英雄の星
私は、初めて、魔導省が、学校を経営している事を知りました。
名前は、魔導省特務校と言うそうです、私に、その事を説明してくれた、此の、バルセリア魔導高等学校の、魔導科、1年A組の生徒、アルベストさんは、
「リディア殿下、一応、僕が、彼処に在席していたのは、中学生迄、ですから、今は、ちゃんと、此の学校の生徒なんですよ、」
「はぁ、」
私は、意味が分からないので、曖昧に、答えました、
彼の事は、リナ様から、彼が、実は魔道士協会が認定する、上級魔道士である事も教えて頂き、
その話を聞いた、私は、
私より1歳、年下の彼が上級魔道士、
ため息が出ます、その才能に、
そのうちに、リナ様とアルさんが、武器がどうのこうのと口論を始めたので、私は、慌てて、二人に言いました、
「あのー、そろそろ、行きませんか、」
二人とも、少し落ち着いて、アルさんが、私達に、
「リナ副将、リディア殿下、此方です、」
と、言った後、東の方に歩き始めました。
歩きながら、アルさんは、私に、
「殿下は、消えた先輩達に会いに行くんですよね、其れって、先輩達が、此処に、戻って来るって事を知ってるって事ですか、」
私は、頷きながら、
「はい、『約束された子』の皆様は、今日、此の場所に戻って来ます、」
アルさんは、ちょっと不思議な顔で、
「約束された? でも、何でその、先輩達が戻って来るって、殿下は、分かるんですか? 誰から、先輩達が戻るって聞いたんですか?」
・・・
不思議に思うのも、当然ですよね、でも、私には、真実しか、答える事が、出来ません、
「『星』が、私に、そう教えてくれました、」
アルさんは、呆れた顔で、
「『星』・・・ですか、」
その後は、アルさんは、私に、口を聞かず、黙って学校作業員の宿舎の有る森に案内してくれました。
その森には、白い汚れたフードを深く被った、人?
その人が、アルさんに、
『オ前ハ、ジェミオ・バレットス、カ?』
と、奇妙な声で呟いた時、
アルさんは、驚いた顔をし、リナ様は、険しい顔をして、怒鳴り、
「アル!!! 殿下を守れ!!!」
リナ様の怒鳴り声と共に、
ドッバババババババババンンン!!!
巨大な轟音と噴煙が目の前で起こって、
私は、思わず、驚いて、両手で耳を塞ぎ、目は、硬くとじ、しゃがみ込んで、悲鳴をあげていました、
怖い!!!
私は、恐怖で震えながら、薄目を開けると、目の前に、アルさんが、そして、その先の、もの凄く巨大な噴煙の中から、現れたのは、
先にいた、フードを被った人、
その人の右手には、巨大な悍しい剣、そして、そのフードの奥の顔は、
髑髏!!!
その瞬間、
バガンドガン!バガンドガン!バガンドガン!バガンドガン!バガンドガン!バガンドガン!バガンドガン!バガンドガン!バガンドガン!バガンドガン!バガンドガン!バガンドガン!バガンドガン!バガンドガン!バガンドガン!バガンドガン!バガンドガン!バガンドガン!バガンドガン!バガンドガン!バガンドガン!バガンドガン!バガンドガン!バガンドガン!
もの凄い、音と光が、あたり一面に轟き、私は、耳を両手で硬く塞ぎ、ありったけの大声で悲鳴を、再び上げていました。
音と、光が三度続いて、静かになった時、
私は、ゆっくりと薄めを開け、
目に映ったのは、
アルさんが、倒れる姿、
私は、びっくりして、アルさんを見ると、
彼の右足が無く、血が、噴水のように、吹き出して、
きゃああああああ!!
私は、その血に驚いて、悲鳴を上げながら、直ぐに、立ち上がり、アルさんを助けようと駆け出し、
その時、アルさんは、痛み?のため、転げ回っていたような状態から、突如、立ち上がって、血は止まって、
えっ、
アルさんの側に駆け寄った、私は此の状態で立ち上がった彼に、びっくりし、
「だっ、大丈夫なのですか!アルさん!!」
と、かすれた声で、アルさんに、言いました、
でも、彼は、聞いてません、
彼の状態が、変です、
あの、髑髏の仮面を被った人は、笑いながら、
『魔導省ハ、我々ノ、『澪心』マデ、真似ヲスルノカ、』
レイシン?
