表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
愛する星に、願いを込めて  作者: Hs氏
星の子供達編
125/136

責務

「えーと、此れに、乗るんですか、」


 リナ様は、笑顔で、


「ああ、此れに乗るんだ、リディア殿下、」




 6月1日の闇曜日デェョルヤ、午後3時、


 私は、公宮の魔導船発着場バルガアーダァドに、置いて有る、後ろに4つの筒が付いた、白い筒型の乗り物?を見て、つい、リナ様に尋ねました。


挿絵(By みてみん)


「まぁ、普通、魔導船バルガアーレは、水の上に着艦する事を考えて、船の形か、水に浮かぶ形が基本だから、コイツは、確かに変な形をしてるな、」


 私は、慌てて、


「変じゃ無いんですけど、見るの初めてで、その、」


 リナ様は、笑いながら、


「あはははは、そうだよな、本当に、大将は、変な発想するよな、此れ、全部、大将の考えなんだ、其れを実現したのは、チビウサだけどさ、」


 私は、驚いて、


「大将って、つまり、ルーナ姉様ですよね、姉様が此れを、」


 私は、ルーナ姉様の、発想力に驚き、


 やっぱり、姉様は、凄い、そう感心し、此の魔導船バルガアーレに乗る決意をしました。


「大将は、コイツを、魔導格闘機バルガオルアーレ、って読んでるんだ、すげぇだろ、空で、魔導格闘技アウルトゥオゥロセする為の、魔導船バルガアーレなんだぜ、」


 私は、更に驚き、思わず、口を開けてしまいました、


 空で、


 魔導格闘技アウルトゥオゥロセの為の、


 魔導船バルガアーレ



 魔導格闘機バルガオルアーレ!!


 

 横の入口から入ると、中には、縦にに二つの座席が有り、席が、何故二つ有るのか、不思議がってる、私に、リナ様に解説して頂き、


「大将が、言うには、複座式って言って、前が、船を操作する担当、後ろが、攻撃する担当なんだそうだ、ちなみに、姫の席は、後ろな、但し、操作はロックして有るけど、まぁ、触らないでな、」


 私は、大きく首を振りながら、リナ様が言う、後ろの席に座りました。


「それでな、此のベルトって言う紐をバッテンで取り付けて、」


 リナ様が、私が座った後、椅子の後ろからベルトと呼ばれる紐を出して、私の前でクロスに交差して、私を椅子に固定しました。


 ?


「あのぅ、此れは、」


 リナ様は、軽く手を振って、


「コイツが、動けは、分かるよ、殿下、」


 と、言いながら、リナ様は前の席に飛ぶように着席し、素早く、ベルトを締めて、


「コイツはな、1基の小型『リキ』魔導機、其れで、空に浮く、じゃ行くぜ!!」


 え?


 1基の小型『リキ』魔導機で浮く?


 動かないんですか?


 と、私が考えた瞬間、


 ガシャン!


 一回、大きな音した後


 スゥーウウウウウウ、


 私の身体が、持ち上がった、感じがして、


 目の前の景色が、みるみる小さくなりました。


「でだ、残りは、小型の『エン』の魔導機が4基、コイツが凄いんだ!」


 えっ、何が凄いんですか、と訊こうとした時、


「じゃ、行こうかぁ!!!」



 ドッカァアアアアアアアアアアア!!!


 

 轟音が、私の耳を塞ぎ、突如、身体を、物凄い力で座席に押し付けられた私は、驚いて、思わず、あらん限りの声で、絶叫していました!!!



 キャアアアアアアアアアアアア!!!







 白い、筋雲が糸のように長く伸びて、魔導船バルガアーレは、視界から消えた。


「行ってしまったな、」


 ダブレスト・ウェルドは、公務室の窓から、最悪の娘を乗せた魔導船バルガアーレが、飛び立ち、消え去るのを見て、ため息を付きながら、呟いた。


 その呟きを、後ろで聞いているのは、身長は平均の女性の身長からは、少し低く、シルバーブロンドの髪を肩ラインボブでまとめているので二十歳後半の年齢よりは若く見える、ウェルド家の長女で、


 公都の魔導大学アウル・ガウゼで星の動きを観測して未来を予測する星動学を学んだ事から、星の動きを観測して未来を予測する、『星務官せいむかん』となり、その能力で父のサポートをする為に、執政官になった。



