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愛する星に、願いを込めて  作者: Hs氏
魔導高校編
31/136

入学式

挿絵(By みてみん)


 入学式が始まった、俺は二階の後ろの一般席の奥から眺めている、俺は入学式には出席しないと言ったが、入学式を見ないとは言ってない。


 講堂は奥から見て中央の席に白い制服の新入生が座り、右側を灰色の二年生、左側を三年生が座っている。


 其を取り囲んでいる、二階席の左側は新入生の親族、右側が来賓の席で、此の席にルーナちゃんが白いドレスを着て座っている、その隣に白い制服を着た怖い目付きのお姉さんがいる。


 あれ誰だ?


 確か、此の間の飲み屋にはいなかった、たぶん、ルーナちゃんの新しいボディガードか、彼女、あれで此の国の偉い人の娘だったし、まぁ、普通に護衛の付き人がいて当たり前か。


 新入生の親族も、来賓の方達も、此の学校の中に入った時、その美しさを感嘆し、そして、学長や先生達を誉めていた、勿論、エルさんも誉められていた。


 エルさんは、教魔省の偉い人と知り合いなのか、その部下の元気娘みたいな女性と結構、話し込んでいて、


 随分、元気になったように見える、


 良かった。



 式は、学長の講話から始まり、ジェルダ学長は『嵐』を引き合いに出して、新入生に『嵐』のように、気高く、美しい学園生活をおくって欲しいと言っていた。


 前にエルさんから聞いたんだけど、学長の講話には、何時も『嵐』が出るそうで、すっごい『嵐』好きなんだそうだ、だから二つ名が『嵐のジェルダ』、と呼ばれているんだそうだ。


『嵐』が美しいって、本当に変わっている人だ。




 そして、新任の先生の紹介が行われた。


 最初に紹介されたのは、ポワジューレ共和国出身で、魔導格闘術の教師、


挿絵(By みてみん)


 アルバート・ザッカーノ


 黒い髪に薄い金のメッシュ、透明感の有る蒼い瞳、そして鍛え抜かれた肉体、凄いイケメンで、彼が壇上に登場した時、女子生徒の歓声や男子生徒のざわめき等、講堂全体が騒然となった。


 魔導格闘術は、魔導術を使う武道らしく、スポーツとしてもさかんで、使う魔導術は、『力』、プロ選手は、此に、『炎』、『雷』、『光』を使うらしい。

 

 高校生パールバウゼが習うのは、『力』の基本技で、受け、投げ、投打らしいと、此れは、後から、彼に聞いた事だ。


 まぁ、格闘技だから世界的に人気があって、大きな大会が良く開催されるんだとか、勿論、高校生パールバウゼの大会もあって、彼は、その大会に此の魔導高等学校アウル・バ・ハウゼからも出場して是非、優勝させるんだとイケメンスマイルで宣言して、大喝采を受けていた。




 次に、紹介されたのが、自由都市同盟の出身で、魔導考古学の教師、


 メルティスト・ブーレンダ


 彼女は、歳は俺より、少し年上に見える、赤茶の髪はボサボサで、丸メガネと太い眉は見るからに研究者って感じだ。


 魔導考古学、二千年前以前の魔導と星の歴史の関係を調べているんだとか、


 特に、失われた星の時代の研究が専門らしい、

 


 最期に紹介されたのが、ポワジューレ共和国の出身で、魔導工学士の肩書を持つ、


 フォーダン・ラデコスタ


 白髪に黒いメガネで髭にも白いのが目立つ老学者、魔導術の合成処理の権威らしく、紹介された時は、少し会場がざわついた、此の学校では、魔導回路の応用学の教鞭を取るらしい、


 しかし、俺、魔導機の発明家って嘘付いて、直ぐに、本物の凄い人が来るって、実際、本当にヤバくないか。


 嘘はつくもんじゃ無い、つくづくそう思った。




 三人の新任教師が紹介された後、ジェルダ学長は、口ごもりながら、新しく、臨時で学校作業員ハウゼ・アルパを採用した事を告げ、彼の働きによっては、一ヶ月後、正式に採用するつもりだ、と発言し、会場から疎らに拍手が起こった。


 学校作業員ハウゼ・アルパの採用に拍手が起きる事に、来賓、教魔省の偉い人達も驚いていたが、学長は俺の事情を考慮して、此の話題から切り替える為に、袖で待機していたルーナちゃんを紹介して、ルーナちゃんの講話へと引き継いだ。


