喪われし地平線
「スグル、スグル」
声が、聞こえる、
あれは、聞いた事が有る、
「スグル!!!」
ルーナ!!!
俺は、気が付いて、飛び起きた、
「ルーナ!」
はぁ、はぁ、はぁ、
罠が発動したのか?
俺の右横には、心配している顔のルーナが、正面にハル、左横にジェミ、
「俺は、気を失ったのか?どのくらいだ?」
ルーナが、首を振って、
「分からない、世界が一瞬で変わって、気付いたら、此所に全員が集まっていた、そしたら、スグル、貴方が空から落ちてきて、一体、何が起きたんだ?」
俺が、空から、そうか、思い出した、
俺は、ゴッソリと『星の力』を抜かれて、何者かが、その力を使って、強制的に、此の場所への『星の門』を、開いた、
此所は?
俺は、回りを見渡した、
荒野、大瀑布、星天に輝く、中心の星、
・・・
俺は、
此の景色を、
見た事が有る、
まさか、
此所は、
『喪なわれし地平線』!!!
ハルが心配そうに、
「師匠、ジェミが直ぐに、師匠に魔石をぶちまけて、そしたら、師匠が目を覚ましたんです!」
ジェミが、
俺は、ハルの横にいるジェミを見た、ジェミは変わらない表情で、
「スグルさんの倒れかた、前にハルが倒れたのと同じだったから、もしかしてと、思って、」
俺は、納得して、
「そうか、ジェミ、有難な、」
ジェミは、頷きながら、
「処で、スグルさん、その右手に持ってるのは、何なんですか?」
えっ、右手?
俺は、右手を見た、感覚が薄れていたのか、俺は、自分が、何か持っているのか気付かなかった、
其は、スイッチの付いた、8面体の黄金の遺物、
次の、星の力の訓練所の鍵、
其れも、スイッチで起動するようになってる。
本来、次に行くべき『星の遺跡』の鍵が、俺の手に有ると言う事は、まだ、俺は、『星』から託された使命を達成して無いって事か?
『終点』
えっ、!!!
その時、俺は気付いた、
星天からの、小さな声を、
聞こえる、
星の声が、
俺は、世界の中心で輝く星を見た、
星は、ハッキリと語っている、
此処が、『終点』だと、
後は、世界の中心へ、行けと、
俺の使命は、終ったのか?
本当に、終ったのか?
俺は、立ち上がって、ジェミに礼を言いながら、鍵を、彼に渡した、
ジェミは、えっ、てな顔して、
「スグルさん、此は?」
俺は、ニヤッ、てな顔して、
「ああ、次の『星の遺跡』の鍵だ、俺に、もう必要無い、」
ジェミは、ビックリして、
「えっ、必要無いんですか?」
「あぁ、此処が、俺の『終点』だ、」
ジェミに、次の『星の遺跡』の鍵を渡した時、俺が元気だと、分かると、安心したのか、直ぐに、ルーナが、俺に向かって、
「スグル!!此は、一体、どう言う事だ、説明しくれ!!!」
と、騒ぎ出した。
ふぅ、
俺は、一呼吸置いて、
回りを見た、
ローシィが、メルティスト先生が、ブライが、エリンさんが、此方を見ている、その後ろには、不安そうに、エミちゃんが、表情を変えないリアちゃん、アンリちゃん、そして、信頼してます、ってな顔した、ダンとオルが、
更に、怖い顔のサーディさんと、心配そうに、ドーリが、
そうだな、
ハッキリと、ある程度は話す、時か、
その前に、
「何か、食わしてくれ、ブライ、腹減って力が出ねぇ、」
そう言うと、ブライは笑いながら、
「そうだな、スグル、飯にしよ、」
エリンさんも、笑顔で、
「準備は、出来ておりますよ、スグル様、」
えっ、準備?
ジェミが、頷きながら、
「じゃ、出しますね、エリンさん、」
そう言った瞬間、御馳走が、山盛りの巨大なテーブルが、
ドォーーーンン!!!
