星の巫女姫
「バルセリアに行くだと!許さん!!」
「御父様、許されない事は、覚悟の上です、ですが、私の『星』が、私に、言っています、時が来たと、『約束された子』が集まると!」
「『約束された子』、そんな夢物語で、世界が救えるなら、我が国は、苦労してはいない、そんな事も、分からんのか!!」
「御父様、」
私の名前は、
リィデリィア・ウェルド
親しい人達は、私の事を、リィディと呼ぶ、
現、公主、ダブレスト・ウェルドの三番目の娘として産まれ、御姉様方と違い、幼い頃から、体が弱く、病気勝ちで、公邸より、表に出る事は少なく、
だから、私は、家族から、とても大切にされて育った。
そんな私が、8才の時、夢に星母様が現れ、現れた星母様の容姿は、とても、私の直ぐ上の姉、ルナリィア・ウェルド姉様に似ていた、神殿に飾られている星母様は、芸術家の創作だから、凄く綺麗な人の像になっているけど、
夢の中の星母様は、とても優しい、お母様、お婆様、そのような人だった、ただ、性格は、ルーナ姉様とは、違って、おとなしく、優しく、気弱そうな感じで、私に似ている、そう思った。
私の夢は、何時も同じ、月が美しく輝く夜の、花が咲き誇る庭園で、星母様と、他愛ないお話しをする事、私は、ルーナ姉様の事、一番上の姉様、マシリィア・ウェルド姉様、マーシ姉様、御父様、お母様の話をし、星母様は、愛された殿方の話をしてくれた、
その話を、従者の者に話すと、宗教界の方々に届き、私に、巫女姫になって欲しいと言う要望が上がり、私の体を心配していた、御父様は、最初は反対していたけど、宗教界の強い要望を断る事が出来ず、
私は、10才の時、『星の巫女姫』として、宗教界に入った。
その日の、夢は、満天の星が輝く夜空を、星母様と私は、見上げていた、星母様は、何万の星の中で、たった一つ動かない星、世界の星は、その星を中心に動いているけど、そんな、世界の中心の星を指差して、
『アレガ、貴女ノ星デス、リィディ、』
と、教えてくれた、
世界の中心の星、其が、私の星、
その星は、一際、星界で輝いていた。
私には、見えた、『私の星』を中心にして、一際、輝く柄杓形の七つの星が有る事を、私は、星母様に聞いた、
『星母様、あの星達は、』
星母様は、優しく微笑んで、星を一つずつ指しながら、
『アルカイド、アリオト、ミザール、メラク、メグレズ、フェクダ、ドゥーベ、貴女ヲ守ル星、『約束された子』』と、教えてくれた。
『約束された子』
星母様は、遠き憧れるような瞳で、
『我、国ノ宝ノ剣ヲ持チシ者コソ、ミザール、英雄ノ星ヲ背負シ方、』
囁いた、
『憧レノ君、』
星母が、憧れた、英雄の君、
その、『約束された子』の中にいる、そう私に、教えてくれた、
夢が覚めると、現実が動き、星界の星は、動かず、夜空に美しく瞬いているだけだった。
その日以降の私の日常は、普段は、公都の学校に通い、光曜日に、『星の信者』の方々に、夢で見た、星母様のお話しをする、其が私の1週間で、
その時話す内容は、本当に、他愛ない話し、其でも、信者の方々は、喜んで、私の話を聞いて下さり、私も、此のまま、本当に、学校を卒業すると、『星の巫女姫』が仕事になる、そう思うようになっていた、
あの、運命の日までは、
私が『星の巫女姫』となって以降、私の星の話しも、『約束された子』の話しも、二度と夢には、現れず、何時しか私は、あれは本当に夢だった、そう思うようになって、5年の歳月が過ぎ、私は15歳の、高校生になっていた。
私は、中学校を卒業し、公都の、魔導高等学校に進学し、私には、魔導の才能が無かったからC組となった、
代々、ウェルド家は、魔導の才能が無い、他の国では、魔導の才能が無い人物が、国を動かす地位に就く事は珍しく、
けど、公国は、世襲制、公家だけは魔導の才能は関係無く、高い地位に就いて、公民の為に働かなければならない、だから、私も、巫女姫として働いている、
ルーナ姉様も、魔導の才能は無かったけど、人を動かす才能が有る御方だから、魔導省で、華々しい活躍を為さって、公民に大人気となった。
マーシ姉様は、私達と違って、魔導の才能も優れていて、魔導高等学校、魔導大学を首席でご卒業なされて、更に、星学を勉強して、星読みの執政官、『星務官』と成られた。
2035年の3月22日、光曜日、その夜、私は夢を見た、満天の夜空に、多くの流れ星、其を見上げる星母が、泣きながら、
『アノ方ガ、アノ方ガ、戻ラレマス、東ノ地二、』
そう、呟いていた、
東へ行きたいと、
なら私が、東へ、行く!