 呼ばれたルーナちゃんは、気高く、上品な顔立ちと、優しく涼しげなコールドブルーの瞳を持ち、


 そんな彼女は、長く美しいオンブレ・プラチナの金髪ブロンドへアなびかせ、ゆっくりと優雅に壇上へ上がった。



 こう、見ると彼女が、此の国の偉い人の娘だって言ってる事が信じられる、確かに、知的で、貴賓が有り、一般人とは違うカリスマが彼女にはあった。



 彼女の講話はシンプルだった、若い人達の力が、此の国を変える、だから未来に希望を持って勉強しなさい、ってな内容を分かりやすく、押し付けでは無く、自分の体験やユーモアを交えて、子供達に話していた。


 成る程、ルーナちゃんが国民に人気が有るのが、良く分かった、兎に角かっこいい、そして、実績が凄い、


 自らの信念で人を集め、船を作り、二度の戦いに勝利した事をさらりと話ながら、其を成しとげる事が出来た理由を、信じる事と諦めない事と言っている。


 こんなこと、言うと、だいたいが嫌みになるんだが、彼女が言うと、何か、自分もやっちゃおうかなぁ!って気持ちになるから、不思議だ、其が、カリスマの魅力って奴だ。


 彼女の講話が終わると、会場は拍手に包まれた。


 彼女は一礼をしたが、壇上から降りない、学長も壇上に上がり、ルーナちゃんと握手して、何か会話をしている、


 その光景に、また会場は絶大な拍手が沸き起こった。


 ?


 その時は学長とルーナちゃんて、何か関係あんのって思ったんだが。


 後で、エルさんに聞いたら、此の国では、学長と公家、つまり、ルーナちゃんの家の対立は有名で、


 昔、怒った学長がルーナちゃんのお父さんを公都ごと、吹き飛ばしそうになった、って言う有名な話が有るんだとか。

 

 其を聞いた俺は、


 学長、すっげえ!半端ねぇ!


 学長を怒らしちゃいけない!


 と、思った。





 二人は、壇上に残り、二人の両脇に教師が並ぶ、


 袖で、ルーナちゃんのボディガードが待機してる。


 此は、あの中二ボーヤのマーキから聞いたんだが、此から魔導高等学校アウル・バ・ハウゼでは普通に行われている『継承の義(アウム・オーデ)』が始まるんだそうだ。


 まず、学生から魔導術で作った術球アウル・ボォロを、先生に投げ、先生は其を魔導術で受け止めて、二倍の大きさにして、投げ返す。


 勿論、本当に投げ返したら事故になるので、返すように見せて、生徒が受け止める瞬間消す、のだそうだ。


 何故、こんな事をするのかと言うと、意味は、生徒達は術球アウル・ボォロを己の魔導術の才能と見立てて、その才能を先生に託す、其が、術球アウル・ボォロを先生に投げる意味。


 先生は、その才能を二倍にして、子供達を進学、または卒業させる。


 だから、術球アウル・ボォロを二倍にして返すふりをする。


 其が、『継承の義(アウム・オーデ)


 術球アウル・ボォロを学長に投げるのは、その年の首席の子供で、三年生は、フェルシェール・レェーベン、彼女は長い黒い髪にホワイトブロンズのメッシュ、銀の縁のメガネ、学年総代にして、此の国の偉い人の一人、レェーベン家のお嬢さんらしい、


 学長が彼女の名前を呼び、彼女は黒い生地に金の刺繍の入ったケープを着て壇上に上がり、


 彼女は学長にルーナちゃんに、先生達に一礼をした後、両手を学長の前に出し、術球アウル・ボォロを創成し始めた。


 造る術球アウル・ボォロの属性は『らい』、


 『らい』は現象の結果発生する魔導術で、『えん』、や『こう』よりも、形を維持する事が難しい魔導術なんだそうだ、


 此も、マーキから聞いた。


 そんな難しい術をまるで簡単ですよってな感じで、フェルシェール嬢は、両手の上に雷を纏った術球アウル・ボォロを創成し、


 会場は割れんばかりの拍手に包まれた。


 そして、『らい』の術球アウル・ボォロはゆっくりと彼女の手から離れ、学長の手に移り、


 学長は片手で、その術球アウル・ボォロを受け止め、そして、学長は紫に光輝く『らい』の術球アウル・ボォロを、二倍の大きさに、更に、その光を白い雷光にした瞬間、


 会場は更に大きな拍手に包まれた。


 俺も、その光景に唖然とした。


 白い雷?


