【第1章】可愛い転校生とかありきたりすぎだろ
第1章【可愛い転校生とかありきたりすぎだろ】
「ピピピピ、ピピピピ」
スマホのアラームが朝の知らせを告げる、なぜ朝のアラームはこんなにも不愉快なんだろう。しかし、朝もなかなかいいものだ、一階から漂ってくる朝食のいい香りが無性に空腹感を煽る。
「おーい、おーいってば、兄ちゃん起きてよ!
今日は金曜日だよ!一週間最後の学校だよ!
起きなって!」
起きてるから、もう起きてるから、体がまだ動きたくないだけだから。布団が俺を離したくないらしいから。おやすみ。
「いや起きてんじゃん!さっさと起きないと皆勤賞取れないよ!あ...今日の朝ごはんはシチューだってよ!」
「だからさ...いつも言ってるけど、勝手に俺の心読むなって!しかもお前の声、頭ん中でめっちゃ響くんだよ!あっ、」
またやってしまった、こうやって声に出して返事をしてしまうと俺1人で話しているようにしか見えない。というのも、弟?妹?今も尚どっちかは分からないが、こいつは俺の脳内にいる。名前は小出心。
心が流産で死ぬ寸前、俺の精神転送能力で心の精神を俺の精神に移した。そのため、俺の脳内には俺と心、2人の精神が宿っている。
「えーいーたー?起きてるのー?もう朝ごはんできてるわよー!」
「ほーら、お母さんも呼んでるよ!起きなって!」
わかった、わかった、起きるから。
重い体をゆっくりと動かし、部屋のカーテンを勢いよく開ける。
「あ゛ー、ねみい...」
俺は目を擦りながら、一階への階段をゆっくりと降りて行く。
「あんたいつまで寝てんの!どうせまた夜更かししたんでしょう、さっさとご飯食べて学校に行きなさい!」
「はーい...」
飯はスープとトーストとカリカリベーコン。か。
いつも朝食はこれだが、俺は案外好きだ。
ってかシチューどこ?シチューどこですか
「ほらぁ、もうお父さんは仕事に行ったのよ、あんたも早く用意して行きなさい」
俺は飯をかき込み、ものの数分で完食した。
洗面台で顔を洗い、制服に着替えて髪を手ぐしで簡単に整える。
「いってきまーす」
「はぁい、いってらっしゃい。忘れ物はないのー?」
「無いよ、んじゃ、いってくるー」
朝の一人の通学路、時間には余裕があるので、ゆっくりと住宅街を歩く。
「はっ、アイツまた一人で歩いてんぞ」
「学校に友達いないんだよ、たぶん...」
あー、やだな...めんどくさい。
気にしてないつもりでも傷つくものだ。
「兄ちゃん、あんなの気にしないでいいよっ
男の方はバカにして言ってるみたいだけど、女の方は男に合わせて言ってるみたいだし、ボクあーんな風に人に流される奴きらい。兄ちゃんには僕がいるんだし...他の人間なんてどうでもいいでしょっ?」
ああ、最後だけは違うが、流される人間が嫌いなのは同感だ。
そういえば、あのクソカップルはうちの学校だったか、同じクラスの人間では無さそうだが...
あんな奴らのことはどうでもいいので考えるのをやめた。あー、それと、あんな汚い奴らの心なんて読むな、お前まで汚れるぞ。
「えー?心配してくれるんだ、兄ちゃんがやめろってなら辞めるけど...心を読んで欲しい相手がいる時は言ってね。」
まあ、そんな時は来ないだろうけど。どうしてもってなった時には頼むよ。
「ふふっ、兄ちゃんのためなら何でもしたげるんだからさっ」
駄弁っているうちに校門が見えてきたが...
正直嫌だ。学校なんて行きたくもない。
「そんなこと言わずにさっ、ボクがついてるからさ、一緒に行こ?」
ああ、俺にはこいつがいる。決して一人じゃない。
だが、校門に立ってみるとまた訳が違う
「よーし、よし、大丈夫だよ。みんな校門通ってるけど、兄ちゃんのこと悪くは思ってないみいだしさ...というか別になんとも思ってない的な?」
心にはバレているみたいだ、俺には周りの人間全てが敵のように感じてしまう。心のおかげで少しは気持ちが軽くなる。
靴箱から自分の上履きを出し、靴底に貼り付けてある画鋲を取る。なんて嫌なルーティンなのだろうか。
「おはよう、小出くん。」
彼女は俺の...2-4組の若い女性の先生だ。
「おはようございます、若月先生 。」
「あら、それだけ?
お綺麗ですねーとか言えないわけぇ?」
「お、お綺麗ですね...」
「なんて、冗談よ、ふふっ
からかってごめんね?影太くん反応が可愛いんだもん。」
「やめてくださいよ...」
「悪かったと思ってるわ、というか...
