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愛する星に、願いを込めて  作者: Hs氏
星の子供達編
118/136

開戦

 2035年5月15日、錬曜日レィョルヤ、ウェルド公国ゴードバーレン大自然渓谷の天空に、亀裂が生じ、その亀裂より、膨大な数の巨大虫形未確認生物が来襲、


 翌、5月16日の雷曜日ラィョルヤ、アースダコタ、及び、その周辺のムーダマーダが、未確認生物に襲われ、世界より消え、


 翌、5月17日の光曜日コゥョルヤ、ウェルド公国は第一級戒厳令、第一級非常事態宣言を発令した。



 5月18日、闇曜日デェョルヤ


 防魔省統合総司令部特務調査室による巨大虫形未確認生物の報告を元に、防魔省統合作戦本部は、この未確認生物を、『大魔虫ガアウル・バーズ』と命名し、『大魔虫ガアウル・バーズ』、掃討作戦が発令された。



 参謀本部は、ルーナ殿下が遭遇した、『魔人』と違い、『大魔虫ガアウル・バーズ』が不死でない事に、安堵した、


 不死で無ければ、圧倒的火力で虫を駆除すれば良い、そう言う結論に達し、


 まず、広範囲の殲滅戦の為、付近のムーダの民の避難の時間を稼ぐ為に、機動巡洋艦隊を先行派遣して、『大魔虫ガアウル・バーズ』の進軍を遅らせる、


 それと同時に陸戦隊の投入と、魔導省の協力によるムーダの民のマーダの非常避難施設への避難期間を、一週間とし、


 5月25日の闇曜日デェョルヤに、重戦艦隊を投入して、一気に殲滅し、殲滅後、重戦艦隊を持って、ゴードバーレン大自然渓谷の『大魔虫ガアウル・バーズ』の発生源で有る、亀裂を破壊する、


 この作戦名は、『大魔虫掃討戦ガアウル・バーズ・ケールドーテ』、


GABCガアベツェ作戦』と命名され、


 重要作戦執行日、D-デイは、


 5月25日に、決定された、


 5月19日、5時、東部方面艦隊司令部所属、


 ピースヨール・ルドリゲス中将を、艦隊長官に任命し、


 同7時、東部方面艦隊より13隻の機動巡洋艦、南部方面艦隊より、5隻、北部方面艦隊より、11隻、西部方面艦隊より、8隻、合計、37隻の、第一先行機動巡洋艦隊が、各方面艦隊司令部より発進し、


 同、10時、東部方面艦隊機動巡洋艦、13隻が、ゴードバーレン大自然渓谷東、オルセリア平原中央に到着した、


 ピースヨールは、平原を埋め尽くす、想像を越えて、世界を破壊尽くす黒い絨毯に愕然とし、作戦の早期開始を指示、


 同12時、南部方面艦隊より、5隻の機動巡洋艦が現場に到着した時点で、艦隊長官、ピースヨール・ルドリゲスは、


GABCガアベツェ作戦』


 の作戦開始を宣言、


 同日同時刻、18隻、324門の魔導砲が豪音と豪爆の炎に包まれた。


挿絵(By みてみん)


 ズドォオオンン!ズドォオオンン!ズドォオオンン!ズドォオオンン!ズドォオオンン!ズドォオオンン!ズドォオオンン!ズドォオオンン!ズドォオオンン!ズドォオオンン!ズドォオオンン!ズドォオオンン!ズドォオオンン!ズドォオオンン!ズドォオオンン!ズドォオオンン!ズドォオオンン!ズドォオオンン!ズドォオオンン!ズドォオオンン!


