星の子供達
ダンバード・グラスタは、『暗殺者』、バルド・レェーゲンダと対峙し、彼は、バルドと互角以上の実力で、バルドを圧倒していた、
自分の不利を悟った、バルドは、『魔剣』の力で、10体の死瘴騎士団を呼んだ、
その実力は、バルドに匹敵する10体、ダンバードは、無駄に動くと、自分が、彼等に殺される事を、瞬時に判断し、彼は動きを止めた、
その様子を見た、バルドは、自身の勝利を確信し、
笑った、
その瞬間、
スパッ!スパッ!スパッ!
風が、疾風の如く、吹き上がった瞬間、
死瘴騎士団の首が、空に舞い上がり、
バガン!バガン!バガン!
舞い上がった三体の首は、空で砕け散った。
バルド・レェーゲンダは、何が起こったか理解が追い付かず、更に、
スパッ!スパッ!スパッ!
バガン!バガン!バガン!
三体の首が、飛んで爆発した時、彼は、自分を凌駕する存在に気付き、直ぐに、自分の周りを、残り4体の、死瘴騎士団で固めた、
その時、彼は、気付いた、自分が殺そうとした、あの銀髪の少女の前に、一人の少女が、彼女を守るように立っているのを、
その者は、瞳を、輝かせ、その紫の髪は、光り、靡かせながら、両手には、獣の牙を思わせる、銀の双剣を握り、構えながら、毅然とした態度で立っていた。
リディアは突如、現れた少女に驚き、彼女は、その少女に声を掛けた、
「貴女は!」
少女は、無表情に、
「アンリー・スウィート、貴女の護衛、ルーナ殿下に頼まれた、」
リディアは、驚き、
「姉様が!」
バルドは、更に、片眼鏡を掛けた、黒い髪の若者が、右手をウォータブルーに輝かせながら、あの魔導省の上級魔道士のガキに近付いていくのを見た、
奴等は、一体、何なんだ!!
バルドは、混乱していた。
オルダス・ホールスは、右足を切断され、泣きながら、転げ回っている、アルベスト・デューレエードに声を掛けた、
「大丈夫か、アル!」
その時、初めて、アルベストは、オルダスの存在に気付き、掠れた声で、
「オルダス・・・先輩、」
そして、気付く、彼も、また、ダンバードと同じオーラを纏いながら、自分に近付いて来た事を、
何なんだ、一体!!!
自分は、自分は、選ばれた、エリートなんだ!
彼は、喚いていた、
オルダスは、そんな混乱している、アルベストに、同情しながらも、目は、あの得体の知れない、危険な、骸骨面を被った男を見ていた、
バルドは、魔導省の小僧に近付いた、あの黒髪の男が、何者かを知る為、死瘴騎士団を、一体、奴に向かわせた、
瞬間、
ズバーンンン!!!
奴に、3歩、向かっただけで、その死瘴騎士団の上半身は、吹き飛び、
その、片眼鏡をした男は、ウォータブルーを翳した右手を此方に向けていた。
オルダスは、大声で言った、
「動くな!!動けば、お前を処理する、私達は、ルーナ殿下より、その権限を委譲されている!!!」
そして、オルダスは、小声で、
「アル、リディア殿下を殺そうとした、奴は、一体、何者なんだ、」
アルベストは、その静かな、そして落ち着いた、冷静な声を聞いて、自身も気持ちが、幾分か落ち着き、ようやく、声が出るようになったことに気付き、彼は慌てて、
「分からない!分からないんだ!奴は、奴は、僕をバレットス先輩か、って、もの凄い殺気で聞いてきて、其れで、リナ先輩が、」
オルダスは、掠れた声で喋る、アルベストの言っている内容の意味が分からず、
「バレットス?ジェミのことか?リナ先輩って誰だ?」
分からないと言われたアルベストだが、彼は、やはり同じ事を繰り返し、説明しようとするだけで、
其れ以上の説明は、今のアルベストには無理だと理解したオルダスは、
「もう大丈夫だ、アル、奴は、私と、ダン、アンリで包囲した、其れに、」
オルダスは、何を考えてるか分からない、今は、大人しくしている、骸骨面を被った、あの男を見ながら、
「もう直ぐ、ハルが此方に来る、そうしたら、奴は終わりだ、」
アルベストは、驚愕し、言った、
「ハル?」
その時、世界の星が、動いた!!!
