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愛する星に、願いを込めて  作者: Hs氏
バルセリア編
18/136

嘘と力の意味

 俺が六日かかって、学校を綺麗にした朝、俺はエルさんに学校の本当の姿を見せる為に、中庭でエルさんが来るのを待っていた。



 エルさんは、やっぱり、俺のとこ

に来た、泣きながら、



 彼女は、俺に何か言おうとしたんだが、俺はそんな彼女の肩を抱いて、黙って校舎の中に彼女を案内し、


 悲しい顔をして、涙で頬を濡らしたエルさんも、黙って俺に従い、俺と一緒に校舎の中に入った。


 彼女には、今も校舎は以前の汚い校舎に見えてる筈だ。


 彼女の顔には絶望感が、ありありと現れていた。



 俺は、そんな彼女の耳元で、


「エルさん、此れが、貴方の愛した学校だ。」


 と言って、彼女に学校の真実を見せた。




 その瞬間、




 彼女の瞳には、溢れるように大粒の涙が溜まり、彼女は、泣くのを堪えようと必死に口を押さえていた。



 そして、



 遂に、彼女は我慢出来なくなり、俺にしがみついて泣き出した。


 彼女は、俺に何度も、何度も有難うを繰り返し、


 俺は、彼女との約束を守る事が出来て、



 ほっと、一安心していた時、



 バーンと、入り口のドアが開いて、


 一人のおばさんが校舎に飛び込んで来るなり、


「エル!大変だ、ルーナ殿下が、此の学校を視察に来る!えっ!!」



 あっ、硬直してるよ、


 まぁ、普通に、此の学校見たら驚くよな、


 うん、凄いドングリ(まなこ)


 ところで、此のおばさん、誰?



 泣いていた、エルさんが涙を拭きながら、俺の胸から顔を上げて、おばさんを見るなり、一言、


「ジェルダ学長!!!」



 なぁーんだ、此の人、学長かぁ、


 ・・・


 えっ!!!



 がぁくうううううちょーー!!!





「君が、・・・一人で・・・六日で、此の学校を・・・綺麗にしたのか!」


「まぁ、魔導機、使いましたけどね。」


 と俺は、エルさんにウィンクしながら、ジェルダ学長に説明した。





 俺と、エルさんは、驚いて呆然ぼうぜんとしている、ジェルダ学長に事態を説明する為、取り合えず学長室に向かった。



 学長室は研究室も兼ねているようで、沢山の書類が積まれている、埃だらけの部屋で、勿論、学長室は鍵が掛かっているから、俺は掃除をしていないし、するつもりも無い。


 俺は、学長室の埃だらけのソファに座り、対面に学長が座った、エルさんは話し安くする為に、俺達にお茶とお菓子を出した後、俺の隣に座った。


 学長は、見た目、若くは見えるんだが、苦労してきたのか、顔にほんの少しシワが目立つ、たぶん、四十代かな、


 黒い艶の有る髪に、銀のメッシュが入っていて、セクシーで上品なセミロングをダウンスタイルにしている。


 更に前髪はアレンジしていて、そして半分だけかきあげたラフさが“いい女感”を醸し出している。


挿絵(By みてみん)


 俺は、遠慮無く、お茶を飲み、お菓子を食べた。


 ゴックン、ポリポリポリ、


 旨い、地元のお菓子かな?


 クッキーの中に、ブランデーチョコのようなのが入ってる。



 そう言えば、俺も、エルさんも、忙しくて、お互い、お茶を飲む事も無かった。


 此の世界には、前の世界のように、お茶を飲むだけの店ってあるんだろうか?


 此の後は、宿舎の掃除だ、明日には先生達が来る、何時までも学校で寝泊まりする分けにもいかないし、


 エルさんと、そんな店に行くのは、もう少し先だ。



「学長、」


「えっ、あぁ、えーと、君は?」


 エルさんが、まだ、混乱して口の利けない学長に、話を促した。



 俺は、学長に自己紹介する事にした。


「はぃ、俺は、仕事紹介場カレンドダーから紹介して貰って、此の学校の学校作業員ハウゼ・アルパになった、『スグル・オオエ』と言います。宜しく、えぇーと、学長?」


 俺は、立ち上がって、挨拶したんだが、学長の名前を知らない事に気が付いた。


 学長も、立ち上がりながら、


「私は、ジェルダ・ルーバッハ、此のバルセリア魔導高等学校アウル・バ・ハウゼの学長をしている。」


 お互い挨拶して、自己紹介が済んだら、また、埃だらけのソファに座った、お茶に埃が入るなぁ。



 少しは、掃除しろよ、学長。


 てな事を考えていると、ちょっと赤い顔した学長が、 



「その、君のように、若くて、・・・まぁ、かっ、・・・立派な男性が学校作業員ハウゼ・アルパをやってくれる事が、信じられ無くて、済まない。」

 


 ? かっ?