私は、夢の中で、叫んでいた、
私は、直ぐに、飛び起きて、マーシ姉様の元へと向かった、その日の姉様は、仕事で、公邸には戻らず、隣接している、星務館にいらっしゃられ、普段は、決して、星務館には近付かない私も、
その日は、意を決して、姉様がいらっしゃる、星務館星務室を訪れ、マーシ姉様に、言った、
「姉様、姉様、星母様が泣いています!ある人が世界に戻って来ると!!」
その時の、姉様は、飛翔騎士団、団長、ルーフェンス・ガイアード様と何か御打ち合わせをしている最中で、
白髪をオールバックにし、その瞳は、冷たい赤い瞳の、ルーフェンス様は、氷のような瞳で、私を見詰め、
その瞳を見た私は、怖くて泣きたい気持ちになりながら、
「姉様、星母様が、東へ、行けと私に、泣きながら、言っています!!!」
その、私の言葉に、
マーシ姉様とルーフェンス様は、お互い、顔を見合せた後、マーシ姉様は、シルバーブロンドの髪を撹上ながら、
「リィディ、落ち着いて、聞いて、私達も、丁度、その事で、ルースと話してた処なの、」
姉様は、ルーフェンス様を、ルースと、気安く、愛称で御呼びし、私は、少し驚き、
「話して、いたのですか?」
マーシ姉様は、首を振りながら、
「勿論、リィディ、貴女を東に行かせるってことじゃないけど、今日、今、星が動いて、多くの流れ星が、東のバルセリア周辺に落ちた、」
えっ!流れ星!!
夢、夢じゃない!!
「じゃ!直ぐに、私、東へ、行かなきゃ、」
「リィディ、」
マーシ姉様は、私を、落ち着かせようと、私の名前を呼んだ後、
「リィディ、貴女、自分の立場を考えなさい、勝手に、貴女が東に行ったら、宗教界は、大騒ぎになるし、何万と言う信者が、貴女を追い掛けて、東に行っちゃうわよ、」
・・・マーシ姉様の言う事は、正しい、でも、
「でも、姉様、」
マーシ姉様は、右手を上げて、私が喋る事を止めた、
「はい、其処まで、良い、リィディ、此れは、危険な兆候かも知れないし、兎に角、高校生で、『星の巫女姫』で有る、貴女はダメ、御父様も、許さない、」
「じゃ、私は、」
マーシ姉様は、分かってる、そう言う表情で、
「だから、私とルースで話し合って、ルーナに行って貰う事にしたわ、」
えっ!
ルーナ姉様?
「でも、ルーナ姉様は、確か、北方に、」
マーシ姉様は、首を振って、
「ルーナは、もう、北方紛争を終わらせて、公都に向かってる途中、」
北方紛争を終らせた!
確か、1週間前、北方問題が有って、姉様が向かったのは、
もう、終わった!!
「リィディ、貴女も、驚いて、いるようね、ルーナは優秀よ、彼女の部隊も、どうやら、最強のようだし、今、武装魔導艦で、最速で、東に向かえるのは、ルーナの船しか、無いの、リィディ、」
ルーナ姉様、
確かに、ルーナ姉様なら、
今まで、防魔省が手こずった、逃げ足の早い、海賊を姉様は、退治し、更に、北方紛争まで、
姉様、凄い!
マーシ姉様は、微笑んで、
「納得したようね・・・でっ、リィディ、貴女の星母は、誰が、東の地に来ると言ってるわけ?」
姉様は、星母様の話しに、興味を持ち始めた、
誰って、此れって、
言って、良いの?