今日の日直は影太くんじゃなかったっけ?」
「あ、そうでしたね。では、先生」
「ええ、私は会議の後に教室に来るから、それまでよろしくね。」
「分かりました。では」
「あーっと、何度もごめんなさいね
今日からうちのクラスに転校してくる子がいるから、朝のホームルームは校歌だけでいいわ、それじゃあよろしくねっ♡」
「分かりました。では、先生」
教室、特に嫌な場所だ。もし、死んでも行きたくない場所はどこですかと聞かれれば俺は迷いなく教室、と答えるだろう。
手の震えを隠すため、ズボンのポケットに手を突っ込んで教室に入る。
「おい、クソ陰キャ。今日の昼休み体育館こいや」
「はぁ?なんでいつも俺を一」
「こいっつったら来るもんだよなあ!?」
今俺を突き飛ばした男の名前は倉栄、
桜羽倉栄。
中学の時からの腐れ縁。俺だけをいじめの対象にしている。周りのヤツらは自分に標的が向くのが怖いのだろう。見て見ぬふり。このクズと同じ、ゴミ以下の人間達だ。と言っても、俺はこいつに対抗するだけの根性さえもない、力もない。いや、【力】はあるがヘタレだ
「ははっ、あいつ、またやられるんだな。俺達も見に行こうぜ」
「そりゃいい、今回も抵抗せずにボコボコにされるに千円」
「んじゃあ、ウチはそこの影太くん?が圧勝するに一万円」
は?え?誰?
「ねー、大丈夫?立てる?君、なんでやり返さないのさ。」
「ありがとう、これは-」
「なんだぁ?お前ぇら付き合ってんのか?」
「うーん、じゃあそういうことにしておくわ。
あと、貴方。エータ君?」
「てゆーかお前、結構いい顔してんじゃねぇか、今日俺んち来いよ、そしたら今、俺の邪魔したこと許してや一」
「あんたには話してないから。ごめんなさい、あんたみたいなやつにはこう言わないとダメね。
クソ野郎。黙れ。」
「は...い...」
倉栄は気をつけの姿勢になり、黙った。そう、あいつが黙った、どういう事かさっぱり分からない
「兄ちゃん、あの子、
ボク達と同じなんじゃないかな..?」
いいや、まだ断言できる程の証拠はないだろう。
「ああ、俺は影太、小出影太で間違いない。」
「君が影太くんなんだね、ウチは操美、臼井操美だよ。今日からこの学校に転校してきてさぁ、この学校のことわかんないからエータくん、案内してくれない?」
茶髪のロングで口元にホクロがある彼女は、微笑みながら俺に言った。
「んじゃ、まずは、ここが2-4のクラスで一」
「んー、歩きながらしてくれない?このクズと同じ空気吸ってると吐きそうになるの。あと、そこのクズ、あなた名前何?」
「桜羽倉栄です...」
「桜羽倉栄、もう喋っていいわ。でも今後一切、私に話しかけないで、いい?」
「はっ...はい...」
「そんじゃ、行こ?エータくんっ」
「ねえ兄ちゃん、この子なんか嫌い、兄ちゃんにくっ付いてさ...」
いいから黙ってなさい
「うん、行こうか。」
俺は彼女...操美に学校のクラスの場所やトイレの場所、体育館や職員室など、全ての場所を通りながら教えた。
キーンコーンカーンコーン
「やばいね」
「まずいな、今思い出したけど...俺は日直だった。」
なんで教えてくれなかったんだよ心!
「だってさー、黙っててって言われたしさー」
こいつこういう時だけ...
「はぁはぁ、ギリギリ間に合った...エータくんありがと、教えてくれて...」
「いや、ギリギリ間に合ってねえから、チャイムなった時点でアウトだから。」
「ほぉーらぁ、そこの二人ぃ、さっさと座りなさい?あ、操美ちゃんは教壇に来てね。」
「「はーい」」
「はぁい!ということで、今日からこのクラスの仲間になります!臼井操美さんです、さぁ、自己紹介を」
「はい、ウチは臼井操美といいます。えーっと、質問あります?」
「はーいはーいっ!
臼井ちゃんは彼氏とかいるのー?」
「はい、いますよ?そこのエータくんです」
「えっ、あっ、はい。質問に答えてくれてありがとうございました...」
いや...え?
「私の兄ちゃん取られた...兄ちゃんああいうのが好きなの?」
いやぁ、可愛いっちゃ確かに可愛いけど違っ、っていうか教室どよめいてるんですけど、俺を見ないでくれ...
「ねっ?エータくんっ♡」
ここで違うと言えば変な空気が流れ、彼女の面子にも傷がつくだろう..ああ、もうやけくそだ。
「あっ、ああ、そうだよ...」
「ということです!他に質問は?」
教室が静まり返る...あんな回答したせいだ、皆も俺と同じく思考が停止してしまっているようだ。
「質問はないみたいね...えっと、じゃあ臼井さん、ちょうど影太くんの隣が空いてるから...そこに座ってくれるかしら」
「はいっ」
にこやかな顔をしながら、彼女は席に座った。
「今日からよろしくねっ、か・れ・しさん?ふふっ」
あっ、はい。
暇つぶしです、また描きたくなったら続き書きます