 直ぐに、エルさんも真っ赤な顔で、


「そっ、そうなんです!学長!彼、かっこよくて、私も、最初、見とれて、学校作業員ハウゼ・アルパだって、信じられませんでした!」



 ええええええぇ、そうなの、エルさん!



 学長は、エルさんが度直球な事、言うから、赤い顔が真っ赤になった。


 彼女は誤魔化すように、


「ごほん、で、済まないんだが、スグル君、君の就労記録板(プリテンド・バール)を見せてくれないか。」


 俺は、学長に俺の就労記録板(プリテンド・バール)を渡した、


 彼女は記録板(バール)を指でなぞり、じっと記録板(バール)を見ている、


 俺は、エルさんに聞いてみた、


「あれは、?」



 エルさんは、


「学長が、『心』でスグルさんの就労記録(プリテンド)を見ているんです。」


 へぇ、魔導機、使わないでも見れるんだ。


「はぃ、学長の実力なら、私は無理ですけど。」



 暫くして、学長は顔を上げて、


「済まない、この記録では、君の雇用は六日前になっているんだが?」


 エルさんが嬉しそうに、


「はい、スグルさんとは六日前に雇用契約を結びました。」



 学長は、狼狽しながら、


「そっ、そうか、じゃ、エル、彼以外に、何人雇ったんだ?」



 エルさんも、えっ、てな顔して、


「はい?学校作業員ハウゼ・アルパは彼一人です、彼以外、学校作業員ハウゼ・アルパの申し出は有りませんけど、」


 学長は、首を振りながら、


「そうじゃ無くて、此の学校を綺麗にするのに、臨時で何人、人を雇ったかを聞いてるんだ。」


 エルさんはビックリして、


「一人も雇っていませんけど、」


 学長は、呆れながら、


「一人もって、此の学校を六日で、綺麗にするのに、一人の筈が無い!」



 学長が、エルさんを疑ってるんで、俺が助け舟、


「すみませんが、ジェルダ学長、エルさんは正しい、此の学校は、俺が、()()()()()()綺麗にしました!!」


 ジェルダ学長は、ビックリ顔と同時に、呆然とした顔で、


「君が、・・・一人で・・・六日で、此の学校を・・・綺麗にしたのか!」


「まぁ、魔導機、使いましたけどね。」


 と俺は、エルさんにウィンクしながら、ジェルダ学長に説明した。


 と、最初の冒頭になる分けだ。


 その後も、学長は俺にしつこく聞いてきた、



「その、魔導機とは?」



 ふぅ、やっぱり、学長は学者さんだから、エルさんと違ってそう言うとこ、興味有るんだ。


「まぁ、たいした魔導機じゃ有りませんよ、家庭用のペンキ缶(ボルヌーダ)シャワー(ドルサァ)を改良して貰った、掃除道具です。」



 彼女はまたビックリして、


「その改良に幾ら掛かったんだ!」


 うん、流石、貧乏学校の学長、金の心配が半端無い。


「まぁ、全部で二十万RG(リージェン)かな、」



 「えっ!!」



 驚いてる、ヤバイ、


「あっ、大丈夫ですよ、学校には請求しません、私物ですから、二十万ぐらいは、俺、持ってましたから。」



 おかげで、有り金全て無くなったけどね、


 ジェルダ学長は、慌てて、


「いや、そう言う事じゃ無くて、」



 ヤバイ!


 これ以上、話していると、いろいろとボロが出るから、俺は立ち上がって、


「あっ、学長、すみません、俺、今日中きょうじゅうに宿舎、綺麗にしないと、寝るとこ無いので、失礼します!」


 とペコリと学長に頭を下げて、回れ右、さっさと学長室から退散しようとしたら、


 エルさんも、立ち上がって、


「すみません、学長、教魔省に提出する書類は、出来たんですけど、今日、発送しなくちゃいけないんで、失礼します!」


 と言って一緒に出てきてしまった。



 俺とエルさんは、唖然としている学長を学長室に残して、学長室のドアを、


 バタン!


