二回戦
5月10日の光曜日、俺がこの世界に来て49日、今日は、東部の大都市、ベルトリアで魔導格闘技大会の地区予選が開催された、
C組の、放課後自主講座、チーム、『星に愛されし民』は、A組との確執から、学校の地区大会の代表出場を、地区予選、上位入賞チームに譲る事を決め、代表権を賭けて、この地区予選に出場する事になった。
其を受けて、バルセリア魔導高等学校の2年生は、A、B、Cの全クラスが、この予選に出場する事になり、
そして、全クラスが、初戦を勝利し、二回戦を戦う事になった。
二回戦は、昼食休憩を挟んで、午後1時から開催される、
大会委員会より、対戦表が配られ、我ら、『星に愛されし民』の二回戦の相手は、グランドリア魔導高等学校のB組、試合開始時間は、13時、
この予選には、各、魔導高等学校のA組とC組は出ていない、
A組は、推薦枠で、直接、地区大会に出場するし、C組は、実力的に、殆ど、出場を諦めるているのが現実で、
バルセリア魔導高等学校が、如何に、異常かが分かる。
更に、午後からバルセリア魔導高等学校の生徒が1年から、3年迄、大挙して、この競技場に来たから、競技場は、まるでバルセリア魔導高等学校の競技会の雰囲気になり、
その、クライマックスは、エルさんと、アルバート先生、其に、ジェルダ・ルーバッハ学長迄、来て、競技場全体が、魔導皇、魔導皇と大騒ぎになり、
慌てた、大会委員会は、3人を貴賓室に案内し、色々と事情を聞いたようだ。
この騒動は、後から、ジェミに聞いた、勿論、ジェミに親しい、マーキ、ローラも一緒だったらしいんだが、彼等は貴賓室には案内されず、皆と観戦していたらしい。
そんな騒ぎも知らない、俺達は、我が、『星に愛されし民』の専属料理作業員、ブライの、超豪華な弁当を食べていた、
五種類のサンドイッチ、三種類の肉料理と魚料理、其に、野菜に果物、別にデザートも有る、
まじ、ブライはプロだ、俺達の為に早朝から旨い飯を作ってくれた、
勿論、ジェミが何も無い空間から、ぱっぱっと弁当出してたら、怪しまれるんで、俺は、『星に愛されし民』、全員を『星隠し』で包み、
その際、弁当も、中身がサンドイッチが1個しか入ってない、弁当に見えるようにした。
試合が、終わって、偶々俺達の前を通りがかった、ガルホールと、トーネル、他選手達は、俺達が食べている弁当を見て驚き、
全員、何か、哀れんだ表情で、その場を立ち去った、
何せ、彼等が見た状況は、幸せそうに、1個のサンドイッチを食べてる、C組の皆の姿だ、まぁ、哀れむ、
・・・
よね、
彼等は、金持だから、外へ旨い物、食いに行くだろうし。
『星に愛されし民』の二回戦は13時から開始される、ルールとして15分前には競技場に入る必要があるから、彼等には時間が余り無い、A組、B組は、13時半からだから、少し時間が有る、
だから、俺達は、弁当を用意して正解だった、本当にブライには、感謝している。
食事をしながら、ジェミが、対戦相手の情報を、皆に伝えた、
東部南地方に有るグランドリア街は、バルセリアに比べて、魔導格闘技が盛んで、街にプロチームが有るくらい、街が、魔導格闘技を支援しているんだとか、
だから、魔導高等学校も、街からの支援で、設備、装備が充実していて、選手も結構、練習しているから、強いそうだ、
彼等の中には、二つ名の選手は、いない、だから、選手の情報は無いけど、たぶん、強さを推測するに、バルセリア魔導高等学校の、A組の下位クラスの実力が有ると思うと、ジェミは皆に告げた。
12時45分には、彼等は競技場に入場し、待機席に着席し、
対戦相手も着席して、御互いが、御互いを観察する事が出来るようになった。
相手のチームは、全員が旧型の魔導防護服、その装備で、一回戦を勝ち抜いたんだから、確かに、実力は有るのか、
見てると、前の対戦チーム、『星に踊る猫』よりは、真剣で、彼等は決して笑って無い、色々と打ち合わせしているようだ、
ああ言う、真面目なチームに対して、オルはどう言う作戦を立てるのか、ちょっと興味が湧いてきて、
俺は、対戦チームの会話を聞くより、ハル達の会話を聞く事にした。
ダンが、オルに聞いた、
「オル、彼等、私達の事を警戒している、前の戦いのように、油断しないと思うし、どう言う戦いをしたら良いと思う、」