 マシリィア・ウェルド



 愛称はマーシ、



「なぁ、マーシ、リディアは大丈夫かな、なんせ、あの娘は、身体が弱いし、其れに、今は、体調も良くないって本人も言ってるのに、」


 マシリィア・ウェルドこと、マーシは、自分の父が、妹を溺愛している事は、充分理解していたつもりだったが、実際、その姿を目にすると、


 情けない父の姿に、ちょっと、がっかりする、マーシだった、


「其れで、公王様、私に、用とは、」


「ん、」


 ダブレストは、長女のマーシの、素っ気ない態度に、何時までも、リディアが居なくなった事に、メソメソしている自分に、マーシが、怒っている事に気付き、


「あぁ、マーシ執政官、済まない、」


 一応、娘の前で、取繕った後、


「実は、今日の審議会での議題にするつもりだったのだが、バンラシアにちょっと問題があってな、」


 マーシは、少し考えながら、


歓楽大都市オルガルマーダバンラシアですよね、彼処あそこで何か、あったんですか?」


 ダブレストは、手に持つ書類を見ながら、


「あぁ、今回の非常事態宣言で、彼処あそこも、一応、閉鎖したんだが、」


 マーシは、頷きながら、


「賢明な判断だと思いますが、其れは公民にも、事態の重要さを示す、良い機会チャンスだったと思いますし、」


 ダブレストは、マーシに書類を渡しながら、


「ただ、その事で、彼処あそこ高級宿バルドンが何件か廃業になってな、」


 マーシも、負の影響に気付き、


「まぁ、廃業となれば、其処で働いていた者も解雇されるから、治安の悪化と、其れに、歓楽大都市オルガルマーダ開催の陳情が結構、此方こっちに沢山、上がって来て、魔総省も困っておった。」


 ダブレストの話に、マーシも納得して、


「そう言う事ですか、しかし、実際、歓楽大都市オルガルマーダを再び開いたとして、大魔虫ガアウル・バーズが、国中を蹂躙じゅうりんしようとしている時に、呑気にバンラシアへ旅行に来る人等、いるんですか?」



 ドサッ、



 ダブレストは、自分の公務椅子に深く腰掛けた後、


「其処なんだよ、儂も、そう思っておった、」


 マーシは、父の次の言葉を待った、


「処がだ、今回、あのシュタイン・バーグが、その廃業した、高級宿バルドンを全て買い取ったんだ、」


 マーシは、読んでいた書類から、目を上げて、


「シュタイン・バーグ!あの、シュータルグループ総帥ですか?」


 ダブレストは、頷きながら、


「そうだ、その報告書に記載されている、人物は、シュタインの事だ、」


 マーシは、首をかしげながら、


「・・・変ですね、彼は、無駄な事には一切、金を出さない、ケチで有名な奴ですよ、だから、一代で、シュータルグループを我が国の上位企業バ・ダルドに成長させた、そんな老人が一体なんで、廃業した高級宿バルドンを、」


 ダブレストも、その意見に同意するように、


「確かに、彼奴あいつはケチだった、だから、税魔省は奴からの取り立てには、凄く苦労していたんだが、だがな、マーシ、シュタインは、今年の3月、死に掛けて、4月に、奇跡的に回復した、其れから、奴は変わったらしい、」


「変わったんですか?」


 ダブレストは、相槌しながら、


「そうだ、税魔省の担当官が驚いたらしいんだが、シュタインは、もう、三年分の税を支払ったらしい、」


 マーシは、驚いて、


「三年分んて、其れって、」


「まぁ、多額の金を国に寄付したって事だ、」


 マーシは、更に驚いて、


「ドケチ王が、寄付!!!」


 ダブレストは、日頃、冷静で、余り感情を表に出さない、長女の驚く顔が、面白くて、


「其れにな、お前が言う、その『ドケチ王』がだ、態々(わざわざ)自費で、魔導船バルガアーレ迄買って、北部の『星の遺跡』を歓楽村オルムーダにしたらしい、」


 マーシは、更に、目を丸くして、


「えっ、『星の遺跡』が、歓楽村オルムーダって、彼処あそこには確か、頑固な先住民の、『守り人(ガールサディア)』達が管理していて、彼等は余所者を嫌っていましたよね!」


 ダブレストは、ニヤニヤしながら、


「やっぱり、マーシ、お前は、三流誌、読んで無いなぁ、結構、一月前、広告とか、ニュースとかで、大騒ぎしてたんだぞ、」


 マーシは、顔を真っ赤にし、内心は、御父様、貴方が、遊んでばっかりだから、私は、忙しくて、世間の情報に疎くなるんです!


 とは、口に出さず、


「此の一月は、魔人騒動とかで、忙しくて、」


 と、鋭い眼差しでダブレストを睨みながら、一言、


 ダブレストは、これ以上、マーシをからかったら、マーシが切れる予感がしたので、真面目な顔で、


「まぁ、真面目な話、一応、シュタインは、商売する気は、結構、旺盛なようでな、奴が持ってる魔導船バルガアーレで、東地区の金持ちを、バンラシアに連れて来ると、言ってるんだが、確かその報告書の後ろの方に記載されてる筈だ、」


