メグレズの星
魔導暦2035年6月1日の闇曜日、『約束された子』、彼等は『星の遺跡・神殿』の攻略を開始した。
先陣を切ったのは、高速に双刀の『星具』、『星狼の双剣』を己の武器とする、連撃の使い手、
アンリー・スウィート
続くは、英雄の星を背負いし、豪と剛の若き英傑、月の秘剣、『月下の秘細剣』を手に、数十の剣戟に、数百の、切断された魔牛人が、舞う、
その英雄の名は、
ダンバード・グラスタ
二人の活躍により、
『約束された子』は、『星の遺跡・神殿』の前庭を抜け、神殿の前室へと向かう、
その戦いは、激烈にして熾烈!!
彼等、戦う事、3時間、時刻は、夜の7時、
既に、千を超える、魔牛人が、魔石となり、その全てが、一人に、捧げられていた、
捧げられし、彼は、
絶対に負けることを許さない星を背負いし、星に使命を託されし者、
彼の名は、
ハルチカ・コーデル
その、守護星の名は、
破軍星!
星に導かれし彼等、まさしく、
破軍!!
ハルチカの全身を覆うは、数百度の熱気、その熱気が、『星の遺跡』の冷気とぶつかり、吹き荒れるは、瀑蒸気!!!
ハルチカはその瀑蒸気を纏い、アンリが、ダンが、オルが打ち洩らした数十の魔牛人を迎撃しながら、彼は叫ぶ、
『行ケェエエエ!!!』と、
膨大な、『星の力』が消費され、その量は、ハルチカの盟友、ジェミオ・バレットスが持つ、『星具』、『星の秘蔵庫』が集める、魔牛人の魔石だけでは足りず、
ハルチカ、『右星の扉』を完全開放させ、その、『破軍星の力』を、アンリにオルに、ダンに渡し続け、
その『力』を受けし、アンリー・スウィート、その瞳、真光に輝かせ、その紫の髪、神光に靡かせ、最早、『星狼の双剣』は、目で追う事の出来ぬ速さで、無限に湧き出る魔牛人の首を跳ね飛ばしていた。
その『力』を受けし、
そして、其れでもまだ足りず、ダンバード・グラスタは、閃光のエメラルドグリーンに輝き、豪閃を纏いし、『星具』、『星具』を振るも、その刀身は輝く閃光、その閃光に切断されし魔牛人は、轟音を発して、魔石になること、
その数、数百!!!
『約束された子』は、進撃する、数百、数千の魔牛人を魔石にしながら、
そして、
彼等は神殿の回廊を抜け、遂に、神殿中央、『試練の間』の門の前に到着した。
此処に来て、魔牛人の猛攻撃は、ピタリと止まり、
彼等は、試練のフェーズ1が終わった事に、初めて気付く、
時刻は、8時、攻略を開始して4時間、『約束された子』の疲労は、ピークに達し、滝のような汗と、そして、肩で息をしながら、彼等は巨大な門を見上げていた。
彼等は、思う、その先に有るのは、さら成る試練、
しかし、彼等に、引くと言う言葉は、無かった、
引いても、また、同じ事の繰り返し、ならば、進む、進み続ける!
自分達が、強くなる為に!!
彼等の意思は、固く、ダンバードが言う、
彼は、額の汗を拭いながら、
「此れより先は、たぶん、スグルさんが言ってた、『星の遺跡』の試練、フェーズ2だ、今迄と同じなら、私と、アンリ、エミを狙って来る魔牛人が3体、」
ダンバードが、此処で、言葉を止めた、
オルダス・ホールスが、うん? と言うような表情をして、友である、彼に声を掛けた、
「どうした、ダン、怖じ気付いたのか?」
ダンバードは、首を振りながら、
「違う、その逆だ、オル、」
オルダスが、ダンバードに聞き返す、
「逆?」
ダンバードは、右手に持つ、『月下の秘細剣』を見詰めながら、
「私は、私は、自分が強くなった!そう確信しているんだオル、だから、」
彼は、目の前に有る、巨大な門を見詰め、更に、その先に居るであろう、自分達を殺そうとする、自分達専用の魔牛人を想像し、
「だから、私は、相手が、たとえ、どんな敵だろうと、私は負けない!!!」
オルダスは、笑いながら、
「そうか、其れなら安心だ、私達は、先に進むことが出来るし、此の、『星の遺跡・神殿』を攻略することが出来る、」
ダンバードは、後ろを振り返り、破軍の星を背負いし、『星に愛されし子供』、
ハルチカ・コーデルを見る、
彼の顔は蒼白、流れ出るは、滝のような汗、されど、彼の瞳は、強い意思で光輝き、ダンを見詰め返す、
ダンバードは言う、
