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愛する星に、願いを込めて  作者: Hs氏
バルセリア編
23/136

コーネル・オリゴン

「旦那、ちったぁ、手加減してくんなさいょ、わたしゃ、しがない、ちんけなこそ泥なんでさぁ。」


 俺は、必死に演技して、何とか、奴等から助かろうとした、


 しかし、黒い服を着た奴等には、俺の演技が通じなかった。


挿絵(By みてみん)


 奴等の片方が無表情に、



「煩いから、早く終わらせよう、ドウブァ。」



 ドウブァと呼ばれた、もう片方も、無表情に、


「あぁ、そうだな、ディヴァ。」



 ドウブァの手が俺の額に近付いて来るのに、俺は体を動かす事が出来ない、


 此は、『りき』だ!ディヴァって奴が俺の魔導術より強い力で、俺を拘束している!



「だ、旦那さん方、・・・あっしを、あっしを、一体、ど、ど、どうする気で、」



 ドウブァの手が、一旦、止まり、


「・・・簡単な事だ、お前の魔導回路を作る脳を『こう』で焼くだけだ、そうすれば、お前は俺達の事を忘れるし、二度と魔導術は使えなくなる。」



 奴の指先が光る!



 !!!



 なんてこったぁ!!!



 魔導術が使えなくなる!!!



 俺が生きてきた、



 唯一の力!!!



 其が、使えなくなる!!



「や、や、止めてくれ!!!」



 俺は、



 俺は、絶叫した。





 俺の名前は、



 コーネル・オリゴン



 今はちんけなこそ泥だ。



 ちんけなこそ泥って自称しているが、俺には生まれついての魔導術の力があった。


 その力に、気付いたのが、俺が5才の頃だったと思う。



 俺は、公都のスラム街で生まれた。



 俺の家は、恵まれて無かった、アル中の親父とお袋の三人暮らしだったが、アル中で暴力を振るうそんな親父に愛そ尽かしたお袋は、俺を置いてさっさと逃げ出した。



 俺が、4才の時、



 親父は、酒が切れると怒って俺を殴り、其でスッキリすると日雇いの仕事に行った。


 毎日、殴られている俺は、学校も行けず、只、腫れた顔を冷して、親父の帰りを待つ日々を過ごしていた。


 その日の、親父の暴力は、本当に凄まじく、俺は本気で死ぬと思った。



 俺が、5才の時だ、



 原因は、酒場の姉ちゃんに振られたからだ、姉ちゃんは子連れは嫌だと言いやがった。


 だから、腹立った親父が俺を殺そうとする程、俺に八つ当たりをした。


 胸糞の悪くなる話だ。


 その時だ、瀕死の俺の目の前に、変な模様が浮かび上がった。


 俺は、必死にその模様を目でなぞった。



 なぞり終えた、瞬間、



 奇跡が起きた!



