星の力
2035年4月7日 火曜日
お昼、僕とエミ、そして、ジェミは学食の端っこで、この学校の美味しいけど、量の少ない、昼食を食べていた時、
エミ、が僕に、こっそり教えてくれた、
「えっ、リアが僕の事を好き!」
「ハル、誤解しないでよね、リアは、言い寄る男を断る為に貴方の名前、出しただけだから、」
えっ、そうなの、
ちょっと、惜しい。
「・・・ハル、その顔、嫌い。」
「エミ、御免なさい。」
ジェミは、納得顔で、
「やっぱり、そう思った、ハルがそんなにモテる分けないし、」
当たってるけど、ジェミに言われると、ちょっとムカつく。
「でも、リアって、そんなにモテるの?」
僕は、エミに聞いてみた、
エミは、顔をしかめて、
「うん、凄い、まるで、砂糖に群がる蟻、今だって、三年に呼ばれて、たぶん、ハルの名前出して、断ってる筈よ。」
・・・なんか、僕の名前の使われ方、
ヤバクない、
結構、恨まれたりして、
ジェミは、残りのスープを口に入れながら、
「そこなんだよなぁ、ハル、ハルはある意味、この学校じゃ、有名人になっちゃったんだよなぁ、其も、悪い意味で、」
・・・ええええええええ!!!
エミが、僕に頭を下げながら、
「御免、ハル! 私、リアから相談された時、軽い気持ちで、貴方の名前、使って良いよ、って言っちゃったの!!」
えっ、
ええええええええええ!!!
エミィィィィ!!!
僕は、心の内で、エミを怒った。
本気で怒ると、エミ、逆ギレするし、
「でも、クラスの皆は、其が、嘘って知ってんでしょ。」
ジェミは、首を振りながら、
「アル、問題はうちのクラスじゃないんだ、Aだよ、」
「Aが?」
ジェミは、心配そうに、
「なぁ、ハル、もともと、プライドの高い奴等だよ、リアが本来、Aだったのに、Cの我がクラスに来た事さえ、彼等大騒ぎしているのに、ハルの名前が出たんだ、」
確かに、Aクラスの連中からしてみたら、リアにバカにされた気持ちになる事は、分かるけど、
「でも、ジェミ、僕達と、彼等じゃ、接点無いし、問題無いんじゃないの?」
ジェミは、首を振りながら、
「分かってないなぁ、ハル、明日、魔導格闘技の全国大会個人戦、選抜試験が有るだろう。」
「うん、」
「その時、学年総代のガルホール・スターゲスが、リアを賭けて、君に決闘を申し込むって、言いふらしているらしいよ。」
あっ、そう、
決闘ねぇ、
決闘?
えっ!
ええええええええええええ!!!
「ジェミ!其って、」
「まぁ、噂だけどね、だけど、あの、ガルホールだから、気を付けたほうが良いよ。」
ガルホール・スターゲス
名門、スターゲス家の三男で、首席、二年生の総長にして、魔導格闘術も旨く、短髪の灰色の髪に白のメッシュ、鋭い瞳に、厚い唇、背も高く、体格も立派な、マイナス要素の無い、嫌な奴。
そして、入学式の『継承の義』で、無駄に、カッコ付けて、校長にデカイ術球を返された、その人。
「ちょっと、其れって、おかしくない!」
エミが騒ぎ出し、僕とジェミオは、お互い、顔を見合わせた。
「何で、ハルがリアを賭けて決闘する事になるのよ!ハルは、私を賭けて決闘するのが筋!じゃないの!!」
僕とジェミオは、同時に、首を振った、
エミ、原因は君だから、
僕の名前を、無断で貸すから!
