運命の星
2035年5月12日の火曜日、今日は第12回放課後自主講座が開催され、『星の遺跡・海岸』攻略が開始された、
今日の放課後自主講座には、記者のローシィ、魔導省の軍人であり、この国の偉い人の娘、ルーナさんと、ルーナさんの護衛の軍人、サーディさん、そして、リアさんの家の執事長のエリンさんと、見学者が多い。
『星の門』を開いた瞬間、ルーナちゃんと、サーディさんは、驚き、しかし、二人は軍人さんだから、驚いても騒がず、俺の指示に従い、『星に愛されし民』の後、ローシィ、先生と一緒に、『星の遺跡』に入り、
次に、ブライの運転する、料理専用魔導四輪車、エリンさんが運転する、宿泊用魔導四輪車が、『遺跡』に入った後、
最後に俺が、『星の遺跡・海岸』に入り、『星の門』を閉じた。
その日の『星の遺跡・海岸』は、夕方、風は吹き荒れ、波は暴れるような高波、俺は、直ぐに、回りを『星隠し』を張り、星に願い、俺達の回りの風を押さえ、
俺は、星界を見上げた、今日の『星の遺跡・海岸』の星々は落ち着きが無く、
俺は、自分の予感が、当たった事に気付き、
そして、やはり星の焦りに気付いた、ハルが俺の側に来て、
「師匠、」
「あぁ、分かってる、急げと『星』が言ってんだろ、」
ハルは、高波の合間に見える、ゴールの島を見ながら、
「はい、」
と、小さな声で呟いた。
メルティスト先生が心配して、
「スグル、大丈夫なの?この状況で、」
・・・
何時も、こんな状況になって、必ず、『星』が急げと言って来る、
この状況に、意味が有るのか?
「先生、ギャラリーもいる事だし、一回、挑戦させて見せては、ハルも、私に挑戦したいと言って来ましたし、」
メルティスト先生は、ハルを見ながら、
「ハル君が、」
そう言った後、黙って、『星に愛されし民』を見ていた。
『星に愛されし民』の皆は、何時ものように、ストレッチを、15分間した後、
シュッ!!!
全員が、『星具』を手に出し、
その光景を見た、ローシィも、ルーナ、サーディも、『星に愛されし民』の『星具』に驚き、
その中で、ハルの『星具』、『星のナイフ』は一際、輝いていた。
その、光るナイフを見たルーナは、ハルに近付き、厳しい瞳で、ハルに、
「ハル君、一体、其は、何なんだ!」
その瞬間、ハルの回りに風が舞い、
ブワッ!
ハルの髪が靡、その瞳は、透明なコールドブルー、
『コノ『星具』ノ名ハ、『アルカナスターソゥ』』
ルーナは、えっ、って表情で、
「『アルカナスターソゥ』?」
横にいた、メルティスト先生が、
「ルーナ殿下、古語で、たぶん『破星の剣』と言う意味です、」
えっ!!!
俺は、愕然とし、天を見上げた、
『破星の剣』
バカな!!!
破星!!!
別名、破軍の星!!!
世界が、滅亡になる時、現れる、伝説の星、絶対に負ける事が許されない星、
負ける事は、滅びを意味する星!!!
何てこった!!!
何故、俺は気付かなかったんだ!!
二千年前の、あの『魔神』が、世界に降臨した危機でも、『破軍の星』は現れなかった、
其なのに、今は、其ほどの危機だと言うのか?
天の星界に輝くは、柄杓形の7つの星、
「ハル!!!」
俺は、ハルを止めよとしたが、ハルは、光り輝く『破星の剣』を右手に持ち、叫んだ、
『行ケ!!!』
ダッ!!!
『星に愛されし民』の皆が、荒ぶる波上を駆け出した、
俺は、直ぐに、空に上がり、彼等を注視した、もし、彼等に危険が有ったら、俺は、直ぐにこの演習を中止させるつもりだ、
例え、ハルの守護星が、運命の星が邪魔しようと、俺は止める。
俺は、そう決意し、空から、『星に愛されし民』を見下ろした。
彼等は、成長している、あの荒れた波をバランス良く、跳び跳ねながら、波の上を疾走し、
「すっ、凄いっすぅー、」
ドーリが、皆が波上を軽く走る姿に驚き、
「あれが、あの子達の、本当の実力なの、先生、」
ローシィも愕然とし、メルティスト先生に聞いた、
「そうです、彼等は、リアさん以外は、スグルさんの国の『星導術』を使ってます、」
ローシィは、目を見開いて、
「『星導術』・・・」
ルーナとサーディは、一言も喋らず、ただ、『星に愛されし民』を見続けていた。
彼等が、安全地帯である、黄金のブイを一歩過ぎた瞬間、
バシュン!バシュン!バシュン!バシュン!バシュン!バシュン!バシュン! バシュン!バシュン!バシュン!バシュン!バシュン!バシュン!バシュン! バシュン!バシュン!バシュン!バシュン!バシュン!バシュン!バシュン!
