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愛する星に、願いを込めて  作者: Hs氏
星の真実編
111/136

星の中心の下へ

 5月12日の火曜日ヒョョルヤ、20時、『喪なわれし地平線(ロストホゥ)』に居る俺達は、三台の魔導四輪車(モーグコルク)で、星界の中心に輝く、動かない星の下に向かった。


挿絵(By みてみん)


 景色は、行けども、行けども変わらず、魔導四輪車(モーグコルク)は、土煙つちけむりを出しながら、疾走し、


 時間は、ゆっくりと過ぎて行った、全員が、この『喪なわれし地平線(ロストホゥ)』で、出発した地点から2時間走れば、目的地に着くと思っている、


 だから、2時間で、その場所は必ず現れる、


 1時間経っても、景色は変わらなかった、見えるのは、果て無き荒野と、『忘却の大瀑布』だけで、


 更に、15分、30分、経ち、


 俺は、そろそろ、


 『魔神の玩具(グゥストゥトォ)』の奴等が見えるんじゃないか、と気がきじゃ無かった、


 残り、15分、


 残り10キロメータ、


 何も変わらない、


 残り、10分、6.7キロ、


 何も変わらない、


 見えるのは、やはり、荒野と『忘却の大瀑布』だけだ、


 ?


 残り、5分、後、3.3キロ、


 まだ、何も見えない、



 ・・・


 俺の考え過ぎなのか、


 結局、何も無いとか、



 ・・・


 

 残り、2分、1.3キロ、



 えっ?


 人?



 誰かがいるのが、分かった、


 あれは、人だ!!!


 俺は、直ぐにエリンさんに、怒鳴った、


「車を止めろ!!!」


 ギギギギギギギ!!!


 車輪が強制的に止まり、魔導四輪車(モーグコルク)は、盛大な軋み音を鳴らしながら止まった。


「有難う、エリンさん、」


 俺は、エリンさんに礼を言って、直ぐに、魔導四輪車(モーグコルク)から降りた、


 星の中心にいる人は、やはり四人、向こうも、此方に気付いてる、


 その中で、俺は、二人、知っている、


 一人は、白髪を軍人刈り(ガンドゥト)にしていて、そして、サングラスを掛けている奴、


 彼奴あいつは、確か、遺跡のムーダコレステリラの村長ムーダ・パーダ


 コーネル・オリゴン


 何故、彼奴あいつが此処に、


 もう、一人は、


 紫が入った長い髪をツインテールにしていて、その瞳は赤い透明、


 あれは、レイちゃん、名前は、


 レイティシア・バリデュワ


 他の二人は知らない、


 一人は、見た目、今にも死にそうな老人、もう一人は顔色の悪い、青紫の髪の少女、


「あれは、シュタイン・バーグ氏でございます、スグル様、」


 エリンさんも、魔導四輪車(モーグコルク)から降りて、俺に、死にそうな老人の名前を教えてくれた、


「エリンさん、皆には、まだ、魔導四輪車(モーグコルク)から降りないように、伝えてくれるか、」


 エリンさんは、俺を見て、


「スグル様は、如何いかが、なされますか?」


 俺は、コーネルを指差して、


「俺は、ちょっと、彼と話してくる、そしたら、皆で、帰ろう、」


 正直、俺は奴等やつらの事は、どうでも良かった、何故、此の、『喪なわれし地平線(ロストホゥ)』に居るのか、気になるのだが、其より、レイちゃんだ、


 俺が、此処から、見ても、彼女は、恐怖で、震えているように見える、


 其が、気になる、



 俺は、コーネルと、話し合う事にした、


 瞬時に、俺は、コーネルから5メータの位置に移動し、


 彼は、ニヤリと笑いながら、


「やっぱ、来ましたね、スグルさん、」


 こいつは、やっぱ、変に気安い、


「何で、俺達が、此所へ来る事が分かったんだ、」


 コーネルが、えっ、てな顔で、


「えっ、だって、先生、言ってましたよ、スグルさんが、生徒、引き連れて、星の遺跡の探索するって、だから、夏に、うちの、遺跡にも来るんでしょ?」



 ・・・



 メルティスト先生!!!



 あんた、喋り過ぎだぁ!!


 と、心の中で喚きながら、


「どうやって、此所まで、来たんだ?」


 コーネルは、何だ、ってな顔して、


「そりゃ、スグルさんと同じ、遺跡を攻略して、其で貰える次の遺跡に入れて貰える遺物を使って、12の遺跡を越えて来たんすよ、」



 遺跡の攻略って、此の男がか?


 其も、12の遺跡って、


 嘘じゃ、ねぇのか?