 親父は、暴力を止めて、その場でいびきを掻いて寝てしまった。


 その日から、親父は、俺に暴力を振るわなく成り、


 また、俺は、此の模様を使うと店の店員が黙って俺に、売り物をくれる事を知った。



 その頃の俺は、学校に行って無かったから、此が、魔導術の『しん』とは知らなかった。



 親父の暴力も無くなり、施しで生きて行けるようになった俺は、少しずつ、外に出るようになった。


 最初にした事は、此の力が何なのかを知る事だった。


 学校って存在も知らない俺は、どこで調べれば良いか分からなかった。



 7歳に成って始めて、図書館バーデ・レーゲが有る事を知った。



 その頃に成ると、同学年の子供は皆、小学校デ・ハウゼに行ってる事も知っていた。


 貧乏なスラム街の子供で、既に7歳の子供が、自分より年下の一年生と一緒に小学校デ・ハウゼに行く分けも無く、


 大人は小学校デ・ハウゼに行けと煩いので、小学校デ・ハウゼの授業が終わる頃、図書館バーデ・レーゲに通った。


 其処で、俺は魔導術を独学し、そして、俺の魔導術が『しん』と呼ばれる魔導術で、此の使用は法律で禁止されている事も知った。



 そして、俺は10歳になった。



 その頃、俺は独学で、魔導術のりきらいえんを使えるように成っていた、そう成ると俺にはスラムで、怖い者が居なくなった。


 喧嘩も、暴力ざたも、だいたい此の三つの魔導術で何とかなった。


 勿論、『しん』を使えば簡単だが、敵対する奴等に俺が『しん』を使える事が分かると、魔導省に垂れ込まれるから、俺はその事は秘密にしていた。


 スラムにも、魔導術が使える奴は居る、だが、そんな奴等はエリートだから普通に魔導高等学校アウル・バ・ハウゼに進学して、真っ当な道を歩く。


 俺は、真っ当な道を歩くには遅すぎたし、誰も俺には忠告はしなかった、『しん』で俺の人形に成った親父も、逃げたお袋も俺には忠告をしなかった。



 15歳の頃には、スラムのガキの集団の頭になり、かっ払いから、強盗、恐喝、殺人以外は何でもやった、そして、其が出来たのも、俺に魔導術があったからだ。



 20歳に成る頃には、裏社会の新しい世代として、俺は持て囃され、魔導術の有る俺が、裏社会に君臨する事は当然だと思うように成り、


 其は、俺に野望の芽が育ち始め、何時しか、その芽が気が付かない内にどんどん肥大化して行く、そんなような状況がその当時の俺だった。



 巨大な利権を巡り、抗争は熾烈化し、対抗する組織も、魔導士クズレを傭い、血で血を洗う抗争に成っていった。


 俺に焦りが生じ、俺は、禁断の『しん』を使い、裏社会に君臨する大物を一気に始末しようとした、


 しかし、其こそが、奴等の罠だった、奴等は、



『闇のルース』



 の怖さを知っていた。



 だが、若僧の俺は、ルースの事を知らなかった。



 奴等は、魔導士である俺を『魔導省』に始末させようとして、わざと側近を俺に近付けさせ、俺が、『しん』で彼を操る事を期待し、その期待に俺は答えてしまった。


 なんせ、魔導士と言っても、俺は小学校デ・ハウゼも行って無い男だ、権謀術数は奴等より遥かに劣る。



 ようは、頭が悪いって事だ。



 奴等は徹底的に俺の事を調べた、そして親父の事を知り、俺が『しん』を使える事を知った。



 親父を生かしていた俺の、最大の失敗だった。



 そうなると、奴等は、俺を『魔導省』に始末させれば良いと考えて、頭を使い始める、甘く考えていた俺は、簡単に『しん』を使い、


 そして、その証拠を持って『闇のルース』に垂れ込み、


 其を待っていた『魔導省』とルースは、俺のシマに乗り込んで来た。



 其は、俺達の今までの喧嘩や抗争とは訳が違った。



 俺の魔導術は、奴等には歯が立たなかった。


 その時、俺は始めて知った。


 上級魔導士の凄さを、奴等の桁外れた、魔導術を!



 俺は、魔導術の事を何も知ってはいなかった。



 俺の舎弟や部下は殺されるか、捕縛され、俺はこそ泥に身をやつして、必死に逃げた。


 『魔導省』の追跡を交わしながら、俺は中央山脈アルマバマスターを越えて、ふもとの村、ゴーダトーレス迄逃げのびたんだが、


 その村に有る山小屋で、俺はルースの別動隊、



『黒の飛翔騎士団』



 に拘束されてしまった。


 奴等は、俺がゴーダトーレスの村に逃げ込むように警戒線を張り、此の村に逃げ込んだ時点で、俺を始末するつもりだった。


 ルースは元々、俺を消すつもりだったし、だから、わざと俺を逃がした。


 公都では、文屋や、法律屋が煩い、だから、人里離れた辺鄙な村に俺が逃げ込むのを待っていた。



 そして、馬鹿な俺は、まんまとその罠に嵌まっちまった。



 本当に、小学校デ・ハウゼ、ちゃんと行けゃ良かった、と俺は後悔した。



 そして、ドウブァと呼ばれた奴の光る、人差し指と中指が俺の額に触った瞬間、




 俺に、第二の奇跡が起きた!




