表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
愛する星に、願いを込めて  作者: Hs氏
バルセリア編
17/136

ローシィ・レーランド

「えっ、バルセリアに私が取材ですか。」

 

「あぁ、魔導省がうちのような、小さい、魔導新聞社アウル・ジェーラにも、声を掛けてくれた、此れはチャンスだ、君ならルーナ殿下に食い込める、だから、現地に行って、絶対スクープを取って来い!!」


 ・・・


 ちっ、


 また、無茶な事を、此のハゲの局長は、私に言いやがる、


挿絵(By みてみん)


 私の名前は、


 ローシィ・レーランド、


 公都 バルドリスを中心に、魔導新聞アウル・ジェーゼを発行している、小さな魔導新聞社アウル・ジェーラ、ディ・プラドゥの記者をしている。



 小さいから、社内の競争も、余り無く、また、小さくても、公都中心だから、情報が集めやすく、地方を気にする事が無いから、結構、遠慮無く、書ける。


 だから、私が書いた記事は人気が有り、各省庁にも、あたしのファンがいて、いろいろと情報をくれる。


 私は、逸んな公都の記者生活が気に入っていた。

 




 公都に、スクープが飛び交ったのは、三日前の昼だ、人気のルーナ殿下の魔導艦がバルセリアで落下した。


 公都に衝撃が走り、各省庁が情報収拾に走法し、魔導省は報道管制を引いた。


 此の事件には、謎が多い、何故、北方から帰還中のルーナ殿下が東のバルセリアに向かったのか、


 そして、何故、バルセリアで落下して不時着したのか、幸いバルセリアの街をぎりぎり回避して、中央駅の鐘突塔が壊れただけで怪我人も死人も出なかったらしい、



 魔導省からは、魔導機関の故障と発表された。



 此の事件を、少ない情報から各魔導新聞社(アウル・ジェーラ)は、夕方には記事を書かなければならない。


 大手の魔導新聞社アウル・ジェーラは、魔導機関の故障を取り上げて、ローコストの軍艦の安全性を追及し防魔省を喜ばせる筈だ。



 だから、大手はつまらない。


 あのルーナ殿下だ、ドラマが無い分けが無い、分からない部分は作れば良い。



 大衆は、それを望んでいる。



 私の魔導ペン(アウル・ゴーダ)が冴え渡る、連戦で疲労する魔導省、『飛翔部隊』、無理を承知で東の特務任務に向かいその為、点検も出来ず、魔導機関も疲弊していた、


 その特務任務が、終わった瞬間、疲弊した魔導機関が、機関長の僅なミスで、故障した、()()()()()()()、と此処は推測、

 

 そして、老齢の、艦長の疲労からくる、ほんの僅な判断ミスが()()()()()()()()()()、此処も推測、



 で、此処からが、ドラマ、



 軍艦は、バルセリアの街に突入しようとしていた、必死に指揮し回避しようとした、ルーナ殿下に奇跡が起こる!


 ルーナ殿下の奇跡の力により、魔導機関が最後の力を発揮し、


 なんせ、私、技術者じゃねぇし、魔導工学、知らねぇし、良いんだよ、適当で、ドラマ、ドラマ。


 その最後の力で、軍艦は再び、浮かび上がり、鐘突塔を壊しながら、


 バルセリアの広大な牧場に不時着した。


 牧場に、一人、佇む、ルーナ殿下、

 

