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愛を叫ぶ男達

4月になりザックヘイム=デッケルハインがシュアリリス学園高等部に入学して来た。


どこからツッコんだらいいのか、銀髪の綺麗なおば様(ザック母)と、この間家の屋根に乗っていたアポカさん(ザック父)が父兄席に座っている。


しかしだね、あのお母様の恰好…どう見ても貴族のドレスじゃないかーー!アポカさんがザックのお父様だったのにも驚いたけど、アポカさんの着ているそれ、どう見てもカステカート王国の軍服だからっ!この間ヴェルヘイム様が着てたしぃ~肩の飾りや勲章がギラギラしている所を見ると、アポカさんの方が正装かな?


いや、突っ込むところはそこじゃねえぇ!


「ちょちょちょーーーと!」


ミリタリーオタの柿沼さん、カッキーとその仲間達が軍服祭りでお騒ぎだ。そしてアポカさんに果敢にも攻め込んで、写真をお願いします!と、ご夫婦のツーショット写真を撮り始めた。すると周りの生徒達やご父兄までもが、携帯電話を向け始めた。


「あーあーご父兄の方はー少しお静かにお願いしまーす。」


橋本先生がマイクを使って注意をしているが、父兄席はざわつきっぱなしだ。


「…っ。」


その様子を見ていたザックが何度も舌打ちをしているのが見えて、私は在校生の座席位置から小走りでザックの近くまで行くと


「ザック、顔が怖いよ?ほら桜ちゃんが見てるから。」


と囁いてあげた。ザックは急いでいつもの笑顔になった。


そう…入学式当日、シュアリリス学園に登校してきたザックヘイム=デッケルハインは女生徒からものすごい熱烈歓迎を受けていた。


ザックヘイム祭り&ロウ様祭り再びである。そんな大騒ぎの中、1年生の教室へ向かう廊下でザックは運命の出会いを果たしていた。


ザックの運命のお相手は雲井 桜さん。外部入学の新入生だ、クラスはA組。


ザックは廊下で雲井 桜さんの前で跪くと


「あなたと運命的に出会いました。今日は私の人生で一番幸せな日になりました。どうか私の伴侶になって下さい。」


と頬をバラ色に染めてキョトンとする雲井 桜さんに手を差し出したそうな。


あ、実は私は見てないんだよね~全部カッキーと萌ちゃんからの又聞きね。


そんな公開プロポーズと騎士の礼?を間近で見てしまったカッキーと萌ちゃんが萌え滾って憤死したって言ってたよ。でも、萌ちゃんもカッキーも生きてるね?と2人に聞いたら2人から同時に頭にチョップを受けてしまった、イタタ…。


兎に角


入学早々ザックヘイム=デッケルハインの好感度フラグが最高潮に達した後、公開プロポーズでいきなりのザックヘイム=デッケルハインすでに心の伴侶あり状態を知らされた、祭りに参加してワッショイワッショイしていた女子達は、天国から地獄を味わったそうだ。


そんな彼女達の怒りの矛先が雲井 桜さんに向かったのは自然な事だ。だがしかし、身も心も真っ直ぐなザックヘイム=デッケルハインは群がる女生徒に向かって


「雲井 桜さんを傷つけたりする方は僕が絶対に許しません。二度と日の光を浴びない場所に叩き落してあげます。」


と強烈な威嚇をして煩い女子達を黙らせたのだ。


しかし少し時間が過ぎれば女生徒達もちゃっかりしたもので、それでもザックヘイム=デッケルハインは美少年だ!美しいって素晴らしい!美形万歳!をスローガンに掲げ持ち、『ザックヘイムを愛でる会』を発足していた。恋をしているザックヘイムは美しい…これに尽きる。


それが入学から僅か2週間以内に起こったザックの周りで起こった事件だった。


ザックはずっと浮かれていた。


雲井 桜さんに会った瞬間にビビビッと来たらしい。


「会った、しかも背中を見ただけなのに、痺れるような魔質を感じたんです!正面に回り込んでサクラを見た時にもう絶対彼女しかいない!と思ったんです。海斗先輩も分かりますよね?この出会った瞬間の高揚感!運命の伴侶は彼女だとはっきりと分かるこの感覚!」


「…お、おう。」


海斗先輩の目が泳いでいる。いやさーうちら政略結婚だからさービビビもピピピも無いんだわ。しかもこの男、14才の時に私に向かって、お前とは政略だから、愛なんかねーし。とか言っちゃってるし?


恋に落ちた…という表現はまさにザックのような状態の人の事指すのだろうけど、私と海斗先輩は長い間かけて育んだと表現したほうがいい気がする。それこそ異世界跨いで育んでやっと…だけど。だから燃え上がる何とかとか、狂おしいほどの何とか、には共感は得られないんだよ、ゴメンね。


まあ私や海斗先輩からの共感を得られなくても、今のザックには問題無いよね。


恋ってすごいな~。雲井 桜さんにロックオンしたザックは毎日愛を囁いている。一年前の海斗先輩を見ているようだ。


花音ちゃんに


「おかしいな?私達『正門前で愛を叫ぶ』のドラマの再放送見せられている?」


とニヤニヤしながら聞かれた。いやーあんなにザックが朝も早くから愛を叫ぶ馬鹿になるとは思わなかったわ…。そりゃそうと…


「そういう花音ちゃんも愛を叫ぶの兄の方と上手くいっているんじゃないの?」


私がそう耳元で聞くと、頬を染める花音ちゃん。綺麗ですよ~!