あの人は、何の事を言ってるんでしょうか、
その時、最初に、大きな音と、大きな土煙が起きた、場所から、
「伏せろ、アル!!!」
リナ様の声が!
ドン!
私は、アルさんに突き飛ばされ、視界に地面が近付いた時、
リナ様の大声と、
ドッカアアアアアアアアンンンン!!!
更に、大きな爆発音と突風が、私を襲い、私は、地面に数度、叩き付けられ、其の後、転げ回りながら、何とか、其れ以上、飛ばされないように、必死で堪え、
風と煙が、ゆっくりとはれた後、
ドッバババババババババンンン!!!
再び、リナ様がいらした辺りから、大きな音と、巨大な土埃が発生し、
リナ様!!!
何が起きてるのか、全然、分からない私は、恐怖に震えながら、何とか、立ち上がろと、努力しました、
でも、恐怖で、足腰に力が入る事が出来ません、
焦れば、焦るほど、足はもつれ、埃がゆっくりと晴れると、
うつ伏せになった、アルさんが私を、必死の形相で見ています、
え?
私の視界に、あの白い汚れたフードの人が、立ち止まり、私を見ています、そして、其の髑髏の仮面越しに、喋る言葉は、冷たく、
『確カ、女モ、殺セ、ソウ、言ワレタ、』
殺せ!
其の人は、そう言うと、私の方を見て、私は、はっきりと分かりました、
此の人は、仮面を被ってはいない、
髑髏その物が、此の人の顔、その物である事を、
私は、震えが止まりません、
逃げなくちゃ!!!
逃げるのよ!私!!
声が、声が出ません!!!
『オ前ニハ、『星』ノ、ニオイガスル、』
星の、ニオイ?
其の人は、私に向かって、あの巨大な禍々しい大きな剣を、振り上げ、
『危険ダ、』
そう言って、私に振り下ろし、
ました、
ガッキイイイイイイインンン!!!
「貴方は、自分が、何をしようとしたか、分かっているのか!!!」
その時、
私の、
私の、目の前に、肩までの長い金髪を靡かせ、手には、月の光のように、白く輝く剣を持つ、其の人は、その剣で、あの禍々しい剣を受け止めていました、
私は、
私は、目を疑いました、
その人の前に、見えるのは、月、その上に輝く七つの星、光輝くのは、七つの星の二番目の星、
かって、星母様が、私に仰られた星、
ミザールを背負いし君、
私の、運命の君が、
私を、
私を、助けようと、
私の前に、前に、
現れて、います、
私の、瞳から、涙が、涙が止まりません。
彼は、死する以前、『暗殺者』と呼ばれ、其の一撃の速さは、誰にも、止める事は出来なかった、
だからこそ、彼は、『暗殺者バルド』と、呼ばれ、恐れられていた、
だが、今、彼は、驚愕していた、
此の、突如、現れた若者に、自分の剣が止められた事に、
バッ!!!
バルドは、此の若者と、一旦、距離を取った、
若者は、此処で、何が起きていたのか、理解していない為、無理に追撃をせず、視線は、バルドに向けて、外す事はしなかった、
此の、若者は油断していない、慢心もしていない、バルドには、若者が、実力が有り、だからこそ、冷静に自分を警戒しているのが分かった、
彼処に転がってるガキとは、絶対に違う、あのガキは、才能が有る為に努力をして無い、だから、応用が出来ず、咄嗟の対応も出来ず、何よりも、自分より優れた存在がいる事を理解出来ていない、
魔導省の上級魔道士の欠点が見事に出た、ガキ、其の者だった。
だが、コイツは、違う、俺には分かる、コイツは、凄く努力して実力を付けて来た奴だ、
そうか、分かった、コイツが、
ジェミオ・バレットス!
