ジェミの決意
ダンバード・グラスタは、右手に持つ、『月下の秘剣』を真直ぐ構えて、
「ハル、明日こそは、私達は、この、『星の遺跡・神殿』を、攻略出来る気がする、」
そう、僕に告げた。
ダンは変わった、体はスリムに引き締まり、無駄な肉は削げ落ちて、柔軟な其れでいて強固な筋肉が、体全体を覆っている、そんな体型に変わった。
僕達が、星の中心を訪れたのは、
魔導暦2035年5月13日、力曜日その日、僕達は、僕達の『星の力』を圧倒する魔導力を持つ、
コーネル・オリゴン
と、出会い、その時、彼に殺されそうになった僕達は、ジェミの機転で、『星の遺跡・竹林』に逃げ延びる事が出来た。
その次の日、5月14日の磁曜日、僕達は、新たなる覚悟で、『星の遺跡・竹林』を攻略を開始し、
その翌々日の、5月16日の雷曜日に、僕達は『星の遺跡・竹林』を攻略した。
僕達は、『星の遺跡・竹林』に三日、かかった。
次の日。5月17日の光曜日に、僕達は、『星の遺跡・竹林』で手に入れた、『星の遺跡の鍵』で、次の遺跡、『星の遺跡・山脈』に向かった。
その日、鑑定の魔導術を使い過ぎて、意識を失っていた、メルティスト先生が目を覚まし、僕達は、先生から世界の真実とスグルさんの真実を知った、
その時、僕達が先生から聞いた、重要な事は、僕達の世界が死に掛けている事、其れを回避する為には、スグルさんを、再び、僕達の世界に呼び戻す必要が有る事、
その為に、僕達は、コーネルの持つ、『魔の神の剣』を取り戻さねば成らない、そして其れは、僕達が、コーネルより強く成らなければ、ならない事だった。
その翌日の5月18日、闇曜日、真実を知った僕達は、更に、もっともっと強く成らなければならない、その強固な意思を持って、6番目の遺跡、『星の遺跡・山脈』の攻略を、僕達は開始した、
『星の遺跡・山脈』の試練は、魔鳥、僕達に要求される能力は、空中戦、今迄は、水の上に立つ事が出来るようになった僕達でも、空を飛ぶ事は出来なかった。
空中戦を教えてくれたのは、魔導省、飛翔騎士団、
サーンディ・アーランド 上級魔導士
サーディさんは、魔導術の『力』で空を飛ぶ事が出来る、更に、飛びながら、『雷』、『火』を使い戦う、其れが、魔導省、飛翔騎士団だと教えてくれた。
空中戦は、『星の力』で、空中に足場を作り、その足場を、跳躍で移動しながら、邪魔する魔鳥を排除して遺跡の中心に向かう、
僕達は、魔鳥との空中戦をマスターし、山脈の頂上に向かった、そしてフェーズ2で現れた、鳥戦士との死闘で、僕は、新たな力、『左星の扉』が覚醒した、
『左星の扉』の扉は現れただけで、完全に開いたと言う状態では無かったけど、
其れでも同時に、ダン、アンリ、エミも、覚醒し、ダンも、アンリも、まるで、本当に空中で飛んでいるような攻撃で、鳥戦士を下し、エミは、空中で、動きの激しい魔鳥を、より長く拘束する事が出来るようになった、
オルが、拘束した魔鳥を多氷弾で撃ち落とし、其の間を抜けて僕達は、山脈の頂上に着いた。
頂上に居たのは、魔豚の頭をした、巨人、其の巨人をダンが倒し、僕達は、『星の遺跡・山脈』を、5月23日の雷曜日に攻略した。
そして、其の時、初めて、僕は、僕達の問題点に気付いた、其れは、
コーネリア・ロンディーヌ、
リアだ、
彼女、リアは、上級魔導士ではあっても、僕達と違い、『星の力』は使えない事を、
僕達は、気付いた。
今迄、僕達の目標は、高校生の魔導格闘技大会に優勝する事だった、
だから、星の導きで、過酷な、『星の遺跡』への挑戦も、彼女が一緒に訓練する事に、誰も違和感を感じていなかった、
でも、今は違う、僕達の、『星託し定め』は、はっきりと示されている、だからこそ、進めば、進む程、過酷になる、『星の遺跡』の試練に、僕達は挑戦し、其れにより、僕達の『星の力』は強くなり、僕達は、成長している。
リアは、魔導の才能に恵まれ、高校生で、上級魔導士に成った、
でも、やはり、彼女は高校生だ、魔導省の上級魔導士と違い、戦う為に魔導術の訓練をして来たわけでは無い、まして、魔導術で、空を飛んだりして来たわけでは無く、戦う事も苦手だった、