 マーシは、飛ばし読みで、その部分を確認し、


「其れで、バンラシアの高級宿バルドン、目的は、慈善事業?」


 ダブレストは、首をすくめて、


「奴が、何を考えているのかは、はっきり言って、分からん、ただ、金持ち連中は、退屈すると何するか、分からんから、賭博場を開催させてくれと、言って来た、」


 マーシは、納得して、


「やっぱり、金儲け、そう言う、奴ですね、シュタインは、」


 ダブレストは、首を振って、


「それがな、奴は、その売上の五割から、七割は、国に収めるって言ってんだ、」


 マーシは、驚いて、


「えっ、五割から七割って! 嘘ですよね、あのケチが!」


 ダブレストは、はっきりと否定し、


「嫌、本当だ、最後に、書いてあるだろ、数字が、三割が、最低の経費だと、其れは、税魔省も確認して、シュタインは利益無しで此の事業を、国の為にする、そう言ってるそうだ、」


 マーシは、急いで、最後の数字を確認した後、


「・・・確かに、そう書かれてありますね、・・・で、どうするつもりですか、()()()


 ダブレストは、娘が、オトウサマと、強調した事に、公職の王と言う建前では無く、本音を聞かせてくれと、言ってるのに気付き、


「まぁ、俺としては、此の事業に許可を下ろすつもりだ、なぁ、マーシ、はっきり言って、今は、防魔省が金を湯水のように使ってるし、国の金庫は、空になりかけてる、此の非常事態に多額の金がはいる、此の提案は嬉しい、」


 マーシも、頷きながら、


「そうですね、非常事態だからと言って、重税は、百五十年前の反乱の二の舞になりますし、」


 ダブレストは、ため息を付きながら、


「・・・反乱って軽く言うなぁ、マーシは、まぁ、そうだな、・・・爺様は、公都の周りを埋め尽くした反乱軍を見て、心が病んで早死にしたと、親父も言ってたし、・・・」


 マーシは、黙って、公国を、一人、背負っている父を見続け、ダブレストは、そんな娘に、本音を話した事で落ち着いたのか、穏やかに言葉を続けた、


「そうなると、騒ぎそうなのが、宗教界、此の時期にケシカラン、と言うだろうが、まぁ、宗教界は、リディアの件で、借りを作ったから、説得しやすい、後、反政府分子は、魔導省が抑える、そして、問題は経済界だ、シュタインに許すなら、我等もと騒ぎ出す、」


「特に、シュタインと張り合う、レェーベン家は黙っちゃいないだろうし、更にそうなると、公民も、此の非常事態に、金持ちだけがと、不満が爆発する可能性が有る、」


 マーシは、首を縦に振りながら、


「そうですね、賭博場まで、開くとなると、騒ぐ者が出ますね、」


 ダブレストは、真直ぐ、娘を見ながら、


「だが、金は欲しい、分かるよな、マーシ、」


 マーシは、再び、頷いて、


「はい、()()()


 ダブレストは、はっきりと、


「だからな、マーシ、お前、三日後に、バンラシアで、シュタインを迎えて、奴の公国に対する貢献を讃えてやれ、そして、その場で、賭博場の売上を全額、国に寄越せと言うんだ、」


 マーシは、目を見開いて、


「全額ですか!」


 ダブレストは、頷き返し、


「ああ、そうだ、其れなら、丸く収まる、経済界も、利益が生ま無い事業には興味を示す筈がないし、」


 マーシは、呆れて、


「しかし、父上、其れでは、シュタインも、やらない、そう言うんじゃないんですか、」


 ダブレストは、自分の娘を指差しながら、


「其処で、お前の仕事だ、マーシ、シュタインを説得しろ、なんなら、一ヶ月後、『大魔虫ガアウル・バーズ』が駆除出来たら、1割は戻しても良い、」


 マーシは、1割って、父上、ケチですねぇとは言えず、ため息を付いた後、


「分かりました、しかし、父上、一月で、『大魔虫ガアウル・バーズ』が駆除出来るって信じてるって事は、やはり、父上も、『約束された子(プロスターチャー)』を信じていらっしゃるのですか?」


 ダブレストは、マーシに、何、言ってんだと言う顔で、


「信じてる分けないだろ、あんな迷信を信じてたら、国の運営なんかできゃしない、一月ってのは、此の状況で、やっていける期間だ、だから、いろんな手を打つ、魔導省のデレストには、軍艦を10隻、売れと言ってるし、防魔省の、オスマンには、『魔消粉デ・アウルパ』の対処を命じている、そして、お前にも協力を頼んだ、やれる事は、全てやる、其れが俺の仕事だ、」


 マーシは、暫く、父である、ダブレストを見ていた、


 父の仕事、



 国を思い、国を背負う事、



 父も、また、その責務を果たそうとしている、



 マーシは、公王である父に、深くお辞儀して、父の執務室から、出ようとした時、


「なぁ、マーシ、余り、表に出たくない、お前に、こんな事、頼むのは悪いと思っている、こんな事は、ルーナの仕事なんだが、彼奴あいつ、今、いないし、」


 マーシは、ダブレストに背を向けながら、


「ご安心下さい、御父様、私も貴方の娘、立派に、此の責務を果たします、」


 マーシは、そう、父である公王に告げて、



 公王の執務室を退出した。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