オルは、考えながら、
「オーソドックスに、考えるなら、正攻法には、正攻法だと思う、逆に、奇を狙った作戦も有効かも知れないが、私達は、そんな練習をして無いから、失敗する確率は高い、」
ダンは、頷きながら、
「そうなると、何時もの攻撃者2、守備者3、狙撃手1、か、オル、」
オルが、答える、
「そうだな、攻撃者と狙撃手が、相手の、攻撃者を確実に、潰し、早くポイントを稼いだ方が良いと思う、相手もポイントが減れば、攻守入れ変えて来ると思うし、」
納得した、ダンが、
「じゃ、其で、」
オルが右手を上げながら、ダンを制止して、
「ちょっと待ってくれ、問題が、一つ有る、」
ダンが、不思議そうに、
「問題?」
オルが、頷きながら、
「問題は、ドーリだ、相手が、ドーリが素人だと、知れば、必ず、ドーリを狙ってくる、となると、仮に、ドーリが3ポイント取られれば、私達は、4ポイントを取る必要が有る、」
ダンは、暫く考えて、
「3ポイントで、同点の場合は、」
オルは、首を振りながら、
「常識的に考えて、審判は、B組を勝ちにする、筈だ、」
ダンは、苦しそうに、
「・・・そうだよな、オル、」
オルが、言葉を続ける、
「其処でだ、ダン、ドーリを王にし、ハルが、ドーリを守るんだ、」
ドーリが、びっくりして、
「えっ!ええええええええ!!!」
エミが、ドーリを叱るように、
「落ち着いて、ドーリ、ハルなら、大丈夫、絶対、貴女を守るって、」
オルは、エミの意見に頷いて、
「前の戦いで、私も、そう思えるようになった、だから、布陣は、攻撃者左から、私、アンリ、ダン、守備者は、左から、ジェミ、ハル、エミ、更に守備者は、ジェミ、エミが先行して、逆、山形とする、」
ハルは、オルの作戦に、
「そうか、僕が、ドーリの前に入れば、相手は、必ず僕とぶつかる分けだね、オル、」
「そうだ、たぶん、一人は、必ず抜けてくる、其は、狙撃手だと思う、ハルなら、防げると、私は思う、だから、その後、必ず、ジェミとエミで、狙撃手を潰すんだ、」
ハルは、納得して、
「分かった、オル、大丈夫だ、出来る、」
ダン、が立ち上がり、
「さぁ、審判が此方に来る、そろそろ、時間だ、皆、オルの作戦で行こう、私達は、絶対勝てる!」
全員が立ち上がり、審判から、魔導制限腕輪を受け取り、全員が、腕に嵌めた後、
全員が、ダンに合わせて、叫ぶ、
「ファイト!!オゥウウウ!!!」
そして、彼等は、迷宮戦場に入って行った。
「えっ、ドーリちゃんが、王になるの?」
『星に愛されし民』が、其々のポジションに就き、その布陣を見た、ローシィが、驚いて、俺に聞いてきた、
「ドーリは、三日前、参加した、素人なんだ、一回戦は、バレなかったけど、今回は、無理と皆が判断して、後ろに下げたんだと思う、」
ローシィは、驚いて、
「へぇ、そうなの、でも、王は混戦になると、一番、狙われる、ポジション、大丈夫なの?」
俺は、笑って、
「まぁ、彼等なら大丈夫だろ、見ててみ、たぶん、驚くって、」
ローシィは、半信半疑で、
「ふぅーん、」
と、言って、ローシィは視線を迷宮戦場に戻した。
オルの、作戦で、僕がドーリを守る事になった、
「大丈夫だよ、ハルなら、絶対、出来る、」
エミは、そう僕に言って、配置に就く為に、僕の側から、離れて行った、
ふぅ、
皆が、また、僕に期待してると言う、僕なら出来ると言う、
「だだ、だいじょうふ、でしゅよね、ハルしゃん、」
ドーリが、緊張して、言葉が、崩れてる、本当に緊張に弱いんだ、ドーリは、
「大丈夫だよ、ドーリ、君の所には、たぶん、誰も来ないよ、」
僕は、彼女を安心させる為に、言葉を掛けた、彼女は泣きそうな顔で、
「ハルしゃん、」
ぷっ、緊張で酷い顔、笑っちゃ悪いけど、笑う、
「・・・アハハ、」
ドーリも、釣られて笑いだした、
そうだ、僕が弱気じゃ、ダメだ、僕に皆は期待している、
僕は、期待に答えられる、
ならば、僕がする事は、一つ、
僕は、迷宮戦場に有る時計を確認した、
試合は15分を過ぎ、膠着していた、相手チームは、やはり、僕達を警戒していた、機動力は無いけど、慎重だから、焦って前に出ない、ダンも、アンリも、オルも、有効打が出ない、