 『『ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!』』



『『ちえっ、煩せぇなぁ、消した方が早く無かったか、ドウブァ。』』



『『仕方無いだろ、ディヴァ、事務方から、死体の始末大変だから、こんなザコは殺すなって言われてんだ。』』



『『くそ、本当に事務方は使ぇねぇ!』』




 俺の頭に激痛が走った瞬間、


 俺の回りの世界が変化した、


 俺の耳に、俺の悲鳴と奴等の声がまるで拡声器で喋ってるように聞こえる。



 ベキベキ!



 激痛は、俺の頭を金床で数百回殴り続ける、其ほどの痛みだった。


 小さい頃から受けた親父からの暴力で、俺はある程度の痛みに慣れていたつもりだったが、


 此の痛みは、親父の暴力の比じゃ無かった。



 俺は、転げ回って悲鳴を上げた!




 ベキベキベキベキ!!




  何かが、俺から剥がれ落ちようとしていた、


 そして、その時、俺の瞳に写ったのは、



 白黒の大地!!!



 其処で、巨人が六本の巨大な剣により、大地に縫い付けられていた!


 あれは、我が神!!!


 『魔神様グゥスォーレ』!!!


 更に、俺から、何かが剥がれようとしている、



 ベキベキベキベキベキベキ!!!



 何かが剥がれ落ちれば落ちる程、


 俺が、何者だったかを、鮮明に思い出す!!!



 白黒の大地で、一人の人間が、星界から、巨大な剣を下ろそうとしていた、


 あれは、



 コーリン・オーウェル!!!



 奴は、剣皇と呼ばれた化け物!!!


 奴により、我等の同胞が沢山死んだ。


 そうだ、俺は、かって、我が主の玩具トゥとして産み出された存在、



 名前は、



 ベキベキベキベキベキベキベキベキ!!!!



 俺から、更に古い記憶が、人格が剥がれ落ちる!



 俺は、思い出す、俺の本当の名を、



 俺は、千の魔玩将(ティトゥサートゥ)



 百の魔眼(ヒャダルダー) ドルサラージ



 俺は、魔神の三大玩具(グゥストゥミィトォ)の一人、魔操神人パルペッタのパルデリア様の配下、


 

 そうだ、思い出した!!!



 俺は、他の魔玩将、破壊の魔玩、ドルガンギアスや、魔炎の玩帝、ズリアドラージのように、一芸に秀ている訳ではなかった。



 俺には、百の魔眼があった、全てを見る目、全てを理解する目、全てを使いこなす事の出来る目が、



 だから、パルデリア様は俺を千の魔玩将(ティトゥサートゥ)にした、


 そして、俺の配下に十人の百の具魔(ヒャトルトゥ)がいたんだが、


 彼等は、コーリンを怖がって役に立たなかった。


 仕方無いから、俺は、あの化け物、コーリン・オーウェルの弱点を百の魔眼で探った、



 そして、知った。


 冥界の星巫女(プルセスター)


 の存在を、



 その事を、俺はパルデリア様に知らせ、コーリンを殺すようにお願いしたんだが、


 魔神の三大玩具(グゥストゥミィトォ)魔操神人パルペッタのパルデリア様は、余りにも高位なお方、


 人間に近すぎた!


 あの方は、あろう事か、



 冥界の星巫女(プルセスター)に同情してしまった!



 意味が分からん!!


 コーリンを殺さず、中途半端に奴を傷付けた、

 


 その結果、



 コーリンの馬鹿は、失われし大地を傷付けて、忘却の渦に俺達を巻き込んだ、



 大きな迷惑だ!



