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愛する星に、願いを込めて  作者: Hs氏
バルセリア編
22/136

コーリン・オーウェル

 俺は、バルセリアの魔導高等学校アウル・バ・ハウゼ図書館バーデ・レーゲに掃除する為に訪れた。



 其処で、俺は、魔導本アウル・バーデの事、魔導術『しん』の恐ろしさを知り、


 その後、やっと本題で有る、俺の本当の名前、コーリン・オーウェルの話題にたどり着いた。


 此の名前を出すと、やはり、何故かウェラさんもビックリして、


「あんたの年で、そんなの読みたいなんて、変わってるね。」



 ? どう言う意味?



「確か、児童図書コーナーに一冊有ったかな?」


 ウェラさんは考えながら呟く、



 児童図書?



 ウェラさんは、カウンタから出て、俺を児童図書コーナーに案内してくれた。




挿絵(By みてみん)


 児童図書コーナーは、図書館バーデ・レーゲの奥の方に有り、


 やはり、棚にはタイトルが書かれた、いろんな色の箱が沢山並んであった。


 ウェラさんは、腰を屈めて隅っこの方から、一つの箱を取りだし、


「これだ、此れだね。」


 その箱を、俺に差し出した。



 ウェラさんは、ちょっと考えながら、


「スグルちゃん、魔導本箱アウル・ボーデの使い方知ってる?」 


 俺は胸張って、


「嫌だなぁ、ウェラさん、俺は東の辺境の出身だよ、知るわけ無いじゃん。」


 ウェラさんは呆れて、


「何、開き直ってるのさ、仕方無いねぇ、そんなんじゃ、あんたは、小学生パールデウゼ以下だよ、本当に。」



 流石に、ウェラさんは怒って、俺の頭がパーでっせと言い始めた。



小学生パールデウゼ!」



 あっ、小学生パールデウゼって事ね、まぁ、仕方無いよね、知らねぇし、



 ウェラさんは、赤い箱に横にあるスリットを指しながら、


「良いかい、スグルちゃん、その魔導本アウル・バーデを此の溝に入れるんだよ、暫くするとボーデバーデに魔導回路を書き込む、書き込みが終わったら、バーデが飛び出て来るから、それで、その本が読めるよ。」



 成る程、前にエルさんに見せて貰った就労記録板(プリテンド・バール)と同じ仕組みか、



「分かったかい、スグルちゃん」


ウェラさんが、俺に念を押すので、俺は、



「あぁ、分かった、充分わかった。」



 とウェラさんに答え、俺はウェラさんから、ボーデを受け取った。


 そして、俺は俺の物語を読み始めた。






 ・・・



 ・・・



 ・・・



 まぁ、エリちゃんや、ハルチカが、俺の名前で驚くのも、無理無いわなぁ、



 酷くねぇ、此れ、



 此の話は、世界中で、結構有名らしく、子供達には大人気で、結構読まれてるらしい、此れは後からウェラさんから聞いた。


 小学校デ・ハウゼには、沢山置いて有るらしいんだけど、此処は高校バ・ハウゼだから、一冊しか置いて無いんだって。


 ハッキリ、言って、中身は、



 怪獣大戦争だ、



 心のネジ曲がった、醜い男、コーリン・オーウェルが、美しき姫に邪恋の恋をした、魔の神は、コーリンにそれいさめたのだが、コーリンは魔の神の言葉を無視して、美しき姫を我が手中に収めようと、巨大な化け物に変身した、


 更に、その美しき姫を我が物にしようと、地より、魔の人が現れる!



 二人の、魔人の戦いは壮烈だった。



 ・・・



 確かに、スッゲー迫力、


 前の世界の、特撮巨大ヒーロと大怪獣の決戦って感じ、


 此れ、たぶん、二千年前の俺と『魔神グゥス』、の戦いの伝承が、こうなったわけだ、



 二人の巨人の戦いは、大地を破壊し、多くの街を、山を破壊し、世界は混沌と化した。


 そんな状況に困った、民と姫様は、魔の神に祈った、神は祈りを聞き届け、此の混乱の大地に一人の勇者を送った、


 そして巨人、コーリンが魔人を六本の巨大な剣で、大地に縫い付けて、七本目の巨大な剣を魔人に突き刺そうとした時、


 勇者は、その手にした剣で、コーリンの尻を刺し貫いた。



 ・・・


 ・・・


 ・・・



 まぁ、子供は尻が好きだし、



 児童図書だから、



 ・・・


 でっ、コーリンは、その尻に突如、起きた、激痛に思わず、手にした七本目の巨大な剣を自ら取り落とした瞬間、



 勇者は、もう一度、尻の穴に、



 ブスり!



