策謀
「でコーネル、此だけの軍勢を揃えて、次に具体的には、何をする気だ、」
シュタイン・バーグは、コーネル・オリゴンに、今後の予定を聞いた、
「あん、だから、魔導省と戦争するって言ってんじゃん、シュゥじい、カチコミ、戦争な、」
シュタインは、首を振りながら、
「コーネル、魔導省って言っても、全公国で、地域支部は4、街の支部で数百、派出所だけで数千、一体、何処の魔導省と戦争をするんだ、」
コーネルも、少し考えて、
「ルースだ、ルース・ガイアード、奴がいる魔導省と戦争する、ってことよ!」
シュタインは、考えながら、
「儂も、聞いた事はある、本名は、確か、ルーフェンス・ガイアード、通称、『闇のルース』、魔導省飛翔騎士団の団長、だが、飛翔騎士団は、魔導省の上級魔導士の所属部署で、彼等も全公国に散らばっているし、ルーフェンス事態、何処にいるのか、何をしているのか不明だ、」
シュタインは、コーネルを真っ直ぐ見て、
「そんな相手と、どうやって戦うんだ?」
コーネルも、そう言や、そうかって顔して、
「公都の本省を強襲するってのは、どうだ、」
シュタインは、少し考えて、
「・・・公都を、此処から、直接、行けるのか、コーネル、」
コーネルは、首を振って、
「其は、無理かな、何か、頭の良い俺が言うには、此の『魔剣』で行けるのは、バルセリ周辺と、俺の村、大都市ベルトリアぐらいだ、って言ってやがるんだ、」
「・・・東部に片寄ってるのぅ、何でじゃ?」
コーネルも、首を振りながら、
「何故かは、俺にも分からねぇって、よし、俺の村に戻って、魔導船で、公都の魔導省にカチコミを掛ける!」
シュタインは、目頭を押さえながら、思った、コイツは、本当に、只のチンピラだ、
だが、コーネル、彼の言ってる事は、ある意味で正しい、魔導省は、絶対に我等を生かしては、おくわけがない、其は、我々は、此の世界に来ても、あの魔導省の上級魔導士の対応でも分かるし、コーネルは既に、殺されかけている、
魔導省にとっては、儂等は、殺すべき害虫、絶対に殺しに来る、ならば、どうするかだ、
「分かった、コーネル、先ずは、儂等だけで、お前の村に戻るのは、どうじゃ、此の軍勢は、用意が出来たら呼び出す、出来るか?コーネル、」
コーネルは、額に手を当てて、
「ちょっと待ってくれよ、シュゥじい、頭の良い俺に、聞いてみっから、」
そう言うと、コーネルは暫く、一人言を言った後、
「出来るってよ、シュゥじい、で、其からどうすんだ、」
シュタインは、ニヤリ笑いをして、
「先ずは、公都バルドリスと、アブドラ大砂漠にある、歓楽大都市バンラシアとの、真ん中当たりにある、村を我等の拠点とするんだ、コーネル、」
コーネルは、不服そうな顔で、
「何で、公都じゃねぇんだよ、彼処には、元の俺のシマだってあんだぞ、シュゥじい、」
シュタインは、コーネルを諭すように、
「まぁ、聞け、コーネル、公都には、魔導省以外、防魔省の上級魔導士部隊、近衛師団がいる、公都で揉め事が起きれば、奴等迄動くし、更に、暴動鎮圧用の魔導機、数千が配置されている、」
コーネルは、えっ、てな顔で、
「暴動鎮圧用魔導機、そんなの聞いた事ねぇぞ、」
シュタインは、頷いて、
「当たり前だ、一般人には知らされて無い、150年前の魔導大戦後、その教訓として、密かに配置された、儂が知ってんのは、その魔導機を開発したのが、我が社の軍事部門だからだ、」
シュタインは、コーネルに、
「なぁ、コーネル、お前さんが、幾ら強くても、公都で魔導省、防魔省、更に魔導機まで、相手にしてたら、時間が掛かり過ぎるし、奴等も、お前さんに対する対策を打ってきて、お前さんがどんどん不利になるのが分かりきってる、」
此処で、シュタインは言葉を切って、
「ならば、公都の外で、魔導省だけを相手にした方が良い、近衛師団も魔導機も、彼等は公都の外には出れない、」
コーネルは、この丁寧な説明に、納得したのか、
「成る程、流石、頭が良い、シュゥじい、で、魔導省とは、どうやって戦争すんだ?」
「だから、村が重要になる、村民を追い出し、公都に行かせ、『違法魔導士』の噂を流させる、そうしたら、黙っても魔導省の奴等は、やって来るし、来た奴等を、コーネル、お前さんが片っ端から始末すれば、良い、」
