新たなる覚悟
「グウッ!!!!!!」
サーンディ・アーランド上級魔導士が左手を押さえながら、呻き声を押し殺した、その左手は石化し、サーディは、
「ぐうぅう、やはり、ディヴァと、ドウブァを殺したのは奴だ、コーネルの野郎だ!」
ルーナは、サーディに近寄り、
「大丈夫か、サーディ!」
エリンもサーディに近寄り、サーディの石化した、右手を調べながら、
「此は、『錬』の生体錬成ですね、物凄く高度な技術です、」
ルーナは、エリンの方を向いて静かに聞いた、
「普通の魔導医に治す事は、可能なのか?」
エリンは少し考えながら、
「我が国でも生体錬成が出来る魔導医は、限られています、確か、ウェルド公国は、生体錬成の治療は禁じられていましたね、となると、此の左手を治療するなら、我が国に来て頂く必要が有ります、」
ルーナも、考えて、
「ポワジューレ共和国か、・・・なぁ、エリン、我が国にも、一人、魔導生体錬成が出来る、魔導医を、私は知っているんだが、その者なら、治せると思うか、」
エリンは、サーディの石になった、左手を調べた後、
「済みません、私は、その方の技術がどれ程の物か知らないので、答えられません・・・しかし、我が国の魔導医師の技術で答えるなら、此のレベルでの生体錬成を成功出来るのは、大旦那様、ただ一人、そう思います、」
リアが慌てて、止めた、
「エリン!!!」
エリンは立ち上がり、リナに謝り、
「申し訳ございません、御嬢様、余計な事を言ってしまい、」
と、言った後、その後は彼は、黙ったままで、一方、呆然としていたハルが、リナの、怒鳴り声で、我に返った時、
ハルは、回りに、スグルが存在していない事に、気付いた。
師匠が、刺された、
師匠が、僕の目の前から消えた、
師匠が、死んだ、
僕は、絶叫していた、
師匠!師匠!師匠!師匠!師匠!
ど叫びながら、僕は、『破星の剣』を抜きながら、あの男に斬りかかろうとしていた、
ダンが、オルが僕にしがみついて、僕を止めた、
僕は、奴の処へ、行けずに、
世界は、変わった、
僕は、自分が夢を見ていると思った、
あんな、強い、世界を救える程のスグルさんが、師匠が、あんな奴に、あんな奴に、殺される訳無いじゃなぃか、そう思った、
僕は、回りを見回した、
「あぁ、ハル、腹減ったろ、何か食ってくか、」
そう言う声が聞こえて来る、そう思った、しかし、何時まで経っても、その声は、聞こえなかった、
「あの腰抜けが、コーネルを殺す、唯一のチャンスだったんだ、其を、アイツは、逃した!」
ルーナ殿下と、一緒に来た、魔導省の人が騒いでいる、
腰抜け、師匠が腰抜けって、あの人は一体、何を言ってるんだ、
ルーナさんの声が、
「聞いてくれ、サーディ、彼奴は、あの世界をたった一人で、来れる程の未知の力の持ち主だ、だったら、彼、スグルに任せるのが、一番だと思った、彼の力は、私は知っている、」
サーディと呼ばれた、女性が激怒して、
「殿下、その結果、奴は、コーネルを殺せなかった!」
僕は、怒鳴っていた、
「師匠は、師匠は、僕達がいたから、アイツを殺さなかったんだ!!」
僕は、自分が、許せなかった、
「師匠は、師匠は、僕達を助ける為に、アイツに、アイツに殺られたんだ!!」
「師匠は、消えるまで、此方を見てた、あの囚われてた娘の事を心配してた、」
僕は、師匠が助けた、師匠がレイと呼んだ、紫が入った長い黒い髪に赤い瞳、の娘を指して怒鳴っていた、
彼女は、エミとドリス、二人で抱き抱え、三人は泣いていた、
サーディさんが左手を押さえながら、僕を睨み、
「その結果が、ゲルト級の犯罪者を野放しにし、百人以上の魔導士が死ぬ事になるんだ!!」
ルーナさんが、サーディさんの右手を掴んで、
「サーディ、よせ、」
僕は、ダンに向かって、ダンの胸ぐらを掴んで、怒鳴っていた、
「だったら、僕が、僕が奴を殺したんだ、ダン!何故、あの時、僕を止めた!!」
ダンは、泣きながら、
「ハル、私は、私は、恐かったんだ、あの男が、あの禍々しい大剣を手にした時、恐怖で、震え上がった、だから君が、何かしたら、私は、私達は殺される、そう思った、だから、だから、」
僕は、愕然とした、ダンが恐かった、あの男が恐かった、
オルも、涙を拭きながら、