「あれ、スグルさんその顔、何か、俺達を疑ってません、もしかして、俺達が、スグルさんが独占しようとしていた、高価な遺物、取ったと思ってます?」



 そんな事、思っちゃいないけど、



「残念ですけど、俺達、此まで、何にも見つけて無いし、何も拾ってませんよ、なぁ、デリカ、」


 顔色の悪い子が、


「コーネの言う通り、何にも無い、」



 何にも無い?


 俺らは、金貨とコップの遺物が出た、彼等には、遺跡は何も与えなかったのか?


 何故だ、



「疑うなら、レイにも、聞きますかスグルさん、レイ、スグルさんに答えな、」


 レイちゃんは、コーネルを見た後、俺を見て、


「其は、本当、だから困ってる、」


 困ってる、


 その時、死にそうな、老人が、


「スグルさんとやら、その娘が言った事は、本当だ、我々は、食料が無くなって、困っている、金なら出す、分けて貰えんかのう、」


 食料が無い?


「一体、何で、食料が無くなる?」


 コーネルは、首を振りながら、


「スグルさん、先生に聞いたんだが、あんたは、何らかの方法で、もといた場所に戻れるようだが、俺達は、戻れ無いんでね、だから、今日で、丁度、持ってきた、食料が無くなったって訳だ、」



 戻れ無いのに、コイツは、此の、遺跡に入って、其で、此所まで来たのか、何て奴だ、


 此の、コーネルって男は!!



「分かった、何か、食い物がないか、ブライに聞いてみる、」


 いろいろと、コイツからは、話を聞きたいんだが、確かに、レイちゃんは、焦燥した顔色だし、他の二人も顔色が悪い、


 直ぐに、彼等に何か食わしたほうが良い気がして、俺は、此方を見ている、エリンさんの元に戻った。




「いやぁ、旨い汁だ、ズズズ、うーん、旨い、エリンさん、済まねぇけど、お代わり、貰える?」


 他の三人は、音を立てないように、スプーンで掬って食べているのに、コイツだけは、皿ごと音を立てて食ってる、


 本当に、コイツは下品だ、


「何か、スグルに似てる食べ方、」


 エミちゃん、俺、あんな下品じゃ無いから、ただ、メンを食うときだけ、音を立てるだけだから!


 と、心の中で、言い訳しながら、俺は、コーネル達を見ていた。



 俺は、エリンさんと、ブライに彼等の事情を話し、ブライは、直ぐに、軽く、空腹で胃が弱っていても食べれる、パンの木実(デゥタ)いりのスープを作って、彼等に提供した、


 彼等は、ジェミが用意した、アウトドアテーブルと椅子に座り、そのスープを急いで、食べ始めた。



 彼等には、少女が二人いたので、『星に愛されし民(スタラブルラディ)』も、少し安心して、魔導四輪車(モーグコルク)から降りて、遠目で、彼等を見ていた、


 俺も、彼等が食べ終わったら、話しを聞こうと、少し離れて彼等を見ていた、


 彼等の世話をしているのは、勿論、エリンさんだ、


 そんな時、アンリが、


「スグルさん、呼んでる、」


 と、小声で、俺に言い、ルーナさん達が居る、魔導四輪車(モーグコルク)を指差した。



 俺は、頷いて、魔導四輪車(モーグコルク)に向かい、その後部の客室に入ると、ルーナさんが、


彼奴あいつは、誰だ、スグル!!」



 俺は、ちょっと驚いて、


「えっ?あぁ、済みません、紹介しなくて、彼奴あいつは、コレステリラの村長ムーダ・パーダで、コーネル・オリゴンって言う奴ですけど、」


 二人、同時に、顔を見合せながら、


「コーネル・オリゴン!!」


 ?


「サーディ、貴女の言う通りだ、奴は、やはり、コーネルだ、」


 えっ、ルーナちゃん、サーディさん、あんた達、奴を知ってんの?


「えーと、あのー、ルーナさんは、彼の事を、御存じなんですか、」


 サーディさんが、怒って、


「お前が、関わる事じゃ無い!!」


 強い口調で、俺に言ってきたんだけど、ルーナちゃんはサーディさんを、手で制止して、


「サーディ、此の場所は、我々には良く分からない場所だし、スグルの協力を、仰いだ方が良い、説明は私からする、」


 サーディさんは、だんまりとし、ルーナは、ため息を付いた後、


「スグル、聞いてくれ、我々、魔導省の仕事は、治安維持の他に、違法魔導士の取締りが有る、」


 違法魔導士、


「じゃ、あの、コーネルって奴は、違法魔導士ってことか、」


 ルーナは、首を振りながら、


「いや、ハッキリとした、証拠は無いそうなんだが、サーディが言うには、彼は、『しん』の魔導術を使える、反社会勢力の中心的、人物だったらしい、」


 反社会勢力って、やっぱ、彼奴あいつ、スグルの世界のヤが着く人じゃねぇかぁ、

 

 ルーナは、ちょっと、声を小さくして、


「其で、スグル、此は、言いにくい事なんだが、我々は、『シン』を使う、そう言う輩は、排除するんだ、」


 排除?


