託されし言葉
僕は、生きている。
あの、瞬間、僕の試みは失敗した、
確かに、僕の胸には、魔矢が刺さった、
痛く無かった、けど、僕の意識は飛んだらしい、
僕は、ゆっくりと目を開いた、
目の前に、金髪を巻き毛にし、瞳は透明なスカイブルー、上品な口元、の素敵な人が僕を見詰めている、
コーネリア・ロンディーヌ
「リア、君が、僕を助けてくれたの、」
リアは、首を振りながら、
「うぅん、違うわ、ジェミ、貴方を助けたのは、私の曽祖父、」
曽祖父?
「えーと、君の曽祖父って、オルトス・ロートス副総裁?」
リアは、笑顔で、
「オルトスは祖父・・・ねぇ、ジェミ、貴方って、やっぱり、私が、ロートスの一族だってこと、知ってたのね、何時から、分かってたの、」
ジェミは、ちょっと、照れながら、
「・・・まぁ、その、君のお祖母さんの、ベルスティ・ロートス総帥が、此の学校に来て、魔導防護服を僕達に呉れた時かな、君が、C組に入れたのも、学長と取り引きしたからだと思っていた、」
リアは、呆れながら、
「ジェミ、貴方、そんな前から気付いていて、なんで、その事を、私に、聞かなかったの?」
ジェミは、周りを見回し、
「此処は、宿泊用魔導四輪車だよね、僕は、どの位、意識を失ってたの、『星の遺跡・神殿』の攻略はどうなったの?」
リアは、ため息を付きながら、
「ジェミ! 貴方、私のことより、やっぱり、そっちのほうが、気になるって、失礼だと思わない、私も、貴方のこと沢山、心配して、必死だったのに!」
此れって、女心が分からない奴って、リアは、僕に言ってるんだよね、
・・・
困った、お手上げだ、
はっきり言って、どうしたら良いか、分かんない、
リアは、首を振りながら、
「ジェミ、そんな情けない顔しないで、今は、6月2日の、朝7時、攻略は、成功、で、皆は、貴方の話を聞きたくて、外で待ってる、」
えっ、皆が、
そうだよね、僕は、
皆に、話さなければいけない、
話す、義務がある、
僕は、決心した。
僕は、ベッドから立ち上がり、よろけそうになって、リアが僕を支えてくれた、
「ありがとう、リア、」
リアは、恥ずかしそうに、
「ねぇ、ジェミ、私達、二人は、もっと皆を頼っても良い、そう思うの、」
リア、
・・・
「そうだね、リア、」
そう、リアに答え、僕達は、宿泊用魔導四輪車の扉を開けて、皆が待つ、外に出た。
僕達が、外に出ると、ハル、エミ、ダン、オル、アンリが、まるで、僕達が、出て来るのを待っていたように、直ぐに、僕達を取囲み、最初に、一睡もしていないような赤い瞳をした、ハルが言った言葉が、
「・・・ふざけんな!ジェミ!!」
の、一言で、
僕は、彼に、
「ごめん、ハル!!」、と返した、
「ジェミ!ハルは、ハルは、自分の責任だって、昨日から、悩んで、一睡もしてないんだよ!」
そうだよね、本当にごめん、
ダンが、明るい笑顔で、
「でも、ジェミ、君のおかげで、皆が助かったのも事実だ、感謝している、其れに、リアにも『星具』が送られて、その力で、彼女は君を助けたんだ、だから、リアにも感謝している、」
『星具』!