「ダンの言う通りだ、私も恐怖で、体が動かなかった、ダンが、勇気を出して、止めた時、私も必死で君を止めた、」
オル、君まで、
「何故、何故なんだ、僕は、僕は全然、アイツの事何か、恐くなかった!」
僕は、皆に怒鳴っていた、エミは泣きながら、
「もう、止めて、ハル、ハルが、あの男を殺そうとする事なんか、スグルさんは望んで無い!!」
師匠が、・・・望んで、・・・無い、
その時、蒼白な顔のジェミが、初めて口を開いた、
「ハル、本当は、君だって、分かってるんだろ、今の僕達じゃ、彼奴には勝てない事を、」
僕達じゃ、・・・彼奴・・・勝てない、
「君の星は、負ける事を、許して無い、だから、僕達に死んでも戦えって言ってんだろ、」
僕は、・・・答えを・・・返せなかった。
「スグルさんは、僕に言った、『ハルが背負ってる星は、スッゲェ無茶な星で、ハルの実力も無いのに、無茶をさせる、だから、友達として、ハルが無茶をしそうになったら、止めろ、』、そう言ったんだ!!」
スグルさんが、・・・ジェミに、・・・そんな事を、
「だから、僕は、ダン、オルにお願いした、ハルを止めてくれと、悪いのは僕だ!」
ジェミ、
ジェミの瞳から、涙が溢れ、こぼれ落ち、
「ハル、スグルさんを失って、悲しんでるのは、君だけじゃない、僕も、皆も、悲しいんだ! でも、今の君じゃ、僕達より、弱い君じゃ、彼奴には勝てないんだ!!」
ジェミの涙が、全ての真実を訴えていた、
僕は、弱い、
スグルさんは、ずうーっと、僕に言ってきた、
僕が、弱いと、
僕は、理解した、
僕の星が、星が僕に戦えと言っている事を、
そうだ、僕は、理解した、彼奴と戦う事が、僕の運命で有り、使命で有る事を、
でも、今じゃ無い、
今じゃ、無いんだ、
僕は、覚悟が足りなかった、
僕の使命を、達成する覚悟、
僕の星が言う、勝つ為の覚悟、
勝利する為には、皆の協力が必要なのに、皆に、頼む覚悟、
覚悟とは、 危険なこと、不利なこと、困難なことを予想して、それを受けとめる心構え、
僕は、・・・覚悟の意味を・・・今、初めて・・・理解し、
そして、僕は、今、全ての事を受けとめる決意をして、ジェミに、エミに、皆に向かって、
謝った。
「ジェミ、済まない、エミ、ゴメン、皆、本当に、御免なさい、」
僕は、深く、深く、頭を下げ、そして、ジェミに言った、
「ジェミ、僕達は、どうしたら良いんだ、教えてくれ、頼む、」
僕は、頭を下げながら、此れから、どうしたら良いのかを、聞いた、
皆が、ジェミの回りに集まって来た、
僕は、まだ、頭を下げている、
リアが、ジェミの肩を少し、優しく、押した、その行為で、ジェミは決意したのか、口を再び開いた、
「ハル、顔を上げてくれ、君に見せたい物が有るんだ、」
見せたい物?
僕は、ゆっくりと顔を上げた、
ジェミは、左手を上にして、僕の方に差し出していた、
その左手の人指し指には、綺麗な模様の入った指輪が填まっていた、
「ジェミ、其は?」
「まぁ、見てて、」
ジェミは、気持ちを落ち着かせて、囁いた、
「『星の門よ!開け!!』」
その瞬間、
ジェミの左手の指輪が光り、ジェミの左手には翠光の光りが集まり、其が、15センチ位の光り壁になって、その光りが落ち着くと、その中に見えるのは、師匠の宿舎の前の森、
此は、
此は、師匠の、『何処でも扉』!!
「ジェミ!其は、師匠の『何処でも扉』、何故、君が!!」
僕は、思わず、口に出してしまった、
ジェミは、気にする事なく、
「ハル、君が、スグルさんの言う、『星の遺跡・海岸』で、大量に『星の力』を取り込めるようになった時、星が、僕に二番目の『星具』を呉れたんだ、」
大量に『星の力』を取り込めるようになった時って、僕の『右星の扉』が開いた時、
ジェミが、言葉を続けた、
「この指輪は、スグルさんの『何処でも扉』と同じ力の有る、『星具』で、名前は、『星の秘門錠』、星が此を呉れたのは、僕が、強くなったから、」
ジェミが、強くなった!
「僕がもっと強くなれば、この小さな『何処でも扉』は、人が通れるくらいの大きな『何処でも扉』になると、スグルさんは教えてくれた、」
ジェミは、言葉を止め、僕を見ている、
「そして、ハル、僕が、もっと強くなる条件は、ハル、君がもっと強くなる事なんだ!」
ジェミが、強くなるのは、僕が強くなる事? 何故?
どう言う事なんだ?
