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愛する星に、願いを込めて  作者: Hs氏
星の子供達編
122/136

心の皇帝

 ゲルト様こそが、世界を救う、御方、私は、何時もそう思っていた、あの死ぬ瞬間も、死んで混沌の世界を亡者として徘徊していた時も、


 そして、再び、世界に引き摺り戻された時も、私の、ゲルト様に対する、その忠誠心、そして、その愛は変わらなかった。



かみの皇帝』



 ゲルト・サークル様



 嗚呼、私は、今も思い出す、あの方との邂逅を、ゲルト様程に、高貴にして、美しく、神々(こうごう)しい方を、私は、かって生きていたあの時まで、出会った事は無かった。



 私は、生まれついて、魔導の才に恵まれ、成人したあと、魔導省の上級魔導士になった、


 仕事は、違法魔導士の処分、魔導省の上級魔導士は、司法資格が与えられ、自らの判断で、違法魔導士を処分出来る、


 その権限は、決して大袈裟な物では無く、相手は、違法魔導士、此方等こちらも命が懸かっている、油断したり、弱かったら、自分が奴らに殺されてしまう、


 だからこそ、魔導省の上級魔導士であり、普通の魔導士の実力では生きてはいけない世界、その世界の中で私は生き残ってきた、三十五才の、あの方に出会う迄、多くの、違法魔導士をゴミ、虫けらと思って、殺しながら、魔導省の犬として。


 私の名前は、



 バルド・レェーゲン



 世間は、私の事を、


『暗殺者バルド』と呼んだ、



 ゲルト様との、あの出合いは、死しても、なお、私の胸に、永遠に残る記憶、


 始まりは、公国の北方、最も、貧しいマーダドルベンラーズだった、


 北方の大都市ガルマーダストレリヤの更に北に有る、本当に小さなマーダだ、北方共和国連合との貿易で、成り立つマーダだが、貧富の差が激しく、住民の殆どが、北方共和国連合に出稼ぎに行く、下層労働者だった。


 そんなマーダだから、子供達の8割は、教育を受けれず、働いていた、


 その、貧民を救う為に、ゲルト様は私塾を無償で開き、その御気持ちに、感謝した、多くの金持ちが、ゲルト様を支援していた、


 最初の切っ掛けは、その金持ちからの、魔導省への通報であり、彼等は、ゲルト様の事を、おかしな魔導術を使う、たかり屋がいる、そう通報してきて、だが、彼等は、数日すると、皆、ゲルト様の偉大さに気付き、自分が間違っていた、そう言ってきて、魔導省への通報を取り下げる、そう言う事態が数度か、起きた事だった。


 流石に、魔導省も、事態が変である事に気付き、私に調査命令が下った、


 本来、調査は文官の仕事だ、だから、文官として、ナルセリアの三等書記官、



 フレデリック・サィファ



 が担当する事になり、


 其が、フレデリック、私と奴の、運命の出合いでもあった。



 何故、東の小さな村の文官が、北方のマーダの調査に任命されたのか、此れは、奴等、文官の権力争いと、縄張り争い、そして派閥と、更に下らない多くの理由、そして誰も、辺境の、出世にも繋がらない、嫌な仕事を引き受け無かったからだ、


 そして、その事が、ゲルト様に、大きな悲劇となり、


 その悲劇を防げ無かった、私の責任は、重く、死して、尚、私を苦しめていた。



 奴とは、ナルセリアで、合流し、二人で、魔導汽車バーガンドーレで北方のドルベンラーズマーダに向かい、


 その道中、話し相手が私しかいないので、退屈しのぎに奴は、自分の恋人とその恋人ととの未来を、私に語った、確か奴の恋人は、ナルセリアの家具職人で、名前を、



 ファーレゼ・コーデル



 と言った筈だ、


 奴は、この仕事で、魔導省から、特別手当が出る、そのお金が必要だから、この仕事を承けたと、


 そして、そのお金で、彼女と自分は結婚するんだと、


 私に告げた。



 結婚、死と何時も向かい合わせの私には、無縁の世界であり、その時の私は奴の事は、所詮は、文官、その程度の見方しか、しなかった。



 そんな下らない話をしながら、私と、奴は、出会った時から、三日後、ドルベンラーズマーダに到着し、そしてそのマーダで、私達はゲルト様に出会った。


 その時の、ゲルト様は、多くの民の前で、演説中で、


挿絵(By みてみん)


 その御姿を見た瞬間、その御声を聞いた瞬間、私は、ゲルト様の神々(こうごう)しさに、心を打たれ、その場で、地面にひざまずき、心の中で、ゲルト様に忠誠を誓っていた、


 更に私は、その時、ドルベンラーズマーダの全ての民が、ゲルト様に、私と同じ気持ちを抱いている事を知り、私は、確信した、



 この方は、『神』だと、



 だから、誰もが、ゲルト様を知れば、あの御方を愛し、あの方の崇高さ、偉大さに、平伏ひれふす、私は、そう思った。



 だが、奴は、違った!