 俺達は、何度も生まれかわり、その度に、記憶が、人格が塗り重なって、やがて、其が瘡蓋かさぶたのように、俺を包み込んでいった、



 そして、俺の意識は深い底に沈んだ。




 うるうううせぇえええええ!!!



 何、ゴチャゴチャ言ってんだ!!!!!!!!!!!!!



 俺は、殺され掛けてるんだよ!!!





『『『ダメだな、コイツ、糞と小便垂れ流し始めたぞ、殺っちゃた方が良いよ、ドウブァ、』』』



 ふざけるなぁあああああ!!!



『『『そうだなぁ、術が失敗したようだ、ディヴァ、殺るか、仕方無い。』』』



 俺を、俺を、殺るだとおおおお!!!!!!!!!!!!!!



 奴等が、俺に魔導銃を向けた時、



 俺は叫んだ、



 クソがぁあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!



 グルンチョ!!!!!!!



 俺の目はひっくり返り、俺の目に万のきりで目をじ開けられた激痛が走った!!!!



 ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!!!!



 何が、何が起こった!!!



 『石錬の魔眼』が発動した、



 何だ、いしねりまーめー?


 分かんねぇんだよ!分かるように言え!!



 ・・・簡単に言えば、俺を殺そうとした、奴等は石に成って死んだ、俺が奴等を石にする魔導術を発動させたんだ。



 お、おう、ちゃんと説明出来んじゃねぇか、俺はよぉ、でっ、奴等を殺ったのか、俺よぉ、



 まぁ、殺す気は無かった、たまたま、『石錬の魔眼』が発動した、だから、彼等は死んだ。



 ゴチャゴチャ、煩せぇんだよ、本当に俺はよぉ、良いんだよ、奴等は俺を殺そうとしたんだから、死んで当然、・・・しかし、何なんだ、此の息ぐるしさは、


 ゼェゼェ、ゴホゴホ、


 クソ!息が出来ねぇ!!



 息が出来ないんじゃない、『魔神様の吐息(グゥスォーレトゥハァ)』が足りないんだ、



 あん、ぐずのはぁ?だから、分かるように言えって言ってんだろうがぁ!



 ・・・簡単に言えば、『魔素エーテル』が足りないんだ。


 


 おい、俺が馬鹿だからって、おちょくってんのか!小学校デ・ハウゼ行ってねぇ俺だって、『魔素エーテル』が回りに有り余るくらい有る事を知ってんぞ!




 人間にはね、だが、俺は、『魔人』、百の魔眼(ヒャダルダー) ドルサラージに覚醒したから、足りないんだ。



 ・・・ええええええええええええええええええええええええええ、


 俺、化け物になっちゃつたの!


 俺は、急いで、山小屋の洗面所に有る、鏡で自分の姿を確認した、


 俺の短い髪は、灰色、問題無い、目は、目は、何だ!!!!!!


 此の目は!!!!!!!



 其が、魔眼だ、



 魔眼だと、只の白玉じゃねぇか!



 普通はそうだ、俺達が言ってる、魔導術って奴を発動すると色が付く、ちなみに『石錬の魔眼』は灰色だ。


 ・・・


 此が魔眼、


 ・・・


 此が、奴等を消した、魔導の目、


 ・・・


 ・・・そうか、此が、俺の新しい特技か、やるじゃん俺!やっぱあ、俺はただ者じゃ無かった訳だ。




 ・・・随分、上機嫌だな、人間じゃ無く、魔人に成ったんだぞ。




 良いんだよ、見た目が人間なら、元々、俺は、普通の奴等を越えた存在なんだよ、まぁ、此の目は、色付き眼鏡で誤魔化すとして、


 ゼェゼェ、ゴホゴホ、


 問題は、此の息ぐるしさだ。



 そうだな、で、俺、そろそろ、着替えないか、臭いぞ、



 わかーってるよ、・・・まぁ、確かに臭い。




 チッ、


 

 クソ、本当にクソったれの奴等のせぇでクソまみれだ、







 覚えてやがれぇ!!!






 魔導省のクソヤロウ!!!!!

 

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