 ・・・



 児童書、児童書な、



 ・・・


 そして、あまりの痛みに、巨人から醜い人に戻ったコーリンは、



 勇者と姫様に、土下座して謝った。



 ・・・



 児、児童書、



 ・・・



 改心した、コーリンは、鐘が鳴り渡る、勇者と御姫様の結婚式の日に、


 魔人を連れて、地下の世界に旅立ちました。



 めでたし、めでたし。



 ・・・


 ・・・



 酷くねぇ、俺の扱い!



 ・・・



 本のタイトルは、



『コーリン・オーウェルその改心』



 ・・・



 此れも、後からウェラさんに聞いたのだが、コーリン・オーウェルの名前は、子供達に取っては、



 道化の代名詞なんだとか、



 ・・・




 そりゃ、エリちゃんは怒るよなぁ、道化の名前出したら、ふざけてるって、



 ・・・



 ふぅ、



 俺はため息を付いた。


 ・・・



 まぁ、確かに面白い、



 ・・・



 俺の名前が、出なければ、





 此の魔導本アウル・バーデを読んだ俺は、二千年前の、あの出来事を、ハッキリと思い出した。



 そうだ、あの日、世界に始めて、神が生まれた。



 神が生まれた事について、世界を動かす、七人の星の使途(セブンスターズ)の一人、天皇星の大賢者(ウラノスター)は、俺に悲しそうな顔をして、



「神が生まれたのは、民が、星の加護の無い多くの民が、神を望んだからだ。」


 と俺に説明してくれた。



 当時の俺は、彼の言ってる事の意味が分からなかった。


 星々(ほしぼし)が有るのに、なんで、神が必要なんだよ、だから、星の加護の無い奴等は馬鹿なんだ!



 そう、思っていた。



 そうだ、当時の俺は傲慢ごうまんで、民を見下していた。


 あの時の俺は、一度も、星の加護の無い者とは、口を利かなかったし、


 相手にもしてなかった。

 


 ・・・



 心のネジ曲がった、醜い男、コーリン・オーウェルか、



 星の加護の無い人々が、俺を見てそう思ったのも、無理ないかぁ、


 今の俺から見ても、当時の俺は嫌な奴だった。



 其に、俺達、七人の星の使途(セブンスターズ)の中で、世界の事、星の加護の無い民の事を一番、良く理解していたのは、



 天皇星の大賢者(ウラノスター)



 彼一人だった。



 彼の瞳は、遥か未来を見ていた、彼は、神が此の世界に降臨した時、


 既に、此の、『星が愛する世界(スタラブルワード)』である『星の六大国』が、



 終焉を迎える事を、



 知ってたのかもしれない。





 『魔神グゥス』は生まれたばかりの赤ん坊の神様だった。


 魔人を産み出し、街を、都市を、国を破壊しては再生して喜ぶ、無邪気な赤ん坊だった。




 天皇星の大賢者(ウラノスター)が言うには、生まれた神は、直ぐに眠りに付き、二億年程眠った後、ある程度、大人になってから目が覚める、その時の神は、今の『魔神グゥス』のように、世界で遊ぶ事は無いそうだ。


 『魔神グゥス』が目を覚ましているのは、たぶん、星々(ほしぼし)の力の影響なのかも知れないと、彼は言っていた。



 此の事態に、赤ん坊の神、『魔神グゥス』をどうするかを討議する為に、『星の六大国』の指導者、賢人、重鎮等が集まり、


 彼等は、俺達、



 七人の星の使途(セブンスターズ)を召集した。



 そして、其処で、俺は『月の星国』の、



月の星姫(ムーンスター)



 ルーナ姫と出会い、



 恋に落ちた。



 俺達は、会議そっちのけで、二人でデートしていた、


 俺の人生で、剣皇の修行以外、何もして来なかった俺の、始めての恋だった。



 だから、その時の俺は有頂天だった。



 そして、ずっと側に居てくれた、



 冥界の星巫女(プルセスター)