「えっ?」
ルーナちゃんが、目を丸くして驚いてる、
可愛い、
俺は、そんな可愛いルーナちゃんの肩を押しながら、
「大丈夫だよ、ルーナさん、此所は安全だ、ゆっくりと、食事をしながら、語ろう、」
ローシィは、ちゃっかり、グラスと酒を持って、嬉しそうに、
「そうそう、殿下とスグルの馴れ初めも、聞きたいし、」
ルーナちゃんは、真っ赤な顔して、
「ローシィ!」
ルーナちゃんの護衛の、怖いサーディさんは、やれやれって感じで、此方、見てるし、
まぁ、兎に角、打ち上げだ、
此の、『喪なわれし地平線』で、
俺達は、水平線に大瀑布が見える世界で、打ち上げをした、
此の、大瀑布は、『忘却の大瀑布』と呼ばれ、実際には存在しないと、天皇星の大賢者が俺に教えてくれた、
生きとし生ける、万物霊長の思いが、大瀑布のイメージとして俺達の瞳に写るんだとか、
だから、見る人によって、形も状況も変わる、美しく見えるのは、良い思い出に囲まれているからだ、汚く、汚れて見えるのは、不幸な人生を送ったからだ、と、
二千年前の彼は、俺にそう冗談を言って、俺を慌てさせた、
当時の俺は、此の景色が美しいと思わなかったからだ、
だが、今なら、分かる、
天皇星の大賢者が言いたかった事が、
今の俺には、あの水平線の大瀑布が、とても、美しく見える、
その美しい景色を見ながら、俺は、ブライが焼いた、鶏肉を口に入れた、
此の鶏肉には、俺が育てた、『星に祝福されし果実』から作ったソースがたっぷりと掛かっている、
表面はカリカリ、中はジューシーで、抜群に旨く、ソースのお陰で、だいぶ、『星の力』が戻って来るのが、感じられる、
良い、実に良い、流石、ブライだ、旨い!絶品だ!!
「じゃ、スグルは、ハル君が、その、『星に愛されし子供』って言う、存在で、そのお供の、皆が、『星に愛されし民』だから、皆を、此処まで、連れて来たって、言いたいのか、」
ルーナちゃんも、鶏肉を頬張りながら、俺に、話し掛ける、
「正確には、リアちゃんは、違うんだけど、他の五人はそうだ、だから、星は、彼等に、『星具』を、渡した、」
ルーナちゃんは、少し考えながら、無意識に、俺が育てた、パンの木実をかじり、また、目を丸くして、
「うっ、旨い!」
俺は、笑いながら、
「そうだろ、そうだろ、俺が育てたんだ、旨いだろ、」
ルーナちゃんは、俺をまじまじと見た後、首を振りながら、
「此の世界の景色と言い、スグルの星の人々の話と言い、まるで、姉様や、妹が好きな神話の世界の話だ、」
メルティスト先生は、俺が作った野菜を頬張りながら、
「パリパリ、殿下、魔導考古学的に、星の民も、星の国も、事実、パリパリです!」
・・・
先生、食べるか、話すかの、どっちかに、しようね、ルーナちゃんも、笑ってるし、
「其で、スグル、此れから、どうする気だ、」
俺は、自分の体の状態と、『星の力』の貯まり具合から、
「うーん、後、4、5時間位したら、たぶん、俺の宿舎の前に、『星の門』、まぁ、『何処でも扉』って奴を開く事が出来る、その時、一旦、帰るか、其とも、」
ルーナは、ちょっと、眉を潜めて、
「其ともとは?」
俺は、魚を揚げて、ソースを絡めた、ムニエルって奴を口に入れて、
「あっ、此も、うめぇ、まぁ、此れから先は、ハルが決めた方が良いんじゃねえの、なぁ、ハル、星が何か、言ってんだろ、」
ハルは、あまり、食べていない、心配そうに、俺の顔を見ている、
「師匠、・・・済みません、その、星が急げと、僕に、」
・・・
やっぱ、そうか、
「あの、動かない、星の中心の下か?」
ハルは、頷いて、
「はい!」
さて、どうする、
・・・
「じゃ、こうしよう、取り敢えず、二時間、休憩する、その間、シャワーを浴びたり、仮眠する、で、その後、三台の魔導四輪車で、『星の中心』の下に向かって出発しよう、たぶん、二時間位で着く、」
俺は、此処で、言葉を止め、
「もし、その場所が危険だったら、俺は、直ぐに、その場所から、『星の門』を開いて逃げる、其だったら、星も納得するんじゃねぇの、ハル、」
ハルは、嬉しそうに頷いて、
「はい、師匠、」
メルティスト先生が、肉の固まりを口に入れながら、
「ぼんどぅに、ぎげん、モグモグ、だったら、ずぐに、逃げて、モグモグ、下さい!」
・・・
先生、本当に食べるか、話すかの、どっちかに、しようね。
ダンが、心配そうに、
「スグルさん、その、目的地って、二時間で着くんですか、」
俺は、ハッキリと言った、