 この艦隊一斉艦砲射撃により、オルセリア平原は赤く染まり、数百、数千の『大魔虫ガアウル・バーズ』が黒い粉塵となり、それは、黒煙のように大空に舞い上がった。


 その光景を見た、ピースヨールは、旗艦ウォールドラス号、艦橋、艦隊長官席から、立ち上がって、大声で叫んだ、


「いけるぞ、諸君!所詮、あやつらは、唯の虫共、我等の敵では無い!我等の活躍に、万の公民の命が懸かっている!各員、一層奮励し、奴等を殲滅せよ!」


 この激は、全艦隊に流れ、士気は膨れ上がり、その攻撃は、昼夜休む事無く、続けられ、


 公国の大地を黒く染め続けた、黒い絨毯の動きは、確実に、鈍くなり始め、


 そして、破壊され黒い粉塵になった、『大魔虫ガアウル・バーズ』は、徐々に、大空を黒く染めていった。


 翌、5月20日、8時、北部方面艦隊機動巡洋艦、11隻、同日、14時、西部方面艦隊より、8隻が、オルセリア平原中央の作戦地点に合流した時点で、


 第一次先行派遣機動巡洋艦隊は、全艦、37隻揃い、666門の魔導砲の総攻撃が開始された。



 此により、数千の『大魔虫ガアウル・バーズ』は破壊され、『大魔虫ガアウル・バーズ』の進撃は完全に止まり、破壊された『大魔虫ガアウル・バーズ』から立ち上がる、黒い粉塵は、まるで逆大瀑布の滝のように、空へ、空へと吹き上がり続けた、


 第一次先行派遣機動巡洋艦隊の、猛攻は、翌、翌々日、5月22日迄、続き、


 同日、マールデヒダ・ウォールステン少将を艦隊長官とした、全43隻の、第二次先行派遣機動巡洋艦隊と交代して、此処に、第一次先行派遣機動巡洋艦隊の役目は、終了となった。


 第一次先行派遣機動巡洋艦隊の戦果を目にした、マールデヒダ艦隊長官も、ピーステェヨールの作戦を引き継ぎ、全艦隊による、一斉艦砲射撃を仕掛けた、


 第一次先行部隊より、遅れて発艦した第二次部隊は、圧縮した魔素エーテルによる魔導弾薬を充分に積載していたので、圧倒的火力による波状攻撃は、三日三晩続いた、


 地上ではその六日間の間に、防魔省陸戦隊及び魔導省の連携によりナルセリアムーダ、及びその周辺の村々の村民は、バルセリアへ、バルセリの南西、ドルセリアマーダ、更に西のマルドリアマーダも、その周辺の避難民の受け入れを開始し、


 5月25日、Dデー、広域殲滅作戦開始当日、その周辺の民の避難は、全て完了したとの報告が、第二次先行派遣機動巡洋艦隊に届き、


 艦隊長官、マールデヒダ・ウォールステンは、全艦隊に撤退準備開始を宣言しようとした時、



 彼女は、魔導通信越しに、防魔省統合総司令部を怒鳴った、


「Dデー延期だと!バカか!今更、延期も糞もあるか!!此方は、既に、撤退の準備をしてんだ!!」


 オーネスト・ミゲール参謀官は、汗を拭きながら、必死で、マールデヒダを説得しようとしていた、


「少将、『魔素エーテル』の濃度が、此処にきて、急激に下がっている為、広域殲滅魔導弾に充分な魔素が貯まらないんです、だから重爆撃砲戦艦隊は、今、『星層圏』迄、上がって、必死に『魔素エーテル』の確保に努めている、」


 彼女は、イライラしながら、


「貯まった状態で、充分だろうが、相手は、虫だそ、」


 オーネストは、魔導通信で、数値とグラフを表示しながら、

 

「局地殲滅戦なら、其で、充分なんですが、今回の作戦は広域殲滅戦、此だけの広域での魔導弾には、膨大な魔素が必要でして、」


「お前は、バカか、其を見越して作戦を立てたんだろうがぁあ!!一週間ってんのは、嘘かぁあ!」


 オーネストは、更に、慌てて、


「ですから、こんなに急激に、大気中の『魔素エーテル』の濃度が激減する事は、想定外でして、」


 マールデヒダは、これ以上、怒鳴っても無駄な事に気付き、


「もう良い!!!其で、Dデーは、何時になったんだ!!!」


 オーネストは、答えず、


「・・・まさか、分からないのか!」


「いえ、今の、濃度での、計算だと、一月先に、・・・なるかなぁあと、」


 マールデヒダは、愕然とした後、腹が立って、


「お、お前等はバカか!一月も、コイツらを食い止める事など、不可能だ!」


「ですから、代替え案を今、検討中で有り、また、魔導環境省の、魔素エーテル濃度の観測数値に期待していたり、兎に角、参謀本部としても、出来る努力はしてります!少将、後、三日、其で、奴等を食い止めて頂ければ、」