 彼女の気持ちに気付かなかった、



 嫌、知ってたのかも知れない、しかし、たぶん、その時の俺は、彼女の気持ちを無視していたんだと思う。



 その当時の俺は、そう言う奴だ。




 そして、会議は天皇星の大賢者(ウラノスター)の提案が採択された。


 彼の提案は、『魔神グゥス』を寝かし付ける、その一言だった。



 『魔神グゥス』を世界と星界せいかいはざま、神をも忘れてしまうしなわれし地平に寝かし付ける。


 喪われし地平への道は金星の錬金士(アフロスター)が開ける、そして、俺達、七人の星の使途(セブンスターズ)が『魔神グゥス』をあやしながら、その地平に連れて行き、



 俺が、その地平で七本の星剣を『魔神グゥス』に打ち込めば、『魔神グゥス』は眠りに付く、


 彼は、そう俺達に、『星の六大国』の指導者に説明した。



 勿論、魔人達は邪魔をするので、『星の六大国』で、魔人達を牽制する。


 作戦は、金の星が最も、此の大地に近付いた日。




 その日、俺は戻ったら、ルーナ姫に『星のピアス』を贈ろうとピアスを購入した、


 そして、魔操神人パルペッタに操られた冥界の星巫女(プルセスター)が、星剣を『魔神グゥス』に刺し貫いている俺の邪魔をし、



 俺は、星剣の操作コントロールに失敗し、



 俺の操作コントロールの狂いにより、星剣は、しなわれし地平の大地を切り裂いた為、


 俺と魔人共は、切り口から発生した、忘却の渦に巻き込まれた。



 ・・・



 結局、俺は、ルーナ姫の処へ、皆の処へ戻って来る事は出来なかった。




 其は、二千年前の、つまらない話だ。



 



 そして、俺は幾度も、忘却の果ての星の力の無い世界で生まれ変わり、



 やっと、



 二千年後の、全てが失われた、此の世界に戻って来た。



 其が、現在。

 

 




「スグルちゃん、スグルちゃん。」



 一体、どのくらい時間が経ったんだろう。


 ウェラさんが、俺に声を掛けて来て、俺の思考は二千年前の過去から現在に引き戻された。



「随分、熱心にその本、読んでたけど、何がそんなに、気に入ったん

だい? スグルちゃん。」



 ウェラさんが、俺に問い掛ける。


 俺は、児童図書コーナーに居る自分に気が付き、ゆっくりと回りを見回した後、ウェラさんに向かって、


「まぁ、コーリン・オーウェルの全てが気に入った、只、其だけだよ、ウェラさん。」



 そう、彼女に答えた。



 彼女は、暫く考えた後、やれやれって顔して、


「スグルちゃんは本当に変わってるねぇ、コーリンは小学生パールデウゼに大人気だから、小学校デ・ハウゼ図書館バーデ・レーゲに行けば、もっと色んなバーデが有ると思うよ、紹介しようか?スグルちゃん」



 俺は、ウェラさんに微笑んだ後、ゆっくりと首を振りながら、


「有難う、ウェラさん、でも、もう良い、コーリンについては、今日の此の一冊で充分に分かったから。」



 その返答を聞いたウェラさんは、嬉しそうに、


「そうかい、そうかい、そりゃ良かった、じゃ、もう時間だから、此の図書館バーデ・レーゲ閉めるけど、良いね。」



 えっ、もうそんな時間なんだ。



「御免、ウェラさん、何か手伝う事有る?」


 

 ウェラさんは、手を振りながら、


「別に無いよ、掃除道具持って、早く図書館バーデ・レーゲから出ておくれよ。」



 俺は、ウェラさんの言葉に従って、急いで、図書館バーデ・レーゲから退館した。




 外は、日が沈む時間に成り、景色は、夕陽で赤く染まっていた。


 天空には、星々(ほしぼし)が瞬き始め、どんどんとその数を増していた。


 その輝きは、二千年前と変わらぬ輝き、


 しかし、その輝きを見る俺は、二千年前の俺と、今の俺とでは、大きく変わっていた。



 前の世界の童話に、木の人形が、人に成りたいと、星に願って、世界を旅する話があった。



 その話は、俺の好きな話の一つだ。



 かっての俺も、人の心を持っていなかった。



 星々(ほしぼし)に願う事等、何も無かった。



 そんな俺が、多くの世界を渡歩いた時、何時も星に願って泣いていた。



 俺は、多くの人の、心の痛みを知った。




 そんな俺が、




 此の世界で、



 本当に、人に、




 成れたのだろか、




 俺は、夜空に瞬く星に、




 そう、聞いてみた。

 


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