リアにも、『星具』が、
僕は、もう一度、リアを見た、
そして、僕と目を合わせたリアは、静かに、頷いた。
オルも、安堵の表情で、
「ジェミ、本当に良かった、其れに、今回の試練で僕達チームの弱点と、対策が同時に分かった、そう思うだろ、ジェミ、」
アンリは、一言、
「良かった、」
そして、ハルが再び、
「ジェミ、なんで、あんな無茶な事をしたんだ!」
と、僕に詰め寄り、その時、
「はい、そこ迄、ハル君、その話しは、私達も一緒に聞きたいんだが、その前に、我等が、料理長が早く、朝飯を食えと煩いんだ、」
ルーナ殿下が、僕達の中に入って来て、仁王立ちしている、ブライさんを指しながら、僕達に言った。
朝食は、スグルさんが育てていた 、パンの木から取れた、パンの木実で作った、サンドイッチ、と、スグルさんが作った、乾燥肉、に野鳥の卵、其れには、やはりスグルさんが育てていた、魔の恵みの果木を使った、ソースが掛かっている。
「ブライさん、此れは、」
ハルが質問すると、ブライさんが照れながら、
「何か、皆、昨日は、大変だったろ、そういう時は、『俺が作った食材を使ってくれって、そうすれば、皆の疲れが取れるから、』そう、スグルが言ってたことを、思い出したんだ、」
ハルは、感激して、
「・・・師匠、」、と呟き、泣きそうな瞳で、食べ始めた、
僕も、ハルに続いて、スグルさんの、パンの木の、サンドイッチを口に入れた瞬間、
「えっ、?」
僕は、急いで皆を見た、ハルを除いた皆も、同様に驚いた顔をしていて、堪らず、エミが、ハルに向かって、
「ハル、何か、此れ、凄くない、食べたら、力が、戻って来るような感じ、」
ハルは、何を今更、言ってんだ、と言う顔で、
「エミ、当然だろ、師匠が作った、『星に祝福されし穀物』だよ、力が戻るの、当たり前、」
『星に祝福されし穀物』!
星の加護、
スグルさんは、僕達が、『星に愛されし民』だから、星の加護が薄いと言った、
だけど、僕達は、今、星の加護が分かるようになった、
僕達は、成長した!
僕は、ハルに聞いた、
「ハル、昨日、君に何かあった?」
ハルは、食べながら、
「もぐっ、・・あぁ、あったよ、ジェミ、君を助けようとした時、僕の、『左星の扉』が、完全に開いた、」
ダンが、嬉しそうに、
「ハルだけじゃない、私の、『星具』は、『月下の剣』になり、フェーズ2を簡単に攻略できたし、フェーズ3の、魔狼人も簡単に攻略出来た、」
その後、オルが、冷静に話を続けた、
「そうなんだジェミ、私も多弾の水弾を撃てるようになった、それに、リアにも、『星具』が、『星』から、贈られた、・・・つまり、ジェミ、君はこうなる事を、予測してたんだろ、」
僕は、リアを見た、
リアは、静かに、頷いた。
僕達が、軽く朝食を取り、食後、ブライさんが、これも、スグルさんの『お茶』と呼ばれる、飲み物を出してくれた、
やはり、此の『お茶』と呼ばれる飲み物も、『星に祝福されし穀物』で造られた飲み物、此の『お茶』を飲み干した時、僕の身体は、完全に復調し、
その時、ハルが、何でスグルさんを、あれ程、慕っていたか、僕は理解した、
スグルさんは、本当に凄い人だった。
全員が、テーブルの席に付き、スグルさんの『お茶』を飲み終えて、ルーナ殿下が、カップをテーブルに置いた後、殿下は、僕に、
「さて、ジェミ、見た所、顔色も良くなったし、君が、スグルから託された事で、まだ、皆に話していないことを、私達に話してくれないか、ジェミオ・バレットス、」
ルーナ殿下は、最後に、僕の名前をフルネームで呼んだ、
此れは、お願いじゃない、命令だよと、殿下は、言っている、
僕は、皆に向かって、静かに顔を上げ、
そして、決心した、
スグルさんから、
託された言葉を、
皆に、話す事を、
「僕は、以前、ハルが背負っている星の話と、僕達の運命の星が、ハルの星を含めた、『群星の星』だって事を話したよね、」
ハルは、頷きながら、
「ああ、僕が強くなると、皆が強くなる、その事だろ、現実にそうなったし、その説明には、たぶん、皆も納得していると思うよ、」
ダンも、頷きながら、
「理由は、どうあれ、私達は、強くなった、其れが、皆、一緒に強く成れる、其れは、素晴らしい事だろ、ジェミ、」
そして、僕も、ダンの言葉に頷き、