「排除って、まさか、」


 ルーナは、頷いて、


「そうだ、そう言う事だ、」


「ちょっと待ってくれ、ルーナ、子供達だっているし、彼奴あいつそばには、二人の女の子もいるんだぞ!」


 俺は、呆れて、ルーナに詰め寄った、サーディは、怒った口調で、


「殿下、だから、素人に話す内容じゃ無いと言ったんだ、」


 ルーナは、必死に、


「スグル、聞いてくれ、彼奴あいつは、二人の上級魔導士が消えた事件に関わっているんだ!」


「えっ?」


 二人の上級魔導士が消えた?


 サーディが、俺に向かって話しを始めた、


「あの、コーネルを排除する為に動いた上級魔導士、二人が消え、最期に連絡のあった、山小屋で、二人にそっくりな石像が、徹底的に破壊された状態で発見された、」



 石像?



「その時、同日同時刻、『魔人』が現れ、殿下の乗る船が襲われた、」



 其って、俺が救った、あれか、



「だから我々は、この、二人の上級魔導士が消えた事件も、『魔人』が関わり、その時、コーネルも『魔人』に殺された、そう、我々は考えていた、だが、奴は、生きていた、」



 ・・・



「我々は、奴から真相を聞き出す、邪魔する事は許さない、したら、敵対行為と見なす!」



 俺は、彼女に無性に腹が立った、


「聞き出すって、まさか、」


 彼女は、俺を睨みながら、


「そうだ、生死問わずだ、我々は、どちらでも構わない、我々は死体からも情報は引き出せる、奴の出方次第だ、」


 その時、ルーナが口を出した、


「だから、スグル、彼を、説得してくれ、」



 ・・・



 そう言う事か、




 ガチャン


 デリカは、スプーンを皿に落とした、コーネルは、そんな彼女を見て、薄ら笑いをしながら、


「駄目だよ、デリカ、オメェ、体、悪りぃんだから、ちゃんと食わなくちゃ、ガキは食うの大事なんだ、」


 デリカは、二台目の魔導四輪車(モーグコルク)を睨みながら、


「アイツ等、コーネを殺す話しをしてた、」


 スープを飲み干したコーネルは、デリカに、


「あーぁ、うめぇ、で、駄目だよ、デリカ、人の話しををコッソリ聞いちゃ、」


 デリカは、口を膨らませて、


「狡い、コーネだって、聞いて、笑ってたじゃ無いか、」


 コーネルは、更に、にやついて、


「まぁな、」


 デリカは、口を尖らせて、


彼処あそこで、コーネの事、心配してたの、スグルって人だけだ、彼は良い人だ、」


 コーネルは、ため息を付きながら、


「そうなんだよ、奴は、すっげぇー良い奴なんだよ、ほら、飯もおごってくれたし、」


 一端、言葉を止めたコーネルは、天を見上げ、小さな声で、


「・・・だから奴は、弱い、・・・だから、ダメな奴なんだ、・・・奴は、」


 デリカは、何だ、そりゃ、ってな顔をし、今まで、黙ってスープを口にしていた、シュタインが、口を開いた、


「で、どうするんだ、コーネル、相手は、魔導省の上級魔導士、殺しのプロだぞ、其に、あの、エリンと言う執事、あれも、上級魔導士だ、後、子供の中にも、一人、上級がいる、」


 コーネルは、老人を感心しながら、


「へぇ、シュゥじい、奴等の力量が、見るだけで分かるって、流石、年の功に観察眼、」


 シュタインは、目を細めて、


「軽口を叩いている場合じゃ無いぞ、コーネル、奴等は、儂等も殺すつもりじゃ、」


 其を聞いたデリカは、再び、サーディの居る、魔導四輪車(モーグコルク)を睨みつけ、


 四人の中で、ただ一人、レイは何も言わず、ただ、スープを口にするだけで、


 コーネルは、立ち上がりながら、自分達の所に来る、スグルを見て、


「大丈夫だって、シュゥじい、もう、俺には、二人も、三人も関係ねぇ、俺が気にしてんのは、アイツだけさ、アイツ、」



 そう、言った後、彼は、



 スグルが、自分の前に来るのを、



 待ち続けていた。



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