 奴、フレデリックは、事も有ろうにゲルト様の事を、肥えた気違い魔豚アウル・ピーと言い放った!!



 其だけでも、奴は、死に値する、だが、あの時の私は、寛大だった、ゲルト様への暴言を許し、奴に、金を渡し、其で、好きな女と一緒になれ、だから、ゲルト様の事は、魔導省に報告するな、そう言ったのに、


 奴は、私の金を受け取らず、子供達の教育に熱心なゲルト様に対して、子供を狂戦士に育てて、国家への反逆を企てている違法魔導士だと、魔導省に報告してしまった。



 その報告書により、魔導省は動いた、多くの刺客が、魔導省から送り込まれ、私は、奴等を殺した、勿論、フレデリック、私は奴を、真っ先に殺すつもりだった、


 だが、奴は、奴だけは、殺せなかった、


 奴は、魔導術は、使い物にならない殆ど、ダメな奴だった、


 奴の秘術、『星の力』と言う、訳の分からない『力』により、私の『魔導術』は、全て通じなかった。


 ゲルト様は寛大であり、私に、そんな、者は、ほっとけと、一人の力で、何が出来る、あの男が、何をしようと我々には、10万の民の指示が有るんだと、おっしゃられ、私も、納得した、



 其が、間違いだった。



 其から、五年、ウェルド公国で、ゲルト様を指示する民は、50万、学生兵は、10万になった、


 勿論、我らを、『しん』の魔導術を使う害虫と呼ぶ、魔導省との戦いは熾烈を極め、我々は、魔導省の英雄、


 オーランド・グラスタ


 奴を筆頭に、三百人近い魔導省の上級魔導士を殺した。



 ゲルト様は、この戦いを、


『第一次魔導大戦』


 と呼び、魔導省との戦いで、我らの同士、1万が殺されたが、だが、奴等との戦いに勝利した我々は、裸の王となったウェルド公王を、その座から引き下ろす為に、我ら5万の同士、学生兵と共に、公都バルドリスを包囲した。


 この、ウェルド公王と、我らの戦いに、我らを指示した防魔省は動かず、諸外国との戦いばかりに国力を使い、民を無視し続けた、狂王ウェルドとその一族に、我らは、その命を持って、償いをさせるつもりだった。


 その夜、ゲルト様は同士に語った、世界は、私によって、統一される、ポワジューレとの『第二次魔導大戦』、その他の国の『第三次、第四次魔導大戦』をへて、その戦いによる多くの同士の解放をへて、世界は一つになると、


 ゲルト様は、世界の皇帝になると、


 おっしゃられた。



 バルドリスを包囲した、5万の学生兵は熱狂し、その夜空に、ゲルト様を称える叫びが、何時までも、木霊したのを、私は忘れない、


 私は、感激し、ゲルト様こそが、世界をべるのに相応ふさわしい、そう思いながら、泣いていた。


 

 正しく、『かみの皇帝』



 その時、奴、フレデリックが、我らの前に、たった一人で現れた、


 ゲルト様の前に、たった一人で、


 誰も、奴が、現れた事に気付かなかった、この私でさえ、



 奴は、言った、


『ゲルト、また、醜く、一人で歩けない程、肥ったんだな、その姿が、お前の末路って、わけだ、』


 私は、奴の暴言に、怒り、直ぐに奴を殺そうとしたのだが、ゲルト様は、そんな私を止めて、奴に語り掛けた、


『フレデリック、世界で、お前だけだ、私に、従わないのは、お前は、たった一人で、ウェルド公王を守るのか、あの男に、そんな価値が有るのか、軍艦しか興味の無い男に、私より価値が有るのか、』


 ゲルト様は、奴に聞いていた、


『確かに、公王も屑だ、だがなぁ、ゲルト、星がな、星達が、ダメだって言うんだ、世界を救うには、』


 『星』?


 『星』だと?