たぶん、信じないって思うんだけど、姉様は、ちょっと、疑わしげに、
「一体、誰なの?私の知ってる人?」
私は、言葉を選びながら、
「世界中で、有名な、伝説の人、」
姉様は、考えるように、
「伝説の勇者?英雄?」
私は、言う決心をした、顔を真っ赤にして、
「その勇者に、お尻を刺された、遇者、コーリン・オーウェル!」
その時の姉様と、ルーフェンス様の驚いた顔は、私は、忘れない、
二人は、真剣な顔で、同時に、
「コーリンが、戻って来たのか!!!」
と、叫んでいた。
その後、姉様と、ルーフェンス様は、私を星務室から追い出し、二人で、何か、遅くまで、御仕事をなされたようで、姉様は、翌日の夜の、夕食にも、姿を見せてはくれませんでした、
その日以降、御父様も含めて、公邸は、何か慌ただしさを、私は、感じたのですが、私が、何か、出来るわけでも無く、普通に、公都バルドリス魔導高等学校の一年生だった私は進級して、二年生になった。
2035年4月7日、火曜日の夜、その日、星母様が私に伝えた、私の星、『世界の中心の星』が、星界に、その姿を現した、
星が、騒ぎ、目を覚まし、直ぐに私は、急いで、公邸のバルコニーから夜空を見上げたその瞬間、私は、私自身の星が、天の星界に現れている事を知った。
その姿は北の空に、明るく輝き、全ての星が、その星を中心に動き出していた、星母様が仰られた、『世界の中心の星』、更にその星を回る輝く七つの柄杓形に配置された星、私は、その時、はっきりと分かった、
『約束された子』が、世界に降臨した事を、
世界が、大きく動いた事を、
そして、私が背負う星、『世界の中心の星』の意味を、
本当の意味を、知った。
『星界の中心に輝く星』は、私達の世界を意味する星、
あれこそが、私達の世界の星で有る事を、
私達の世界も、また一つの星であり、
星々は、私達の世界の星を中心に、回っている事を、
そして、その時私は、自分が、
世界を、背負った事を、
理解した。
その日の夢の、星母様は、何時までも、私を優しく抱き締めていてくれた。
その日、以降、私は、変わった、私は、世界を見渡すようになった、夢の中の私は、星母様と世界を見て歩くようになった。
人々の、星の願いも、私に届くようになった、世界の声を聞き、其処に住まう万物霊長の声聞き、星々の声を聞き、私は、学んだ、
この世界が、死にかけている事を、
世界の愛する神が、死にかけている事を、
神は、その星が産んだ、星の眷属、
その神を、救う為に、『約束された子』が、産まれた事を、
私は、行かなければならない事を、
この世界の為に産まれた、神を、
幼き神を、救う為に、
私は、世界の真実を学んだ。
私の変化を、目にした、
三大宗派の長が、
『星皇教会』、教皇、ベルドリ・マヒナーが、私の前に跪き、
『星母の導き』、宗主、ハレセリア・オコナーも、私に跪き、
『星導会』、会主、オレリヒ・スターベルは、私の前で、床に伏せて祈り、
三万の信徒が、私に跪き、祈った。
『星の導きを、』、『星の導きを、』、『星の導きを、』、『星の導きを、』、『星の導きを、』、『星の導きを、』、『星の導きを、』、『星の導きを、』、『星の導きを、』、『星の導きを、』、『星の導きを、』、『星の導きを、』、『星の導きを、』、『星の導きを、』、『星の導きを、』、『星の導きを、』、
その大星堂を揺るがす祈り、を聞き、
私は、決意する、
私の星の、声の、導きに、
私は、従う事を、
世界を救う為に、
私が、最初にする事は、『約束された子』を見つけ出す事、
そのヒントが、5月11日の闇曜日に発刊された、魔導新聞社ディ・プラドゥのローシィ・レーランド記者が書いた、C組の7人の高校生が、魔導格闘技大会東部地区予選で準優勝した記事、
其は、此の、魔の神が支配する世界では、有り得ない奇跡、正しく、
『奇跡のC』
全国の、高校生が、この記事を読み、此の7人に興味を持ち、私のクラスの皆も、此の話題で盛上った、自分達C組も、もしかして、彼等のように、活躍出来るんじゃないかと、
でも、其は違う、
私は、知っている、彼等が、『星の力』を、使った事を、
私は、『星の力』を使える、彼等こそが、
『約束された子』、ではないか、そう考えて、マーシ姉様に、相談した、
星務室でのマーシ姉様は、疲れたお顔で、私に、
「リィディ、・・・正直に言うと、『約束された子』に、大騒ぎしてんの、貴女だけじゃ無いのよね、『円卓の賢者』からも、星と彼等との関係の問合せが、ひっきりなしに、来てる、其が、今の現状、」
『円卓の賢者』、
姉様も、御父様も、加わっている、世界を動かす人達の集まり、
マーシ姉様は、ため息を付きながら、