 と、閉じた。



 俺は、エルさんに、


「良いの?」


 と聞いたら、エルさんは、


「良いんですよ、本当に学長は、疑り深いんだから!此の学校をスグルさん以外に、綺麗にしてくれる人は()()()()!!」


 俺以外にいないって、エルさん、其って誉めてくれてんの?






 それから俺とエルさんは、朝飯を食べに校舎を抜けて食堂に行こうとしたら、


 若い男女が、校舎の中を見て、立ち尽くしていた。



 うーん、まただ。


「エルさん、あの二人は。」



 エルさんも、二人に気付いて、


「スグルさん、紹介が遅れましたけど、前に言った、私の補助として一月前に採用した、十代の二人です。」


 そう俺に言って、エルさんは、二人に声を掛けた、


「ローラ、マーキ!」


 二人は、驚いて、振り返った後、エルさんと俺を見た、



 俺を見た、ローラと呼ばれた少女は、真っ赤な顔をして、じーっと俺の顔を見ていた。


 もう、一人のマーキと呼ばれた少年は、キツイ目で俺を睨む、



 何だかなぁ、


 思春期の少年、少女は大変だぁ。



「ローラ、マーキ、紹介遅れたけど、此方が、六日前に、此の学校の学校作業員ハウゼ・アルパになって貰った『スグル・オオエ』さん。」



 俺は、睨んでいる、少年を無視して、真っ赤な顔の少女に、


「やぁ、俺は『スグル・オオエ』、宜しくローラさん?」


 彼女は慌てて、スカートで手を拭いた後、俺の手をガシッと握って、


「スグル様!!私は、ロゥラス・エルダネード、ローラとお呼び下さい。」



 様にお呼び下さいって、


 俺は、エルさんを見た、エルさんは首を振っていた。


 俺は、ゆっくりとローラの手を離し、マーキの方を向いて、


「やぁ、マーキ、俺は、」



「おかしい!!一体、キサマは、学校に何したんだ!!」



 えっ、此のガキ、俺を怒鳴ってきたよ。



 エルさんがマーキを怒る、


「マーキ!」



 マーキは、今にも、俺に噛み付きそうな勢いで、


「エル姉もローラも騙されちゃダメだ!コイツは、俺達を『心』の魔導術で騙してんだ!!!」



 あっ、確かに、そう言うやり方もあった。



 マーキは更に、俺に怒鳴る、


「だいたい、おかしいだろ、こんな、カッコいい奴が学校作業員ハウゼ・アルパになる分けない!コイツは本当は醜い、違法の『心』を使う!犯罪魔導士だ!!!」



 えっ、何、その中二設定、



 ゴチン!!!



 あっ、痛そう、マーキがエルさんに、頭をゴチンされた、



「いってぇ!エル姉、何すんだよ!!」



 エルさんが怒ってる。



「いい加減に、しなさい!マーキ!」


 マーキが、エルさんに怒鳴る、


「エル姉!目を覚ましてくれ!!一晩で、学校がこんなに綺麗になるわけねぇだろ!!何で、気が付かないんだ!!!」



 うん、マーキが正しい、



「スグルさんなら、当然なの!!」



 確かに、エルさんがおかしい、


 其処で、俺が一言、


「マーキ、君は正しい、此の学校が一晩で、綺麗になったのは、確かにおかしい筈だ、実は、君達には、俺が掃除している姿を見せたくなくて、此の学校が汚い姿に見える魔導機を使って、君達の目を騙していたんだ、済まない。」



 エルさんは、ちょっと驚いて、


「えっ、そうだったんですか。」



 俺は、マーキに向かって、


「マーキ君、本当に済まない、実は、今回、使った掃除の魔導機には、新しい仕組み等が入っていて、極秘に試験をしていたんだが、此の魔導機の秘密を隠す為に、学校が汚く見える魔導機を使用した、許してくれ、悪気は無かった。」


 なんか、凄い、中二設定、



 マーキは、少し赤い顔で、


「だったら、何故、最初に言わないんだよ!」



 うん、もう少し、


「其も、済まなかった、実は、俺は、各地を旅しながら、魔導機の研究をしている魔導機の研究家で、たまたま、掃除の魔導機を研究する為に、学校作業員ハウゼ・アルパになった。」



