表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
愛する星に、願いを込めて  作者: Hs氏
魔導高校編
36/136

魔導汽車

 公都の記者さんと、明日、農牧高等学校ラウダ・バ・ハウゼに行く約束をした俺は、


 一応、上司の学校事務職長ハウゼ・オルパ・パーダのエルさんに、明日、学校の仕事を休んで、出掛ける事を告げた。


 エルさんは、驚いて、俺は、休んでちょっと雑貨とかいろいろと必要な物を買うんで、だから休むって事をエルさんに話し、なぜか、公都の記者さんについての話しは、



 彼女には言えなかった。



 俺は、まだ、彼女の心を傷付けた事を気にしているんだろうか?



 しかし、今の俺には金無いし、給料もまだ先なんで、仕方無いから、二千年前のルーナから貰った金貨を、一枚、売ることにして、前に金貨を売った店に、夕方行った。


 金貨は、前回と同じ、二十五万RG(リージェン)で売れた。




 4月2日、俺は一張羅の古着を着て、8時に宿舎を出た。


 途中、路上の店で、サンドイッチ(バンデゥタ)と、茶色い御茶のような飲み物を買い、其れを食べながら、駅に向かった。


 駅からホームに入る入り口は、一つで、別に駅員がいる分けでも無く、皆、自由に乗り降りしているように見えた。


 ?


 どういう、仕組みなんだ?



「どうかなさいました?」



 えっ?


 振り替えると、昨日の記者さんが、俺の後ろにいて、俺に声を掛けて来た。


 彼女は、昨日のスーツ姿に右手には魔導本アウル・バーデ、左手に大きなバスケットを持って、



「あっ、記者さん、早いですねぇ」



 記者さん、ちょっと怒った口調で、


「ローシィです!ローシィ・レーランド、ローシィと御呼び下さい。」



「えーと、すみません、ローシィさん」


 俺は素直に謝った、まぁ、名前を覚えて無い、俺が悪いし、


 彼女は機嫌を直して、


「じゃ、行きましょう、スグルさん」



 行くって、


 どうやって、行くんだ?



「あのー、ローシィさん、ちょっと聞いて良いですか、」



 彼女は、はぁー?ってな顔で、


「何をですか?」



「あのー、此の魔導汽車バーガンドーレにはどうやって乗るんですか?」



「はぃ???」



 やべーぇ、彼女、驚いてるよ!!



「ええと、まさか、スグルさん!魔導汽車バーガンドーレに乗った事無いとか?」



 乗った事ねぇよ!俺、まだ此方来て10日だよ!!乗る分け無いじゃん!


 取り敢えず、何時もの言い訳、


「俺ってさぁ、その、遥、東の魔導汽車バーガンドーレも無い、辺鄙な島国の出身だから、本当に乗った事ないんだ。」


 だいたいの人は、此の説明で納得するんだが、



「じゃ、此処まで、どうやって来たんですか?」



 えっ?


「い、いやぁ、船!、そう船に乗って!!」



「その船は、何処の港に着いて、その港から、此処までは、どうやって来たんですか?」



 ええええっ!!!


「あっ、そう、歩いて!俺、歩いて、此の街まで来た!!」



「歩いてですか?空を飛んだんじゃ無くて、」



 えええええええっ!


 俺! 汗かいてきた!


 俺は、太ってる自分を指しながら、


「イヤだなぁ、ローシィさん、こんな太っちょが、空、空を飛べる分け無いじゃん!」



「・・・」



 なんだ?ローシィさん、俺を見てるその目は!!