彼女は魔導の才能で、空を飛べても、空で器用に戦え無い、そんな彼女が、本気で、『雷』、『炎』を使い始め、それ等の魔導術で、魔鳥の群体を相手にしている彼女を見て、
僕達は、彼女が、僕達と一緒に、『星の遺跡』に挑戦するのは、限界では無いのか、
僕は、そう思うようになった。
5月24日の光曜日僕達は『星の遺跡・洞窟』に移動した、
此の『星の遺跡』は、スグルさんと先生が行った、最初の『星の遺跡』を数に入れると、僕達が克服した7番目の遺跡になる、
もし、コーネルの話が本当なら、『星の遺跡』は全部で12有り、つまり、此の7番目の『星の遺跡・洞窟』は、僕達が、『星の遺跡』の半分を攻略し、『星の遺跡』の残り半分の最初の試練となる、
そして、『星の遺跡・洞窟』から、仕組みが大きく変わった、今迄、最初に襲って来た魔獣は、獣型から人型、魔人へと変わった、
彼等は、より知能が有り、武器も使用してくる、ようは、今迄のフェーズ2が、そのまま、フェーズ1になった、そう言う事だ。
フェーズ1で、洞窟の上下左右、ありとあらゆる処から、頭が、魔豚の魔人、魔豚人が僕達に押し寄せて来て、其れを相手にするだけで、僕達は、膨大な『星の力』を必要とし、
僕達は、此の、武器を使って襲って来る、魔人達に効率良く戦う必要があった。
そして、僕達に対人戦を教えてくれたのは、勿論、サーンディさんと、アンリのお祖父さんで、リアの家の執事長でもある、
エリンデゥナ・ウォルデュースさん、
僕達は、サーディさんとエリンさんから、対人戦を習った、
対人戦での重要な事は、武器を持った相手の対処、アンリは、小さい頃から、お祖父さんに教えて貰っているので、充分、上手く、動きに無駄が無い、
でも、僕達は素人だから、三日間、受け、流しからの反撃等の基礎を、みっちり教わり、此れは、ジェミも、オルも、エミも教わった、
ただ、リアは、エリンさんが遠慮したのか、僕達の練習を離れて見ているだけだった。
5月27日の力曜日、僕達は、魔人達の戦いに慣れる為に、『星の遺跡・洞窟』の攻略を開始した、
三日間の、基礎的な訓練だけでも、僕達は必死だったから、その成長は目覚しく、初回の挑戦に比べて、格段に、魔人達が使う、剣、槍、斧等の近接戦闘武器を回避する事ができ、
僕達は、『星の遺跡・洞窟』の中心へと向かう事が出来た。
初日は、スグルさんに変わって、僕達の指揮を取っている、ルーナ殿下の指示で、フェーズ2の、魔豚人が出現した段階で、彼等の能力を確かめた後、僕達は撤退した。
『星の遺跡・洞窟』でのフェーズ2は、今迄と変わらず、スグルさんが言っていた、アンリ、ダン、エミに対して、特化した魔豚人が三体現れ、僕達は、その三体の魔人に対処出来る事を確信し、
その翌日の、5月28日 磁曜日の午後、4時から、本格的に『星の遺跡・洞窟』の攻略を開始した。
その日、僕達は、彼等との激戦を繰り返し、フェーズ1を抜けたのが4時間後の午後8時、世界は、夕暮れ時から夜になる時間、しかし『星の遺跡・洞窟』では光る壁により、景色の変化は無かった。
そしてフェーズ2も、僕達は、予想以上に苦戦し、最後に、僕の『左星の扉』が半分開いた事により、ダン、アンリ、エミが、覚醒して、フェーズ2の超魔人、3体を撃退した、
フェーズ2の攻略に、僕達は、休憩を挟んで、3時間かかり、フェーズ3に挑戦する頃には、時刻は11時となり、
そして、僅かな休憩を取った後、僕達は、最後の試練、フェーズ3に挑んだ。
『星の遺跡・洞窟』の中心、フェーズ3で待ち構えていたのは、巨大な魔牛の頭を持つ、魔人、魔牛人
此の魔人を、アンリと、ダンが連携して、撃退し、僕達は、『星の遺跡・洞窟』を攻略した。
その時には、既に、時間は真夜中、日付けは、5月29日の錬曜日に成っていた。
5月29日の、その日は、全員がゆっくりと休息を取り、
次の日の5月30日、雷曜日、僕達は、『星の遺跡・神殿』に移動した。
『星の遺跡・神殿』は洞窟と同じで、フェーズ1では、魔牛人が相手だ、