コーネルは、喜んで、
「流石、シュゥじいだ、もっと前から、シュゥじいが、俺の相談役だったら、ガラハドス兄弟に、俺は、嵌められなかった!畜生、思い出すだけで、腹立ちやがる!!」
シュタインは、呆れて、
「コーネル、お前さんは、ガラハドス兄弟と揉めたのか、彼奴らは、魔導省の御用聞きだぞ、だから、公都の利権も一手に握れてるし、魔導省も奴等から甘い汁を吸ってる、そう言う関係を知らなかったのか?」
コーネルは、頭を掻きながら、
「ほら、シュゥじい、俺、力だけで伸し上がったから、そう言うの疎くて、其に、俺の回りの舎弟も脳筋ばっかだし、」
・・・
本当に、チンピラ、
公都には、こんなチンピラが、ウジ虫の如く、湧いて出る、そう言う奴等を始末する為に、魔導省はガラハドス兄弟を飼っている、全ては、公都の治安の為、
その兄弟が、手を焼いて、魔導省迄、動かした、このコーネルは、独学で、魔導を勉強したと言うし、やはり、天才だったのかも知れん、
もし、コイツが、ちゃんと教育を受けていたら、狩られる側では、無く、狩る側になっていた筈だ、
いや、今は、魔導省を狩る側か、
世界とは、皮肉な物よ、
「しゃねぇ、歓楽大都市を取り敢えず、俺のシマにすっか、」
「バンラシアか、まぁ、金は、必要だが、彼処は、パラドロスって男が仕切ってると聞いたぞ、」
コーネルは、少し考えて、
「『強欲のパラドロス』か、奴は、金に汚いだけで、小物だ、俺には、問題ねぇ、」
その時、白いフードを被った骸骨が、
『其ノ、『パラドロス』ヲ、始末スレバ良イノカ?』
コーネルは、骸骨を見て、
「ん、確かお前、ボルドだっけ?」
『我ハ、暗殺ノ、バルド、ダ、』
「えっ、そうなの、すまねぇなぁ、俺から見ると、おめぇら、皆、おんなじに見えるし、」
『カマワン、デ、誰ヲ殺ス、』
コーネルは、少し考えて、直ぐに諦めて、
「あぁ、パラドロスは、小物だし、利用価値が決まったらで、良いんだが、どうする、シュゥじい、あっ、ルースのヤロウは、俺が始末するから良いよ、」
・・・
丸投げ、
まぁ、良いか、
「デリカ、我等が今、立てた計画で、我等の障害となる者を、お前の未来眼で見るんだ、」
「ん、・・・」
デリカ・グランチカは、袖で涎を拭きながら、慌てた、
「な、な、なぁんなんだょじい、」
コーネルは、呆れて、
「何だって、デリカ、寝てたのか、」
「ね、ねぇてねぇよ!コーネとじいの話が、難しくて、寝た訳じゃないからなぁ!」
「お前なぁ、難しいって、俺だってシュゥじいの話、分かるぞ、だから、ガキは、ちゃんと、学校行けって、おりゃ言ってんだ、」
デリカは、ホッペを膨らませて、
「コーネだって、行ってないじゃないか!あたいだって、行かない!!」
デリカ・グランチカ
生まれた時から、立つことも、歩く事も出来なかった、薄幸の少女、その生涯は、ベッドで始まり、ベッドで終わる、そう言われた少女、親は、彼女を捨て、彼女は学校にも行けず、公共病院の大部屋の端のベッドで育った。
コーネルは、彼女に自分の人生を重ね、もう高校生の年齢の彼女に、小学校に行けと言い、二人の口喧嘩が始まる。
この話題になると、二人共長くなるので、慌てて、シュタインが止める、
「兎に角だ、デリカ、お前の未来眼で、儂等の邪魔をする奴が誰かを見るんだ、」
デリカは、シュタインを睨んで、
「良いのかじい、今、使うと、一週間は使えなくなるぞ、」
コーネルも、頷いて、
「良いよ、デリカ、見てくれ、俺達の邪魔する奴等をだ、」
デリカは頷いて、その後、天を見上げた瞬間、デリカの瞳の黒目が消え、青白になり、一人言を呟く事、十分、
「見えた、・・・コーネが逃がした、・・・彼奴等の・・・一人だ、・・・名前は、」
コーネルは、納得した顔で、
「俺を、殺すって言ってた、ガキだな、」
デリカは、ゆっくりと、首を振って、
「違う、その横の、奴、」
「ん?」
デリカは、瞳を閉じ、肩で息しながら、
「はぁ、はぁ、はぁ、此処までだ、名前は、」
「ジェミオ・バレットス!!!」
「?そいつが、俺を殺すのか?」
デリカは、首を振って、