 三日、



 マールデヒダは、参謀官が取り敢えず、三日、時間をくれと言っている事は、分かっていた、


 だが、彼女も、数百の部下の士気が懸かっていた、あの虫共の無限に湧き出る、黒い絨毯、そして、その後の黒い粉塵を、一週間も見続けなければならない、部下達の心労、


 最初は、奴等が、木っ端微塵になる様子に、狂喜乱舞していたが、奴等が、全然、変わらぬ様子で、動き回り、次から次えと、湧き出る状況に、頭がおかしくなる、そう言う、感覚が、徐々に、全艦隊に広がり始めていた、


 早く、奴等、虫共を全部、退治してくれ、早くこの世から、消してくれ、そう言う気持ちが、日に、日に強まっていた。


 ふぅ、


 彼女は、了承した、 


「三日だ、三日以上なら、第三次先行派遣艦隊を派遣しろ!我々は、其が、限界だ!」


 そう言って、参謀官との話を打ち切った。


 そして、その後、彼女は、ある、事実に気付き、


「機関士長、現在の魔導機関の状態を報告しろ、」


 数分後、機関士長、オルズ・ロールデンからの報告は、彼女の予想通りの答えだった、


あねさん!ヤベェぜ!出力が出ねぇ、魔素エーテルが、どんどん取り込めなくなってやがる!!」


「原因は、何だ!オルズ!!」


 魔導通信の相手は、何、言ってんだって声で、


「原因、俺の機関に問題なんかねぇよ!回りの魔導エーテルだよ!魔素エーテルが、どんどん薄くなってんだよ!このままじゃ、撃つ事とも、浮かぶ事も、出来なくなるってこった!」


 彼女が、知りたかったのは、何故、魔素エーテルが薄くなったか、と言う事で、所詮、オルズに聞いても無駄かと思い、艦橋から、外の空を見た、


 空は、虫の死骸である、粉塵により、どんよりと濁り、太陽も薄く鈍い輝きとなって、普段は直視出来ない明るさなのに、今は、フィルタを掛けたようにぼんやりと見る事が出来た、


 彼女は、ふと、思った、此のまま、この、虫の粉塵が続いたら、あの光りも、私達には、見る事も出来なくなるんじゃないのか?


 

 ・・・



 その前に、何故、この粉塵は消えないんだ?



 消える?何処にだ?



 ?



 この粉塵は、一体、何なんだ?


 彼女は、椅子より立ち上がり、黒い雲を、黒い霧を凝視した、


 まさか、バカな!


 コイツらか!コイツらの所為せいか!


 この黒い粉塵が、大気の魔素エーテルを吸いとってるんじゃないのか!


 彼女は、愕然とした、


 我々は、一体、何と闘っているんだ?


 何故、我々は、あの虫が黒い粉塵になったから死んだと考えたんだ?


 彼女は、黒い雲を、黒い霧を、黒い粉塵を睨み、手を握り締めた、


 彼女は知る、奴等の本当の正体が、あの黒い物体である事を、


 額から、汗が、一滴、流れ、背筋から冷たい物が沸き上がる感覚に戦慄を覚え、


 

 我々は、戦う前から、詰んでいた事を、



 世界は、既に、終わっていた事を



 マールデヒダは、知った。

 



 5月27日 力曜日リィョルヤ、魔導環境省から、黒い粉塵を分析した結果の報告書が、元老院、及び枢密院に提出された、


 その報告書は、要約すると以下の内容である、



 その黒い粉は、魔素エーテルを消す物質、


魔消粉デ・アウルパ』と命名


魔消粉デ・アウルパ』が、此の状況のまま、世界に排出されたら、世界の魔素エーテルは、一年で消えてしまう事が判明、


 仮に、広域殲滅魔導弾を使用して、ゴードバーレン大自然渓谷から、オルセリア平原迄の、『大魔虫ガアウル・バーズ』を全て、『魔消粉デ・アウルパ』に変えた場合、産出量から、計算して、


 世界の魔素エーテルは、一月で消える、


 そう、報告書には記載されていた。



 5月28日、磁曜日ジィョルヤ、枢密院の助言により、防魔省統合作戦本部は、


GABCガアベツェ作戦』の中止を決定した。

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