バルドは、考えていた、静かに、
コイツ等は、厄介だ、今、此処で処分するべきかどうかを、
死瘴騎士団は、あの男から10体、貰った、だが、自分は、『魔剣』を、『魔神』から頂いた、
だから、今、自分は、500体の死瘴騎士団を召喚出来る事も、分かっていた、
バルドは、考えていた、奴等は、確かに強い、だが、数では、たった三人、奴等の速さを圧倒する数の暴力で、一気に押し切れば、
彼の、今迄の経験が、彼に答えていた、
奴等を、殺せると、
ならば、まずは、百体、
バルドは、『魔剣』を、高く翳したその時、
天空が微かに震えたその後、
ズゥウウウウウウウウンン!!!
大地が震え、星界が震えた!!!
ズシン!!!
彼は、戻って来た!!!
此の、世界の運命を賭けた、負ける事を、許されない、戦いに勝つ為に!!!
その男は、
全身に、『星』のオーラを纏い、
髪を靡かせ、その瞳は、透明なコールドブルー、
バルド・レェーゲンダは、絶叫していた、
そのオーラ!!
その面影!!
正しく、フレデリック・サィファ!!
震える、バルドは、叫んだ!!
『奴!奴コソガ!!ジェミオ・バレットス!!!』
バルドは、一気に、『魔剣』を振った!!!
ズゥウウウウウウウウウウウウ!!!
地より湧き上がるは、500体の、死瘴騎士団!!!
その、恐怖の光景に、震えるリディアに、
「殿下!此方へ!!」
彼女の横に、赤毛をツインテールで纏た、自分と同い年に見える少女が、彼女の手を引っ張り、
リディアは、驚いて、
「貴女は!!」
手を引っ張る少女は、リディアを導くように、
「私、エミリア・ドルネッサ!殿下が此処にいたら、皆が戦えないって、だから、此方へ!!」
彼女は、引っ張られた、瞬間、
世界は、変わる、
世界は、神殿に囲まれた、遺跡、
「えっ、」
彼女は、驚き、愕然として、
「ここは!!!」
「此処は、『星の遺跡・神殿』だ、リィディ、」
その声は、優しい、ハスキーボイス、
その人は、長いオンブレ・プラチナの金髪を靡かせ、気高く、上品な顔立ちと、優しく涼しげなコールドブルーの瞳を、此方に向けて、
「ルーナ姉様!!!」
その時、リィデリィア・ウェルドは、泣いていた。
「リィデリィア殿下も、助けてくれたんですね、ジェミ先輩、」
ジェミオ・バレットスは、アルベスト・デューレエードを担いで、自ら作った、『何処でも扉』を潜った、
500体の死瘴騎士団が現れた時、ジェミオは、オルダスの代わりに、アルベストを保護しようと、直ぐにオルダスのいる場所に向かった、アルベストは、急に現れたジェミオに驚いたが、彼と一緒に『星の遺跡・神殿』に移動した時は冷静で、
「もう、先輩達の奇跡に、僕は、驚きませんから、」
と、一言、
ジェミは、そんな状態のアルベストを、コーネリア・ロンディーヌの執事、エリンデゥナ・ウォルデュースに渡した、
「だいたい、先輩!先輩達は、可笑しいですよ!!何で、あんな化物!!相手、出来んだよ、僕は!僕は上級魔道士!うっ、」
しかし、混乱しているアルベストは、騒いで、暴れようとし、エリンデゥナはアルベストに、『雷』で強制的に失神させ、失神した彼を、抱き抱えて宿泊用魔導四輪車に連れて行った。
