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愛する星に、願いを込めて  作者: Hs氏
バルセリア編
12/136

星のピアス

 俺は、地元のレストランで旨い飯と酒を飲もうと安宿パルドンのオヤジに紹介して貰った、飲食酒場レンドラで予約したんだが、


 ちょうど宴会を企画した此の国の軍隊である、『星翔部隊せいしょうぶたい』の方々とブッキングしてしまい、


 ひょんな事からその酒席に参加する事になってしまった。



 其処で、俺は極上に冷えた泡酒ド・レンと最高に旨い、上級野牛バ・コルゥモウの肉、上級肉バ・モウを食べさせて貰った。


 宴会だから、食べたり飲んだりするだけじゃ無く、バカ騒ぎするのは、何処の世界も同じだった。


 やはり、此の宴会でもバカ騒ぎが始まり、まず、前の世界のアイドルクラスの女の子達が踊ったり、歌ったりして、


 酔っ払った俺は、前の世界のノリで、ヒューヒュー、冷やかしたら、ルーナちゃんが、ちょっと冷たい視線で俺を睨んだ。



 ちょっと、下品だったかな?、自粛、自粛。



 そして次に、男性隊員の筋肉自慢を見た後、


 中央にテーブルが用意され、


 俺は、ロンゲルに、


「何が、始まるん?」


 と聞いてみたら、



 ロンゲルが太い腕を叩きながら、


上半身格闘技バートゥオゥロセだ!!」



「えっ、『パンツを下ろせ』って!」



 俺は、自分のズボンをしっかり握った、


 学生じゃないんだから、そのノリ止めてよ!!



 ロンゲルが、慌てて胸を叩きながら、


「どうして、そうなるんだ、いいか、上半身バートゥなっ、」


 ロンゲルが腕をくの字に曲げて、動かしながら、


「そんで、格闘技オゥロセな!」



 えっと、上半身を使って、腕をくの字にして闘う競技って、


 ・・・つまり、腕相撲アームレスリングって事?


 いやー、焦った、焦った、実際、ルーナちゃんのパンツを下ろしたら、



 ・・・



 ダメだ、考えるのは止めよう、ヤバイ事になる。



 ・・・



 リナちゃんのパンツは、



 ダメええええええええええだぁ!!


 はぁ、はぁ、はぁ、



 ロンゲルが不思議そうに、


「どうした、客人、」


と俺に聞いて来る。



 俺は、下半身を押さえながら、


「大丈夫だ、ロンゲル、問題無い。」


 とロンゲルに答えた。

 


 

 腕相撲アームレスリングに関しては、絶対にロンゲルの趣味だ、彼は、最強の勝者に渡す為の、賞品迄用意していた、



 ロンゲルが嬉しそうに、


「優勝者の賞品は此だ!」


 と言って彼は手にしている物を高くかざした。


 其は、小さなガラスの箱に入った二つのピアス、


 みどりの半透明な光輝く宝石が嵌め込まれた、



 『星のピアス』!!!



 俺は驚いた、『星のピアス』は二千年前の『星の大国』で、男が好きな女性にプレゼントした、ピアス。


 前にいた世界の婚約指輪のような物で、男が彼女に『星のピアス』を付けてあげて、そして求婚する。



 ロンゲルは、


「此は、此のバルセリアの中古市場で見つけた掘り出し物だ、綺麗だったんで、買った!」



 えっ、意味知らないで買ったの、



 彼は、全員を見ながら、


「野郎は、彼女に贈れ!所帯持ちは嫁さんにプレゼント!えっ!彼女がいないって、好きなに此れを贈れば直ぐにお前の彼女に成ってくれる事、間違い無し!女性は自分への御褒美だ!!!」



 ワァアアアアアアアアアアア!!



 歓声が起こって、場は凄く盛り上がった。


 ロンゲル、あおるの旨いなぁ。



 俺は、思い出した、あの日、俺は『魔神グゥス』、との決着が付いたら、ルーナに『星のピアス』を贈るつもりだった、


 そして、その事を冥界の星巫女(プルセスター)は知っていたんだ。


 彼女が俺の事を好きだとう事は、それとなく気が付いていた。



 だが、俺は、彼女を選ばなかった。



 バターン!