 そんな、迷信に、この男は、


 私は、奴を、はっきりと見た、


 奴の体は、引き締まり、瞳は、信念を表すように、光り輝いていた、


 私は、本能から、この男は危険だと思った、奴は五年前の、あの痩せた、事務方では無い、


 ゲルト様は、フレデリックの事を気に入ったのか、彼を説得しようとしていた、


『なぁ、フレデリック、私なら世界を救える、見ろ、今の私を、50万の民を救った、』


 フレデリックは、笑いながら、


『夢でな、だが、将来、ウェルド公家からは、本当に世界を救う方が、生まれる、あんたは、邪魔だと、『星々(ほしぼし)』が決めた、だから、ゲルト、あんたには消えて貰う、』


 ゲルト様は、笑った、


『フレデリック、消えるのは、お前だ、』


 そう言って、ゲルト様は、私達に殺せと命じた、


 その瞬間、私と5万の学生兵が、奴に襲い掛かり、奴は、



流れ星(ホールディ・セー)


 と言った。




 世界は、白光に包まれ、



 その瞬間、5万の学生兵と、私と、ゲルト様は、



 世界から、消えた。



 消える瞬間、



 私は、夜空を見た、満天の夜空から、万を越す、『星』が落ちて来るのを、



 その時、私は、理解した、


 我らの真の敵が、『星』達で有る事を、


 フレデリック、


 奴が、『星の子供』で有る事を、



 我らが、『星の子供』に、



 負けた事を、






 こうして、私は、世界から消え、世界と世界の狭間でさ迷っていた時、


 私は、巨大な力で、再び、世界に呼ばれた、


 私は、復活したゲルト様が、私達を世界に呼び戻した、そう思った、


 しかし、私達の前に立っている男は、ゲルト様では無かった、ゲルト様よりも、貧弱な男、


 私は、失望した、


 この男は、何故、私達を呼んだんだ?


 彼は、我らを『カチコミ』の為に呼んだと言った、


 同じ疑問を持った、『魔獣王スダルガ』は、彼に、聞いた、


『カチコミ』とは、何だと、


 彼は、平然と言った、魔導省と戦争する事だと、



 魔導省と戦争!!!



 我らは、興奮した、


 かって、ゲルト様も言った、魔導省と戦争すると、


 ゲルト様は、『魔導大戦』と言った、



 ゲルト様の予言、



『第二次魔導大戦』が、



 始まる!!!



 我らは見た、



 彼の、その姿の後ろに、薄く、限りなく薄い、ゲルト様の姿を、



 彼は、私達を、



『死瘴騎士団』と、呼び、



 名前を頂いた、我らは無敵、再び、我らは、魔導省に死を与えられる、


 では、私は、誰を殺せば良いんだ、


 彼は、『パラドロス』と口にした、


 私は、彼に聞いた、


『其ノ、『パラドロス』ヲ、始末スレバ良イノカ?』



 彼は、否定し、


 彼の、邪魔をする者、


『ジェミオ・バレットス』


 その者を、消す事になった、



 我らの邪魔をする者、


 間違い無い、


 奴は、奴等は、



『星の子供』!!!



 消さねば為らない、


 ゲルト様が、やがて、よみがえる日、奴等は、また邪魔をする、


 二度と、あのような、悲劇を起こさせない為に、


 だが、どうやって、奴等、『星の子供』を消すんだ?



 その時、私の目に、彼が持つ、『魔の神の剣』が止まった、


 あの、剣!!!


 あの剣なら、奴等を殺せる!!!


 間違い無い!!!


 欲しい、あの『魔の剣』が欲しい!


 私は、彼に頼んだ、


『分カッタ、デハ、ソノ得物ヲ、貸シテクレ、』



 しかし、彼は、私に、その得物を貸す事を嫌がり、その時、私は、仕方無く、魔の神に祈った、


『アノ、得物ヲ、私ニ、貸シテクレ、』


 その瞬間、私の手には、



 此は!



 彼は、はっきりと、『魔の神の剣』を手にしながら、


「ふざけんな、こりゃ、俺んだ、てめえに、やれっかよ!」


 と、言ったが、私は、可笑しくなって、彼に聞いた、


『?デハ、此ハ、誰ノ、武器ダ?』


 そう言いながら、私は、彼に、右手に持つ、『魔の神の剣』を見せた、


 彼等は、驚愕し、大騒ぎとなった、


 魔の神は、悪ふざけが好きだ、嫌がる事を、時に、したくなるようだ、神は、『魔の神の剣』を二つに分けて、片方を私に呉れた。



 此で、私は、『星の子供』共を、この世界から消す事が出来る、そう思い、


 私は、満足して、10人の配下と共に、『星の子供』共が居る、公国の東のマーダ、バルセリアに、剣の力を使い、向かった。



 もう、二度と、あのような、悲劇を繰り返さない為に、



 私は、そう決意した。

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