ジェミは、そんなアルベストを見ながら、コーネリアに聞いた、
「彼の足、治せる、リア、」
コーネリアは、首を振って、
「今の私には、無理、・・・たぶん・・大爺様なら、出来るかも知れないけど、もう、大爺様は、目を覚ますのは、三年先だと思う、」
ジェミは、少し考えた後、
聞きたい事も、敢えて、聞かず、
「そうか、取り敢えず、あの、戦いを、終わらせるのが、先だね、」
そう言った後、彼は、『何処でも扉』の向こう側で、行われている、壮絶な戦いに、目を向け、
更に、彼の目は、得体の知れない、骸骨面を被った男が手にする、赤黒い禍々しき剣を、
『魔剣』を、見ていた。
戦いは、想像を超えていた、500体の、上級魔道士を超える、死瘴騎士団なら、幾ら超上級の奴等とて、敵う筈がない、バルドは、そう考えていた、
事実、高速で襲いかかる、数十体の死瘴騎士団に、ダンバードは、アンリーは、部位破壊をする事は出来ても、致命的な破壊をする事は、出来ず、
死瘴騎士団も、一部破壊されると、後方に戻り、復元してまた参戦する事を繰り返し、
きりのない戦いを繰り広げていた、
ダンバードと、アンリーの攻撃を回潜った死瘴騎士団は、ハルチカに向かうが、オルダスの射撃に仕留められ、
ハルチカ・コーデルに近付く事は、出来なかった。
バルド・レェーゲンダは、その戦いを冷静に観察し、あの男が、かって、自分が戦い、敗北した、フレデリック・サィファと違う事に気付く、
何故、あの男は、『星』を落とさない?
バルドは、気付く、
あの男は、サィファじゃない、
奴は、『星』を落とせない!!!
バルドが、その事に気付いた時、
彼は再び、自らの勝利を、確信した、
その時、
ズダダダダダダダダダダダアアアンン!!
50体の死瘴騎士団が粉となり、
バルドは、驚愕する!
更に、
ピタッ!!!!!!!!!!!!
30体の死瘴騎士団が、止まった瞬間、
スバァアアアアアアアアアアンンン!
その、全ての首が舞い上がり、
ガガガガガガガガガガガガガァアアン!
その全て首と、胴が砕け散った!
何が起こった!!!
バルドは急いで、ハルチカを見ると、その横に、赤毛が、燃えるように、光り靡いている、少女がいる事に気付く、
その少女の手に持つ、杖の頭杖の時計が光る瞬間、死瘴騎士団の動きが止まり、一気に破壊されている事に気付く、
此れも、また、『星』の力なのか!!!
星は!星は!!何故、我等の邪魔をする!!!
百五十年前の悲劇が、また、自分の目の前で再現されるのか!!!
そう思うと彼は、魂の奥底から怒りが込上がり、その怒りで、我を忘れ、叫んだ!
『ボルド!我ニ、力ヲ貸セ!!』
『暗殺者』、バルド・レェーゲンダが、力を貸せと、命令したのは、かって、『心の皇帝』、ゲルト・サークルの左腕にして、
人に禁断の『錬』を使い、巨人を錬成した狂乱の魔道士、
『巨人創造主』
ボルド・ドーベンダ
ボルドは地の底より語る、
『バルド、オ前ニ、三体の巨人ヲ貸ソウ、』
その瞬間、バルセリアの東、バルセリア魔導高等学校の西の森に出現するは、三体の巨人、
その姿は、やはり、巨大な骸骨!!!