 バターン!


 バターン!


 バターン!



 腕相撲アームレスリングは、ロンゲルが圧倒的に強く、他の男性隊員では、彼の腕を一ミリも傾ける事は出来なかった。


 全員が、バターン!って音を立てて、机から吹っ飛ばされた。


 実に豪快な腕相撲アームレスリングだ、本当に上半身の力で最後は相手を投げ飛ばしている!



 男性隊員は、全員、ロンゲルに吹き飛ばされて惨敗、際どい闘いもあったが、腕と腕を置く勝負用の机は十個相当は見事に破壊し、


 そのたびに、ルーナちゃんは眉間に皺をよせて、ロンゲルに注意をしていたのだが、


 机の破壊が、五個を越えたら、ルーナちゃんはもう何も言わなくなった。



 ルーナちゃんの気苦労は絶えないようだ。



 女性隊員が全員、棄権したので、いよいよ、最後、副将のリナちゃんが椅子から立ち上がった。


 リナちゃんは、腕を、指をボキボキ鳴らしながら、ロンゲルの前に立ち、笑いながら、


「中将、俺の為に素敵なピアス、有難とな。」

 

 ロンゲルも負けじと、


「いやいや、此は、我が愛する妻の為に、負けませんよ、副将」


 二人は、ガッシリと手を組み合わせ、



 「じゃ、決着だ!中将!」


 「では、始めましょう!副将!」



 ダアーーーーーーーン!!!



 机が大きな軋み音を立てて、


 二人は硬直した、



 へぇええええええ、


 リナちゃん、スッゲエエ、



 幾ら、スタイルバッグンで筋肉が引き締まっているとは言え、自分のガタイの二倍は有る、ロンゲルと、互角とは、



 ウワアアアアアアアアアアア!!!



 会場もスッゴーーーく盛り上がっている。



 ロンゲルを応援する筋肉マッスルチームとリナちゃんを応援するチームが、二人に大声援を送っている。


 時が硬直して、二人の時間が止まり、ただ二人の組み合う腕の筋肉だけが、波をうつ。



 えっ!



 俺には、見える!



 リナの腕が、薄く、



 限り無く薄く、



 光り輝いているのを、



 あれは、星の光!



 そうか、


 そうう事か!



 リナは、自分では気が付いていないが、



 『星に愛されし子供(スタラブルチャー)』!



 今でも、今でも星の愛が、此の世界に届いてる!



 俺、少し感激した、



 俺達は、星を選ぶ事は出来ない、星々(ほしぼし)が人を選ぶ、


 人は、生まれた時に星に選ばれるかどうかで、運命が決まり、どの星に選ばれたかで、人生が決まる。



 俺は、多くの星の中の父なる星、『太陽ザ・サン』に選ばれた、



 その守護たる運命は、世界の守り手、



 そして、その時から俺の苛酷な運命が始まった。



 星の力を研ぎ澄まし、『太陽ザ・サン』からの膨大な力をかてに、長い修練の果てに、千の星剣を操り、万の星剣を作る、剣の皇帝と呼ばれるようになった。



 皇帝、此の言葉に、当時の俺は有頂天だった。



 だが、今なら分かる、当時の人々が尊大な俺に対して、どう言う意味で、皇帝と言う言葉を使ったかを、


 永い、星の力の無い世界の放浪が、多くの言葉の意味を、俺に教えてくれた。


 そしてその代償に、俺は多くの物を失った。



 その失った物の一つに、今、ロンゲルとリナが腕相撲アームレスリングをしている勝負台の隣のテーブルに置かれている、『星のピアス』がある。



挿絵(By みてみん)


 その輝きは、二千年の時を越えても衰えてはいない美しい翠光りょくこうを放っていた。

 


 俺は、泡酒ド・レンを飲み過ぎた。


 俺は、酔っていた。



 だから、自分の気持ちを押さえる事が出来なかった。



 あの、『星のピアス』は、かって俺がルーナに贈る筈だった、ピアス。



 あれは、俺の『星のピアス』だ、と思うよになった。


 再び、歓声と失望の声が上がり、

 


 ウワアアアアアアアアアアア!!!