「心配なのは、ハル、君だ、、今迄、此処までの攻略で、かなりの『星の力』を使ったんじゃないのか、持つのか、」
全員が、ハルチカを注視し、エミリアが、ハルチカの腕を掴み、
「ハル、ハルが無理だったら、引き返そ、・・・私、其れでも良いと思う、」
ハルチカは、笑う、
『大丈夫、我ガ星二、負ケルト言ウ言葉ハ無イ、唯、勝ダケダ、エミ、』
エミリアは、ハルチカの顔を、その表情を、清々しい笑みを浮かべている、彼を見て、
「ハル、」
唯、名前を呼ぶだけ、
ダンバードは、ハルチカとエミリアの会話を聞き、その瞳を、コーネリア・ロンディーヌを気遣うアンリー・スウィートに向けた後、彼はハルチカの言葉を思い出し、コーネリアに聞く、
「リア、ハルは大丈夫だと言ってるんだが、君は、どう思う、」
コーネリアも、疲労の濃い表情を浮かべながら、
「大丈夫よ、ダン、まだ、私は魔導力が使えるし、其れに、今迄、此の先は、『星の力』を使う相手に対する敵が出現する場所、使えない私の事は、心配無用、」
「お嬢様、」
コーネリアは、アンリーに顔を向けて、
「ごめんなさい、アンリ、何時も、貴女ばかり、・・・私は、何にも、貴女のこと、手伝うこと、・・・出来なくて、」
アンリーは、慌てて、
「お、お嬢様、大丈夫です、私、頑張りますから!」
ダンバードは、頷く、ハルチカの心配は杞憂だ、此の遺跡は、私達、『星の力』を使う者だけを襲って来る、彼女はそんなに危険じゃないし、其れに、私達が頑張れば良い、
ダンバードは、オルダスに眼差しを戻し、
「じゃ、進んで良いな、オル、」
オルダスは、頷いて、
「あぁ、行こう、ダン、先頭は、アンリ、そしてダンだ、私とジェミ、リア、エミ、そしてハル、で、中に入ろう、」
「分かった、オル、」、と言いながら、ダンは、『試練の間』の大門の大扉を押した、
ギィイイイイイイイ
大扉の扉は、大きな軋み音を発てながら、ゆっくりと部屋の内側に開いた、
最初に、アンリー・スウィートが、一歩、部屋の中に入り、『星狼の双剣』を構える、
次に、『月下の秘細剣』を斜め下に構えた、ダンバード・グラスタがアンリーの後ろに控え、次に、入ろうとした、ジェミオ・バレットスに、オルダス・ホールスが声を掛ける、
「ジェミ、その、・・・あんまり、気負うな、ジェミ、」
ジェミは、オルに振り向いて、
「大丈夫だよ、オル、」
そう言った後、『試練の間』に入りながら、小さな声で、
「・・・たぶん、」、と呟く。
その後は、ジェミオ・バレットスの背中を見ている、コーネリア・ロンディーヌ、
その二人を、心配そうに見ている、エミリア・ドルネッサ、
「ふぅ、」
ひと呼吸して、心を落ち着かせ、『水星の片眼鏡』を、左手で触りながら、右手を光輝かせ、自分が、後方から皆を守る、そう言う気概を持って、オルダス・ホールスが、『試練の間』に入る、
そして、最後に、
全ての、星より使命を託された、
ハルチカ・コーデル
彼が、『試練の間』に入った瞬間、
『試練の間』は、天井高、9メータ以上、此れは、普通の建物の3階相当、広さは、50メータを超える、円形場、壁際には、コリント式の円柱、3層、規則正しく並び、
ハルチカが、『試練の間』に入った時、
彼等の、反対側に有る、大門から入って来る、魔牛人は、4体、
4体!
今迄と、違う!
一体、多い!!
オルダス・ホールスの背筋に、悪寒が走る、彼は、瞬時に相手を観察する、
並びは、前に、3、後ろに1、
前の3体は、右から、3メータ近い巨体、頑強な上半身、丸太のような腕、背には巨大な大剣、
あれは、ダンバードを狙う、魔牛人、
真中の魔牛人は、2メータ位の背に、全身が、靭やかな筋肉、上半身、下半身共に、バランスの良い体型、両手には、小刀、
明らかに、アンリーと対峙する為の魔牛人、
左側の魔牛人は、下半身が巨大で、右手には、3メータ近い槍を持つ、今迄の経験から、考えると、あれは、エミリアの『星の力』を破壊する為の魔牛人、
あのタイプは、アンリーやダンバードを軽く飛び越えて来るから、私と、リアで相手をしていた、
ならば、後方にいる4体目の魔牛人は、
此の魔牛人は、異常に太い腕を持ち、左手には細い長い板、
板?