魔導術の、『力』が弱い、
此れが、僕らのチームの欠点、
僕が、前のチームの、攻撃者、確か、ラーリアって人から、ポイントを奪えたのは、彼女が、高速で、突っ込んで来たからだ、
彼女は、自滅した、
僕は、10回、『星の力』を乗せた、『力』を纏った右手を、高速に出しただけだ、彼女は自分から、右手にぶつかった、
だから、有効打も、ギリギリ、3ポイント、
彼女は、3ポイント取られた後、ギリギリ、『力』でガードしたから、残り七発で跳ばされた、
まぁ、その後が大変だった、彼女は、C組が、おかしいって叫ぶし、反則って騒ぐし、審判迄、疑うし、
僕は、少し、二回戦は慎重になろう、そう考えていた、
でも、ダメだ、
やはり、このままじゃ、勝てない、
御互い、ポイントが取れない場合、引き分け、審判判定、ならば、たぶん、相手の勝ちだ、
このままじゃ、僕達は負ける、
試合開始、20分、後、5分、
オルの、場所から、一人、抜けて、此方に来た、
オルが、勝負を賭けた、あれは、態とだ、
残り、4分、
半分範囲を越えた、
ジェミ、エミが、動き始める、だが、遅い、其も、態とだ、
オルの作戦は、相手が動く時、たぶん、狙撃手だと言った、もし、狙撃が無理だと知ったら、引き返す、だから、誘い込めと、
残り、3分、
ドーリとの距離が、6メータを切った瞬間、
僕は、同時に、3箇所に『星の力』を発動させた!!!
世界は、反転する、『星の瞳』が、僕の世界を構築し、時は、止まる、
狙撃手が打った『力』は、大きく曲線を描き、ドーリに向かっていて、
止まっている、
あれほど、興奮に包まれた、競技場は、音一つ無い世界になった。
感じる、膨大な『星の力』が、僕の右胸に流れ込み、僕は、猛烈な勢いで、消費、続ける、
急げ、急げ!急げ僕!!
僕は、叫んでいた、
時が、動く前に、!!!
トン、
僕は、ドーリを、左に、ほんの少し、動かした、
たぶん、此だけで、ドーリは、数メータは、吹き飛ぶ、
後は、アイツだ!!!
ブゥオゥウウウウシュウウ!!
僕は、地面を蹴った!!!
ゆっくりと、時は、戻り始める、
カチッ、
時が、動き、
残り、2分、
早く!早く!早く!
僕は、叫びながら、
足に、腕に、瞳に、
『星の力』を、送り、
僕は、狙撃手に、
後、2メータ、
後、1メータ、
彼は、逃げようとしていた、
50センチ、
逃がさない!!!!
右手に、圧縮した『力』を纏い、
僕は!!!!
残り、1分!!!
ドッガアアアアアアンンン!!!
思いっきり、『力』を纏った、右手で狙撃手を、ひっぱたいた!!
その瞬間、時は、戻り、
ゴタン!ゴタン!ゴタン!
狙撃手は、2メータは、吹き飛び、
ジェミとエミが、追撃する為に、狙撃手に近付いた時、
ピィイイイイイイイイイ!!!
試合は、終了、
僕は、迷宮戦場
に浮かび上がる、『光』の得点ボードを見た、
1➖0
僕達は、
勝った、
ワァアアアアアアアアアアア!!!
えっ!
競技場は、大歓声に包まれ、
まっ、まさか、
3年生が、2年生が、1年生が、
先生達が、
皆が、
皆が、
バルセリア魔導高等学校の皆が、僕達に、
僕達に、歓声を贈ってくれている、
僕達に、
総立ちに、なって、喜んでくれている!
その、光景を見た、
その、声を聞いた、
僕は、
僕は、泣きそうになった、
そうだ、
僕達は、
ずうーっと、
孤独に、
誰からも、期待されず、
ただ、孤独に、戦っている、
そう、
そう、思っていた、
でも、違った、
皆が、
学校の皆が、
僕達の、勝利を、
喜んで、くれているんだ、
喜んで、
その時、
はっきりと、
分かった、
僕達は、学校の代表だった事を、
此れが、学校を背負うと言う事だと言う事を、
そうだ、
アルバート先生は言った、
結果よりも挑戦する事が大事で、選ばれた人は勿論、選ばれなかった人も選手を応援する事で、皆が一つになれる。
その時、皆は、始めて、此の高校にいる意味を理解する、と、
僕は、初めて、この言葉の本当の意味が分かった、
本当に、泣きたくなった、
「ハル・・・しゃ・・ん」
ドーリが、泣きながら、
ドーリ、君も、感激して、
「ひ、ひどいでしゅ!!ハルしゃん!!いきなり、突き飛ばしたぁあああああ!!!」
・・・
忘れてた、
ご免なさい、