地区予選開催
5月10日の光曜日、今日はウェルド公国東部地区、魔導格闘技大会団体戦の地区予選が開催される。
団体地区予選は、東部の魔導高等学校4校の学生と街や大都市に有る学生のクラブチームが参加する、大きな大会だ。
基本、地区予選の参加条件は無い、だから、魔導高等学校の学生なら、個人戦、団体戦、共に、各学年別に、誰でも参加出来る、
勿論、魔導防護服は自分で用意しなくては、ならない、
そして、この予選の、上位、個人戦では4名、団体戦では2組が、6月の地区大会で、学校推薦の個人12名、団体4組と争い、その、上位個人3名、団体2組が、7月の公都で行われる、全国大会に出場出来る。
参加生徒は、200名、応援、観客を含めると500名を越える、大きな大会だから、東部の田舎町、バルセリアでは、開催出来ない、その為、東部一の大都市、ベルトリアに有る大競技場で開催され、
ちなみに、個人戦の地区予選も、再来週の光曜日に、同じベルトリアの大競技場で開催される。
ベルトリアは、バルセリアからドルセリアを越えた南西に位置し、魔導汽車で、3時間、掛かる場所に有る、
だから、俺と、先生、ローシィ、『星に愛されし民』の皆は、バルセリアの駅に5時に集合する事になった。
で、待ってると、ブライも来た、
「お前、仕事は、」
と、俺、
「おぅ、もう、終ったぞ、皆の為に、弁当、作った。」
・・・
まさか、
「テーブル付の、豪華な奴か、」
「イヤ、流石に、普通の弁当だ、だが、ジェミ君には、持って貰ってるけど、」
俺が、ジェミを見ると、ジェミは、頷いていた、俺はジェミに、
「良いか、ジェミ、人前では、『星具』、使うなよ、突然、弁当、出すなよ、」
ジェミは、
「分かってますよ、スグルさん、」
俺は、前日、子供達に、『星具』を使うなと、釘を刺していた、『星具』を使えば、反則だし、対戦相手に対しても危険であり、その場合は、俺は直ぐに、中止させるつもりだ、
其れと、彼等は、まだ、『星託し定め』を成し遂げていない、だから、行動を妨げるような、不必要な目立ちは、彼等の足枷となる気がし、
その為、ジェミにも、あまり、『星具』を使って欲しくない。
全員が、集まり、時刻は5時、
俺達は、魔導汽車の個室を二つ取って、ベルトリアに向かった。
『星の遺跡・密林』を攻略した時、俺達は7枚の古代金貨を手に入れ、其を、メルティスト先生が、放課後自主講座の活動資金として、1枚50万RGで換金したので、俺達はリッチになり、
ベルトリアへの移動にも、魔導汽車の個室を借りる事が出来た。
俺とローシィ、メルティスト先生、ブライ、ダンとオルで、一部屋、
ハルとエミ、ジェミ、リア、アンリ、そして、ドーリで、一部屋を借りた、
勿論、皆、朝が早いので、ブライが朝食用の、サンドイッチを用意してるので、デザートと飲み物と一緒に、其を食べた、
食べながら、メルティスト先生に話しを聞いたんだが、A組の、ガルホール・スターゲス、B組のトーネル・サンドール達は、金持ちだから、前日から、ベルトリアに宿泊しているそうだ、
宿泊を含む、外出は、学校の許可がいる、だから、先生もエルさんから聞いて知っている、
先生も、予算が有るから、前日から、宿泊する事を考えてはいたんだが、リアの、海水浴の提案で、止めたと教えてくれた、
ダンも、メルティスト先生に、昨日の一日は、人生で、本当に良い思い出になった、と、先生に感謝していた。
俺は、そんな会話を聞きながら、窓から見える、見渡す限りの、パンの木畑の圧巻の景色に見とれていた、
壮大なパンの木畑、木々には、数百種類の有りと有らゆる色の、パンの木実が実り、その実を、多くの人達が、収穫していた。
そんな、子供のように、景色に見とれている俺を見て、ローシィは、ニヤニヤと笑っていた、
