牧高等学校ラウダ・バ・ハウゼ高校生パールバウゼだったら、嫌がると思いますけど、うちの高校生パールバウゼは、皆、スタイル、良いし。」



 えっ、


 皆がスタイル良い?


 ちょっと待て、


 其れって、


 どう言うことだ?



「ん、知らないのか? スグル、魔導術を使う子は、君のように、醜い、体形にならないって事」



 えっ!


 そうなの、って、ちょっと待て、


 アルバート!


 どさくさに、今、俺に対して酷いこと、言わなかったか!!



「あっははははは、スグル、君も、少しは、体を動かさないとな、確かに、その醜い体つきは恥ずかしい!!」



「ちょっと、酷くないすっか、アルバート先生」



「あっはは、兎に角、残りの魔導線アウルラーを、頑張って貼れば、君も少しは、痩せるよ。」



「はいはい、」



 俺は、この先生を、相手にするのを止めた。



「あっ、処で、君の国で、流行っていると言う、その、スモウって奴、今度、僕に教えてくれないかなぁ、スグル」



 俺は、即座に、


「御断りします!!!」



 マジに、アルバートとガチの抱き合い、くんずほぐれずなんて、



 絶対ヤダ!!!



 俺は、魔導教練棟の床に魔導線アウルラーを貼りながら、もう一度、魔導防護服アウルプロセルの箱を見る、


 一人一人の名前が入っている。


 明日、ロートス社の技術者が、この魔導防護服アウルプロセルのデータを取るって言ってた、


 彼等は、三百人近い高校生パールバウゼのデータを個別に取るつもりか?


 俺は、スグル時代のサラリーマンの経験から、其れがれ程、大掛かりで、大変な事であるかを知っている。



 ロートス社ってのは、



 俺が、思っているよりも、



 凄い企業なのかも知れない。



 その時の俺は、漠然とそんな事を考えていた。



 漠然と、

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