「あぁ、絶対に、二時間で着く、」
此は、俺が、皆にした、暗示だ、此の、『喪なわれし地平線』では、時間も、距離も意味を持たない、
だから、喪われたと、言われている、時間は、二時間と思うと、本当に二時間が経ち、距離が其処まで、1メートルと言うと、1メートルになる、
此所は、概念が喪われた世界、
俺は、『星の中心』が、此処から時速40キロメートルで走る魔導四輪車で、二時間掛かると言った、だから、『星の中心』迄の距離は、我々にとっては、80キロメートル有る事になる、
その位の距離が有れば、もし、其処に、ハルの星が敵対する相手が居たとしても、俺が何とか出来るし、たぶん、逃げる事も出来る、
5分とか、10分じゃ駄目だ、5メータや10キロメートルでも近すぎる、
その為、俺は、4時間の時間と、80キロメートルの距離を作った。
「えーと、今、18時だから、20時に出発、『星の中心』には、22時に着く、まぁ、学校に戻るのは、22時半になるけど、」
俺は、メルティスト先生を見て、
「じゃ、戻ったら、先生、生徒を夜、遅くまで、引っ張りまわした、始末書、学長に宜しくお願いします。」
メルティスト先生、食べようとした、野鳥の味付け卵を、ポトリと落とし、
「バカ!スグル!!」
うん、先生、絶好調、
「でも、此処に来るのに、何で、スグルの、その『星の力』って、奴が必要だったの、他は要らないんでしょ、」
と、聞いてきたのは、酔って真っ赤な顔のローシィ、
確かに、其は、俺も疑問に思っている、
・・・
俺が考えるよりも、彼奴、リアちゃんとイチャイチャしてる奴に聞くか、
「なぁ、ジェミ、此に関しては、どう思う、」
ジェミは、急に振られたので、慌てて、
「えっ、僕ですか、」
俺は、頷いて、
「そう、俺は、ジェミ、お前の意見が聞きたい、」
ジェミは、ため息を付きながら、
「そうですか、そうですね、うーん、少ない情報を整理すると、スグルさんが言うには、『星の遺跡』は、ある種の訓練所なんですよね、」
「そうだ、」
「で、その訓練所には、誰でも入れるんですよね、」
「まぁ、『星の力』が使えればな、」
ジェミが、いろいろと聞いてくる、
「でも、その訓練所で訓練しなくても良いくらいの、強い人が、その訓練所に来たとしたら、どうしますか、」
俺は、簡単に、
「まぁ、出てって、他の・・・そう言う事か、」
俺は、ジェミが何を言いたいのか、気付いた、
俺達は、俺を基準に、星の力の訓練所から、追い出された、そう言う事か、
もともと、『星の遺跡・海岸』は、そう言う仕組みだったとしたら、その強さの基準が、『星の力』を何れくらい、体に貯えられるかだとしたら、勿論、その量を基準に次の、『星の遺跡』の行先を決める、
其で、俺が基準になって、最後の、『喪なわれし地平線』に飛ばされた、
勿論、対価として、『星の力』を支払う、とジェミは、言っている、
成る程、其れなら、俺も、納得が行く、其に、『星の力』がスッカラカンに成ったのも、俺が、常時、ケティの為の、『星の門』を開いているのと、皆の為に、『星隠し』を張っていたからだ、
俺は、その事を皆に説明した、
やっぱ、ジェミは、ある意味で、頭が良い、ルーナちゃんも、ジェミに感心していた、
あれで、性格が、
・・・
性格が悪いのは、俺か、
ジェミじゃねぇんだよな、
分かってんだよ、俺だって、
でも、ハルみたいに師匠、師匠って言わないし、頭、良いから、可愛げ無いし、
似てんだよな、
天皇星の大賢者に、
結局、俺は、ハルの守護星と、皆の守護星についての話以外は、喋った、勿論、俺が、何者かは、話してはいない、
俺の話は、もう、遥か東の島国の出身で充分だ、嘘じゃ無いし、本当の名前、コーリン・オーウェルって言ったって、また、皆、笑うだけで、誰も、信じないし、
ただ、ルーナちゃんは、俺が、コーリンだって事を、信じてたみたいだ、
何故だ、
その話は、まぁ、彼女と二人になった時に聞けばすむ事だし、俺としては焦って聞く内容じゃない、
問題は、ハルの守護星だ、世界の終わりに、出現する星、なんて、軽く話せる内容じゃねぇし、俺の勘違いだったら、只の、お騒がせ者だ、
もう少し、ハッキリとしなくちゃ、他の奴等には、話すべきじゃ無い、と、俺は思った、
だから、俺は、此の話をしなかったし、話題にもしなかった。
こうして、最後に、『星の中心』の場所に行く、って、決まったので、皆、リラックスして、此の、打ち上げを、皆、楽しんで、
終わった。