 『飛翔部隊』も、バルセリアの民も、ルーナ殿下の奇跡の力に救われた。



 めでたし、めでたし。


 ってね。




 魔導新聞アウル・ジェーゼは各家庭にある、魔導回線アウル・ドーレで繋がった、魔導本アウル・バーデと呼ばれる板状の魔導機で読む、


 その魔導機に表示する各社の記事を選んで、その魔導機にコインを入れると記事が読める。


 記事には、魔導ペン(アウル・ゴーダ)で書かれた魔導回路が埋め込まれていて、その回路を触ると『しん』の魔導術が発動し、


 その『しん』の効果で、読者はその場で、書かれた記事が、自分の目の前で、あたかも起こっているような、リアルな映像を見る事が出来る。


 勿論、どれだけリアルに観られるかは、書き手の才能と文筆力にある、私は、大手の記者より、事件をリアルに書く事は不得意だが、記事を面白く書く事は得意だ。





 で、結果、当日の夕刊の売上は、我が社始まって以来の記録を叩き出し、次の日の、大手の朝刊も、こぞって、ルーナ殿下、ルーナ殿下と取り上げて、


 公民は、ルーナ殿下に無理を言ってる、魔導省と防魔省を非難し始め、魔導省は直ぐに、新型戦艦の点検と改修を発表して、更に、ルーナ殿下の一月の休暇、及び、艦長と機関長の移動を発表した。


 まぁ、此の発表は、前日、魔導省の知人から聞いていたから、ドラマに利用させて貰った、魔導省とあたしのウィンウィンさ。




 でっ、私も、局長賞、貰ったんで、1ヶ月、南の自由都市でバカンスと洒落こんでいたのに、


 局長に呼び出され、バルセリアに行けって言われた!



 嫌だ!!


 って言ったら、指名だから、絶対行ってくれと言って、ハゲ局長、土下座しやがる、クソ!!




 軍艦『プリンシブァ』が、バルセリアに落下した、五日後、交換要員と、作業員、船の修理資材をバルセリアに運ぶ為に、魔導省は専用の魔導列車を出す事になり、


 魔導省から、専属記者として指名された私も、バルセリアには、その専用列車で行く事になった。


 列車は、中央山脈を抜けて、三日後にバルセリアの街に着く予定だ。


 専用魔導列車は、五十両編成で、二十両の客車と三十両の貨物列車になっている。



 で、流石、魔導省、客車は豪華だ、全て個室で、専用のシャワー(ドルサァ)も有り、



 更に、此の列車には、他の各省庁のルーナ殿下派が沢山乗っていた。


 外魔省からは、ルーキンス・ホーゲン、


 農魔省からは、カーウス・ラーゲン、彼奴は、私に殿下が牛と一緒のシーンを書いてくれ、と言いやがる。



 牛と殿下? 誰が見たがるんだ、農魔連向けか? うち、地方紙じゃねーんだよ。



 教魔省からは、キャリー・ベネディア、今、教魔省で頭角を現している若手だ、彼女にはいろいろと情報貰って世話になってる。


 彼女は、私に、今、バルセリアの高校で学長している魔導皇まどうおう、嵐のジェルダ・ルーバッハと殿下のツーショットを書いてくれと頼まれた。



 魔導皇まどうおう、嵐のジェルダ・ルーバッハって、確か歳は四十代、二十歳の頃、天候の魔導術を研究して、たまたま十年前、嵐を起こしちまったから、嵐のと呼ばれて、魔導皇まどうおうに成ったんだが、


 嵐の魔導術じゃ、何の役にも立たないから、いろいろ魔導士協会や公王と揉めてた、って聞いてたけど、



 今は、バルセリアの高校で学長してたんだ。



 枯れたババアと殿下で、絵になるのか? まぁ、キャリーにゃ、世話になってんし、適当に書くか。





 色んな人と、商売上、挨拶した後、私は、食堂車に向かった、魔導省は金有るから、食堂車も豪華だ。


 旨いメシでも食って、早く寝ようと思っていた私に、凄い絵面が飛び込んで来た。



 あのテーブルにいる、三人、確か、



 進行方向の窓際の席にいるのは、ピンクのショートカットの髪にピンクの瞳に、丸い銀の眼鏡、


 ギルスタン家の引き籠り姫、


 ウェルセア嬢


 何故、彼女が?



 噂じゃ、相当な天才で、天才故に、誰も理解されず、だから引き籠っていた、その彼女を、ルーナ殿下は引っ張り出して、あの戦艦を作らせた、と言われている。


 ルーナ殿下の凄い所は、人の使い方だ、彼女は魔導省の問題児、ジュピーリーナ嬢も使いこなした。


 だから、あれだけの戦果をあの短期間で上げる事が出来た。



 その引き籠り姫が、わざわざ、バルセリアの現場に向かう!