「リィディ、貴女には、詳しく言えないけど、今、世界は、終末の予言で、上へ下への、大騒ぎ、だから、何か有ると、その真偽を確かめてくれ、って話しが来てるの、だから、」
マーシ姉様は、言葉を、区切った、
姉様は、終末も、『約束された子』も信じていない、
何故なら姉様は、知らないから、世界が終わりかけている事を、
この真実を、知っているのは、世界で、たぶん、私、一人、
私が、マーシ姉様に、御父様に、信徒に話しても、たぶん、誰も、信じてはくれない、たぶん、世間の不安を煽るなと、御父様は怒り狂う、
だから、私は、誰にも、この事は、言えない、
姉様は、暫く、考えた後、
「兎に角、リィディ、この問題は、丁度、バルセリアに、ルーナがいるし、ルーナに調査させる事にしたけど、彼女、今日、彼等と会ってるから、貴女の相談は、その後で良い?」
ルーナ姉様が、
ルーナ姉様が、私の変わりに、
彼等が、何者なのかを、調べてくれる、確かに、まだ、彼等が、『約束された子』かは、分からない、記者の嘘かも知れない、
私は、姉様の提案に納得して、ルーナ姉様の報告を、待つ事にした、
しかし次の日の5月14日、ルーナ姉様、姉様の護衛の上級魔導士、バルセリア魔導高等学校の八人の生徒と、一人の先生、そして一人の学校作業員が、行方不明となり、
その翌日の5月15日、錬曜日、私は、胸が裂けるような痛みで目を覚ました、体全体が怠く、熱が有り、私は、世界が何者かにより壊された事を知った、
最悪な事に、世界の傷口から、バイ菌のような、有害物質が世界に雪崩れ込んでいる事が分かった、
そのバイ菌は、世界を食い付くそうとしている、私は、自分の左手を見た、
左手は、紫色に変色していた。
その日、私は、世界の終わりが、早まった事を知り、大星堂に三大宗派の長を呼び、世界の終わりが始まった事を告げ、信徒共に、『星』に、『世界』に、祈りを捧げ、
翌日の、5月16日、世界から、12の村と、1つの街が消失し、
23,134名の人々が世界から消えた事を、私は、知った。
その翌日の、5月17日、御父様は、全国に、第一級戒厳令、第一級非常事態宣言を布告なされ、
その時、全世界は、『終わりの始まり』を知った。
御父様は、私に、世界を、我が国を襲った、化け物は、『大魔虫』と呼び、防魔省の最新兵器、広域殲滅魔導弾でこの世界から消し去る、と、私に話してくれた、
消し去る、其は、無理、
彼等は、世界の傷口が有る限り涌き出る、其に、彼等は『魔の神の力』では、消す事は出来ない、彼等は、『魔の神』を喰らう化け物、
彼等を消す事が出来るのは、『星の力』のみ、私は、そう『星』から告げられた、
けど、私は、御父様には、その事が言えなかった、御父様は、防魔省の軍力が絶対だと信じていらっしゃって、私が、その事を話しても、たぶん、子供の戯言だと言って、信じてはくれない、
最悪は、私を嫌いになる、
だから、私は、言えなかった。
防魔省の、軍艦の激しい、『大魔虫』への攻撃は、彼等を粉塵に分解し、その粉塵は、世界を覆うよに広がり、
私達の守護なる星、『太陽』迄、隠す程に世界に拡散した、
其と共に、私の胸の痛みは増し、息をする事も辛くなって、絶えず、咳き込むようになった。
世界は、着実に、病魔に侵され始めていた。
5月27日の力曜日、世界の異変を知った防魔省は、『大魔虫』に対する攻撃の中止を宣言し、其に対して、元老院と枢密院は、公皇である御父様に、東部の放棄を前提に、東部との境に、魔導省の千人の上級魔導士が、魔導障壁を作り『大魔虫』を隔離する事を、進言した、
そして、その翌日、5月28日の磁曜日、私は『星』の御告げで、『約束された子』が、もう直ぐ、世界に戻ってくる事を知った。
場所は、バルセリア魔導高等学校、
熱は、下がらず、立っているのも辛い、でも、私は、彼等に合いに行かねば、ならない、
私は、決心した、
世界を救える、彼等に、合いに行く事を、
5月29日、錬曜日、私は、公都を離れる事を、『星皇教会』、教皇、ベルドリ・マヒナーに、告げた、彼は、猛烈に反対したが、私の強硬な意思に屈して、許可を出した、
翌日の、5月30日の雷曜日、私は、『星母の導き』、宗主、ハレセリア・オコナーへ公都を離れる事に許しを請い、彼女は泣きながら、反対したけど、私は、熱心に説得して、御許しを頂いた、
翌々日の、5月31日、光曜日、私は、『星導会』、会主、オレリヒ・スターベルに、私は世界を救う為に、バルセリアの、魔導高等学校に行かねばならない事、其が、『星の御告げ』である事を、話した、
彼は、信徒は、何時迄も、私の為に、『星』に、祈りを捧げ続けた。
6月1日の闇曜日、私は、三大宗派の長達と、元老院、枢密院の皆様方、姉様、ルーフェンス様がいらっしゃる、御父様の公務室、公国最高審議室で、
私は、御父様に、バルセリアに行く事を告げた。