        

「・・分かりましたスグルさん、魔導汽車バーガンドーレの乗り方を、貴方に説明してあげましょう。」



 やっと、説明してくれるんだ。


 ローシィさんは、大勢の人が集まって何かしている方を、指しながら、



「彼処で、魔乗車印ドーレダーを買います。」



 あっ、成る程、


れだ、これだ!って言って魔乗車印ドーレダーを買うんですね!」



「・・・・」



「すみません、つまんないシャレです。」


 俺、ローシィさん苦手かもしんなぃ。




 ジョークが滑った俺とローシィさんは、その人だかりが出来ている駅の壁の方に行き、


 壁には、大きな魔導本アウル・バーデが幾つも埋め込まれていて、その前に立った人は、魔導本アウル・バーデの上の方にあるコイン投入口にコインを入れて、


 魔導本アウル・バーデに触ると、そのまま、駅のホームの中に入っていった。


 ローシィさんが、魔導本アウル・バーデに表示されている文字と数字を指しながら、


「此の、農牧高等学校ラウダ・バ・ハウゼに行きます、下の500が運賃ですから、500RG(リージェン)硬貨を上の魔導口アウルコに入れます、スグルさんは500RG(リージェン)を持ってますか?無ければお貸ししましょうか?」


 確か、朝飯買った時、500RG(リージェン)硬貨、貰った筈、


「大丈夫、俺、持ってますから。」


 俺は、ポケットから500RG(リージェン)硬貨を取りだし、魔導口アウルコに入れ、魔導本アウル・バーデに表示されている、農牧高等学校ラウダ・バ・ハウゼの文字を触った、



 その瞬間、文字に触った、右手の甲に、青い魔導回路が浮かび、その上に15、9、3と表示された。


 なんだ、此れは?



「驚いていると言う事は、スグルさんは本当に魔導汽車バーガンドーレに乗った事無いんですね。」


 ローシィさん、だから、さっきから初めてだって言ってるじゃない!


「いや、本当に乗った事無くて、冗談だと思った?」


 ローシィさんは、何か納得したような表情で、


「はい。」


 

 当然か、普通は冗談だと、皆、思うだろうし、


「でっ、ローシィさん、此の数字の意味は何なんです?」


「其れは、『こう』の魔導術で、9時15分発、3番ホームを意味します。」


「あっ、そう言う事、」


 何か、ローシィさん、説明が少し丁寧になってない?



 彼女は、改札の方に向かいながら、


「じゃ、スグルさん、もうホームに入れる筈ですから、行きましょう。」



 そう言う仕組みなんだぁ、しかし、此の魔導術を真似して魔乗車印ドーレダーを作ったら、魔導汽車バーガンドーレは乗り放題なんじゃないの?



 俺は、其の事を彼女に聞いてみた、



 ローシィさんは首を振りながら、


「魔導工学で作られる、此の国の魔導本アウル・バーデは、全て魔導省が管理しています、ですから偽造は出来ませし、したら、魔導省が動きます、逸んな危険な事は誰もしません。」


「其れに、魔導術で、複製するには、上級魔導士じゃないと無理ですし、上級魔導士は協会から無料の魔乗車印ドーレダーを支給されているので、逸んな事をする意味が有りません。」


 ローシィさんは、そう言いながら、改札を通り、俺も其の後に続いて、改札を通った。



 あれ、そう言えば、ローシィさん、魔乗車印ドーレダーを何時買ったんだ?



 俺の考えを予測したのか、


「ちなみに、私は、記者協会の年間乗り放題魔乗車印ネ・ホール・ドーレダーを会社の経費で購入しています。」


 彼女は、そう言って、俺に右手の甲を見せると、右手の甲に赤い魔導回路が浮かび上がった。



 そう言う事か、記者さんだから、直ぐに乗ったり降りたりするし、


 確かに、車が無い、此の世界では乗り放題魔乗車印(ホール・ドーレダー)は便利だし、記者さんにとっては、必需品だ。


 挿絵(By みてみん)


 3番ホームには、既に一両の客車が繋がった魔導汽車バーガンドーレが待機していて、その姿は、昔の小説の未来列車のようなデザインをしていた。


「ローシィさん、乗らないんですか?」


 彼女は、頷きながら、


「ええ、私は、一応、記者なので、車内で仕事をする事を考えて、個室にしてます。」


 個室?


