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愛する星に、願いを込めて  作者: Hs氏
星の子供達編
130/136

出来る、出来ないこと

「殿下、これをお飲み下さい、たぶん、少し、楽になると思いますよ、」


「ありがとうございます、オリフィ魔導医アウルベーレ、」


 私は、オリフィ様が、作った、赤い飲み物の薬を受け取り、恐る恐る、舐めてみた、


 オリフィ様は、笑いながら、


「大丈夫ですよ、殿下、ホルスト翁は、薬を苦く作って、患者クラートの表情を見る事が趣味の人ですけど、私は、出来るだけ飲みやすく、作りますから、」



 ・・・


 

 そ、そうだったんだ、


 ホルスト(じい)は、趣味が悪いです!


 私は、薬をもう一度、じっくりと見ました、


 うん、色は、綺麗な赤、大丈夫、苦く無い、よし、



 私は、意を決して、


 ゴックン!



 ん? 美味しい!!



 オリフィ様は、笑顔で、


「ね、美味しいでしょ、殿下、でも、リィディ殿下、全ての薬が美味しいとは、思わないで下さいね、美味しいと、身体が健康なのに薬を飲みたがる人も出て来るので、そうなると、薬も毒になります、だから私達、魔導医アウルベーレは、わざと薬を不味く作るんですよ、」


 其れは、聞いた事が有ります、特に、子供は、薬が好きになっても困るので、適度に不味く作ると、ホルスト(じい)は言っていました、


「・・・では、なんで、オリフィ魔導医アウルベーレは、私に、こんな、美味しい薬を、」


 オリフィ魔導医アウルベーレは、暫く、私の顔を見詰めた後、首を振りながらため息をついて、


「殿下、はっきり言います、貴女の病気は、私では治せません!」


挿絵(By みてみん)


 ・・・



 そうですよね、



 ウェルド公国一の、天才魔導医(アウルベーレ)、オリフィ様でも無理ですよねぇ、


 分かっていました。



 私の病気は、世界の病気、世界に起きた傷口から、世界をむしばむ病原菌が世界を侵蝕しているから、


 世界と繋がっているから、私も蝕まれている、



 其れが、『星の巫女』の宿命、


 オリフィ様は、苦しそうな表情で、


「殿下、貴女をおかしている『魔疾患アウル・デコール』は、今も、少しずつ広がっています、」



 ・・・



 その意味は、



「先生、其れって、私は、後、何年、生きられるのですか?」


 オリフィ魔導医(アウルベーレ)は、私の瞳を見て、


「リィディ、貴女、まだ、高校生パールバウゼよね、今、もっとも、人生が楽しい時、死ぬって言葉を軽く言える年じゃないはずよ!!」


 先生は、年下の高校生パールバウゼの私に敬称を付けることも止めて、私を優しく怒ります、


 先生の言葉で、私は、思い出します、


 私は、『星の巫女』である前に、


 高校生パールバウゼだったことを、



 まだ、恋もしていない自分を、



 私の瞳から、一筋の涙が、こぼれます、



「先生、私は、私は、『星々』を信じてます、毎日、毎日、星に願ってます、私を助けて下さいと、世界を助けて下さいと、願っているんです!!」



 先生は、暫く考えた後、



「世界を救う、・・・私は・・・、リディア、貴女が『星の巫女』になったてことは、ウェルド家が、宗教界を取り入れる為の政策、そう思ってた、でも、今、貴女の言葉を聞いて、貴女の『魔疾患アウル・デコール』意味が、何故、貴女への『霊視』が他の人と違うのか、・・・その意味が分かった気がする、」


 オリフィ先生は、首を振りながら、


「リディア、私は魔導医アウルベーレで、『星学』は、貴女のお姉さんの専門だから、私には分からないけど、魔導医アウルベーレとしてなら私の『霊視』で見た、貴女の『神魔糸アウル・グゥシー』は、赤く腫れているのが見える、貴女、今は、立ってるのも辛いはずよね、だから、貴女が、今、飲んだその薬は、その痛みを和らげる薬、此れが、私の出来る仕事、」