 アアアアアアアア!!!



 ロンゲルとリナの勝負に決着が付いた、


 星の加護が少し足りなかったリナがロンゲルに負けた、


 リナの腕は勝負台に密着し、その上にロンゲルの腕があった。



 ロンゲルは、ニヤリと笑い、


「勝負付きましたね、副将。」


 リナは負けず嫌いだから、


「今回は、中将の奥さんに免じて、負けてやる、次回は、絶対に俺が勝つ!!!」


 二人は手を離し、ロンゲルはリナに向かって、


「はははは、副将、次回も、私が勝たせて貰いますよ。」


 と言いながら、テーブルに置かれた、『星のピアス』を取ろうとした時、



 俺が手を上げて、


「あのー、その勝負、俺も参加したいんですけど。」


 と、言っちまったよ!!



 シーーーーーーンン!



 会場は静まりかえった。


 ロンゲルは暫く俺を見た後、首を振りながら、


「其は、宜しいのですが、私は、手加減が出来ません、コウイチさん、貴方が万が一、怪我しても、責任は負えませんけど、宜しいのですか?」


 ルーナちゃんが心配そうに、此方を見てる。



 「大丈夫、問題無い。」


 俺は、大丈夫だ、君達レベルで俺を傷付ける事は出来ない。



 「仕方ありませんね。」


 ロンゲルは、『星のピアス』を取らず、もう一度、勝負台に戻って右手をくの字にして、勝負台の上にせた。


 俺は笑いながら、


「まぁ、余興だし。」


 と言って、右手を折りながら、ロンゲルの右手を握った。


「コウイチさん、本当に手加減しませんよ。」


 とロンゲルはもう一度、俺に念を押す。



「あぁ、分かってる、さぁ、始めよう!」



「では、」


「あぁ、」



 二人、同時に、



「ファイト!!!」


 と叫んだ瞬間、



 ダアアアアアアアアアアンン!!!

 


 ロンゲルが床に転がっていた。



 シーーーーーーンン!



 会場の静けさは、全員が何が起こったか理解出来ていない静けさ。


 ルーナちゃんも、その隣のメガネっ娘も立ち上がって此方こっちを見てる。



 俺は全員を無視して、『星のピアス』が置かれているテーブルに向かい、『星のピアス』を手に取る。


 『星のピアス』は、俺の星力に反応して、輝きを増していた。



「では、此は俺の物だ、此の御礼に、」



 まぁ、場が白けちゃったし、何かしねぇと、そうだ、エミちゃんやハルチカが喜んだ、あれやっか。


 アイスクリーム!


 でも、ミルク、と卵無いから、



 俺はボルに残っている泡酒ド・レンを見て、


 泡酒ド・レンのシャーベットで、



 よし、


 まず、全員のジョッキ(バカン)ボル星力ほしりょくを集めて、



 全員のジョッキ(バカン)ボル翠光りょくこうに輝き、


 更に、星界せいかいから星力ほしりょくを俺の右手に集め、


 俺の右手が翠光りょくこうで光輝く、



 全員が唖然として、俺を注視する中、俺は更に続ける、

 

 右手の星力ほしりょくを一端、解き放ち!


 砂糖は牧草の草花の蜜|とハーブの香りを星々(ほしぼし)に集めさせて



 よし!



 全員のジョッキ(バカン)ボルが半透明な翠色みどりいろに輝き、何百の細い輝線光がカップに回転しながら入り込む!



 シュウワアアアアアア!!!



 ジョッキ(バカン)から泡酒ド・レンと蜜糖とハーブの香り、そして星のスパイスが混ざって吹き上がり、


 全員が驚愕して、



「えっ!」、「わぁあ!」、「おぉおお!!」


 と奇声を上げた。



 そして、熱を星に捧げれば、


 ジョッキ(バカン)ボルの中が蒼く輝き、


 蜜糖を加えた、泡酒ド・レンが徐々に氷始め、



 ストップ!