俺は、彼女に、何が、可笑しいんだ、と聞いても、彼女は、別に、と言うだけで、其れ以上は、語ろうとしなかった、
俺は、何だかなぁ、と、思いながら、窓の景色を見続けた。
魔導汽車は、ドルセリアを越えて、ベルトリアに着いたのは、8時、
流石に、大都市、スグルの世界で言う、バスに当たる、大型魔導四輪車が走っている、
俺達は、急いで、競技場行きの大型魔導四輪車に乗り、競技場に向かった。
魔導四輪車には、制服のデザインが異なる沢山の学生が乗っていて、皆、魔導格闘技大会に出場する選手のようで、大きな荷物を担いでいる、
たぶん、旧式の、魔導防護服だと思う、前にメルティスト先生に着て貰ったから、大きさは、知っているし、
其れに、比べて、我々の荷物は、ジェミが収納しているから、殆ど、手ぶらの状態、出場する選手と言うよりも、観戦に行く、学生と言う感じだ。
魔導四輪車は、30分ぐらい走った後、巨大な競技場に着いた、
ダンが言うには、この競技場で、今週は、団体戦の予選会が開催されて、再来週に、個人戦が開催され、勿論、個人戦の方が、参加人数も、規模も大きいらしい、
団体戦の予選は、街のクラブチームや、代表に選ばれなかった、魔導高等学校の準チームがエントリーするんだと、此れも、ダンが俺に教えてくれた。
俺達は、入り口で受付し、此処で、参加選手の学校名と組を大会委員会に提出し、名簿に記載され、チームリーダに番号札が渡される。
ダンが貰った番号札は二年生部門、24番、此れはかなり後ろの方で、結局、二年生の出場チームは、32チームで締め切られた。
競技場は、12メータ✖24メータの戦場が12有り、二年生は、真ん中の4戦場を使う、
第1回戦は、16試合、10時から、12時迄、行われ、1試合、25分、決着が付かない場合は、有効のポイントを審判が判定して決める。
午後から、第2回戦が8試合が行われ、此れも、25分、1時から、2時迄、
そして、2時半からは、第3回戦、4試合、25分、3時半からは第4回戦、2試合、此処から、戦場は、24メータ✖24メータ、試合時間は、25分、
此処で、ポイント、及び、審判の判定で、3、4位と、
上位、2組が決まり、上位、両チーム共に地区大会出場チームとなる、
4時からは、最終戦、戦場は、24メータ✖48メータとなり、試合時間は、30分、此処で地区予選の優勝チームが決定する。
試合の組み合わせは、学校、クラブ、等を考慮して、大会委員会が決め、決まったら、対戦表と選手名簿が、各チームに渡される、
此れは、出来るだけ、優秀なチームを見付けたい、と言う、委員会の主旨が有るから、らしい、
だから、初っぱなから、同じ高校が、対戦する事は無いと、ダンが俺に教えてくれた。
ダンの言う通り、我ら、『星に愛されし民』の初戦の対戦相手は、マルドリアのクラブチーム、『星に踊る猫』って言う、可笑しな名前のチームで、10時30分に始まる。
因みに、B組のトーネル・サンドールは、11時、A組のガルホール・スターゲスは、11時30分から、試合が始まり、同じ高校で時間が重なる事も無かった。
この事は、ジェミも知ってたようで、バルセリアの高校生が、皆の試合を見に来るのは、午後から、1年から3年まで、多くの生徒と先生達が、この会場に来ると教えてくれた、
俺は、皆に、見に来る彼等の為に試合をする分けじゃ無い、何時もの気持ちで望め、と、言って、皆を激励した。
試合が始まる、30分前に、俺は、『星隠し』を張り、その中でジェミが、着替えの入った荷物を出して、各自が、その荷物を持って更衣室に行き、魔導防護服に着替えた。
その後、着替えた、彼等が、競技場に入った時、
ザワ、ザワ、ザワ、ザワ、ザワ、ザワ、ザワ、ザワ、ザワ、ザワ、ザワ、ザワ、ザワ、ザワ、ザワ、ザワ、
会場は、一時、騒然となり、
ん?
なんだ?