 ・・・



 確かに、気分が楽になってきました、



「リディア、貴女が、バルセリアに行こうと必死なのも、その『魔疾患アウル・デコール』と『星』が関わってると言うわけね、」



 私は、ゆっくりと頷きました。


「分かった、私も、貴女を止めません、但し、今の薬は、明日の昼頃には効果が消えると思うの、薬を作っておきますから、必ず、飲んで下さい、リディア殿下、貴女は、下手すると、その痛みと苦痛で、命を落とす可能性も有ります、良いですね、」



 私は、先生に感謝しながら、



「ありがとうございます、オリフィ魔導医アウルベーレ



 御礼を言った。





「そうか、やはり、君なら、彼女の『魔疾患アウル・デコール』をれる、そう思っていたが、彼女を君にせて正解だったなオリフィ、」


れても、治す事は、出来ません、其れは、魔導医アウルベーレとしては、残酷な事です、ホルスト翁、」



「・・・なぁ、オリフィ、我々は、只の、魔導医アウルベーレだ、神でも、『星々』でもない、・・・出来ない事も有るんだ、」



 ホルスト翁の、その言葉が、私の胸に突き刺さり、私は、手を握り締めた。




 私は、リディア殿下をた後、彼女に軽い食事を勧め、殿下の就寝を確認した後、魔導通信アウル・オーレで、ホルスト翁に、殿下の病状を報告した。


 ホルスト翁は、私の報告に納得し、また私でも、リディア殿下の病を治すことが出来ないことを知り落胆したが、私自身が、其の事で苦悩している事に気付くと、彼は、彼の持論である『魔導医アウルベーレは神では無い』と言う言葉で、私を励まそうとした、


 私は、話題を変えるつもりで、


「翁、此の事は、殿下の父上でられる公王にも報告するのですか?」


 彼は頷きながら、


「ああ、公王は心配なされていらっしゃる、殿下の真実をる事が出来なかった、公家魔導医士団(アウルオルベーレ)と私に、公王は激怒するだろうが、仕方無い、真実を報告するのも、私の仕事だ、」


 る事が出来ない?


「ホルスト翁、ちょっと待って下さい、殿下を診る事が出来ないって、普通の『霊視』でも、彼女の体調の悪さは、分かる筈ですよ、彼女は、赤い、体調悪化の色をしています!」


 ホルスト翁は、悲しげに、


「オリフィ、やはり、君は特別だな、我々の『霊視』では、彼女が眩し過ぎて診る事が出来ないんだ、だから、公家魔導医士団(アウルオルベーレ)は、宗教界が、殿下に何かをしていると結論を下し、宗教界を非難する事しか出来なかった、」