「ハル、君に使命を託す星は、僕達に運命を託した、6つの星を引き連れて強くなる、『群星の星』だって、スグルさんが僕に言った、僕は、其を聞いた時、何故、僕が、皆が、同じように強くなって行ったのか、やっと理解、出来た、」
皆が、強くなる、『群星の星』!
ジェミは、力強く語った、
「ハル、僕達は、君が強くなれば、強くなるんだ!もしかして、僕達が強くなったら、ハル、君も強くなるのかも知れない、僕達は皆で、一つなんだ!!」
僕は、その時、初めて、
ジェミが言いたい事が分かった、
皆で、一つ、
だから、辛い事も、苦しい事も、悲しい事も、皆で背負うんだ、だから僕達は強くなる、もっともっと強くなる、
僕の瞳から、大粒の涙がこぼれ落ちた、
ダンが言った、
「ハル、一緒に強くなろう、」
オルが、僕に、
「私も、強くなる、だから、ハル、一人だとは、思わないでくれ、」
今まで、何も語らなかった、アンリが、『星狼の双剣』を出し、
「ハル、私も逃げた、恐かった、でも、次は、ハル、一緒に戦う、だから、私をもっと強くしてくれ、」
エミが、ハルの側により、
「ハル、もぅ、私も、ずうーっと、一緒だから、ね、その、泣くの、止めてね、ね、」
エミ、
ジェミとリアがお互い、頷き合いながら、皆を見ている、僕は、エミに言われて、涙を拭きながら、僕はジェミに聞いた、
「其で、僕達は、どうやったら、強くなるんだ、ジェミ、」
ジェミは、回りを指指し、
「其も、スグルさんが教えてくれた、見てくれ、ハル、此処は、僕達には、4番目、スグルさんが言う処の5番目の、『星の遺跡』なんだ、」
僕は、ジェミが指差す回りを見た、
竹林
僕達の回りの竹は、黄金の竹が生えている、そして、その外には、虎、
「あれは、魔虎」
ジェミが説明する、
『星の遺跡・竹林』!!!
「たぶん、あの先に見える、宮殿みたいな建物がゴールだ、僕達は、彼処に行く、そして、更に、その先の『星の遺跡』へ行けば良い、そうしたら、僕達は、絶対、強くなる!」
ジェミは、皆を見ながら、自信を持って言った、
「スグルさんは言った!!この、『星の遺跡』こそが、僕達を強くする為に存在しているんだと!!!」
そうだ、師匠は、言った!
ハル、強くなる為に、
その先へ、
進めと!!
子供達は、自分達が、何をするべきなのか、何をしなくてはならないのか、そして、何をする事が、自分達の使命であり、運命であるかを理解し、進むべき道を、自ら決めた、
「さぁーて、子供達は、何をするかを決めたようだし、そうすると、大人は、一体、何をするんですか、ルーナ殿下、」
・・・
ふぅ、
ローシィは、記者だから、気楽だ、彼女は、真実を記録するのが、自分の仕事だと、割り切っている、
其に、彼等の保護者は、メルティスト先生だ、先生なら、彼等の決断を絶対、反対してる、しかし、彼女は、今、あのコーネルが生み出した、禍々しい剣を見て、意識を失ってる、
そうなると、必然的に、私が、彼等の行動に、責任を取る事になる、
スグルがいない、今、この世界から、出るには、彼等が強くなる必要が有る、強くなるには、彼等、子供達は危険な事に挑戦しなくてはならない、
今までは、スグルが、彼等を守っていた、スグルは、今は、いない、そして、スグルは、私に頼むと言った、
スグル、
貴方は、私に、頼む、そう言った。
サーディは、左手を押さえて、俯いている、
エリンが、私の側に来て、
「ルーナ様、私も、お手伝い出来る事は、お手伝いしたいと、例えば、御嬢様の御学友に武道等、教える事が出来ます、」
武道か、この男、
「殺しも、教えるのか、」
彼は、顔色一つ変えずに、
「必要とあらば、」
・・・
「流石、ロートス家の筆頭執事、エリンデゥナ・ウォルデュースだな、」
エリンは、笑みを浮かべ、
「ルーナ様に、名前を、覚えて頂き光栄至極で御座います。」
私も、笑みを浮かべ、
「元々、貴方は、そのつもりで、彼等に近付いたんじゃないのか、其に彼等に近付く為に、孫娘を留学させた、違うのか?」
エリンは、首を振りながら、
「其は、有りません、全ては、『星』が導く、運命で御座います。」
まるで、姉様や妹と会話しているみたいだ、『星』が導く運命、私は、運命とは、自分で見つけ、切り開く、そう信じて来た、
しかし、
彼と出合い、
そして、
此処まで来た、
もし、『星』が、私に運命を託すなら、私のする事は、
私は、彼等、『約束された子』の前に立ち、言った、
「私達は、私達が、今、出来る、全てを、君達に託そう、」