 何其なにそれ


 学長は、その白い雷をいとおしそうに眺めた後、自分のする事を思いだし、


 ニッコリと微笑みながら、フェルシェールに渡すように術球アウル・ボォロは彼女の方に移動し、


 彼女が差し出した両手の上で止まった後、静かに消えた。


 会場は大拍手が沸き起こり、成功したフェルシェール嬢も、興奮して、顔を赤らめながら、壇上から降りた。



 次に、学長が名前を呼んだのは、ハル君でもエミちゃんでも無い、彼等は普通の子で、二年生の学年首席じゃない、


 呼ばれたのは、ガルホール・スターゲス、名門、スターゲス家の三男で、首席、二年生の総長にして、魔導格闘術のホープ、そして短髪の灰色の髪に白のメッシュ、鋭い瞳に、厚い唇、背も高く、体格も立派な好男子。


 一部の女の子達が、キャッ、キャッ、して騒いでいる。



 彼は、自信満々ってな感じで壇上に上がり、かっこ良く学長、ルーナちゃん、先生達に一礼をすると、右手を上げ、


 その瞬間、豪快に手から炎が吹き上がり、吹き上がった炎は暫くして、ゆっくりと五十センチ程の術球アウル・ボォロになって、彼の右手の上で回転を始めた。


 炎の術球アウル・ボォロは、スターゲスの手から離れて、学長の翳す右手に向かって飛んで行き、その手の上で回転しながら静止した、


 その術球アウル・ボォロを受け取った学長は、暫くその炎を見た後、左手を術球アウル・ボォロに翳した瞬間、


 術球アウル・ボォロは、白き炎の一メートルの巨大な炎球となり、


 再び、会場は騒然となったが、次の瞬間、大拍手がまた起こった後、会場のあっち此方で、「流石、魔導皇!」、「此が魔導皇の!」、等、魔導皇と言う単語が飛び交った。


 魔導皇?


 何其なにそれ


 此も中二設定大好きな、マーキ君に聞いたんだが、魔導協会が魔導士に認定する、前の世界の武道の段位みたいなもので、


 初、中、上、皇、聖の五段階、その中で殆どの魔導士は中級、で上級に到達出来る人が一割、更に皇の認定者は世界で七人しか存在しないから、魔導皇はとっても凄い称号なんだとか、


 しかし、何で、そんな凄い人が、此の荒れていた学校の学長なんかしてんだ?


 その事は、マーキにも分からないようで、ただ、凄い学長だって事だけで、彼にとっては憧れの存在だと俺に力説するんだが、


 どうやら、マーキは、中二的肩書にも弱かったようだ。




 その、でっかく、美しい白い炎の玉に、流石のスターゲス君もびびっていた、だいたい、カッコつけて、大きな玉造るから、学長だってより大きな玉を作らなくちゃなんなくなる分けで、


 自業自得である。


 まぁ、其処は、学長、大人の対応で、玉はスターゲス君に届くまでには、徐々に小さくなりながら、彼の手の上で一瞬、光って消えた。


 その美しい光景に、会場は又もや大拍手!!!


 スターゲス君は、苦笑いしながら、学長、ルーナちゃん、先生達に一礼して壇上から降りた。




 最期は、今年の新入生の中で、入学考査試験において、一番成績の良かった新入生が、『光』の術球アウル・ボォロを作って学長に渡す事になっていて、


 此も、マーキが言うには、最初は名門、ヴェレドーラ家のお嬢さんに決めてたんだが、一週間前、突如、覚醒した少年が現れて、エルさんが考査試験をしたところ、一番の成績だったので、


 規則により、『継承の義(アウム・オーデ)』は彼がする事になったんだとか、


 彼の名は、アルベスト・デューレエード


 学長が彼の名前を呼び上げ、彼が壇上に上がった時、会場はざわめいた、


「女の子?」、「いや、男だよ?」、「美少年?」、ってな会話が聞こえてくる。



 彼は、ブラウンの髪にプラチナブロンドのメッシュが入っていて、ヘアスタイルをポワジューレで流行っているマッシュルームカットにしている、此の国では珍しいお洒落な男の娘、って違う、子だ、男の子だ!


 彼は緊張しているのか、ぎこちなく壇上に上がった後、学長、ルーナちゃん、先生達に深く御辞儀をした瞬間、



 えっ!!



 ドックン!!



 俺の胸に、嫌な気持ちが一瞬、横切り!


 吐き気がする!!



 ズゥン!!!


 

 視覚がぶれた!


 今のは!!


 何だ?




 俺は、会場を見渡し、



 会場の観衆は、新入生を注視し、此の異変に誰も気付かない、


 

 ・・・



 気のせいか?



 ・・・



 違う!!!



 新入生が差し出した手に、



 手の上にあるのは、



 黒い禍々(まがまが)しき、



 術球アウル・ボォロ!!!



 その異変に気付いた観衆がざわついた瞬間、




 新入生は、ルーナに向かって、その黒い術球アウル・ボォロを投げつけた!!!



 


 えっ!




 えっ!!

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