最初に、動いたのは、4体目の魔牛人、細い板を持つ左手を、斜め上方に構え、素早く、右手を引く!
あの構えは!
魔弓!!
オルダスは、思い出す、かって北方共和国連合で見た、魔狩人が使っていた、武器、
オルダスは、叫んでいた、
「あれは、魔弓だ、皆、下がれ!!!」
板が、撓り、数百の輝線が左手から板に出現した瞬間、
全員が、後ろに下がろうとした瞬間、
ズバッシュ、ズバッシュ、ズバッシュ、ズバッシュ、ズバッシュ、ズバッシュ、ズバッシュ、ズバッシュ、ズバッシュ、ズバッシュ、ズバッシュ、ズバッシュ、ズバッシュ、ズバッシュ、ズバッシュ、ズバッシュ、ズバッシュ、ズバッシュ、ズバッシュ、ズバッシュ、ズバッシュ、ズバッシュ、ズバッシュ、ズバッシュ、ズバッシュ、ズバッシュ、ズバッシュ、
数百の黄金の輝線が、アンリーを、ダンバードを超えて、コーネリアに、ジェミオに、エミリアに降り注ぐ!
エミリアが、『星時計盤』を翳し、
ガッ、ガッ、ガッ、ガッ、ガッ、ガッ、ガッ、ガッ、ガッ、ガッ、ガッ、ガッ、
止まる輝線は、その数、数十、
ハルチカが、左胸を押さえながら叫ぶ!
『星ヨ!!!!!!!!』
膨大な星が、ハルチカの左胸に集まり、同時に、胸に切裂かれる激痛が走る、
その痛みにハルチカは歯を食いしばり耐え、彼は思う、自分が、エミリアを、ジェミオを、コーネリアを救うんだと!!
ハルチカは、必死だった、
オルダスは、右手を翳し、輝線を撃ち落とす、そう決意し、
アンリーは走る!
4番目の魔牛人を破壊する為に!
アンリーの意図を理解した、ダンバードは、彼女に追随し彼女に対峙する両刀の魔牛人を牽制する!
全員が、覚悟を決めた瞬間、
その時、ジェミオが、右手を掲げた瞬間、
スコン、スコン、スコン、スコン、スコン、スコン、スコン、スコン、スコン、スコン、スコン、スコン、スコン、スコン、スコン、スコン、スコン、スコン、スコン、スコン、スコン、スコン、スコン、スコン、スコン、スコン、スコン、スコン、スコン、スコン、スコン、スコン、スコン、スコン、スコン、スコン、スコン、スコン、スコン、スコン、スコン、スコン、
ハルチカが、オルダスが、エミリアが、その目を疑い、彼等は、一体、何が起きてるか理解、出来なかった、
嫌、オルダス・ホールス、彼は直ぐに理解した、『星の秘蔵庫』、ジェミは、彼の『星具』を盾として使っている!
4体目の魔牛人の攻撃は、更に、苛烈、激烈になり、もはや、魔牛人とジェミオが対峙する、そう言っても過言では無い、
そう言う光景が暫く続いた、瞬間、
アンリが、対アンリ用の魔牛人を回潜り、魔狩人の魔牛人の首を跳ねた瞬間、
バチン!!!!!!!!
一本の輝線が、
消す事の、出来ない、一本の輝線が、
ジェミオに向かう、
ハルチカは、走る、ジェミオを助ける為に、
エミリアは、『星時計盤』を握り締めて、叫ぶ、
止まれ!止まれ!止まれ!止まれ!
コーネリアは、全ての力を、持てる才能の全てを使い、ジェミオの前に『力』の壁を作る、
嗚呼、されど、黄金の輝線、止まらず、
ハルチカは、自分が夢を見ている、そう錯覚するほど、輝線は止まらず、『力』の魔導壁を破壊し、ジェミオの『星の保護』を貫き、
ゆっくりと、
魔導防護服に守られているジェミオの胸を、
ドシュツ!!!
撃ち抜いた!!!
コーネリアは、
その光景を見た瞬間、
決断する、
天に向かい、彼女は絶叫した、
「お爺様!私に、力を!!!」
天は、答える、
『ヨカロウ』
その時、天に7つの星が光、その中で一際、光輝く星は、メグレズの星、
七星、最後の星、その星を、背負いし人の名は、
コーネリア・ロンディーヌ
その両手には、黄金の腕輪、
『金の錬金環』
彼女は、ジェミオ・バレットスに駆け寄り、叫ぶ、
『星体錬成』!!!