「スグル、魔導防護服よ、」
と、ローシィ、
俺と、ローシィ、メルティスト先生、にブライ、そして、今回の大会には選手として、出場しないリアは、競技場に入る事は出来ないので、
観客席から、皆を見ていたのだが、我らが、チーム、『星に愛されし民』が入場した時の、他の観客の反応に、俺は、驚き、
ローシィが、皆を見て観客が騒いだ、その理由を、俺に、教えてくれた、
「皆が着ている、魔導防護服は、先週、ロートス社から発売された、新製品で、一着、20万RGはする、高級品、其を、全員が着ていたら、皆、ビックリするわよ、」
言われてみれば、殆どの選手は、あの、甲冑型の魔導防護服を着ているし、ちゃんと、お鍋のような物、被ってる、
「発売当初から、人気で手に入れるのも難しいって聞いてるし、」
ローシィは、ちょっと言葉を切って、
「私も、たぶん、スグルから聞いて無かったら、田舎の高校生が、高価な魔導防護服を着ているのを見たら、ビックリすると思う、」
ローシィが、ちょっと言葉を止めたのは、たぶん、貧乏な田舎って言おうとしたからか、
まぁ、あれは、魔導皇の学長が、ロータス社に寄付してくれと頼んだから、貰えたと聞いている、
そう、考えると、
うちの、学長、スッーゲェ、と、余計そう思うようになった。
そう言えば、対戦相手を見て見ると、男子3人、女子4人の構成で、6人が、旧型の黒い魔導防護服を着けている、その特徴は、頭のヘルメットに、猫耳の飾りを着けていて、
俺は、ローシィに、反則じゃないのか、と聞いたら、相手と区別する為、布で出来た飾りなら、ある程度許されている、と教えてくれて、
そう言って、良く見て見ると、色付けしたり、絵柄を入れたり、飾りを付けたり、確かに、旧型の魔導防護服を飾っている学生は、多かった。
その飾りも、チームで統一しているから、一目で、何処のチームか、分かった、
其れに、比べて、チーム、『星に愛されし民』は、新型の魔導防護服なのは、良いんだか、貰い物だから、色がバラバラで、見た目、チームって、感じはしなかった、
まぁ、この大会は、予選だし、万が一、全国大会に出るようなら、お揃いの魔導防護服を揃えれば、良いんじゃねぇの、って、俺は、考えていた。
で、再び、対戦相手を見ると、一人の女子だけが、黒い新型の魔導防護服を着て、頭に、猫の耳飾りをしている、
・・・
徹底してる。
俺は、『星の瞳』で、『星に愛されし民』を見た、勿論、彼等が何を話しているのかも、分かる、
競技場に行く、彼等に、俺は、何もアドバイスはして無い、なんせ、俺は、魔導格闘技の専門家じゃ無い、彼等にアドバイスしたくても、出来ない、
だから、彼等は、自分達で、考えて、作戦を練る筈、其れで、俺は、彼等が、どんな作戦を立てるのか、興味が有り、『星の瞳』で覗く事にした。
ジェミが、相手チームの事を話していた、
「マルドリアのクラブチーム、『星に踊る猫』は、結構、有名なチームで、売りは、攻撃の素早さと、軽業のような動き、3人が攻撃者で、2人が守備者、」
ダンが、
「あの、新型の魔導防護服を着ている、人は、」
ジェミは、彼女を見ながら、
「あぁ、彼女は、ラーリア・テラスレード、通称、『電光のラーリ』、クラブのエースで、トップ、攻撃者、」
ダンが、考えながら、
「となると、此方は、ドーリが狙われて、点が取られないようにして、攻撃する必要が有るって事か、守備優先、にするべきか、」
オルは、首を振った、
「たぶん、逆だと思う、攻撃優先に、見せかけて、王への攻撃を誘った方が良い、たぶん、ハルなら、彼等の攻撃を躱わせる、」
ダンは、ハルに聞いた、
「ハル、どう思う、オルの作戦、」
ハルは、頷いて、
「良いと思うよ、前回の遺跡の攻略の後、結構、『星導術』を使えるようになったし、たぶん、躱わせる、と、思う、」
ダンは、決まった、と言う表情で、
「じゃ、其れで行くとして、役割は、」
オルが、
「攻撃者は、右から、私、アンリ、ダン、狙撃手は、私、守備者は、中央よりに配置、右から、ドーリ、ジェミ、エミ、が良いと思う、」
ダンは、真面目だから、一応、皆に、意見を聞いて、
「皆、オルが、言った役割で、良いかい、」
全員が、頷いたので、
「じゃ、其れで、行こう、」
その時、審判が、試合、5分前を、告げて皆に魔導制限腕輪を渡し、腕輪を受け取りながら、全員が待機椅子より立ち上がり、ダンが、
「じゃ、皆、魔導制限腕輪を着けて、よし、行くぞ皆、ファイト、オゥ!!!」
ダンが、掛け声を上げて、チーム、『星に愛されし民』は、団体戦の戦場、迷宮戦場に向かい、
一人、オロオロしている、ドーリを除いて、皆は、自信に満ち溢れた足取りで、迷宮戦場の中に、入って行った。