「そうだね、ダン、そして、ハルは、星に使命を託された『星に愛されし子供』、僕達、6人は、星から運命を託された、『星に愛されし民』、そして、今、リアも、僕達と同じ『星に愛されし民』になった、其れは、僕達、『星の使徒』が、遂に、7人、揃った事を意味するんだ!」
全員が、僕を見ながら、言った、
「『星の使徒』?」
僕は、再び頷き、
「『星の使徒』とは、僕達のように星の加護が有る人の総称だと、スグルさんが、僕に教えてくれた、」
「『星』が、僕達、『星の使徒』に託す使命や運命を乗り越える為には、僕達は、7人の『星の使徒』が揃う事が、とてつもなく、重要だった、」
僕は、此処で、言葉を切った、
「スグルさんは、僕に言った、7人目の『星の使徒』が僕達の前に、必ず現れる、現れた時、皆に、皆が背負っている星の説明をしてくれと、」
僕は、目を閉じた、
「もしかして、7人目は、現れ無いかも知れない、その場合は、たぶん、其の守護星は、間違いかも知れない、だから、7人目が現れた時にしてくれと、」
僕は、目を開けて、リアを見た、
「そして、今、僕の目の前に、7人目の、『星の使徒』、『星に愛されし民』、リア、君がいる、」
僕は、続ける、
「だから、今こそ、僕は話そう、スグルさんより、託された、僕達の『星』の真実を、」
僕は、朝の天空に輝く柄杓形に並ぶ、7つの星を指さしながら、
「スグルさんは言った、あの、7つの星は、世界の中心を守護する星群であり、世界の危機に現れる星々、其の名は『北斗の七星』!!!」
「そしてそれこそが僕達の星であり、僕達の『守護星』だと!!!」
ダッ、ダッ、ダッ、ダッ、ダッ、ダッ、
全員が、立ち上がり天空を、星を見上げながら、同時に声を出した、
「『北斗の七星』!!!」
「そうだ、あれが、『北斗の七星』」
そして、僕は、一番左の一際、明るい星を指差し、
「あの星が、ハルの守護星、世界を滅ぼす戦いに、絶対、負けてはならない戦いに、世界を救う為に六星を率いて現れる星、破軍星!アルカイド!!」
その時、ハルは、目を見開き、右手には、小剣となった、『破星の剣』を、硬く握り、呟く、
「破軍星、アルカイド、」
その瞬間、星は、更に輝きを増し、『破星の剣』もまた、光輝く、
星は、ハルに答えた。
僕は、続ける、その右に輝く星を指しながら、
「あの、星こそが、ダン、世界の危機に、真っ先に立ち向かう、英雄にして、勇猛なる世界の希望の星、ミザール、ダン、君の守護星だ。」
ダンも、また、茫然と、天空を見上げ、
「英雄の星!・・・私の星!!」
その時、右手に持つ、剣に姿を変えた『月下の剣』が、光輝き、天の星、ミザールも、また光、輝く。
ダンの星もまた、彼に答えた。
僕は、エミを見た、エミは、両手で、エミの『星具』、『星時計盤』を握り締めて、僕を見ている、
「エミ、ダンの隣りに有る『星』が、君の星だ、名前は、アリオト、」
エミは、直ぐに、天空を見上げ、『星』を見て呟く、その瞳を輝かせながら、
「アリオト、私の『星』!」
僕は、頷く、
「そうだよ、厳粛なる時の守り手にして、時の使い手、其れが、アリオト!」
その時、『星時計盤』の杖頭の時計の飾りが光輝き、其れに答えるように、アリオトが光瞬く、エミは、嬉しそうに、
「ジェミ、聞いて、私も、強くなったんだよ、時を、時を5分間、戻すことが、出来るようになったんだよ!」
えっ!
時を、戻せる!
ハルも、頷いて、
「そうだ、ジェミ、エミは時を戻せるようになった、僕達は、不利な事があったら、5分前から、やり直せるんだ、」
・・・
皆、確実に強くなってる、では、僕は、
僕は、首を振った。
僕の事は、後だ、先ず、は皆に、皆の運命を話す事が先だ、僕は急いで右端の星を指しながら、アンリに言った。
「アンリ、あの星は、英雄が光なら、英雄の影となる星、世界の驚異に、その鋭い牙で先陣を切って戦う星、『孤狼星』、ドゥーベ、君の星だ、」
アンリは、両手に双刀、『星狼の双剣』を握り締め、
「ドゥーベ、」
相変わらず、言葉は、少ない、でも、瞳は輝いている、そして、星の輝きに、彼女の『星狼の双剣』も、反応している、
オルが、アンリに声を掛けた、
「美しい輝きだね、君の星にピッタリの輝きだ、」
?