その時、ボルドは、顕現時に与えられた、『魔神様の吐息』の大半を使い、バルドの為に、死者の巨人を彼の下に、届けた、
ああ、
其れは、かっての仲間に対する、死して尚、残る彼への思い、
だが、バルドは気に入らなかった、
『少ナイ!10体!!全テ、貸セ!!』
ボルドは、悲しい声で言った、
『バルド、今ノ、オ前デハ無理ダ、操レナイ、』
バルドは、宿敵、フレデリック・サィファの影に苛つき、恐怖していた、其れは、死しても、消える事の無い恐怖、
『ナラバ、スダルガ!魔獣ヲ貸セ!!』
スダルガ・レードン
かって、ゲルトの右腕と呼ばれた男、
『魔獣王スダルガ』
魔獣使いの天才、
魔獣しか愛せなかった男は、冷たく、
『ダメダ、』
バルドは、虚空を睨み、そして、自分を落ち着かせた後、三体の巨人の戦いを見た、
巨人は、戦艦に匹敵する『力』を発動し、見た目より、素早い動きで、あの、『星の子供』達を翻弄していた、
バルドは、気付いた、あの赤毛の女すら、巨人の動きを止める事が出来ない事を、
ならば、話は、簡単だ、今なら、奴等を殺せる、
バルドは、再び、『魔剣』を振り、500体の死瘴騎士団を復活させた。
ジュピーリーナ・グラシウスは、生きていた、あれ程の一撃を2回も受けて、自分が吹き飛ばされるだけで、死なずに、生きている事が、奇跡である事を、彼女は自覚していた、
だが、生きているのと、身体を動かす事が出来るのは、別だ、今の彼女は、大量の出血と、たぶん、足、腕、肋骨の数本が折れているのだろう、激痛と力が入らない為、立ち上がる事が出来なかった、
彼女は、ただ、見ている事しか出来なかった、
あの魔人が、リィデリィア殿下を殺そうとした事も、その時、子供達が現れて、殿下を救った事も、
彼女は、泣いていた、
自分が、情けなくて、
泣いていた、
「ちくしょう!力を!力を俺に貸せ!!」
ジュピーリーナは、天空に輝く巨星に、手を差し出しながら、願った、
「頼む、俺に、俺に、力を、力を、・・・貸してくれ・・・!」
泣きながら、願っていた、
『左ダ、』
巨星は、答えた、
「左?」
その時、ジュピーリーナは、初めて、自分のいる位置を、確認し、そして、言われるままに、左を見た時、
其処に、有るのは、
「魔の恵みの果木?」
其れは、黄色と青い実が、光輝く、まるで、幻想の世界の植物のような、魔の恵みの果木、
「此れは、」
『太陽の星に祝福されし果木』
「太陽、・・・スグル、」
ジュピーリーナは、何故か、守護星が語る太陽が、守護星の嫌いな、スグルの事のような気がした、
その、嫌いなスグルが作った、星に祝福されし果木を、守護星は
その、感情を抑えて、俺に、
『喰エ、』
と、言っている、
ジュピーリーナは、光輝くその美しい実を一つもぎ取り、一口、噛じった瞬間、
全身に、力が漲り、彼女は知った、
スグルが、何故、此の果実を育てたのかを、
此れは、正しく、星に、祝福された果実、
『星に祝福されし果木』!!!
ジュピーリーナ・グラシウスは、更に、慾るように、その果実を口にした、
彼女は、初めて、自分が、巨大な星の力を受け止められる、それ程の力が、身体全体に津波の如く、自分の中で膨れ上がっている事を、自覚した。
彼女はゆっくりと、立ち上がり、星界に輝く巨星を見上げる、
その時、巨星もまた、知る、彼女が、かって自分が持っていた力の後継者として、その資格を得た事を!
『受ケ取レ!』
ジュピリーナは、右手を星界に翳した、
星界より落ちて来た、彼女自身の、『星具』を受け止める為に、
ガシッ!!!!
彼女は、柄の短い、ハルバートを!
受け止めた、
その瞬間、彼女は理解する、
此れこそが、真の、
『大星の雷土』!!!
名は、
『大星の雷刃』!!!