 エルさんが驚いて、


「えっ、そうだったんですか!!」



 そんな分け、無いでしょ、エルさん、


 更に、追加で、


「魔導機は、巨大な利権が絡んでいて、特に、新しい魔導機を他の人に見られると、その魔導機を奪おうとトラブルが絶えない、更に、此の新しい魔導機が、巨大な国際企業にバレたら、俺は此の学校に入られ無くなる、だから、エルさん、ローラさん、マーキ君、此の新しい魔導機と、俺の事は三人の秘密にして欲しいんだ。」


 うん、我ながら素晴らしく、嘘臭い設定。


 

 エルさんは興奮しながら、


「国際企業って!悪のロートスですね!スグルさんはロートスに命を狙われているんですね!其で、隠れる為に、学校作業員ハウゼ・アルパに!!大丈夫、私は絶対に秘密にします!」



 えっ!更に、カッコいい設定、エルさんが追加してるよ!


 其に、ロートスって悪なの?


 そんな、都合の良い設定無いよなぁ。



 ローラが、真っ赤な顔で、


「スグル様がいなくなるの、私、困ります、だから、私も、絶対秘密にします!」



 うーん、此の娘もおかしい、



 マーキが、赤い顔して、照れながら、


「ちぇ、そんだったら、早く言ってくれよ、俺も、スグルの味方だ、スグル!此の秘密と、あんたは俺が守る!」



 コイツは、中二設定に弱すぎ。


 



 そんな事があって、俺達は仲良く、ボーゲンさんの朝飯を食べる為に、食堂に向かった。


 何時もは少ない朝食だが、今日は、コッペパンのような物が、1個多く、2個、皿に載せてあった。



 俺は、ボーゲンさんに、


「此れは?」


 って聞いたら、彼は、赤い顔して、


「黙って食え、」


 と言った後、小さな声で、


「良くやった。」


 と俺に向かって呟いた。



 ・・・


 まじ、照れ屋、


 まぁ、貰えるもんは、頂きましょ。



 こうして、俺と、エルさん、ローラ、マーキと四人で楽しく朝食を取った後、三人は、仕事で事務棟に向かい、


 俺は、一人、荒れた宿舎を直す為に、北側の裏庭に向かった。






 俺は、荒れた宿舎を見ながら、考えた、



 確かに、おかしい、



 マーキが言う通り、エルさんも、ローラも、飲食酒場レンドラで、ばか騒ぎした、ルーナさんの軍隊も、俺に対する態度は、少しおかしい。



 だいたい、前の世界の俺は、そんなには、もてなかった、なのに、此の世界の女の子達は、何故か、俺を見て、皆、顔を赤らめたり、見とれてしまったり、



 絶対におかしい!



 自慢じゃないが、俺はモテない事については、かなり自信が有る。



 ・・・



 ・・・ちょっと、情けなくなった。



 兎に角、モテない俺に見とれる、顔を赤らめる、なんて、絶対におかしい。



 ・・・


 考えられる事は、1つ、



 星の力だ!



 天空の星は美しく、人が憧れる存在だ、だから、星の力もまた美しい。



 その、星の力が俺には有り、



 それが、彼女達に影響しているとしたら、



 ・・・



 不味まずい!


 非情に不味まずい!!



 此の学校には、数百人の男女の高校生がいる、


 彼等は、明後日には登校して来る、



 ・・・



 俺は、数百人の高校生に追い掛け廻され、逃げ廻っている、自分を想像した。


 その中には、魔導士の先生達もいる可能性も有る。



 ・・・非情に不味まずい!



 根本的に、俺の星の力は隠さなくちゃダメだ。


 例え、その為に、俺の此からの活動が、不利になっても、廻りに対する星の力の影響は、不味まずすぎる。



 俺は、


星隠し(ダークスター)


 を俺自身に常時、掛けておく事にした、



 星の力迄、隠す『星隠し(ダークスター)』は、かなりの力を使う、更に、廻りの印象を変えるとなると、今の俺では、俺が持っている星の力の九割りは持っていかれる、



 ・・・



 だが、此の学校で、平和に暮らすなら、



 ・・・



 そうするしか無い、


 俺は、此の宿舎を綺麗にしたら、


 そうする事に決めた。


 

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