水面から、数千匹の魔魚が、彼等に向かって、飛び出し、その魔魚を先頭のアンリは、『星狼の双剣』を高速に回転させ、
バシ、バシ、バシ、バシ、バシ、バシ、バシ、バシ、バシ、バシ、バシ、バシ、バシ、バシ、バシ、バシ、バシ、バシ、バシ、バシ、バシ、バシ、バシ、バシ、
その連撃で、数多の魔魚は、数多の魔石となり、
続く、ダンは、薄っらと細く輝く、『月下の秘剣』を豪快に一閃し、
ズダァアアアアアアアアン!
一瞬に、数百の魔魚は、
バッバッバッバッバッバッバッバッバッバッバッバッバッバッバッバッバッバッバッバッバッバッバッバッバッバッバッバッバッバッバッ、
アンリと同じく、数百の魔石となった。
ズバッ、ズバッ、ズバッ、ズバッ、ズバッ、ズバッ、ズバッ、ズバッ、ズバッ、ズバッ、ズバッ、ズバッ、ズバッ、ズバッ、ズバッ、ズバッ、ズバッ、ズバッ、
オルは、ダンとアンリが撃ち漏らした魔魚を『水星の片眼鏡』で片っ端から撃ち取り、その攻撃は、量、威力共に、今まで以上に格段に上がっていた。
その後に続くのは、エミとリア、エミが、『星時計盤ウルテサイマー』で、ハルとジェミに向かって行く、数百匹の魔魚を、一瞬、止めると、
バガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガ!!!
リアは、俺が彼女に与えた、『星の細剣』に『魔導術』の『力』を、爆風の如く、絡ませ一気に魔魚を破壊した。
空中に舞い上がる魔石は、ジェミが、『星の秘蔵庫』で受け取り、瞬時に、ハルに向かって、受け取った魔石を放出し、
放出された、魔石は、翠輝線の『星の力』となり、ハルの右胸に向かって流れ込んでいた、
ハルは膨大な、『星の力』を、その右胸に受け、その体は、薄く翠光に輝き、右手には、より光りが増した、『破星の剣』を握り締め、荒れ狂う海原を疾走していた。
その光景を、目にした、サーディ上級魔導士は、目を見開きながら、拳を固く握り締め、
「殿下、彼等は、正に、・・・」
サーディは、言葉を続ける事が出来なかった、もし、その先の言葉を口にしたら、
恐怖の予言が、現実になる、
そう思うと、サーディの背筋に、悪寒が走り、
その後の言葉を、続けたのは、公女にして、魔導省、飛翔騎士団、別導部隊、星翔部隊の隊長、ルナリィア・ウェルド、
「そうだ、彼等が、『円卓の賢者』が言う、予言の子供達、『約束された子』、だとしたら、」
ルーナは、目を細め、声は、囁くように、
「世界の、終わりが、始まる、」
ルーナは、言葉を続ける、
「だから、私達は、其を確める為に、此処へ来た、」
俺は、ハルの守護星の名前を、知った時、
自分がハルに対して、大きな勘違いをしていた事に気が付いた、
『群星の星』
7つの星を一つの星として、世界の中心の星に対して、動く星、
其が、ハルの守護星、
だから、ハルは、『星に愛されし民』を動かし、
ハルは、彼等に膨大な、『星の力』を与え続けていた、
更に、ハルの星は、
『破軍の星』
別名、アルカイド
かって、スグルの世界で、テロリストが、その名前を語り、星に自らの勝利を願った星、
しかし、此の世界の星には、力が有る、
だからこそ、かっての俺の世界、そして、此の世界にも、そんな危険な星は、伝説にしか、存在していなかった、
其ほど、危険な星の出現を誰かが願った、
そして、星々は、その願いに答えた!
一体、誰が、これ程、巨大な力の有る、星の出現を願ったんだ、何の為に、
『破軍の星』の力は絶大だ、ハルが率いる、人々は、その膨大な力と共に、勝つ迄、戦う、
だから、『破軍の星』と、呼ばれる。
その力の成長は、ハルの成長でもある、ハルが完全に成長したら、
ハルは、星界の全ての星の力を、使う事になる、
其が、『破軍の星』
『星に愛されし民』が、ゴールである、離島に後、500メータを切った時、
バシャン!バシャン!バシャン!バシャン!バシャン!バシャン!バシャン!バシャン!バシャン!
始まった、第二局面!!!
『密林』よりも、早い!
海から、9人の魚人が、浮かび、
先頭の、三人は、頭は魚、その鱗に被われた体は、しなやかにして、強靭さを表すような引き締まった筋肉、そして、両腕には、サメの牙のような、小太刀を持ち、そのスタイルは、両刀使い、
やはり、対アンリ用自動人形、
中央の三人も頭は魚、全身は鱗に被われ、頑強な上半身と、丸太のような両腕には、右手に巨大な、サメの背鰭のような大剣を持った魚人、
あれは、対ダン用自動人形、
後列の三人も頭が魚で体は鱗に被われ、特筆するは、巨大な脚に、三ツ又の槍を持つ魚人、
ならば、コイツらは、時間停止不可能な、
対エミリ用自動人形になる、
ハルの胸に、更に膨大な『星の力』が流れ込み、ハルは、胸を押さえなが、跪く、
エミが、波上に立ち止まり、叫ぶ、ハルは、エミに、
『大丈夫ダ、殺レ!』
ハルの輝きは増し、ハルは、小太刀に成長した、『破星の剣』を、天に翳した!