「・・・其れで、宗教界は、なんと、」


 ホルスト翁は、ため息を付きながら、


「『星母の導き』の宗主、ハレセリア・オコナーが簡単に答えた、『星の巫女姫』だから、当然だとな、噂では、殿下は、枢密院と元老院の委員達に、世界を見せたらしい、」


 私は、唖然として、


「世界を、・・・ですか、」


「噂だがな、その後だ、私は、マーシ殿下に呼ばれて、リディア殿下を、君、オリフィにさせてくれと、頼まれた、」


 マーシが、私の事を、・・・彼女は、私の事を忘れてなかった、


「其れで、君から診た殿下の状態だが、このまま、何もしなかったとして、持ってどの位だと考えているんだ、オリフィ、」


 殿下の『魔疾患アウル・デコール』の大きさ、広がる進み具合、それらを、総合して判断すると、


「このまま、特別に『魔疾患アウル・デコール』の侵蝕が早まらなかったとして、持って、半年から1年、」


 ホルスト翁も、少し考えて、


「そうか、半年から、1年、もう一度、我々、公家魔導医士団(アウルオルベーレ)は、何が出来るかを、考える時間は、有るわけだ、」


「此の事を、公王に話すんですか、」


 ホルスト翁は、首を振りながら、


「いや、これは、私と君との個人的な話だ、公王には、君が、殿下をて薬を調合したと、真実だけを報告するつもりだ、」


 私も、頷きながら、


「それが宜しいと思います、ホルスト翁、」


 私は、そう答えて、ホルスト翁との魔導回路アウル・カルラを切った。



 翌日、魔導暦2035年6月2日の火曜日ヒョョルヤ、朝、7時、


 リディア殿下は、笑顔を私に向けて、バルセリアに向かって、出発した。





「流石、オリフィ先生だ、やっぱ、殿下を先生に診て貰って、正解だった、」


 リナ様は、上機嫌です、私が、先生の力で健康になった、そう、思っているようです、


 リナ様は、単純でとっても良い方です、ですから、無理に心配を掛けてはいけません、余計な事を言えば、きっと凄く心配を、絶対します、



 私の命が、限られている、



 そんな話を、私は、リナ様には、言えません、だから、私は、リナ様に笑顔を向けて、



「オリフィ魔導医アウルベーレ様から頂いた薬が、凄く私の身体に効いているんです、」



 私は、思い出す、先生が、別れ際に言った言葉を、


『殿下、私は、魔導医アウルベーレとして、諦めていません、貴女を治す方法が絶対有る、そう信じています、』


 私は、目を閉じて、その言葉を噛み締めます、



『世界ヲ治ス方法ガ、絶対ニ有ル、』




約束された子(プロスターチャー)


 貴方方あなたがたなら、きっと、




 その時、リナ様が、答えます、明るい声で、



「そうか。そりゃあ、良かった、リディア殿下、」



 私は、その言葉に、笑顔で返します。






 リィデリィア・ウェルド殿下を乗せた、魔導格闘機バルガオルアーレが白い糸状の雲を作りながら、西のゴードバーレン大自然渓谷から近付いて来るのが、裸眼でも見えるようになった、


「あれが、リディア殿下の乗る、魔導船バルガアーレですよ、エル学校事務長ハウゼ・オルパパーダ、」


 エルさんは、僕の声に慌てて、


「えっ、ええ、えっ、はい、デューレエード上級魔導士、」



 ふぅ、此れだよなぁ、やっぱ、皆、こう言う態度になるよなぁ、僕が、魔導省の上級魔導士だと分かると、


 だいたい、ルース団長は人使いが荒過ぎる、4月にバルセリアに行けって言ったのは、入学式の一週間前だし、昨日は、突然、リディア殿下の護衛って、


 なんで、リディア殿下は、急に、バルセリアに、此の、魔導高等学校アウル・バ・ハウゼに来るんだ、


 団長は、もう正体、バレても良いって言うし、



 あぁ、



 せっかく、先輩や、仲間も、出来て楽しかったのに、フェルシェール先輩は優しかったのに、



 バイバイ、僕の楽しい学校生活、



 でも、今は皆、避難して、此処にいないし、僕が魔導省の上級魔導士だって事、エルさんが黙っててくれたら、



 ・・・



 駄目だな、たぶん、ルース団長が許してくれないよなぁ、たぶん、次の仕事で、別の赴任地に飛ばされるだろうし、


「あのーぅ、あれ、ちょっと、大きくなるの早くないですか? デューレエード上級魔導士、」


「まぁ、あれは、ルーナ殿下が造った、魔導省の最新鋭の、魔導船バルガアーレですから、」



 ん、確かに早い、確か、操縦してんの、あの、リナ副将だよなぁ、


 やべぇ、『リキ』張ろう!



 と、僕が思った瞬間!



 ドゴォオオオオオオオオオオオ!!!



 轟音と豪風を撒き散らしながら、一隻の魔矢アウル・シィータのような魔導船バルガアーレが、バルセリア魔導高等学校アウル・バ・ハウゼの校庭に着陸した。



 すっ、スッゲェ!


 ルーナ殿下は、とんでもねぇの、造った!



 と、僕が驚いていると、魔導船バルガアーレの横っ腹の出入口ハッチが開き、リナ副将と、シルバーヘアーをショートボブにまとめた、女子高校生グーパールバウゼぼい娘が降りてきた、



 あれが、リディア殿下だ!