「違う、何か、コーネが凄く怒って、そのガキの名前を怒鳴ってた、何か、コーネの嫌な事を奴が、やったみたい、」
コーネルは、少し考えて、
「俺の、嫌な事する奴、・・・まぁ、消えても、良いかな、じゃ、そいつで決定だ、バルド、そいつを消せ、」
デリカは、嬉しそうに、
「序でに、奴とイチャイチャしてる、金髪の女な、リアって呼ばれてる奴、そいつも消してな、」
コーネルは、呆れて、
「おめぇ、もしかして、私情、入ってねぇか?」
デリカは、再び、頬を膨らませて、
「入って無いもん、ちゃんと、見たもん!」
『分カッタ、デハ、ソノ得物ヲ、貸シテクレ、』
「えっ?」
「おぃ!」
「なんじゃと、」
コーネルは、怒りながら、
「ふざけんな、こりゃ、俺んだ、てめえに、やれっかよ!」
バルドに怒鳴った。
『?デハ、此ハ、誰ノ、武器ダ?』
バルドの右腕には、『魔剣』が、
シュタインが、驚いて、
「コーネル!此は、どう言う事だ?」
『魔剣』が二本、コーネルとバルドの手に、一本ずつ、
「ちょっと待て、『頭の良い俺』に、聞いてっからよ、えっ、そうなの、神さんが、・・・うん、・・・成る程・・・そうか・・・分かった、」
コーネルは、シュタインに向かって、巨大な6本の剣が刺さった、黒い巨大な山のような物体を指しながら、
「何だか、『頭の良い俺』が言うには、この神さん、ガキなんだそうだ、でな、判断が、面白いか、面白くないかで、神の力を使うから、まぁ、こう言う事も、有るって言うんだよ、」
シュタインは、びっくりして、
「な、なぁ、なぁんじゃと!!」
コーネルは、えっ、てな顔で、
「シュゥじい、そんな驚く事か?ガキの神の気紛れで、『魔剣』を、二つに分けてバルドに呉れたんだとさ、神さんがバルドを気に入った、らしいんだよ、」
気に入った、
其だけの理由!
気紛れ!
気紛れで、願いを叶える、
其が、神のする事か?
ならば、
「コーネル、じゃ、逆に、神の気紛れで、我々は消されるのか!!」
コーネルは、当然ってな顔で、
「『頭の良い俺』が言うには、昔は、そんな事もあって、だから、『星の民』が、あのコーリンの野郎が、神を寝かせたんだと、」
シュタインは、愕然とした、彼は、遥か昔、自分が、百の具魔ドルパーチと呼ばれた時代を思い出す、
かって、自分の仲間がある日、一瞬で消えた事を、また、見知らぬ仲間が一瞬で現れた事を、
あの時の自分は、知性が低かったから、其が当然だと思っていた、だが、今なら分かる、その危険性を、
背筋に、冷たい物が走り、
冷や汗が、滝のように流れ、
シュタインは、思った、
この神は、危険だ、
とてつもなく、危険だ!!
「コーネル!此処は、とてつもなく、危険な場所だ、他の奴等を、此処に来させては駄目だ!神に会わせては、駄目だ!!」
コーネルは、頷きながら、
「ああ、『頭の良い俺』も、そう言ってる、おぃ、バルド、おめぇ、その剣で、バルセリアの魔導高等学校に行って、ガキ、殺して来い、部下に10の魔導死、連れて行け、」
バルドは、ゆっくりと頭を垂れて、
『ワカッタ、』
そう言って、『魔剣』を振った瞬間、
バシュ!バシュ!バシュ!バシュ!バシュ!バシュ!バシュ!バシュ!バシュ!バシュ!バシュ!
バルドと10体の骸骨が消えた、
「さぁーてと、俺達も、村に戻っとすっか、魔導省の奴等と戦争すっ為にな、」
デリカが、嬉しそうに、
「やったあ!やっと、シャワー浴びれる!」
コーネルは、笑いながら、
「そう言やぁ、今日は、何日、なんだ、シュゥじい、」
シュタインは、胸ポケットから時の魔導機を出して、
「今日は、5月27日の力曜日だ、」
コーネルは、驚いて、
「そんなに、経ったのか、俺達が遺跡に入ったのが、4月15日、一月以上か、」
シュタインは、頷いて、
「たぶん、この地のせいだ、此処にいると時間の感覚が狂うようだ、」
コーネルも、頷いて、
「急いで、戻っぞ、」
そう言って、コーネルは、『魔剣』を振った瞬間、
バシュ!バシュ!バシュ!
三人は、『喪なわれし地平線』から、消えた。
そして、その地に、残るは、『混沌虫』に侵食され、後、一年の命の幼き、眠れる神、『魔神』のみ、
『魔神』は、眠り、夢を見る、
其は、幼き、神の夢、
切なき、神の夢、