確かに、危険な奴だ、
だから、コイツを消せと、私に、あの男は言ったのか、
バルド・レェーゲンダは、ゆっくりと其の髑髏の口を開いた、
『オ前コソガ、ジェミオ・バレットス、ダナ、』
男は、眉を顰めた、
バルドは、其の表情に、此の男が、ジェミオ・バレットスでは無い事に気付いた、
では、此の男は何者なんだ、コイツは、誰かに、似ている、
バルドは、其の時、思い出す、
かって、自分の憧れだった男、そして、其の男を、自らの手で殺した事を、
魔導省の英雄と呼ばれた男、
オーランド・グラスタ
バルドは、押し殺した声で、言った、
『ソウカ、オ前ハ、グラスタ、グラスタ家ノ者カ、ナラバ殺ス、』
その瞬間、彼は、自らの特技、『心』、『雷』、『磁』の合成魔導術、『雷速心』を発動させた、
死して尚、その速さ、衰えず、死せる筋肉を『心』で騙し、壮絶なる高速で稼働させる、魔導術!
此の、魔導術により、自分は、多くの魔道士の命を狩って来た、其れは、彼に取っては絶対なる自信、彼は信じた、此の魔導術を発動させた時、目の前の若者は、
死んでいる事を!
二人の、高速の、目では決して捉える事の出来ない、神の領域の戦いが、開始された、
此の瞬間、アルベスト・デューレエードは、今、正に、奇跡を見ていた、
その、想像を絶する、戦いに、正に、自分の目を疑い、自分自身を疑った、
自分は、一体、何を、見ているのだと!
アルベストは、自分の才能に絶対の自信を持っていた、此の田舎の、魔導高等学校には、自分より才能が有る人物はいなかった、だから彼は、此の学校の先輩達を、馬鹿にしていた、
あの、ガルホール・スターゲスでさえ、彼にとって小物であり、C組のダンバード・グラスタは、相手にするのも馬鹿らしい存在だった、
彼にとっては、仕事だから、近付いただけで有り、それなのに、C組と言うだけで、魔導格闘技大会のレベルの低い予選程度の大会で、ちょっと活躍しただけで、騒がれる事にも、
彼は、納得していなかった、
しかし、今、彼は、見ていた、自分より、遥かに格下の男が、其の男が、自分の敵わなかった、化物と、
互角、嫌、其れ以上の力で戦っている事に、
彼は、『奇跡のC』を馬鹿にしていた、
彼は、先輩だから、丁寧な口調で接していたが、内心は、馬鹿にし、見下していた先輩、
ダンバード・グラスタが、
その彼が消え、そして、再び現れた事の意味を、
アルベスト・デューレエードは、理解した、
ダンバードの力が、魔導術のような、才能に左右される力では無い事を、
彼が、あの化物の、目に見えない高速の一撃を受け止める事が、出来るのも、彼が、その動きに対応出来る程、努力して来た事を、
今、努力と才能が、一つに繋がり、ダンバード、彼は、あの化物を凌駕する、一撃を繰り出す事が出来るようになっている事を、
其れは、彼に取って、納得の、出来ない、奇跡だった、
彼は、自分の惨めさに、泣いていた。
バルド・レェーゲンダは、『暗殺者』であり、武芸者では無い、彼は、どんな手を使っても、相手を殺す、其れが、彼の信念、
だから、生き残り、暗殺者と呼ばれた、
彼は、自分が、殺そうとした、若者が自分より、強く、優れている事を、
彼は、思い出す、此の力、似ている、
かって、自分が殺そうとして、殺せなかった、奇妙な力を使う、あの、
フレデリック・サィファに、
彼は、本能で知った、自分だけでは、此の男を殺せないことを、
彼は、『魔剣』を振った、
その瞬間、
ダンバード・グラスタの周りに、
彼の部下として、あの男より貰った、
10体の亡霊、魔導死、死瘴騎士団が、地の奥底より、出現し、
ダンバードを取り囲んだ!
囲まれた、ダンバードは、動きを止めた、
動きを止めた、ダンバードを見た、バルドは、確信する、
此れで、此の男を殺せると、
バルドは、笑った。