 僕とエルさんは、急いで、殿下達の前に向かった、


 リディア殿下は、僕を見ると、


「えーと、貴方が、『約束された子(プロスターチャー)』様ですか?」



約束された子(プロスターチャー)』?


 何の事だ、


 リナ副将が首を振りながら、


「殿下、違うよ、彼はアル、魔導省特務生アウルデラ・パールドウゼの上級魔導士だ、」


 リディア殿下が驚いて、目を丸くしながら、


特務生パールドウゼですか、」


 殿下が驚くのも無理ないよね、世間的には、僕達の事は秘密なんだし、小さい頃から、人殺しの訓練を受けてるなんて、言えないよね、


 僕は、殿下に答えた、



「はい、アルベスト・デューレエードです、殿下、ルース団長より、貴女の護衛を命じられまして、」


 リディア殿下は、驚いて、


「貴方が、私の護衛ですか?」


「はい、殿下、一応、私も、小学校デ・ハウゼの時から、魔導省にスカウトされ、訓練を受けてます、御安心下さい。」


 リディア殿下は、納得したようで、


「そうなんですか、で、貴女は、」


 エルさんが慌てて、


「はい、殿下、私は、此の学校の、学校事務長ハウゼ・オルパーダをしている、エルデシィア・ガーランドです、昨日、教魔省から、殿下が学校に来るので、私と学長に出迎えるようにと言われて、済みません、学長は、ちょっと遅れているようです、」


 リディア殿下は、困った顔で、リナ副将を見てる、ありゃ、迷惑って顔だな、リナ副将は仕方無く、


「事務方って奴等は本当に、なぁ、エルデシィア学校事務長ハウゼ・オルパーダ、民間人は、バルセリア退去命令が出ているはずだ、直ぐに、北か、南に避難してくれないか、何かあったら、貴女迄、俺達は守る必要が有る、」



 ようは、迷惑だって事か、仕方無い、


「エルさん、此処は、僕に任せて貰えませんか、僕が、殿下を、スグルさんの宿舎に案内しますし、今なら、殿下と学長は急げば、ベルトリア行きの魔導汽車バーガンドーレに間に合う筈ですよ、」



 エルさんは、頭の良い人だから、リナ副将が、何を言いたいのかを気付いて、


「はい、では、デューレエード上級魔導士、後は、宜しくお願いします。」


 そう、言って、急いで学長のいる校舎に向かって走って行った、


 エルさんは、結局、二度と僕の事を、あの優しい声で、アルさんとは、呼んでくれなかった。



 まぁ、仕方無いよね、



 ガチャ、


 リナさんが、デッカイ、ハルバードを担いで、


「じゃ、アル、スグルのいた場所に、案内してくれ、」


 ・・・


 リナ副将も、もう少し優しく、僕のこと、アル君とか、呼んでくれたら、好感度、爆上がりなのに、


 惜しい、良いスタイルしてんのに、


「どうした?」


「いえ、その、武器、必要なんですか?」


 リナ副将は、何、言ってんだって顔で、


「スグルと、ルーナ殿下が、消えた場所だぞ、何が有るか分からないんなら、それ相応の準備が必要だろ、アル上級魔導士、」


 僕は、其れは、ないよと思いながら、


「そうですか、一応、僕も、毎日、学校を調査してますけど、別に変わったことは、有りませんでしたよ、リナ副将、」


 リナ副将は、首を振りながら、


「昨日は、大丈夫でも、今日は危険、って、学校で習わなかったのか、アル魔導省特務生アウルデラ・パールドウゼ、」


「一応、習いましたけどね、ジュピーリーナ星翔部隊副将殿、」


「あのー、そろそろ、行きませんか、」


 リディア殿下が、困った顔で、僕達の会話に口を挟んできた、



 此の時、僕は、現実に嫌な予感がしていた、


 だから、リナ副将の言葉が気になって、つい、口調が悪くなった、


 たぶん、リナ副将も、僕と同じ気持ちだったんだ、と思う、



 そして、



 其れは、



 現実と、なった。



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