僕とジェミは、同時にため息をついた。
話題を変えようとジェミオが、僕に聞いてきた、
「でもさぁ、ハル、あのリアに、直接、相談されたら、どうしてた。」
・・・うーん、確かに、断る口実は必要だよなぁ、
「まぁ、やっぱり、エミと同じ、好きな人がいるって言う、断り文句を勧めるね、その時は、ジェミ、君の名前を推薦するよ。」
「げっ!」
ジェミオは、止めてくれってな顔して、この話題は終わった。
決闘かぁ、
僕はあまり、魔導術は得意じゃない、でも、僕は他の人とは違う力を使う事が出来る。
其れを教えてくれたのが、スグルさんだった。
スグルさんが言うには、その力は星の力と呼ばれる力らしい、
その、力を意識して使ったのは、シャーリン先生の授業の時、
僕は、スグルさんの真似して、星の力を使って氷菓子を作ってみた、
其れは、スグルさんのような、凄く派手な輝きじゃなかったけど、
産まれたばかりの星のように、微かに、光輝く、星だった。
その星は、僕とエミの造った氷菓子の中に溶けて消えた。
あれから、僕は毎日、星の力を練習している、
特に、昼は、星の力を使うのに凄く疲れる、でも、夜に星の力を使うと多少、楽になる事に気づいて、
僕は、夜、父さんの工房の屋上で、一人、星の力の練習をする事にした。
でも、練習と言っても、まだ一週間、一日、一時間位、
少し、この力の本質が分かった程度、
一つの力は『願い』、強く願うと星が僕の為に動くような気がする、
この力は、只、其れだけ、
今は、
でも、スグルさんが僕とエミを救ったのは、星々と教えてくれた、其れはたぶん、この『願い』の力だと思う。
使い方が分からない。
もう一つの力は、はっきりと、分かる。
たぶん、体に宿る、『星の力』
世界に道溢れている『星の力』を、体に取り込んで、使う、
そんな感じがする。
魔導術は、廻りに有る魔素を7元素に変換する術、
決して、自分の体の本質を変える技術じゃない。
だから、魔導術では体を強化する事は出来ないから、『力』の術で体を守る。
『磁』で、体の瞬発力を一時的に上げる事は出来ても、直ぐに疲労で、体は硬直してしまう。
だが、『星の力』は、まるっきり違う、この力は自分の中で意識すると、なんだか、自分の体が違う物になったような、気がした。
勿論、その後の疲労は半端ない。
最初の時は、一分間、意識しただけで、三十分動けなかった。
家族も、僕が急に倒れたので、ビックリしたけど、僕は、口が利けたので、大丈夫と家族に伝えた。
其れで、最初の頃は、夜、ベッドのうえで、寝ながら、この力の本質を探ってみた。
そして、何度かの試行錯誤と何回かの気絶で、分かった事は、
此の力は、天から降り注ぐ、『星の力』を、僕の体が取り込んで、使っている事だ。
勿論、確証は無い、そんな気がしてきただけ、
だから、取り込んだ『星の力』が無くなると、僕の体は『星の力』を欲しがり、僕の体力まで、『星の力』として使ってしまう、
その為、僕は意識を失う程、疲労する。
此も、そんな気がするだけ。
試しに、少しずつ『星の力』を使って、どの段階で気を失うかを測ったりした。
そして、分かった事は、『星の力』は使えば、使うほど、少しずつ気絶するまでの時間が伸びている事、
完全に使い切る前に、止めて休憩を取ると、気絶しない、
例えば、一分使って、三十分した後なら、また一分使えたとか、
そんな試行錯誤を繰り返して、僕は、夜、満天の星の下で、一時間程、『星の力』を試す、
使える時間は五分、休憩を挟んで、三回、
まず、体の中心にある、暖かい、光輝くようなイメージを、確認する。
すると、その光が自分の中に有る事が分かる。
その光をゆっくりと、動かす、
最初の頃は、動かすのに凄く重く感じて、動かすだけで、疲れる、そんな感じだった。
今は、重いけど、ゆっくりとなら、そんなに疲れずに動かせる。
その光を、自分の強化したい部分に持って来ると、その部分に『星の力』が発動する。
例えば、その光を、自分の目に持って来る。
僕は、世界の見えない世界、魔素の輝き、力、磁等、普通に見えない魔導も、美しく、輝くような色が付いた、世界に見えるようになる。
更に、世界は、僕の、意思の時間で動いているように感じられ、
僕が、ゆっくりして、と考えると、世界はゆっくりと動いているように見え、早くと考えると、世界は一瞬で動く世界になった。
また、その光を右腕に集めると、腕は、まるで、自分の腕じゃないように、力に満ち溢れ、また、考えられない、スピードで動かす事が出来た。