そう、花音ちゃんは去年の学園祭の後から栃澤 隼人さん…海斗兄とお付き合いを始めたらしい。20才と16才!絶妙なる年の差が、年下彼女を溺愛する元祖変t……の執着心が見えて怖………微笑ましい。


今日も今日とて、愛を叫び終わった男達と一緒に下校する。


不思議なものである。私と海斗先輩とザックが普通に電車に乗っている。そして帰宅前に保育園に寄って彩香を連れて帰るのも2人共楽しそうについて来てくれる。保育園ではザックと海斗先輩は大人気だ。


「ロウが来たー!」


「ロウ様っ!」


と小さい子供達に囲まれるザック。海斗先輩はママ達に囲まれている。


「お帰り、お兄ちゃん達、麻里姉~!」


彩香が元気よく外に出て来たので、帰ろうとすると


「ロウ様、肩車して~」


と、あれは横内 康太君だね。ザックに肩車されて喜んでいる。そのザックの足元で


「私は抱っこ~。」


と新田カンナちゃんだ。ザックが横内 康太君と新田カンナちゃんを両方抱っこした。その時…。


「ダメッ!カンナ離れてっ?!」


突然走り込んで来た新田 カンナちゃんのママが物凄い勢いでカンナちゃんをザックの腕からもぎ取っている。


「遊んじゃダメだっていつも言ってるでしょう?!」


いやいや?あのザックは不審な外国人じゃないですが…。怒られたカンナちゃんは若干涙目になってきた。


「ママいつもダメダメばかりで、理由をおしえてよ!康太君悪い子じゃないよぉ!」


ありゃ?ザックじゃないの?こーたくん?


そう言えば…横内さんと新田さんは……。


カンナちゃんママは唇を噛み締めている。子供を誤魔化すのかな?どういうのだろう?


「とにかく…康太君だけは…ダメっ。」


「カンナちゃんのママッ!」


康太君がカンナちゃんママに呼びかけた。カンナちゃんママはビクッと体を動かした。ザックが康太君を抱っこしたままカンナちゃんママに近付いた。


「理由も無くダメだと言い聞かせても子供は従いませんよ?康太が納得する理由を教えてあげて下さい。」


カンナちゃんママは…泣き出した。声を上げて泣き出した。園長先生や保育士の先生達も出て来て、皆で見守り…そしてとうとうカンナちゃんママが真実を教えてくれた。


「ええっ横内さんのパパがカンナちゃんママのお父さん?!」


カンナちゃんママは泣きながら何度も何度も頷いている。カンナちゃんと康太君が横に座って泣いているママの背中を撫でている。


「私の両親、離婚しているんです。父は…私と母を捨てて逃げたのだと祖母からは聞かされていました。私も今のカンナくらいの年に離れたので顔も…何もかも忘れていました。そうしたらこの園で夜お迎えに来ていた…父、横内に会いました…。私は知らなかったんです。向こうから声をかけてきました。憶えてるか、歩美?お父さんだよって…あの人は写真を持ってました。赤ちゃんの頃の私とあの人のツーショット…。自分の生活が落ち着いて…捨てた娘の生活が気になって、一度調べたことがあったので…私が高校生の頃の写真も持ってました。あの人にしてみればカンナは孫で…娘と会えて嬉しかったんだとは思うんです。でも…今更父だなんてぇ、何度も連絡してくるし…夫には説明しているんですが、向こうの奥様には誤解されるし…。」


カンナちゃんママはまた泣き出した。園長先生とカンナちゃんママとが相談して横内さんの奥さんに連絡したみたいだ。横内さんの奥さんは仕事終わりにやって来た。


カンナちゃんママが声を詰まらせながらそう説明しても


「そんな嘘信じらないわ。」


と言ってきた。あのね~?するとザックが静かにこう言い出した。


「ご存じですか?康太君とカンナちゃんと歩美さん…3人でいると兄弟みたいに似てますよ?まあ実際年の離れたお姉さんと弟ですしね。」


横内さんの奥さんは康太君と歩美さんを2人見比べている。そして横内さんのお父さんが息を切らせて園に駆け込んで来た。


新田 歩美さんは横内さんに頭を下げた。


「私…あなたのことは死んだものとして思って生活してきたんです…だから今更、親子とかそういうの難しいんです…。」


歩美さんはまた泣いていた。今度は横内さんの奥さんも泣いていた。泣いて旦那さんに


「どうして早く言わないのっ!こんな若いお嬢さん追い詰めて…ごめんなさい私すっかり誤解して…。」


怒鳴ったり謝ったりして顔をくしゃくしゃにして泣いていた。横内さんのお父さんも泣いていた。


皆謝ってばかりだった。


少し暗くなりかけた道を彩香とザックと海斗先輩と歩いて帰った。


「難しいですね。」


「そりゃそうだ、親が子供に持つ想いと子供が親に思う気持ちは全然違うよ。親は離れていても親のつもりだし、子供は離れたらそれまでなんだよ。だから親が離れた時は子供に親の存在を感じてもらわなきゃ…親って忘れられてしまう生き物なんだぞ?」


急に海斗先輩が元国王陛下らしい含蓄のある話をされてきた。


何だか難しいけど、ザイードの事を思い出していた。私ばかりがあの子に会いたくて…モッテガタードに行きたいと思っているけれど、もしかしてザイードの方は歩美さんみたいに思っている?


何だかショックを受けている私がいる。今年のゴールデンウイークにモッテガタードを訪問する予定なのだが…会うのが、拒絶されるのが怖くなってきてしまった…。





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― 新着の感想 ―
[気になる点] 4話でまた修羅場かと思っていたら、言葉通りだった意外な真相! これで比較的、平和な解決と思うのは、自分の感覚がマヒしているのかな。
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