 俺は此処で止める。


 泡酒ド・レンは白い冷気を放ちながら製氷菓子になっていた。



 会場からは、


「魔導士か?」、「魔導士様よ。」、「えっ、魔導?」


 等の会話が飛び交い、



 俺はニヤリと笑いながら、


「此は、俺の国のお菓子、シャーベットだ、どうぞ御賞味あれ。」


 ってな調子で格好良く言ったつもりだったんだが、



 ルーナちゃんは、


「奴は、スグルだ!!!全員奴を捕らえろ!!!」


 と怒鳴った!



 ええええええええええええ!!



 なんで?なんでバレタの!!



 捕らえろって!


 どうう事?



 二十人近い、筋肉男マッチョマンが俺に向かってダイブする!


 




「仕事を探してる?」


「あぁ、暫く此の街に入るとしても、ちょっとは稼がないとな。」


「・・・そうう場合は、街の中央広場にある、仕事紹介場カレンドダーに行け、日雇いの仕事も有る。」


「カレンダー?」


仕事カレン紹介場ドダーだ!!」


 ってなやり取りを、次の日、俺は安宿パルドンの親父としていた。





 あの時、俺は本能的に、自身の姿を隠す、『星隠し(ダークスター)』を発動した。


 『星隠し(ダークスター)』が発動したその瞬間、時はゆっくりと動き、俺は余裕で、飛び掛かって来る、二十名前後の筋肉男マッチョマンを避けて、店の外に出た。


 俺は星に守られているから、誰にも見えず、誰にも俺の声が聞こえない事をい事に、そのまんま、酔った勢いで、通りを歌いながら、街の商店街の屋根に登り、瓦の屋根の上で踊りながら、跳ね回り、屋根上の猫と追い掛けっこをしたりして、一人大騒ぎをし、


 やがて、疲れて、安宿パルドンの自分の部屋に戻ると、そのまんま、ベッドに倒れ込むように寝てしまった。




 次の日、俺は二日酔いと自己嫌悪に陥り、目が覚めた時には最悪の気分だった。


 手には『星のピアス』のケースを握り締めていて、此のピアスを見るたびに、ロンゲルに対して、すまないと思う気持ちで一杯になった。


 本当に大人気なかった。


 あれじゃ、まるで、始めて酒を飲んだ学生が大騒ぎしているレベルだ。


 どうしてこうなった。


 前の世界で、俺は経営者達に対して労働争議を起こし、その責任者として多くの人の生活を守ろうとして戦ってきた。


 最後に、結局、俺は負けた。


 その重圧の反動?


 確かに、今の俺には何の責任も無い。


 救うべき世界も無い、


 有るのは、僅かな金と自由、


 ・・・


 ・・・


 ・・・


 本当に、此じゃニートか、プーか、浮浪者になっちまう。


 取り敢えず、何かしないと駄目だ、


 例えば、働きながら、此の世界の事をもっと勉強し、此の世界で俺が何をしてくのかを決める。


 そうだな、まずは働くか、


 ってな事を考えて、


 俺は、安宿パルドンの親父に仕事を斡旋してくれる場所が無いかを聞いてみて、


 最初の会話となった。


 


 二日酔いで食欲の無い俺は、そのまま、安宿パルドンを引き払い、此の街の中央広場に向かった、


 街行く人に、仕事紹介場カレンドダーの場所を聞くと、中央広場の東側の建物だと、丁寧に教えてくれた。


 仕事紹介場カレンドダーは、三階建ての建物で、エントランスだけが古典主義の円柱コリント様式で、建物は白い塗り壁に黒い洋瓦の統一した様式にアクセントに赤いレンガを使ったデザインだ。


 昨日と違うのは、今日は、建物の廻りに大勢の人達がいる事だ。


 ?


 一体、何があった?


 俺は、不思議に思いながら、


 仕事紹介場カレンドダーのエントランスに向かった。

 

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