魔乗車印ドーレダーの売上で客車数が決まるんですが、今日の此の時間は農牧高等学校ラウダ・バ・ハウゼに行く人が少ないみたいですから、客車は一両だけですね。」


 ローシィさんが、俺に説明した後、魔導汽車バーガンドーレの後ろに車庫からきた客車一両と貨車三両が接続され、


 ローシィさんは、後からきた方の客車に乗りながら、


魔導汽車バーガンドーレは客車数が決まったら、個室専用の客車と貨車を連結してから、出発するんです、そうですねぇ、此の部屋にしましょう。」


 個室専用客車は片側通路タイプで、窓の反対側に個室がならんでいる、個室のドアの脇にスリットが有り、


 ローシィさんは、右手に持っている魔導本アウル・バーデを、其のスリットに差し込むと、個室のドアが壁に引き込まれた。


 開いた入り口から彼女は個室に入り、俺もローシィさんの後から個室に入った、


 その時、俺の右手の甲の魔乗車印ドーレダーが光った。



「此れは?」



 ローシィさんは、対面型の上品なソファに座りながら、


「此の部屋が、貴方と私の魔乗車印ドーレダーを記録したんです、だから、私達だけが、此の部屋に出入りできます。」



 そう言う仕組みなんだ!


 俺は、もう1つ、彼女に聞いた、


「さっき、何で、あのスリットに魔導本アウル・バーデを差し込んだですか?」



 彼女は簡単に、


「個室の使用料を払ったんですけど?」


 えっ?


 魔導本アウル・バーデで、金払えんの、知らなかった。



「その様子だと、御存知無いようですね、失礼ですが、スグルさんは魔導本アウル・バーデをお持ちですか?」


 これ、ウェラさんにも聞かれたな、


「俺、東の辺鄙の出身だから、持って無くて、買おうかなぁと思ってます。」



 その時、右手の魔乗車印ドーレダーが光、



 ゴトン、ガタン、ゴトン、



 魔導汽車バーガンドーレが、発車し、窓の景色が動き出した。


「取り敢えず、スグルさん、座りません、此の個室は、『れん』で作る、御茶が飲めますし、」


 ローシィさんが、俺に対面のソファに座るように勧めてくれて、テーブルには、御茶が入ったカップが置かれていた。



「あっ、どうもすみません。」、


俺は、そうローシィさんに言って座った、


 彼女は、バスケットをテーブルに置いて、そのバスケットを開くと、中にサンドイッチ(バンデゥタ)や俺の知らない食べ物が沢山入っていた。



 えっ?



 どう言う事だ?



「お腹空きません?一つどうですか、」



 この人、一体、何考えてるんだ?


 俺は、ちょっと警戒し、


「ローシィさん、此れは、どう言う事ですか?」



 彼女は表情を変えず、


「・・・スグルさんに、ちょっと、お願いが有りまして、出来るなら食事をしながら、穏やかにお話をしたいなぁ、と思いまして、」



 ・・・彼女は、今の俺が食い物に弱い事を、知ってるって言いたい分けか?


 俺は、バスケットの中のサンドイッチ(バンデゥタ)を一つ取って、其れを口に入れながら、


「その願いってのは?」



 彼女は身を乗り出しながら、


「スグルさん、私が、公都の魔導新聞社アウル・ジェーラの記者である事は話しましたよね。」


「ああ、最初に其れを聞いた。」


 俺は返事を返しながら、もう一つサンドイッチ(バンデゥタ)を手にし口に入れた、


「記者は、記事になるネタに飢えています、そして、私が見たところ、貴方は、私に良いネタを提供してくれる気がします、」


 俺が、ローシィさんに記事に成るネタを提供する?

 

「勿論、タダとは言いません、御礼に貴方が此の世界で不足している知識を、私は貴方に提供します、」


 確かに、俺は此の世界の事、魔導術の事等、知らない事が多すぎるし、多分、此のままじゃ、何れ俺の、この世界での生活に問題が起きる事は間違い無い、



 だから、ある程度俺の事を理解した上で、俺に色々な事を教えてくれる協力者は欲しい。 



 さてと、どうする、俺。



「・・・多分、君は、俺の話が余りにも荒唐無稽だから、信じないと思うんだが、」


 ローシィさんは、真っ直ぐ、俺を見ながら、


「貴方の話を信じるか、信じないかは、私が決めます。」


 

 兎に角、話をしろって事?