 何か、有る匂い。


 

 そして、その前で窓からつまらなそうに、景色を見ているのが、


 魔導省の怒り姫、事、


 サーンディ・アーランド上級魔導士、


 彼女はダークなアッシュ系ブロンドの髪をボサ質感にしていて、更に短めのレングスが大人っぽい印象に見えるんだが、性格は危険なガキだ、彼女の怒りを買って、多くの犯罪魔導士が、此の世界から消えた。


 魔導省実働部隊の責任者、飛翔騎士団、団長ルーフェンス・ガイアード、通称、闇のルースの秘蔵っ子、



 闇のルースが切り札を切るって、



 何が、あんだよ、バルセリア!



 サーンディの隣の女性、ラベンダーブラウンの髪にツヤショートヘア、


 ありゃ、ルーナ殿下の盟友、


 バレンシア・サザナード


 確か、防魔大で、歴代トップの操舵術、砲雷術の成績だったんだが、女性である事、ルーナ殿下の友達って事で、


 防魔省、不採用、其で、魔導省の観光船の上級魔導航海士をしていた筈だ。


 彼女は何しにバルセリアに行くんだ?



 遊びじゃねえよなぁ?


 



 興味を持った、私は、ウェルセア嬢の横の席に立ち、営業スマイルで、


「此処、空いてますか?」


 とウェルセア嬢に声を掛けたら、


 彼女の前の席のサーンディが、私を睨みながら、


「あーん、何だ、おめぇ!」



 サーンディ、怖えぇ!


 怖いけど、表情には一切出さず、魔導証明書を見せながら、


「私、ディ・プラドゥ社の記者をしています、ローシィ・レーランドと言う者です、お見知り置きを。」


 と挨拶したんだけど、



 サーンディは、


「ちっ、文屋かよ。」


 と言って窓の外を再び見る、私には、無関心。


 ウェルセア嬢が、本当に小さな声で、


「ど、どう、・・・ぞ。」



 生きてんのか?此の娘。


 私は、座りながら、ターゲットをルーナ殿下の盟友、バレンシア嬢にする事にした。


 私は、料理を注文した後、バレンシア嬢を見て、今、気が付いたフリして、


「あのーすみません、確か、貴方は、ルーナ殿下のお友達の、サーザナード家のバレンシア様ですよね、殿下のお見舞いですか?」


 彼女は、えってな顔して、


「い、いえ、たぶん、もう発表しているから、大丈夫だと思うんですけど、私は、今日の辞令で、『プリンシブァ』に乗る事が決まって。」



 聞いてねぇ!、前日迄、此の人事、魔導省から聞いてなかった、今朝決まったのか、誰の代わりだ?


 今回は、機関士長と艦長が動いた、彼女が機関士長をやる分けねぇし、


 ・・・まさか、


 「あのー、・・・もしかして、・・・新艦長とか?」


 私は、バレンシアにカマを掛けた。


 彼女は、澄ました顔で、


「まぁ、船が動くのは、先の事ですし、」



 否定しねぇ!


 魔導省には、殿下の船に乗りたい奴は巨万ごまんといる!


 そんな奴等を無視して、あの殿下が、バレンシア嬢を引き抜いた、


 ルーナ殿下は、彼女の操舵術、砲雷術が必要だから?



 何故?



 やっぱり、バルセリアには何か有るって事か。


 