アンリ、頬を赤らめてないか、えっ、エリンさん、何か、機嫌悪い顔してない、
僕は、急いで、オルに話を向けた、
「オル、その、ドゥーベの下に有る星が、君の星、知識と知略を司る『星』、メラク、」
オルの、目に取付てある、彼の『星具』、『水星の片眼鏡』が、そのレンズに、美しく輝くメラクを映し、その星をレンズ越しに見た、オルは、
「なる程、知識と知略、良い言葉だ、」
オルは、自分の星の存在を知っても、冷静だ、普通にアンリを口説いてるし、彼は、取り乱すことってあるのか、
流石、クラス一番の秀才だ、
僕は、ため息をついた後、リアを見た、
「リア、君は、自分の星が、分かる?」
僕は、もしかしたら、リアは、僕よりもっと本当の事を知ってるんじゃないか、そう思って、鎌をかけてみた、
「自分の星、たぶん、あの中心の星のような気がするんだけど、意味、も名前も分からない、私、『星学』は、習ってないから、」
僕は、リアが、嘘を言ってるとは、思えなかった、たぶん、リアは知らないんだ、自分の事を、
「じゃ、リア、君の『星具』の意味と、使い方は分かる、」
リアは、頷いて、両手の輝く腕輪を見せながら、
「ええ、此れなら、分かるわ、名前は、『金の錬金環』ね、右の腕輪で変化変形、左の腕輪で、増減加減が出来るみたい、」
変化変形、増減加減、創造の4要素、
やはり、メグレズ!
「名前は、メグレズ、創生の星、其れが、君の星、」
リアは、本当に知らなかったようで、
天を、メグレズを見ながら、
「私の星、・・・メグレズ、」
ふぅ、此れで、スグルさんから、皆に伝えてくれと、言われた事は、終わりだ、
その時、ルーナ殿下は、僕を見ながら、
「じゃ、ジェミオ、君の星の説明と、何故、君が、あんな無茶な事をしたのかを、教えてくれないか、」
・・・
まぁ、其れは、皆に言わなくちゃ駄目だよね、迷惑掛けたし、
「僕の星は、メグレズの右の星、フェクダ、財の『星』、」
ルーナ殿下が、驚いて、
「財の?知の星じゃないのか?」
僕は、首を振った、
「其れは、オルダスの星、メラクで、僕の星は、商人の星だと思います、だから、倉庫と移動の『星具』、『星の秘蔵庫』、『星の秘門錠』だし、僕の特技は、情報の収集と分析、其れに、交渉で、知識じゃない、」
ルーナ殿下は、ため息を付き、
「なる程、ジェミ、君は、商人と言うわけか、其れも天才級の、」
リアが、僕の手を握り、前に出て、ルーナ殿下に、
「ジェミは、本当に天才なんです、彼は高校生なのに、既に、億万長者なんです!!」
リア、億万長者って、其れは言い過ぎだ、確かに、投資はしてるけど、多分、あれは失敗だし、ほら、皆が、気の毒って顔してるって、
ルーナ殿下も、怪訝な顔で、
「で、その商人さんが、何で、あんな英雄のような無茶をしたんだ、」
殿下は、真剣に、僕に聞いている、
僕は、諦めて、殿下に説明する事にした、
横で、ローシィさんが、嬉しそうに、魔導本に記録してるし、
「僕は、自分自身が、皆と一緒にいる意味を確かめたかった、僕が、皆の荷物持ちだけの存在なのか、もっと違った役割が有るんじゃないのか、だから、僕は、確かめた、何を、どの位、僕が、取り込めるのかを、」
ルーナ殿下が、じぃーっと、僕を見て、殿下は、暫く、沈黙した後、口を開いた、
「分かった、で、ジェミ、今回の、此の『星の遺跡・神殿』の攻略で、君は、どの位成長したんだ、」
ルーナ殿下は、僕の成長を聞いて来た、
その答えを気にして、皆が、僕を見ている、
皆が、僕に、何を期待しているか、
僕は、知っている、
僕は、左手を水平にして、
「僕も、確かに、成長しました、収納量も、増えたし、収納力も大きくなった、そして、『星の門』も、」
僕は、『星の秘門錠』を起動させ、
『星の門』を開き、
「人が、一人、通れる大きさになった、僕達は、帰れます!!!」
僕は、皆に言った。