本格的な攻略を、僕達は、明日にする事にし、僕は、その夜、ダンとオル、其れにジェミも含めて、男子、四人でリアの事を話し合うつもりで、オルとジェミを誘って、一人、剣の練習をしているダンの処へ向かった。
そして、僕は、冒頭の会話をし、
ダンは、本当に、変わった、僕は、上半身裸の彼の体を、見ながら、そう思った。
「で、話って、リアの事だろ、ハル、」
ダンは、月光で光輝く汗を拭きながら、話の本題に入るように、僕に振ってきた、
其処で、僕は、思っている事を、ダン、オル、ジェミに話した、
リアが、『星の力』を使えない事、リアの魔導力が、魔人達には不向きで有る事、このままでは、リアが危険である事、
「つまり、ハルは、コーネリア嬢を、私達のチームから外したい、そう言いたいんだね、」
直球で、言葉を返して来た、ダンに、僕は暫く間を取った後、
「・・・そうだ、ダン、僕は、リアにチームから、外れて貰いたい、」
はっきりと言った、僕の答えに、今度はダンが暫く考えた後、
「済まない、ハル、私は、前衛なんで、中衛、後衛に何が起きてるのかは、分からないんだ、指令塔のオルは、どう思ってるんだい、」
オルも、前から、此の問題は、気付いていた、
「うーん、難しい問題なんだ、ダン、リアの能力が、ドリス、レベルだったら、私も、外すべきと言えるんだが、リアは上級魔導士、戦力としては、ゼロじゃない、」
僕は、落ち着いた、オルの答えに苛つき、
「僕は、僕達の戦力の事を心配しているんじゃない!リアの事を心配してるんだ!!」
ダンもオルもジェミも、僕が声を荒げたので、黙って僕の方を見た、
僕は、言葉を続けた、
「いいかい、リアは、『星の力』を使えないんだ、其れは、スグルさんが言ってた、『星の保護』が無いって事なんだよ!此のままじゃ、リアは大怪我するし、最悪、死ぬ!!」
怪我と死と言う言葉に、オルとダンは驚き、ジェミは、表情を変えなかった、
僕は、そのジェミの態度に違和感を感じた、
ジェミらしく無い、ジェミなら、リアの事、もっと心配するんじゃないのか?
ダンは、首を振りながら、
「済まない、ハル、『星の保護』の事は、忘れてた、そうだな、そう考えると、確かに、これ以上、リアが私達と一緒に、『星の遺跡』を挑戦する事は危険かも知れない、なぁ、オル、君もそう思うだろ、」
オルも、考えながら、
「ハル、確かに、君の言う事は、分かる、此の『星の遺跡・洞窟』は、サーディさんのように、戦う事に特化した、上級魔導士じゃないとキツイ、私もそう思った、」
オルは、僕と同じ考えだった、
「だったら、リアの事は、」
オルが手を上げて、僕の言葉を止めた、
「ハル、その前に、『星の力』を使えないリアは、何故、僕達の『星の遺跡』攻略に付き合っているんだい、確か、誰も強制して無い筈だ、」
・・・
そうだ、確かに、何故、リアは、僕達と一緒にいるんだ?
オルは、言葉を続けた、ジェミを見ながら、
「其れに、ジェミ、君は、何故、リアの事を何も言わないんだ、君なら、リアの事、一番、良く分かってると、思ってたんだけど、」
僕達は、ジェミを見た、
ジェミは、暫く沈黙した後で、
「済まない、ハル、ダン、オル、リアの事は、もう少し、此のままで、やらせてくれないか、」
僕達は、驚き、オルが、ジェミに、
「勿論、その理由、私達に言う気は無いんだよね、ジェミ、」
ジェミは、頷きながら、
「ごめん、皆、僕も、確たる証拠は無いけど、リアが僕達の仲間だと言う事に、意味が有るような気がするんだ、」
僕は、ジェミの曖昧な言葉に腹が立ち、
「ジェミ!分かってんのか!!リアが、危険なんだよ!!怪我するかも知んないだよ!!」
ジェミは、静かに、決意を込めた瞳で、僕達を見た後、
「分かってる、でも、リアが、僕達の仲間でいる事は、凄く重要だと思う、だから、リアの安全は、僕が、僕が命を賭けて、守る!」
僕も、ダンも、オルも、言葉が、出なかった。
あの、大人しい、ジェミが、
命を賭ける、
その言葉の重みに、
僕達は、
ジェミに、
何も、言えなかった。