 ならば、逆に、



「仮に、その提案を俺が承諾しても、俺の話す内容が、嘘だったら、」


 ローシィさんは、表情を変えずに、


「嘘か本当かも、私が判断します。」



 ・・・



 成る程ねぇ、此が、プロの記者って奴ね、


 俺はもう一つサンドイッチ(バンデゥタ)と鳥の股肉のような物を食いながら、


「分かった、但し、一つ条件が有る、」



「条件ですか?」



「記事を発表する前に、その記事を俺に読ませてくれ、そして万が一、俺の知っている人に迷惑が掛かるような記事なら、発表は止めて欲しい。」



 ローシィさんは、暫く考えた後、


「良いでしょう、私も揉め事(トラブル)は避けたいですし、その条件で構いません。」


 そう言いながら、彼女は魔導ペン(アウル・ゴーダ)魔導本アウル・バーデに、何かを書き込んだ後、魔導本アウル・バーデを俺に差し出しながら、


「此れは、貴方と私が、お互いの情報提供に関する条件の契約書です、字は読めますか?」



 契約書?


「一応、簡単な単語なら、分かる、ええと、『結婚に関する同意書』」



 彼女は真っ赤な顔で、


「ちぃ、ちぃ、ちがあああああああああううううう!!!結婚ウェルデじゃねぇ!情報ベェルデだ!!」



 えっ、そうなんだぁ、確かに、おかしいと思った、



「お前え、わざと間違えたな!」


 おっ、此が、彼女の地か、


「嫌だなぁ、ローシィさん、俺、東の田舎の出身だよ、ちょっと間違える事、有るって。」



 彼女は、赤い顔で、


「良いから、早く読め!!!」




 契約書には、俺が彼女に情報を提供する事に対して、彼女は其れを記事にする事が出来る、その記事は、必ず、事前に俺が内容を確認する、


 その内容に、俺が同意出来なければ、お互い、話合いをする。



 そう言う、内容だった。


 ・・・成る程、そう言う落とし処って分けだ、彼女は記者だから記事にはしないとは言えない分けで、だから話合ね。


「分かった、話合いで行こう、で、どうするんだ?」


 彼女は魔導本アウル・バーデを指しながら、


「その文に触るんだ。」



 彼女は、あれから、地のままだ、


 俺は黙って魔導本アウル・バーデに右手で触った。


「えっ?」


 魔乗車印ドーレダーと同じように、右手の甲に魔導回路が浮かび上がった、色は緑、



「其れは、個人と個人が簡易的に契約をする魔導印ダーだ、其で、此の同意書は改変も破棄も、その魔導印ダーが無ければ出来なくなった。」


 此れは、後でローシィさんから聞いたんだが、大きな契約等の場合はお互いが、専用の契約用の魔導本アウル・バーデ魔導印ダーをするそうで、


 簡易の場合は、お互い普通の魔導本アウル・バーデを使うんだが、相手が魔導本アウル・バーデを持って無い場合は、その相手の体の一部に魔導印ダーが付くんだそうだ。


 だから、魔導本アウル・バーデを持って無いと、体中に魔導印ダーが付く、


 ちょっと、嫌だ、やっぱり、早く俺専用の魔導本アウル・バーデを持ちたい、


 そう、ローシィに相談したら、魔導本アウル・バーデの購入は、魔導省の登録等、手続きが必要だから、一緒に購入しようと言ってくれた。



 結構、好い人だ。



 まぁ、逸んな分けで、俺は、此の世界で始めて、俺を支援してくれるかもしれない人と出会った事になる。




 しかし、彼女との契約は、果たして良かったのか、どうかは、今の俺には分からなかった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