暗殺者
魔導歴2035年6月2日の火曜日、
此の日、僕、アルベスト・デューレエードは、バルセリア魔導高等学校で、朝の8時に、此の学校に突然来る事になった、ウェルド公家、現ウェルド公王、ダブレスト・ウェルドの三女、
リィデリィア・ウェルドを出迎える為に、早起きして、学校事務員長のエルデシィア・ガーランドと、学校の校庭で待っていた。
僕は、魔導協会が認定する、上級魔導士だ、僕の国、ウェルド公国でも、実は、十代で、上級魔導士になる、天才的な魔導士は結構、存在する、
では、何故、その天才的な魔導士の存在が、他の国のように、大きく取り上げられないのか、此れは、全て、魔導省が関わっているからだ、
僕は、小学生の三年で、魔導に覚醒した。
此の国の学校は、全て、教魔省が管理している、勿論、子供達もだ、
その時の僕は、知らなかったけど、早熟に魔導に覚醒した子供は、魔導省に報告がいく。
理由は、早熟な魔導の覚醒が危険だからだ、他の国では何が起きても、個人の自由、だから個人の責任で対処するべき、そう言う考えだから、事故が絶えないんだそうだ、
思春期前後の少年少女は不安定で危険な存在で有り、そんな状況で、桁外れな力を持てば、どうなるか、だから、魔導省が動く、
僕にも、魔導省の役人達が会いに来て、面談し、才能が無ければ、そのまま、地元に有る、中学校に進学する、
才能が有る場合は、魔導省は、スカウトに動く、
スカウトされた子供は、魔導省が運営する、特別な子供達の学校、魔導省特務校に進学する、
進学した、子供達は、魔導省特務生と呼ばれる。
此の学校に進学すると、子供達は魔導省に勤務する事になり、給料も支給される、但し、お金が入っても、寮生活で、訓練と勉強で忙しく、殆ど使わない、だいたいは、両親に送るか、将来の為に貯金するかのどちらかだ、
此の学校の事は、魔導省は機密事項扱いとして、世間から、隠している、何せ、将来の飛翔騎士団候補生達だ、かなり際どい訓練内容を、普通の人が知ったら大騒ぎ、だから、不必要に教えない、
飛翔騎士団の先輩や、星翔部隊の人達は、僕達を訓練するから、お互い良く知っている、
サーンディ先輩には、魔導格闘技で『炎』をぶちかまされ、死ぬかと思い、ジュピーリーナ副将は、一週間の不眠不休の死の行軍をさせられた、まじ、死ぬかと思った。
本当に、良い思い出がない、
だから、僕は、此の学校生活が好きだし、天国だ、
そして、今、僕に任務が与えられた、僕の正体をバラシ、リィデリィア殿下を護衛する、
正直、僕は、此の仕事を甘く考えていた、
僕は、上級魔導士だ。
訓練も受けている、
僕は、自分が無敵、
そう、思っていた、
奴と、出会うまでは、
奴は、学校作業員の宿舎の前の森に一人、静かに、顔を伏せながら、立っていた。
僕と、ジュピーリーナ副将、リィデリィア殿下の3人は、殿下の希望で、先輩達が消息不明になった場所に向かった、
僕の記憶では、確か、先輩達は、放課後自主講座として、
学校作業員の宿舎の前の森で、魔導格闘技の練習をしていると、ダン先輩は言った。
5月12日の火曜日にその場所に、ルーナ殿下が訪れた事は、僕も確認した、その一時間後、再び、此の場所に僕が来た時には、彼等は既に、いなかった。
それ以降、20日間、彼等は、以前、行方不明だ、
そして、リィデリィア殿下は、彼等が、最後にいた場所に、案内してくれと言う、
殿下は、彼等が戻って来る、だから、其の場所に案内してくれと、僕に言った、
僕は、殿下に、何故、そんな事が、分かるんですかと、聞いたら、彼女は、真面目な顔で、『星』が、私に、そう告げていますと、言い、
・・・
噂では、聞いていたけど、殿下は、変わってる、『星』が言うって、ガキじゃないんだから、そんな、迷信を、
殿下は、あの年で、まだ『星』が喋るって信じてるんだ、と、僕は、顔には出さなかったけど、心で、呆れていた、
ちょっと、残念だった、
せっかく可愛のに、おかしな娘じゃねぇ、
そんな事を、思いながら、学校作業員の宿舎の前の森に、二人を、案内した時、
其処で、僕達は、白い、汚れた、フードを被った、男に、遭遇した!
えっ、
奴は、何処に居たんだ?
その時の僕は、『磁』と『雷』の合成魔導術、『索敵』を発動していた、
奴の存在が、分からない、はずが無い!