 結局、それ以上のネタも、手に入らず、美味しい夕食を食べて、その席を離れた、



 ただ、つまんねぇなぁ、と思っていたバルセリアも、何かが、有る、って予感がしてきて、俄然、興味が出て来たのが、収穫だった。 





「でっ、何で、俺達はバルセリアに行くんだ!引き籠り、」


 記者さんが席を立ったら、サーンディさんが、私を睨んで、怖い顔で聞いて来た、こ、こ、怖い、


「サーンディ先輩、此処では、その話しは無理ですよ、ウェルセア先輩も無理って言ってますよ。」


 バレンシアさんが、助けてくれた、



 私は、ウェルセア・ギルスタン、星翔部隊で情報摩導将官をしている、



 情報摩導将官



 だから、何時も自分の部屋で魔導計算機を操作して情報を集めるている、それが私の仕事、ルーナ殿下が私の為に用意してくれた、仕事。


 そんなルーナ殿下が、バルセリアで人類以外の敵に襲撃されて、殿下の船は落下した。



 ルーナ殿下は、私に、その敵が何者かを調べてくれと言い、私は遠隔操作で、船の魔導機関探索機を動かした、


 此の探索機は、生物により異なる魔素エーテルの吸収量から排出される廃魔素ローテルの量を計測する事が出来る。


 人のように、魔素エーテルを必要としない生き物は、廃魔素ローテルの放出量は少ない。


 しかし、翼竜のように、魔素エーテルが大量に必要な生き物は、廃魔素ローテルを大量に放出する。


 私が、あの化け物の廃魔素ローテルの量を計測した時、その数値は信じら無い数値だった。



 廃魔素ローテルはゼロ!



 ゼロって、



 ・・・



 ルーナ殿下は、此の化け物が船に近付いた時、探索機が白い点滅する光点を表示し、警報が鳴ったと言った!



 白い点滅する光点、


 白!!



 計測不能!!



 ゼロだから、



 有り得ない数値だから!!



 だから、警報が鳴った!!!


 考えられる事は、二つ、



 一つの考え方は、


 此の世界で、魔素エーテルを絶対に吸収しないで生きていける生物、


 そんな生物が、あんなに強くて、不死の分けが無い。




 そして、もう一つの考え方が、


 魔素エーテルを吸収しても廃魔素ローテルを出さない、完全な生き物!!


 全てが魔素エーテルで構成されている生き物!!



『魔人』!!!



 此なら、あの強さも、不死も説明がつく!



 完全に魔素エーテルで構成されているから、あの化け物は強く、壊れても、大気に溢れている魔素エーテルを吸収する事により、直ぐに修復する事が出来る。



 私は、その事をルーナ殿下に報告した。


 その生き物は、私達の魔導機関を憎んでいた、

 

 そして、殿下と部隊の皆と、バルセリアの民を虐殺しようとした、


 その化け物が、不死だと知ったルーナ殿下は、全力でその化け物を殺せと命じた。



 だけど、


 その化け物を、殺す事が出来ず、破壊した部位が完全に復活した時、



 奇跡が起きた。



 ルーナ殿下が言うには、千本の光剣が、天より落下して、その化け物を細切れの塵状ちりじょうに切り刻んだと言っている。


 しかし、探索機には廃魔素ローテルの反応は無かった、



 どうう事だろう?



 一体、何が起こったんだろう?



 何が起こったのかは、その場にいない私には分からない。



 「おい!聞いてんのか?」


 分かっている事は、探索機では、計測出来ない、何かが起きた。



「答えろ!!!!!!」



「ヒィイ!!!!」


 何?何?サーンディさんが怒ってる!



「人の事、無視するんじゃねぇ!!」



 えっ、無視?考え事してたから、



 バレンシアさんが、慌てて、


「サーンディ先輩、落ち着いて、落ち着いて、ウェルセア先輩は、私達に旨く説明しようと考えてたんですよ。」



 そ、そうだった、そしたら、考えに没頭して、



 また、やってしまった。



「あーん、返事ぐらい、出来んだろーがぁ!!!」



 サーンディさん、怖い!!


 泣きたくなった。



「先輩!いい加減にして下さいね、ウェルセア先輩、泣いちゃいますよ!だいたい、特務任務ですよ!こんな列車の中で説明しろってのが、無理です!」



 サーンディさんが、膨れてる、


「わかーてるよ!だがな、こっちゃ、ルースから、何の説明も無くバルセリアに行けって言われたんだ!説明の一つも聞きてぇんだよ!」



 ・・・


 私は、思いきって、サーンディさんに言った。


「・・・ルーナ殿下が・・・説明・・・してくれる。」



「声が!ちぃっちぇ!!」



 ひぃぃぃぃぃ、怖いよ!!!


 




 泣きたくなった。




 本当に、

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