足に集めると、同様の現象が足にも起こり、僕はバルセリアの草原を五分間、野生の野馬の間を疾走した。
そして、僕は、この『星の力』が、素晴らしい力である事を知った。
アルバート先生の提案で、今年は、僕達の高校は、魔導格闘技の全国大会に出場する事が、僕達の目標となり、
明日は、その代表選手を選ぶ為の、選抜試験が有る。
夏季休暇に開催する、魔導格闘技の全国大会は、
公国の、東西南北の地域の魔導高校から選ばれた4つの魔導高校の代表選手が、公都で公国、ナンバー1を決める大会。
全国大会に出るには、東地区の他の3つの魔導高等学校の選抜選手、選抜チームと、予選大会を勝ち抜いた個人戦は6名、団体戦は2チーム、を加えて争う地区大会で優勝、準優勝をしなくてはならない。
選抜選手は、各学年で、個人は、3名、団体は、1チーム7名が学校推薦として選ばれる、
うちの高校は、今まで、魔導格闘技に熱心な先生がいなかったので、
学校推薦の選抜選手は、無く、
有志が集まって、予選会の個人戦に出場し、だいたい一回戦で敗退していた。
其れが、現実。
その現実を、変えようとしている、アルバート先生は、素晴らしい人だ。
結果よりも挑戦する事が大事で、選ばれた人は勿論、選ばれなかった人も選手を応援する事で、皆が一つになれる。
その時、僕達は、始めて、此の高校にいる意味を理解する、
そう、言って、学長を、先生達を、僕達を説得した。
結果、一部の熱狂的な先生のファンと、大多数のやってみるかぁ、と一部の脳筋否定派が生まれて、
その結果、良い意味で、学校は盛り上がっている。
魔導格闘技、
魔導術を使ってする、格闘技
高校生が魔導格闘技に使えるのは、力迄、
魔導回路が書き込まれた、防護服を着用して、
力を相手に当てれば、ポイントとなり、そのポイントの判定は、専用の魔導機械か、または審判が判定する、
最初に3ポイントを取った選手が勝ちとなり、
勿論、力が当たらないように力で防御しながら、力で攻撃する。
此の、格闘技の特色は、相手の力が見えない事だ。
見えないから、駆け引きがうまれ、勝負は一瞬で決まる事も有れば、白熱する事もある。
個人戦の場合、高校生の発動出来る、力の距離は、50センチ、此れは、専用の魔導回路が組み込まれた腕輪、魔導制限腕輪で制限されていて、
だから、高校生の魔導格闘技の個人戦は、近場の殴りあいのようにも見える。
団体戦は、1名の王と、5名が攻撃者、守備者になり、その他、1名の狙撃手に別れ、迷宮戦場で相手チームを攻撃する、
此の場合も、1名の狙撃手以外は50センチルールが適用するので、結果、格闘技が重要になり、3ポイント取られた選手は迷宮戦場から敗退となり、
それらの攻防の後、相手の王から3ポイント先取した方が勝ちとなる。
団体戦の特色は、1名の狙撃手をどう使うかに有る、狙撃手は専用の魔導制限腕輪で、特別な制限がかかっている
狙撃手は、6メータ迄、力が飛ばせるけど、防御の力を張る事は出来ない、
だから、序盤戦は狙撃手の潰しあいで、見た目は、同じ魔導制限腕輪を着用する為、誰が狙撃手かは分からないから、早く、狙撃手を見つける事が鍵となる。
そして、僕は考えた、もし、此の『星の力』を、魔導格闘技に使ったら、
『星の力』を瞳に使ったら、
僕は、見えない物を見る事が出来るんじゃないか?
仮に、もし、僕が、相手の力を見る事が出来たら、
僕は、相手の力を避けたり、防ぐ事が出来るし、
相手の防御の無い場所を、攻撃出来る!
凄い!!!
その時の僕は、此の『星の力』の素晴らしさに、酔しれていた、
勿論、時間は限られている、
制限時間は五分、
一回、30秒で、十回、
僕は、あまり目立つ事は好きじゃない、だから、優勝したいとも思わない、
選手に選ばれた人を応援していた方が、気が楽で良い、と思っている。
でも、此の力を試してみたい、その小さな欲望が、どんどん僕の心の中で、大きくなっていった、
其れが、凄く危険な発想である事を、その時の僕は、気が付いてはいなかった。
選抜試験は、勝ち抜き戦での優勝者と準優勝者二名、が代表になる、
そして勝ち抜けば、選手は6回試合する事になる、だから、此の選抜試験は一日がかりの、大きなイベントになった。
僕は、一回の試合に五回、『星の力』を使う、
一回戦、嫌、二回戦迄、此の『星の力』を使って、たぶんその後は使えないから、僕の実力じゃ、普通に負けると思う、
其れで、良い、
僕は、目立たないし、
此の、『星の力』を魔導格闘技で試せる、
その時の僕は、そう、気楽に考えていた。
其れが、大変、危険である事を知らずに、
僕は、考えていた。