だが、分からなかった!!
奴は、ゆっくりと、フードを上げて、言った、
『オ前ハ、ジェミオ・バレットス、カ?』
その声は、黒き、暗黒の冷気、!!
その顔は、髑髏!!!
「アル!!! 殿下を守れ!!!」
先に、反応したのは、リナ先輩だった、
先輩は一気に奴との間合いを詰め、手に持つ巨大なハルバード、『大星の雷土』を、奴に振り上げた、
僕も、訓練の成果、条件反射、直ぐに、リディア殿下の前に立ち、奴との間に、3重の『力』の障壁と、
右手に『雷』、左手に『炎』を纏い、構えた瞬間、
ドッバババババババババンンン!!!
巨大な轟音と噴煙が、森に沸き起こり、
バキバキバキバキバキバキバキ!!!
数十本の木々が粉砕し、
僕は、リナ先輩が、派手に彼奴を殺った、そう、思っていた、
だが、噴煙の中から、姿を現したのは、
白い、汚れた、フードに髑髏の顔、眼孔は青白く輝き、手には、禍々しくも赤黒く発光する、片手剣、
えっ、
僕は、驚愕し、
そして、直ぐに、奴に向かって、右手の『雷』と『炎』を撃ち込んだ、
バガンドガン!バガンドガン!バガンドガン!バガンドガン!バガンドガン!バガンドガン!バガンドガン!バガンドガン!バガンドガン!バガンドガン!バガンドガン!バガンドガン!バガンドガン!バガンドガン!バガンドガン!バガンドガン!バガンドガン!バガンドガン!バガンドガン!バガンドガン!バガンドガン!バガンドガン!バガンドガン!バガンドガン!
僕は、上級魔導士だ、体内には、常人よりも数倍の『魔素』を蓄積出来る、更に、周りに有る『魔素』を吸収するスピードは、常人より遥かに早い、
だから、僕は、奴との決着を早く付ける為に、遠慮する事無く、持てる力の全てを使う事にした、
バガンドガン!バガンドガン!バガンドガン!バガンドガン!バガンドガン!バガンドガン!バガンドガン!バガンドガン!バガンドガン!バガンドガン!バガンドガン!バガンドガン!バガンドガン!バガンドガン!バガンドガン!バガンドガン!バガンドガン!バガンドガン!バガンドガン!バガンドガン!バガンドガン!バガンドガン!バガンドガン!
僕の猛攻撃は、数十分、繰り返す事、数度、普通の生き物だったら、絶対、生きている事の出来ない、地獄、
まさしく、大地は溶解し、木々は燃え上がり、燃え上がった瞬間に砕け散る、そんな、光景の中心に、
奴は、笑っていた、
『魔導省ハ、我等ノ真似ヲシテ、少年兵ヲ採用シタノカ?』
少年兵?
バガンドガン!バガンドガン!バガンドガン!バガンドガン!バガンドガン!バガンドガン!バガンドガン!バガンドガン!バガンドガン!バガンドガン!バガンドガン!バガンドガン!バガンドガン!バガンドガン!バガンドガン!バガンドガン!バガンドガン!バガンドガン!バガンドガン!バガンドガン!バガンドガン!バガンドガン!バガンドガン!
何を言ってんだ!! こいつは、!!!
僕は、更に、威力を上げた、魔導術の、『豪雷』と『爆炎』を、奴に撃ち込んだ、
最早、奴の周りは、灼熱の業火と億万の落雷により、目を開ける事が、不可能な程、光輝いていた。
その中でさえ、奴は、黒いシルエット越しに、平然と立ち尽くしているのが、分かった、
僕の背に、冷気が、走り、
僕は、生まれて、初めて、
恐怖した、
奴は、更に、笑いながら、
『ナル程、オマエハ、魔導省ノ上級魔導士、ナラバ、』
ビューン!!!
奴が、一瞬、ブレて、確かに、右手の、あの、赤黒い、禍々しい剣を振ったと、僕が認識した時、
奴の、左手に、
一本の、足が、
僕は、ゆっくりと崩れ落ちる、
足が!!
僕の足が!!!
『ドンナ、上級魔導士モ、部位欠損スレバ、理性ガ崩レル、ソノ隙キニ、私ハ、多クノ命ヲ刈ッタ、ダカラ、私ハ、暗殺者、『バルド』ト、呼バレタ、』
ヤバイ!ヤバイ!ヤバイ!ヤバイ!ヤバイ!ヤバイ!ヤバイ!ヤバイ!ヤバイ!ヤバイ!ヤバイ!ヤバイ!ヤバイ!ヤバイ!ヤバイ!ヤバイ!ヤバイ!ヤバイ!ヤバイ!ヤバイ!ヤバイ!ヤバイ!ヤバイ!ヤバイ!ヤバイ!ヤバイ!ヤバイ!ヤバイ!ヤバイ!ヤバイ!ヤバイ!ヤバイ!