「波が邪魔で、彼等が、良く見えないんだけど、」
ローシィが、困ったように呟き、サーディが、
「行って、見て来ましょうか、」
「そうだな、魔導通信で、状況を教えてくれ、」
と、ルーナが言った時、エリンが、手を空中に差し出すと、上空から『星に愛されし民』の画像が浮かび上がり、ルーナは、
「此は、」
「はい、私の特技で、『光』の魔導術による、『写しの鏡』でございます。」
ローシィは、喜んで、
「わぁ、凄い、流石、リアちゃん家のスーパー執事長、」
「此は、どのくらい先迄写せるんだ、」
と、ルーナはエリンに尋ね、エリンは、
「目に見える範囲なら、更に拡大して写す事も可能でございます。」
と、同時に、画像は、拡大されて、ルーナが、エリンに礼を言おうと、
「・・・そうか、凄いな、助か、」
そして、言葉は、止まった、
其処に、写し出される、光景に、
全員が、息を止め、目を見開き、そして、言葉を止めた。
其は、凄まじくして、過激、過激にして、劇烈、
其ほどの、攻防が、荒ぶる波の上で繰り広げられていた。
アンリ、に襲い掛かるのは、三人の魚人、両刀使いの魚人が、アンリに猛攻を仕掛け、アンリがその猛攻を避けながら、反撃しようとすると、両腕が丸太のような魚人から、豪閃の一撃が繰り出され、
グゥアアアアアアアン!
アンリが、その一撃を避けて、跳び跳ねると、巨大な脚の魚人も跳躍して、アンリに、三ツ又の槍を撃ち込み、
ドガァンンンンンンンン!
アンリは、『星狼の双剣』を交差し、受け止めたが、その反動で、海中に沈み、
ダァボォーーン!!!
魚人達は、直ぐに、潜ってアンリを追った。
時を、同じくして、ダンにも、三体の魚人が襲い掛かった、先に襲ったのは、跳躍力の有る、豪脚形魚人、
ダンに、空中から三ツ又の槍を撃ち込み、
ガキン!!!
ダンが、『月下の秘剣』で、槍ごと、魚人を撃ち上げ、ダンの脇が空いた瞬間、高速に接近した両刀使いの魚人が、ダンの両腕を切り落とすように、クロス袈裟斬りを仕掛け、
バシャアアンン!!!
ダンは避けるように、後ろに跳躍し、その場所に待ち構えていた、丸太のような、豪腕の大剣使いの魚人が、 ダンに向かって、その大剣を降り下ろす!
ドッパアアアアアンンンン!!!
ダンは、『月下の秘剣』で受けるも、反動でそのまま、海中に体ごと深く沈み、
ダンに攻撃を仕掛けていた、三体の魚人も直ぐに、後を追うように、潜った。
残りの三体の魚人は、リアとオル、エミを狙い、エミが時を止めると、豪脚の魚人が、空間を蹴り上げ、
バリン!!!
破裂音と共に、両刀使いの魚人が、エミに襲い掛かり、
ガシッ、ガシッ、ガシッ、ガシッ、
リアが前に出て、両刀使いの小太刀を、『星の細剣』で受け、
グゥアアアアアンンンン!!!
豪腕の魚人は、その大剣をオルに向かって降り下ろし、
ズダン!ズダン!ズダン!ズダン!
オルは、波上を転がって避けながら、水弾を撃つも、水弾では魚人達には、余り効果が無く、
その間に、体制を立て直した、エミが、再び、時を止める、
その繰り返しを、数十回、オルも、リアも、エミも、肩で息をしていた!
「止めるべきです!!!」
メルティストが叫んだ、
彼女は、怒りで、顔を赤らめながら、
「此は、最早、放課後自主講座じゃ有りません、殺し合いです!!!即刻、中止して下さい!!」
空にいる、スグルに怒鳴った、
スグルは、彼女の声を確かに、聞いていた、だが、彼は、此の、殺し合いを止める事が出来ない、自分に気付いていた、
其ほど、ハルの、『破軍の星』の星の力は絶大だった。
ルーナは、メルティストに声を掛け、
「先生、どうやら私達には、彼等が行っている、殺し合いを止める事は出来ないようだぞ、」
と、言って、星界を指差した。
メルティストは、ルーナが指差した、星界を見上げた瞬間、愕然とし、
「あ、あれは!」
ああ、その光景は奇跡、
今、此の瞬間、奇跡が起きようとしていた、
世界は、夜となり、
何千の星が輝く、
そして、
何万の星が、輝く星界に、今、大きな力が働き、
膨大な星々が、巨大な力の声に答えようとしていた、
我先に、我先に、と、落ちてくる星々、
ああ、其こそが、
流れ星!!!
数百の星が、
数千の星が、
数万の星が、
ハルに降り注ぎ、
今、完全に開く、
『右星の扉』