リディア殿下の悲鳴が聞こえた瞬間、
僕の身体に埋め込まれた、魔導印が発動し、
興奮し、狼狽し、恐怖に取り乱していた、僕の心が、冷静になり、僕は、片足のまま、『力』を使って立ち上がった、
骸骨は、笑った、
『魔導省ハ、我々ノ、『澪心』マデ、真似ヲスルノカ、』
コイツは、一体、何を言ってんだ?
その時、
「伏せろ、アル!!!」
『魔導機関全開!変換改!豪雷!!』
血だらけのリナ先輩が、巨大な魔導銃を持って構えていた、
僕は、直ぐに、『剛力』で奴を拘束し、顔面蒼白で震えているリディア殿下を突き飛ばし、僕も床に伏せた、
其の瞬間、リナ先輩が叫んだ、
『充電完了!!!』
ドッカアアアアアアアアンンンン!
巨大な豪光雷線が、巨大な音と共に、走り、拘束された奴の上半身を吹き飛ばし、其の後に来た、豪風が、僕を、リディア殿下を吹き飛ばした、
僕は、回転し、数度、身体を地面に打ち付けられた後、意識が飛ばされそうになるのを、必死で堪え、
奴を、リディア殿下を、リナ先輩を見た、
奴は、下半身だけの塊となり、奴の、あの赤黒い、禍々しい剣は、奴の右手首と一緒に地面に突き刺さっていた、
やった、奴を、奴を倒した、
終わった、
僕は、リディア殿下を見た、彼女は、蹲りながらも、必死で起き上がろうとしていた、
生きてる、良かった、
じゃ、リナ先輩は、
先輩は、やっぱり、血だらけで、片膝を付きながら、手には、ボロボロの魔導銃を持って、肩で息をしていた、
先輩、貴女、何で、そんな状況で、生きてるんですか、と、『魔素』が尽きて、身体を動かす事が、出来ない僕が、そんな事を考えていると、
リナ先輩は、驚愕の顔で、
「キサマ、魔人!!!」
僕も、リナ先輩の視線の先を見て、愕然とし、
奴は、奴は、復元し、ゆっくりと口を開いた、
『不死、ナルホド、コレガ、『魔剣』ノ力、』
ビューッ!!!
奴は、一瞬で、リナ先輩の前に、
『オ前ハ、ナゼ、死ナナイ、』
ドッバババババババババンンン!!!
リナ先輩!!!
『マタカ、吹キ飛バセテモ、殺セナイ、『星の子』カ?』
奴は、こっちを見ながら、言った、
『マア、良イ、デ、オ前達ダ、』
奴は、ゆっくりと、僕に向かって歩き始めた、歩く距離が、僕と奴の最初の場所から半分程度、来た時、奴は止まった、
『確カ、女モ、殺セ、ソウ、言ワレタ、』
えっ、
奴は、リディア殿下の方を向いた、
殿下!!逃げろ!!!
声が出ない、さっきの爆風で、喉が潰された、
僕は、立ち上がろとした、
足の無い僕が、
魔導力を使をうとした、だが、『魔素』が足りない!!
殿下!! 逃げてくれ!!!
リディア殿下は、恐怖で震えて、動けなかった!!!
ヤメロ!ヤメロ!ヤメロ!ヤメロ!ヤメロ!ヤメロ!ヤメロ!ヤメロ!ヤメロ!ヤメロ!ヤメロ!ヤメロ!ヤメロ!ヤメロ!ヤメロ!ヤメロ!ヤメロ!ヤメロ!ヤメロ!ヤメロ!ヤメロ!ヤメロ!ヤメロ!ヤメロ!ヤメロ!ヤメロ!ヤメロ!ヤメロ!ヤメロ!ヤメロ!ヤメロ!ヤメロ!ヤメロ!ヤメロ!ヤメロ!ヤメロ!ヤメロ!ヤメロ!ヤメロ!ヤメロ!ヤメロ!ヤメロ!ヤメロ!ヤメロ!ヤメロ!ヤメロ!ヤメロ!ヤメロ!
僕は、声無き、声で、必死に叫んでいた!
奴は、リディア殿下を見て、
『オ前ニハ、『星』ノ、ニオイガスル、』
奴は、あの、大剣を振り上げ、
『危険ダ、』
ヤメロ!!!!!!!
僕は、必死に願っていた、
殿下を、殿下を助けてくれ!!!
星に、願っていた!!!